- 社員が離職する主な原因【厚生労働省の調査】
- 離職防止の成功事例【12社の取り組み】
- 離職防止につながる6つのアイデア
「社員が離職する原因を突き止め、職場環境を改善したい」
「離職防止に成功した企業は、どのような取り組みをしているのか」
社員の離職率改善に取り組んでいるものの思うような効果が現れず、頭を悩ませている人事担当者の方もいるのではないでしょうか。
早期離職によって定着率が下がり続けると、採用・育成コストが無駄になるだけでなく、組織全体の士気や業務効率も低下しかねません。
本記事では、離職防止に成功した企業の具体的な取り組みについて、離職原因ごとに6つの視点から解説します。
成功事例のほかにも、実用的な離職防止のアイデアも紹介していますので、自社に合った施策を見つけ出し、離職率改善の一歩を踏み出してみましょう。
社員が離職する主な原因とは?
社員が離職する原因はさまざまで、厚生労働省の転職者を対象とした調査によると、前職を辞めた理由には以下が挙げられています。
離職理由 | 全体 | 男性 | 女性 |
職場の人間関係が好ましくなかった | 11.1% | 9.1% | 13.0% |
労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 9.6% | 8.1% | 11.1% |
給料等収入が少なかった | 7.7% | 8.2% | 7.1% |
能力・個性・資格を生かせなかった | 7.1% | 5.1% | 9.1% |
仕事の内容に興味を持てなかった | 6.2% | 7.4% | 5.0% |
会社の将来が不安だった | 4.9% | 5.2% | 4.6% |
「職場の人間関係」や「労働条件」を理由に離職している人が、全体で約1割ともっとも多く、働きやすさを求めて転職している傾向が伺えます。
次項からは、離職理由(原因)ごとに離職防止の成功事例を紹介していきます。
また、自社の社員定着率を事前に確認しておきたい方は、以下の記事で詳しい計算方法を解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
離職防止の成功事例【人間関係・コミュニケーション】
人間関係・コミュニケーションの改善による離職防止の成功事例について、2社の取り組みを紹介します。
取り組み | 効果 | 会社名 |
心理状態のデータにもとづいた面談 | 休職者が12人から6人に減少 | 株式会社情報戦略テクノロジー |
若手社員が交流するグループを発足 | 若手社員の不安・不満の解消とスキルアップ | 株式会社EVENTOS |
社員同士のコミュニケーションを活性化させ、悩みや不安をいつでも相談できる環境づくりが離職防止のカギです。
以下の記事では、社内コミュニケーションを活性化させる具体的なアイデアを紹介しています。職場の人間関係の改善を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。
心理状態のデータにもとづいた面談|株式会社情報戦略テクノロジー
課題 | 新卒社員の定着率が思わしくなく、離職時に悩みや問題がわかるケースが多かった |
取り組み | 性格診断結果から社員の心理状態を把握し、数値が悪かった部分の不満や悩みをヒアリング |
効果 | 休職者が12人から6人に減少 |
DX支援事業を展開する株式会社情報戦略テクノロジーでは、早期離職(入社後3年以内の離職)する新卒社員が増え、離職時に初めて問題や原因がわかる状況でした。
「事前に問題を把握していれば対処できた」と悔やまれることもあったため、離職前の段階で悩みやメンタルの状況をキャッチできるよう、性格診断ツールを導入しています。
性格診断ツール『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』を活用し、以下のステップで社員へのフォローを行いました。
- 性格診断結果から社員の心理状態を把握
- 数値が悪かった部分を伝えて、不満や悩みをヒアリング
- 仮説をもとに本質的な対話(面談)を実施
心理状態にもとづいた面談を実施したことで、休職者が12人から6人にまで減少し、離職の未然防止にもつながっています。
事例:ミキワメ導入後に休職者が2分の1まで減少|株式会社情報戦略テクノロジー
若手社員が交流するグループを発足|株式会社EVENTOS
課題 | コミュニケーション不足により、若手社員の多くが不安や不満を抱えていた |
取り組み | 若手社員による「新鮮組」を発足し、コミュニケーションの場として活用 |
効果 | 若手社員の不安・不満の解消とスキルアップ |
農産物生産や飲食事業を行う株式会社EVENTOSでは、スタッフ間のコミュニケーション不足により、不安・不満を抱えて悩んでしまう若手社員が多くいました。
スタッフ間のパイプ役となる30〜40代のスタッフがいなかったこともあり、26歳以下の若手社員を中心としたコミュニケーションの場「新鮮組」を発足しています。
新鮮組の活動では、若手社員の不安・不満を解消させるだけでなく、話題のレストランで料理やサービスを学ぶといったスキルアップの機会にもなりました。
また、社内行事の幹事を任せるなど、入社1年目から大きな仕事を与えるケースも多くなり、若手社員が活躍できる組織づくりを実現しています。
離職防止の成功事例【職場環境・ワークライフバランス】
続いては、職場環境・ワークライフバランスの改善による離職防止の成功事例について、2社の取り組みを紹介します。
取り組み | 効果 | 会社名 |
幹部全員でフォローする体制を構築 | 離職が3/5に改善(東証への上場を達成) | 株式会社笑美面(えみめん) |
希望に応じて選択可能な週休3日制の導入 | 離職率が42.9%から15.3%に低下 | 社会福祉法人福泉会 |
職場環境の改善は、心身ともに健康で働き続けられる環境を実現し、離職防止だけでなく社員のパフォーマンス向上にもつながります。
以下の記事では、強い組織をつくるための方法や企業の取り組みを解説しています。組織づくりに取り組んでいる人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
幹部全員でフォローする体制を構築|株式会社笑美面(えみめん)
課題 | 離職率が高い時期があり、上場の条件として課題だった |
取り組み | サーベイの結果をもとに、ケア対象の社員を幹部全員でフォロー |
効果 | 離職が3/5に改善(東証への上場を達成) |
シニアホーム紹介事業を展開する株式会社笑美面では、東証(東京証券取引所)への上場を目指していましたが、審査過程で離職率に課題がありました。
そこで離職防止の対策として、匿名でのストレスチェックだけでなく、ケア対象の社員が実名でわかる調査ツール『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』を導入しています。
具体的な取り組みとして、以下のステップで社員へのフォローを強化しました。
- 離職の兆候が出ている社員を抽出
- ケア対象の社員を幹部全員でフォロー(対面・Web面談など)
- 経営会議でサーベイの結果を提出・共有
経営陣を中心に一丸となってフォローする体制にしたことで、離職が3/5にまで改善され、東京証券取引所グロース市場への上場を達成しました。
事例:ミキワメの導入により離職の改善が進んだ|株式会社笑美面(えみめん)
希望に応じて選択可能な週休3日制の導入|社会福祉法人 福泉会
課題 | 介護業界の慢性的な人材不足で、定着率の改善が必要だった |
取り組み | 職員の希望に応じて選択できる「週休3日制」を導入 |
効果 | 離職率が42.9%から15.3%に低下 |
介護施設を運営する社会福祉法人 福泉会では、介護業界の慢性的な人材不足を解消するため、多様な働き方や充実した研修制度を取り入れています。
職員のニーズに合う働き方を提供するべく、 希望に応じて選択できる「週休3日制」を導入しました。
週休3日制の概要は以下のとおりです。
- 1日の労働時間:10時間
- 1週間の労働日数:4日
- 年間休日:162日
通常の勤務体系と比べると、1日の労働時間は2時間多くなりますが、年間休日は約50日増えるため、多くの休日がほしい社員には適した制度です。
働き方の改善などさまざまな取り組みによって、入社後1年未満の離職率が42.9%(2020年)から15.3%(2022年)まで低下しています。
離職防止の成功事例【給与・福利厚生】
続いては、給与・福利厚生に関する離職防止の成功事例について、2社の取り組みを紹介します。
取り組み | 効果 | 会社名 |
会社収益の一部を社員に還元 | 社員の離職率低下、求める人材の獲得 | 株式会社みちのりホールディングス |
等級に応じた報酬制度の整備 | 経験豊富な人材(中堅層)の定着 | 株式会社ダイワコーポレーション |
給与や福利厚生の充実は、社員の満足度に直結するため、長期的に働き続ける意欲を生み出す重要な取り組みです。
以下の記事では、福利厚生の必要性や具体的な取り組み例を解説しています。報酬制度の見直しを検討している人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
会社収益の一部を社員に還元|株式会社みちのりホールディングス
課題 | 地方からの人材流出により、人材確保が難しい状況が続いていた |
取り組み | 収益性を向上させ、収益の一部は賞与を通じて社員に還元 |
効果 | 社員の離職率低下、求める人材の獲得 |
交通・観光業の価値向上を目指す株式会社みちのりホールディングスでは、地方からの若い人材の流出によって、人材確保が難しい状況が続いていました。
そこで、優秀な人材の確保と離職率低下を目指して、グループ全8社の人事評価制度の共有化に取り組み、以下のように賃金の見直しを実施しています。
- 定期昇給率を2〜3%に引き上げ
- 収益の一部は賞与を通じて社員に還元
同社グループでは、バスルートやダイヤの改善、マーケティングの工夫など多様な取り組みによって収益性を改善し、社員の賃金として還元しています。
収益向上によって賃金に反映されることを社員も理解しているため、人や職場環境へのリターンという循環が優秀な人材を引きつけ、離職防止にもつながっています。
参考:賃金引き上げに向けた取組事例(みちのりホールディングス)|厚生労働省
等級に応じた報酬制度の整備|株式会社ダイワコーポレーション
課題 | 経験豊富な人材の強みを伸ばすため、中堅層の定着が必要だった |
取り組み | 再雇用者向けの人事制度で、等級に応じた報酬の仕組みを構築 |
効果 | 経験豊富な人材(中堅層)の定着 |
物流倉庫事業を展開する株式会社ダイワコーポレーションでは、経験豊富な人材である中堅層の定着を目指し、等級に応じた報酬制度を整備しました。
具体的には、定年後の再雇用向けの人事制度で、役職者や非役職者など4階層の等級を設けて、以下のように報酬を見直しています。
- 役職者:定年前の年収を維持
- 非役職者:基本給は定年前の8割に引き上げ
年1回の昇給・昇格ができる評価制度も適用したことで、再雇用社員の給与は約15%増となり、経験豊富な人材の定着につながっています。
参考:賃金引き上げに向けた取組事例(ダイワコーポレーション)|厚生労働省
離職防止の成功事例【人事評価・マネジメント】
続いては、人事評価・マネジメントに関する離職防止の成功事例について、2社の取り組みを紹介します。
取り組み | 効果 | 会社名 |
行動や能力に焦点を当てた評価制度 | 長期的かつ安定的なキャリア形成の実現 | 株式会社フォーラス&カンパニー |
ジョブグレードごとに職務・職能を評価 | 離職率が約30%から約7%に改善 | 株式会社サイバーエージェント |
公平・公正な評価制度を整備することで、社員は自身の成長をイメージしやすくなるため、結果として離職意欲を抑制する効果が期待できます。
以下の記事では、人事評価の基準や評価方法について詳しく解説しています。評価制度の見直しを検討している人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
行動や能力に焦点を当てた評価制度|株式会社フォーラス&カンパニー
課題 | 新卒3年目の社員をはじめ、若い世代の離職が続いていた |
取り組み | ・行動、能力にもとづく評価制度の整備 ・離職可能性のある社員をサーベイで可視化 |
効果 | ・長期的かつ安定的なキャリア形成の実現・ケア対象社員の打ち手の明確化 |
不動産のコンサルティング業を行う株式会社フォーラス&カンパニーでは、新卒3年目の社員を中心とした若い世代の離職が続いている状況でした。
そこで、若手社員の活躍の場を広げる評価制度の整備や、離職傾向を可視化するサーベイの活用など、さまざまな離職防止の取り組みを実施しています。
「考え方・行動が能力になり、能力が結果になる」という考えのもと、仕事の成果だけではなく、結果を残すためのプロセスや行動に焦点を当て評価しています。
人事評価と行動・能力を紐づけることで、長く安定的に自分のキャリアを積んでもらえる公平な評価制度を構築できました。
また、サーベイの活用で社員の心理状態を可視化できるようになり、離職可能性のある社員に対して「どのような手を打つべきか」がわかるようになりました。
ジョブグレードごとに職務・職能を評価|株式会社サイバーエージェント
課題 | 上場当初は離職率が30%を超える状態だった |
取り組み | エンジニア向けの評価制度「JBキャリアプログラム」の整備 |
効果 | 離職率が7.4%に改善 |
インターネット広告・ゲーム事業を展開する株式会社サイバーエージェントは、2000年に上場を果たしたものの、離職率は年間30%を超える状態でした。
「一緒に働く仲間である社員を大事にしよう」という方針のもと、さまざまな離職防止の取り組みを実施し、現在は多様なキャリアを実現できる制度を構築しています。
エンジニア向けの評価制度「JBキャリアプログラム」では、職務と職能で定義した13個のジョブグレード(※)を設けて、グレードごとに給与レンジを定めています。
(※)ジョブグレードとは、仕事の内容や責任の重さによって仕事をいくつかのランクに分け、そのランクごとにお給料や昇進の基準を決める仕組みです
また、マネージャーやスペシャリストなどキャリアの方向性を定め、社員が自身でキャリアビジョンを考えられる仕組みもつくりました。
同社のさまざまな取り組みによって、2023年の離職率は7.4%と低い状態を保っており、優秀な人材の確保にもつながっています。
離職防止の成功事例【キャリア形成・スキルアップ】
続いては、キャリア形成・スキルアップに関する離職防止の成功事例について、2社の取り組みを紹介します。
取り組み | 効果 | 会社名 |
能力・スキルに応じたキャリアアップ支援 | 休職者が「5〜6人」から「1〜2人」に減少 | 株式会社ラクスパートナーズ |
経営方針にもとづいた人財育成計画の策定 | 新卒3年後の定着率が86%から97%に改善 | 東亞合成株式会社 |
キャリアを支援する取り組みは、社員に対して「成長を応援してくれている」という信頼感を与え、会社で働き続ける意欲を高められます。
能力・スキルに応じたキャリアアップ支援|株式会社ラクスパートナーズ
課題 | 休職するエンジニアが増加し、属人的な判断でサポートしていた |
取り組み | ・個々のスキルを向上させるキャリアアップ支援 ・性格診断にもとづいたキャリア形成のアドバイス |
効果 | 休職者が「5〜6人」から「1〜2人」に減少 |
ITエンジニア派遣サービスを提供している株式会社ラクスパートナーズでは、エンジニアのキャリア形成に注力するものの、モチベーション低下による離職が増加していました。
そこで、エンジニアとして活躍できるようキャリアアップ支援を強化し、社員との面談においては、月1回のアンケート結果にもとづいたアドバイスをしています。
キャリア形成のサポートでは、以下のような体制を整えています。
- 経験豊富な社員が個々のスキルを向上させる「テクニカルサポート」
- 中長期的なキャリアビジョンをアドバイスする「キャリアサポート」
- 現場のニーズをもとに業務運営をサポートする「クライアントリレーション」
仕事の不安やキャリアに関する相談では、サーベイの性格診断をもとにアドバイスを行い、社員が自分自身のことを考える機会を設けました。
これらの取り組みにより、四半期の休職者数が「5〜6人」から「1〜2人」に減少しています。
経営方針にもとづいた人財育成計画の策定|東亞合成株式会社
課題 | 事業環境の変化に対応するため、生産性の向上が必要だった |
取り組み | 中期経営計画にもとづいて、海外で活躍できる人財の育成計画を策定 |
効果 | 新卒3年後の定着率が86%から97%に改善 |
化学品や接着材料などの製造・販売を行う東亞合成株式会社では、事業環境の変化が激しさを増すなか、生産性向上やイノベーション創出を目指し、以下の施策を実施しています。
- 人財育成
- ダイバーシティ推進
- ワークライフバランスの実現
中期経営計画にもとづいた人財育成計画では、海外で活躍できる人財や、異業種との交流から新しい価値を創出できる人財の育成に注力しました。
入社年次による階層別の研修はもちろん、グローバル人財やデジタル人財を選抜して育成する研修も実施しています。
これらの取り組みにより若手社員の活躍できる環境が整い、新卒3年後における定着率が86%(2019年)から97%(2021年)に改善されています。
離職防止の成功事例【経営面・ビジョン】
最後は、経営方針・ビジョンの浸透による離職防止の成功事例について、2社の取り組みを紹介します。
取り組み | 効果 | 会社名 |
組織目標の浸透を目的とした業績発表会 | 仕事を休む人が「1日3〜4人」から「月1〜2人」まで減少 | 未知株式会社 |
MYパーパス実現に向けた人事異動 | 従業員エンゲージメントが向上し、離職率は10〜12%を維持 | SOMPOひまわり生命保険株式会社 |
組織目標・ビジョンを社員と共有し、個々の役割を尊重する姿勢を示すことで、組織との強い結びつきをつくる要因となります。
以下の記事では、従業員エンゲージメント(組織への貢献意欲)が高い企業の特徴や、具体的な取り組みを解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。
組織目標の浸透を目的とした業績発表会|未知株式会社
課題 | 社員のエンゲージメントが低下し、仕事を休む人が増加していた |
取り組み | ・四半期に一度、活躍した社員を表彰する業績発表会・サーベイで心理状態を可視化し、1on1で改善アクションを提案 |
効果 | 仕事を休む人が「1日3〜4人」から「月1〜2人」まで減少 |
企業のWebサイト・動画制作など、企業のコーディネート事業を展開する未知株式会社では、社員の休職・離職を食い止めるべく、以下の取り組みを実施しています。
- 理念と組織目標の浸透を図る業績発表会
- 個人の心理状態をもとに1on1の実施
「世のポテンシャルを飛躍させる」を企業理念として掲げ、四半期に一度MMP(もっとも活躍したと認められた社員)の受賞者を発表しています。
受賞者は周囲から認められることで、より成果をあげるためにはどのような課題に取り組むべきかを自分で考え、組織目標を達成しようとする意欲を高めています。
また、エンゲージメントの低い社員に対しては、サーベイの結果をもとに1on1を実施し、点数と照らし合わせながら悩み解消のアドバイスを行いました。
以前は、仕事を休む人が1日3〜4人いましたが、同社のさまざまな取り組みによって、月に1〜2人程度まで減少しています。
MYパーパス実現に向けた人事異動|SOMPOひまわり生命保険株式会社
課題 | 「健康応援企業」を確立するため、自律的な社員の育成が必要だった |
取り組み | MYパーパスをもとに自分らしいキャリア形成を考える人事制度 |
効果 | 従業員エンゲージメントが向上し、離職率は10〜12%を維持 |
SOMPOひまわり生命保険株式会社では、顧客の万が一と毎日の健康を応援する「健康応援企業」の確立に向け、新たな価値を創造できる自律型社員の育成が必要でした。
その取り組みの一つが、MYパーパス(※)をもとに自分らしいキャリア形成を考えながら学び、生産性の向上につなげるキャリア制度の導入です。
(※)MYパーパスとは「自分自身の人生の意義や目的」または「働く意義」のことです。
具体的には、社員自らが「MYパーパス・スキル・経験」を開示してキャリア制度に応募し、開示された内容に共感する部署がオファーを出します。
社員はオファーのあった部署のなかから希望するところを選び、実際にその部署に異動させることで、自律的なキャリア形成を後押ししました。
SOMPOグループのさまざまな取り組みによって、従業員エンゲージメントのスコアは上昇傾向であり、離職率も10〜12%を維持しています。
離職防止の取り組み・アイデア6選
社員の離職を防ぐ具体的な取り組みとして、実用的な6つのアイデアを紹介します。
株式会社リーディングマーク(当社)の独自調査によると、若手社員の離職対策をしている企業では、主に以下の取り組みを実施しています。
離職対策 | 回答割合(複数回答) |
定期的な1on1面談の実施 | 76.9% |
メンター制度の導入 | 57.5% |
フィードバックを重視した評価制度の導入 | 52.8% |
この調査結果を踏まえて、自社の課題に合わせた取り組みを検討してみましょう。
調査結果を詳しく知りたい人事担当者の方は、以下の記事を確認してみてください。他の企業が抱えている離職の課題がわかります。
経営者メッセージで企業理念の浸透を図る
経営者自らがメッセージを発信し、企業の方向性を社員に伝えることで、企業理念やビジョンに対する理解・共感を得られ、離職の防止につながります。
具体的には、定期的に全社員向けのメッセージ動画やニュースレターを配信したり、社内報や社内掲示板で会社としての考えを共有したりする方法があります。
ただし、一方的なメッセージだけでは理解を得られにくいため、双方向のコミュニケーションが図れる経営者と社員との意見交換会も効果的な取り組みです。
大手電機メーカーのパナソニックでは、社内報をインターネット上で公開し、社員やその家族だけでなく、顧客や取引先にも広く知ってもらおうと取り組んでいます。
以下のようなテーマを各号で決めて発信しています。
- 社員自身の志や情熱
- 社員の日々の奮闘や創意工夫
- パナソニックグループの理念・考え方
社内報を通じて経営層と社員が結びつくことで、組織としての一体感が生まれ、目標達成のために働き続けようとする意識が芽生えるのです。
参考:「社内報」をインターネット上で社外に公開|パナソニックグループ
離職傾向を可視化して個別サポートを行う
定期的なサーベイの配信や勤怠データのチェックを行い、社員の離職傾向を早期に把握できれば、1on1ミーティングやアドバイスなどの個別サポートが可能です。
ストレスやモチベーション、満足度などを数値化し、一定基準を下回る社員を可視化することで、心理状態や性格のデータにもとづくフォローができます。
株式会社リーディングマークの『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』では、以下のように、回答者のスコアや性格に応じた状態改善のアドバイスが提供されます。
実際に、インターネット関連事業を行う株式会社ペンシルでは、サーベイを活用して「今困っている人は、何に困っているのか」を可視化しました。
スコアが大きく変動している社員には、1on1で心当たりを聞きながら、改善に向けた具体的なネクストアクションを決めています。
個人の状態が明らかになったことで、意外な社員がケアを必要するケースもあったため、離職に至る前にサポートができるのはサーベイ活用による大きな効果です。
社員同士で称賛し合う仕組みをつくる
社員同士でお互いの努力や成果を認め合う仕組みづくりによって、職場内のコミュニケーションが活性化し、組織と社員との信頼関係も強化されます。
たとえば、社内SNSや社内掲示板を導入し「ありがとう」や「お疲れさま」といった、感謝の言葉を気軽に投稿できる仕組みをつくったとします。
感謝する投稿が全社員に共有されれば、称賛の輪が社内に広がり、職場でも気軽にコミュニケーションがとれる風通しのよい雰囲気になるのです。
実際に、ミキワメサービスを提供している株式会社リーディングマークには、LMileと呼ばれるポイントと感謝の言葉を使って、メンバー同士で称賛し合う制度があります。
貯まったLMileをAmazonポイントに交換して自己研鑽に使うなど、キャリア形成やモチベーション向上の一環としても効果的な制度になっています。
「社員のモチベーションを上げ、離職率を改善したい」と考えている方は、以下の記事を確認してみてください。すぐに実践できるやる気の上げ方を解説しています。
キャリアパス制度を導入する
社員が自らの成長や将来像をイメージできるキャリアパス制度は、自己研鑽への意欲を高められるため、離職防止にも効果的な施策です。
具体的には、職務・スキルに応じた昇進の基準やキャリアの選択肢を示し、努力や成果がどのように評価されるのかを定めます。
職務ごとに必要な能力が明確に示されていれば、社員はキャリアアップに向けて行動しやすくなり、仕事に対するモチベーションも高まるのです。
実際に、みずほフィナンシャルグループでは、社員一人ひとりが自分らしさを発揮するキャリア開発を行うため、独自のプラットフォーム「M–Nexus」を運営しています。
M–Nexusは、個々のキャリア観と課題認識を踏まえて、自律的な学びと挑戦を後押しする仕組みです。
キャリアを知るためのジョブマップを提示したり、部署説明会を実施したりと、キャリアデザインを支援するさまざまな取り組みを社員に提供しています。
男性の育児休業取得を促進させる
男性社員の育児休業取得を推進することで、職場全体の働きやすさとワークライフバランスの実現によって離職防止につながります。
2022年の育児・介護休業法改正により、産後パパ育休(出生時育児休業)が創設され、男性が育児休業を取得しやすい環境になりました。
産後パパ育休は、これまでの育休とは別に取得可能なため、夫婦で育休を交互に取得するなど、家庭環境に応じて柔軟に利用できます。
また、育児休業や産後パパ育休を利用する場合は、雇用保険による育児休業給付(諸条件あり)など、経済的な支援も用意されています。
育児休業の促進は、働き方改革やジェンダー平等の推進にも関連するため、企業の魅力向上にもつながる施策です。
以下の記事では、ワークライフバランスのメリットや取り組みを詳しく解説しています。職場環境の改善に取り組んでいる人事担当者の方は、本記事と合わせて確認してみてください。
入社前後のギャップをなくす
若手社員の離職を防ぐためには、入社前・入社後のギャップ(業務内容や働き方など)を減らす工夫が必要です。
採用プロセスにおいて会社の実態を正確に伝え、入社後のオンボーディングや研修などを整えることで、期待と現実のズレによる失望感を軽減できます。
具体的には、社員インタビューをWebサイトで公開したり、実際の業務を体験できる場を提供したりして、リアルな職場環境を伝えることが重要です。
企業としては、採用時に候補者の能力・性格などを把握し、自社の職務に適性があるかも見極めなければなりません。
比較サイトを運営する株式会社マイベストでは、面接の評価だけで採用判断をできない場合に、適性検査の結果をもとにミスマッチの可能性を確認しています。
自社社員の性格分析をもとに採用基準を設けているため、会社の働き方やカルチャーにマッチするかどうかを判断でき、採用の精度も向上しました。
事例:カルチャーや能力のミスマッチを抑制できる|株式会社マイベスト
以下の記事では、採用や人員配置で活用する適性検査について、24種類のサービスを徹底比較しています。導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
AI活用による離職防止の効果【離職リスクを効率的に分析】
業務効率化で注目を集めているAIですが、社員の離職傾向やリスクを分析・予測するツールとしても活用されています。
退職代行サービスを運営する企業では、社員の勤務データや人事情報、過去の離職者のデータをAIに読み込ませて、企業ごとの離職者モデルを作成しています。
その離職者モデルに、実際の出退勤の時間や欠勤状況などを入力することで、離職リスクをAIが予測して数値化する仕組みです。
株式会社リーディングマークが提供するサーベイにおいても、ミキワメAIを活用した分析によって、離職傾向の予測や改善アクションの精度が向上しています。
以下の記事では、ミキワメAIを開発した背景や想いを紹介していますので、ご興味のある方はぜひ確認してみてください。
まとめ:離職防止の成功事例をもとに施策を検討しよう
社員の定着を図るためには、過去に離職した人からの情報をもとに原因を追究し、職場環境の改善や社内制度の見直しをしなければなりません。
離職防止の施策は、以下の6つの視点でバランスよく取り組む必要があります。
実践的かつ効果的な離職防止を行うためには、各企業の成功事例をもとに検討するのが成功の近道です。
本記事の取り組み内容や効果を参考にして、自社の課題に合った施策を取り入れてみてください。
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