人事戦略

定着率を上げる7つの方法と具体例|改善のステップや企業事例も解説

この記事でわかること
  • 社員の定着率を上げる方法と具体例
  • 定着率が低下する原因と改善に向けたステップ
  • 定着率改善に取り組むときのポイント

「次々と社員が離職してしまい、職場の雰囲気が悪くなっている」
「社員を定着させるためには、どのような施策を行うべきなのか」

このような悩みを持ち、定着率の改善に取り組んでいる経営者や人事担当者の方もいるのではないでしょうか?

社員の定着率を向上させるためには、採用時のミスマッチを減らすことや、働きやすい環境を整備することなど、複数の施策を組み合わせて行う必要があります。

そこで本記事では、社員の定着率を上げる7つの方法と具体例、改善するための詳しい手順を解説します。

AI活用による定着率改善の可能性や、企業の成功事例も紹介していますので、自社に合った最適な改善策を見つけてみてください。

定着率を向上させる重要性

定着率を向上させる重要性

社員定着率は、企業の持続的な成長と競争力の強化に欠かせない指標の一つです。

定着率の向上によって、採用や人材育成のコストを削減できるだけではなく、さまざまな効果が期待できます。

  • 企業文化が社内に浸透しやすくなる
  • 専門的な知識・スキルが蓄積される
  • よい評判が広まり人材が集まりやすくなる
  • 社員同士の信頼関係を築きやすくなる

厚生労働省では、中小企業向けに長時間労働の抑制や職場環境の改善などの支援を行っており、社員定着に向けて国も積極的に働きかけをしています。

まずは、自社の定着率が「日本全体や業界と比べてどのような状況なのか」を把握してみましょう。定着率の計算方法や各業界の平均値については、以下の記事で詳しく解説しています。参考にしてみてください。

社員_定着率
社員定着率とは?計算方法や各業界の平均、向上によるメリットを解説社員定着率とは、入社した社員が「どのくらいの割合で働き続けているか」を示した指標です。定着率の向上によって優秀な人材が集まり、経営上の安定性も維持できます。定着率の概要や計算方法を詳しく解説します。...

社員の定着率を上げる7つの方法【具体例あり】

社員定着率_上げる方

社員の定着率を向上させるためには、採用や人材育成などあらゆる場面において、具体的かつ実践可能な施策を検討しなければなりません。

ここでは、定着率向上につながる効果的な7つの方法と、その具体例を詳しく解説します。

以下より各方法を一つずつ解説していますので、自社の現状と見比べながら確認してみてください。

採用基準を見直しミスマッチを減らす

入社後のミスマッチによる早期離職を防ぐためには、明確な採用基準を設けて、人材の能力・適性を見極めることが重要です。

採用基準を決めるときは、自社で活躍している社員の特性を細かく分析し、企業文化や仕事内容に合いそうな「求める人物像」を明確にしましょう。

選考時は、書類や面接による評価に加えて、適性検査などの客観的なデータを参考にすることで、採用基準に沿った人材を見極めやすくなります。

ITインフラサービス事業を展開している企業では、採用のターゲット層や選考時の評価方法の見直しを行っています。

案件の多様化に伴って、さまざまな経験やスキルを活用できる環境になったため、若年層だけを採用するのではなく、ミドル層や就職氷河期の世代にまで拡大しました。

新卒や中途、文系や理系など、さまざまな年代層や経験を持った人材の確保につながり、離職率の低下も実現しています。

参考:中小企業向け補助金・総合支援サイト|経済産業省

とくに新卒の場合は、将来的な成長が見込めるか、職場で活躍してくれそうかなど、社会人未経験の学生を的確に判断しなければなりません。

以下の記事では、採用時の評価・選考をサポートする新卒向けの適性検査について詳しく解説しています。また、新卒の定着率についての別記事もありますので、本記事と合わせて確認してみてください。

働きやすい労働環境を整える

働きやすい環境を提供することで、社員の満足度と業務の生産性が向上し、長期的に働き続けたいという意識が高まります。

職場の照明やデスクなどの作業環境を整えたり、仕事の合間にひと息つける休憩スペースを設置したりと、社員が快適に働けるようなオフィスづくりが必要です。

また、社員のライフスタイルに合わせて、柔軟に労働時間・場所を決められる制度など、ワークライフバランスを重視した施策も「働きやすさ」を創出します。

定着率の低さが課題だった企業では、子育て世代に優しい勤務制度の導入によって、40%だった離職率が数%台にまで低下しました。

以下のように、主に社内制度の見直しに注力しています。

  • 育休中の女性社員が赤ちゃんと一緒に出勤する「子育て面談」の実施
  • 出勤時間を5分単位で前後できる「スライドワーク制度」の整備

働きやすい環境づくりに取り組んだことで、仕事のパフォーマンスが向上し、売上高・利益の拡大にもつながっています。

参考:中小企業向け補助金・総合支援サイト|経済産業省

給与・福利厚生の制度を見直す

給与や賞与、インセンティブなどの業績に見合った報酬を与えることで、社員の満足度やモチベーションの向上につながり、会社への信頼度も高まります。

同業他社に比べて給与水準が低く、将来的な昇給も見込めない場合、他社に転職してしまう可能性もあるため、世の中の変化に対応していくことも重要です。

また、会社施設の利用補助や健康増進プログラムの提供など、福利厚生プランの充実によって、社員の生活基盤のサポートをより強化できます。

あるタクシー会社では、ドライバーの人材確保の課題を解決すべく、以下のような勤務体系・処遇・福利厚生の見直しを行いました。

  • 異業種からの人材が安心して働ける給与保障制度
  • ドライバーを契約社員から正社員に転換
  • 個々の希望をシフトや運行管理に反映できる柔軟な勤務体系

制度の見直しによって、子育て世代や就職氷河期の世代など4人のドライバー採用を成功させ、未経験の人材も活躍しています。

参考:中小企業向け補助金・総合支援サイト|経済産業省

キャリアアップの機会を提供する

キャリアアップに向けた定期的なトレーニングや研修プログラムを提供し、社員のスキル向上を支援することも、定着につながる取り組みです。

たとえば、各職種ごとのキャリアマップを作成し社員に提供することで、自分の将来の道筋がイメージしやすくなり、昇進の時期やタイミングも明確になります。

会社が決めたキャリアパスに沿っていくのも重要ですが、社員が自主的に「目標に向かってどのようにステップアップしていくか」を考える働きかけもしていきましょう。

空調機器の販売・工事を行っている企業では、人材育成や定着に関する制度・職場環境を整えるため、以下のような取り組みを行っています。

  • 入社後に身につけてほしいスキル・資格の一覧を作成
  • 年間休日数や残業時間に関する見直し
  • 全社員と経営者との個別面談を実施

今後も個人面談やアンケートの意見を踏まえたうえで、社員が定着する健全な職場環境づくりを進めていく計画です。

参考:中小企業向け補助金・総合支援サイト|経済産業省

社内でのコミュニケーションの場を設ける

コミュニケーションの場を提供して社員同士が交流を深めることで、お互いの信頼関係が強くなり、組織全体の一体感も生まれます。

具体的な取り組みには、チームビルディング(目標に向けたチーム構築)の活動や、社員参加型のスポーツイベントの開催などがあります。

ある製造業の企業では、休みを取りにくい雰囲気が浸透しており、出勤が難しい日でも出社していた社員がいる状況でした。

そこで、現場の多能工化(複数の技術を習得する取り組み)を進めて、休暇中でも社員同士がお互いにカバーできるようにしました。

また、会社が用意した昼食をとりながら親睦を深める 「パワーランチ」も月1回実施しています。

社員同士でカバーし合える風土になってことで、休暇が取りやすい雰囲気となり、社員の定着にもつながっています。

参考:中小企業向け補助金・総合支援サイト|経済産業省

また、SlackやChatworkなどコミュニケーションツールを活用し、時間や場所にとらわれずに交流できる仕組みも有効な手段です。

人事評価の基準を明確にする

公平かつ透明性のある人事評価制度によって、社員が自分の業務の重要性を理解して仕事に取り組み、働き続けたいという意欲が生まれます。

企業のビジョンや目標と一致するような評価基準を設けて、社員に対して「どのような評価基準で、業務のどこを評価したのか」がわかるように提示しましょう。

貴金属の売買・加工などを行っている企業では、既存事業をより成長させていくため、製造職・営業職・中間管理職における採用の強化を図りました。

求める人材像の明確化に加え、安定的な人材の確保や本格的な人事評価制度の運用を行う目的で、人事労務分野のスペシャリストの採用も実施しています。

現在では、新たな人事評価・賃金制度を構築して、営業部門から運用を開始し、社員の定着率の向上に取り組んでいます。

参考:中小企業向け補助金・総合支援サイト|経済産業省

また、評価時は人事部門や上司からのフィードバックを通して、業績に対する客観的なデータを提示し、社員が納得感を得られるようにするのがポイントです。

以下の記事では、人事評価の基準や評価の流れを解説していますので、自社の制度を見直したいと考えている方は参考にしてみてください。

人事評価とは?目的・考え方・評価の方法を解説
人事評価とは?目的と評価基準、方法を理解して人材を管理・育成しよう人事評価は、人材の育成と管理を目的とした評価制度です。本記事では人事評価の概要と目的、評価基準とともに人事評価制度の適切な運用方法を解説しますので、人事担当者の方は参考にしてみてください。...

社内の情報や魅力を社員に伝える

社内報やニュースレターを活用して、各部署の良好事例や魅力を発信できれば、他部署へも同様の取り組みが広がり組織全体の活性化につながります。

とくに社員数が多い企業では、各職場で取り組んでいることや、成果につながった事例が多数存在する一方で、社内で知らない人がいるのも事実です。

そのため、社内の情報をリアルタイムに共有できるような仕組みづくりが、社員との信頼関係を構築するうえでも重要です。

採用ミスマッチによる早期離職が発生していた企業では、新入社員が3年後、5年後の姿をイメージできるように、自社の魅力発信に注力しています。

自社の強みを分析するために社員インタビューを実施し、社員目線での働きやすさや、仕事を通じて得られる達成感などの魅力を明確化しました。

この取り組みによって、社員が会社をよくしていきたいと考えている点が経営者にも伝わり、より具体的な課題や共通目標の発見につながっています。

参考:中小企業向け補助金・総合支援サイト|経済産業省

定着率の向上による効果とは?

定着率の向上_効果

定着率の向上による大きな効果は、人材が長期間にわたって会社に在籍することで、専門的な技術やスキルが磨かれていき、業務の質や生産性が高まる点です。

また、社員の定着によって新たな採用やチーム編成をする必要がなく、採用・育成コストの削減にもつながり、経営的な面での安定性も向上します。

定着率が高い状態は、社員にとっても働きやすい労働環境だと言え、会社への不満が少なくモチベーションエンゲージメント(貢献意欲)も高く維持できています。

定着率の向上の効果をより詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。定着率の高い会社の特徴や取り組み内容を解説しています。

定着率の高い会社_特徴_メリット
定着率の高い会社の特徴やメリットとは?6つの取り組み事例を解説定着率の高い会社は、適性に合わせた業務を与え、柔軟に働ける環境を提供している点が特徴です。採用・教育コストの削減と、企業イメージ向上のメリットがあります。実践している具体的な取り組みを解説します。...

また、モチベーションやエンゲージメントを高める方法について解説した記事もありますので、こちらもぜひ参考にしてみてください。

社員の定着率が悪い5つの理由

社員定着率_悪い理由

社員の定着率が低下する要因として、とくに顕著なものを5つ解説します。

自社でも同様の声がないか把握し、社員が満足のいく労働環境に改善していきましょう。

以下の記事では、社員が定着しない会社の特徴をより詳しく解説しています。定着率改善に成功した企業事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

若い人が定着しない会社_特徴_定着に向けた取り組み
若い人が定着しない会社の特徴6選|定着に向けた取り組みと企業事例若い人が定着しない会社は、入社前後のギャップによる不満が多く、職場の雰囲気や労働条件の悪さが影響しています。本記事では、若手社員を定着させるための方法や、企業が実践している取り組み事例を解説します。...

労働時間や休日などの労働条件が悪い

長時間労働が多い職場や休みが取りにくい環境では、社員の休息する時間を奪ってしまい、業務品質の低下や健康被害の発生につながりかねません。

また、家族と過ごす時間や趣味の時間が取れないことも、ストレスを蓄積させ不満の原因になりやすいです。

転職者を対象とした厚生労働省の調査によれば、離職理由として28.2%の人が「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」と回答しています。

この割合は、全体の離職理由のなかでもっとも多く、男性は28.3%で2番目、女性は28.1%で1番多い回答です。

参考:令和2年転職者実態調査の概況(離職理由)|厚生労働省

社員の生活に配慮した労働条件を提示し、労働時間の適正管理と休暇取得の促進を行うことで、ワークライフバランスが実現できます。

仕事内容にやりがいを感じられない

仕事内容が単調な作業ばかりであったり、新たなスキルを身につける機会が少なかったりすると、会社で働き続けたいと考える意識も低下してしまいます。

会社やチームの目標が不明確な場合においても、社員自身は仕事の意義を感じにくく、モチベーションも維持できません。

厚生労働省の転職に関する調査では、離職理由として「満足のいく仕事内容ではなかったから」と26.0%の人が回答しており、全体では2番目に多い割合です。

男性においては28.4%でもっとも多く、女性では22.8%と3番目に多い回答だとわかり、男性と女性とで考え方の差があることがわかります。

参考:令和2年転職者実態調査の概況(離職理由)|厚生労働省

仕事のやりがいを見いだすためには、社員一人ひとりの適性に応じた役割や仕事を与え、キャリアの道筋をイメージできるようにサポートする必要があります。

満足いく給与が支払われていない

一般的な市場よりも低い給与水準や、業績に見合った給与が支払われていない状況だと、社員は不満を感じ、より好待遇の会社への転職を考えてしまいます。

会社の利益が増えても社員に還元されず、物価上昇など世の中の流れに対応できないような給与制度だと、社員は生活水準を落とさなければなりません。

厚生労働省の調査によれば、転職した理由として23.8%の人が「賃金が低かったから」と回答し、全体では3番目に多い割合でした。

男性においては25.3%、女性では21.8%と、両者とも4番目に多い回答となっています。

参考:令和2年転職者実態調査の概況(離職理由)|厚生労働省

給与水準を見直す以外にも、福利厚生の充実や労働時間を減らす取り組みを同時に行いながら、社員の満足度を高めていく必要があります。

また、給与を見直すには人事評価との連動を図る必要もありますが、社員が評価に納得していないケースがあるのも事実です。

以下の記事では、人事評価が納得されない理由と改善方法について詳しく解説していますので、評価制度を見直すときの参考にしてみてください。

人事評価_納得いかない
人事評価に納得がいかない理由と改善方法とは?見直しのポイントと改善事例も解説納得のいかない人事評価は、従業員のエンゲージメントやモチベーションの低下を招くため、改善が必要です。本記事では、人事評価に納得がいかない理由と改善方法、改善事例を解説します。...

会社の将来性に不安を感じている

会社の業績が悪化し、社員にも数字として見える形で伝われば、会社の存続に不安を抱いてしまい離職する可能性が高まります。

将来的に会社が成長していかないと見込まれる場合、社員は昇給やキャリアアップの期待が持てません。

厚生労働省の転職に関する調査によると、離職理由として「会社の将来に不安を感じたから」と23.3%の人が回答しており、全体では4番目に多い割合です。

男性においては27.5%と3番目に多く、女性では17.8%と5番目に多い回答となっており、男女での差が比較的大きいこともわかりました。

参考:令和2年転職者実態調査の概況(離職理由)|厚生労働省

また、経営方針やビジョンが不透明である点も、会社への信頼感が損なわれる原因の一つです。

職場内の人間関係がよくない

上司や同僚との意見が合わなかったり、ハラスメントがあったりする職場では、仕事に対する意欲の低下や精神的なストレスの原因にもなります。

人間関係がよくないと職場全体の雰囲気も悪くなるため、コミュニケーションも取りにくく、自分の業務を思うように進められません。

厚生労働省の調査によれば、転職した理由として23.0%の人が「人間関係がうまくいかなかったから」と回答し、全体では5番目に多い割合です。

男性においては21.1%で全体と同様5番目に多く、女性では25.4%と2番目に多い回答だとわかりました。

参考:令和2年転職者実態調査の概況(離職理由)|厚生労働省

人間関係の悩みをすぐに解決するのは困難ですが、性格傾向が近い人と一緒の部署に配置するといった対応で、良好な関係性を築きやすくなります。

社員の定着率を改善するステップ

社員定着率_改善ステップ

ここからは、定着率を改善するための具体的な手順を解説していきます。

社員からのフィードバックを通じて改善策を評価し、必要に応じて調整していくことで、持続的な定着率の改善に取り組めます。

1:定着率の調査・分析

まずは、自社の定着率を調査するため、組織全体・部署別・年代別など属性ごとの詳細なデータを確認しましょう。

社員の定着率は、年単位の期間で算出するのが一般的ですが、調査したい属性に合わせて「1年・3年・5年」などの期間を設定します。

たとえば、会社全体の社員定着率を確認したい場合は、以下の計算式で算出できます。

【計算式】

社員定着率 =
(〇年前の社員数 ー 〇年間の離職者数)÷ 〇年前の社員数 × 100(%)

※〇年間に入社した社員は含まない

参考:社員定着率とは?計算方法や各業界の平均、向上によるメリットを解説

調査した定着率から、離職した人が多い部署を特定したり、入社年ごとの早期離職者の人数を把握したりして、組織全体の傾向を分析しましょう。

2:離職理由の把握

定着率のデータと、離職時の面談やアンケート結果を照らし合わせて、具体的な離職理由の把握を行います。

「この社員はなぜ離職したのか」「同じ年代で共通点はないか」といった点を特定し、組織内に潜む人事課題を洗い出しましょう。

給与体系や人事評価制度の不透明さ、労働条件の不満など、さまざまな要因が浮かび上がったあとは、経営的な視点を考慮しながら改善策を検討していきます。

人事部門が抱える課題は日々変化しており、時代のニーズや流れに沿った施策が求められます。

以下の記事では、人事課題を解決するための具体例を紹介していますので、定着率改善を進めるときの参考にしてみてください。

人事課題と解決策_M&A人事課題
【2024年版】人事が抱える5つの課題と解決策|M&Aでの課題も人事課題には、採用・人材育成・人員配置などあらゆる場面に存在します。時代の変化とともに課題も多様化しており、組織内の洗い出しが必要不可欠です。人事課題の具体例や解決法、最新トレンドについて解説します。...

3:改善策の実行

定着率を分析した結果と離職理由をもとに、具体的な改善策を立案して実行に移します。

施策を行うときは、以下のような数値目標を定めて、一定期間が経過したあとに評価を行います。

施策例目的目標
採用基準の見直しミスマッチによる早期離職の防止早期離職率:10%以下
給与・福利厚生の整備社員の満足感の向上満足度(スコア):85点以上

前述した「定着率を上げる方法」を参考に、労働条件や給与、職場環境など、優先すべき課題に対する改善策を実施していきましょう。

4:改善の効果検証

最後は、実施した施策が「目標に対してどの程度の効果が得られたか」を評価するプロセスです。

たとえ課題解決に直結する施策を行ったとしても、すぐには定着率の向上につながらないため、1年や3年といった長いスパンで経過を観察しましょう。

従業員満足度調査(アンケート)であれば、会社に対する社員の意見を包括的に収集でき、満足度として定量データの把握も可能です。

現場の声を取り入れつつ、必要に応じて改善策をブラッシュアップさせていき、さらに効果的な取り組みを実施していきましょう。

以下の記事では、従業員満足度アンケートの項目例や活用時の手順を解説しています。よく利用されているツールも紹介していますので、導入時の参考にしてみてください。

従業員満足度_アンケート_質問項目_注意点_手順
従業員満足度アンケートの質問項目とは?作成時の注意点と8つの手順従業員満足度アンケートとは、従業員満足度を把握するための調査のことです。実施する際は目的を明確にして継続的な改善が大切です。本記事では質問サンプルや活用手順、ツールについて詳しく解説しています。...

定着率の改善にAIは活用できるのか

定着率改善_AI活用_できるのか

近年注目を集めているAIですが、文章生成や業務効率化などの活用だけではなく、採用や人材育成の場面においても、AI活用の期待が高まっています。

退職代行サービスを運営する会社では、新社会人の出退勤時間や欠勤状況のデータから、離職リスクを予測するシステムを大学と共同開発しました。

社員の人事に関する情報や、過去に休職・離職した人のデータを読み込ませ、企業ごとの「離職者モデル」を作成できるシステムです。

離職者モデルをもとに新社会人の情報を入力することで、AIが離職可能性のリスク度を分析・表示できます。

参考:新社会人のスピード退職 相談多数 背景は 離職防止でAI活用も|NHK

離職可能性を察知できれば、事態が悪化する前に対策が打てるため、AIの活用は社員の定着をサポートする強力なツールと言えます。

リーディングマークが提供している適性検査サーベイは、ChatGPTを活用した「ミキワメAI」を導入し、より精度の高い分析を可能としたサービスです。

ミキワメAIの開発秘話については、以下の記事で詳しく解説しています。採用や人材マネジメントでのAI活用にご興味がある方は、ぜひ確認してみてください。

ChatGPTで変わり始めたHRとミキワメAIのリリースに込めた想い 本日、OpenAI社のChatGPTを活用した新機能「ミキワメAI」を、「ミキワメ 適性検査」と「ミキワメ ウェルビーイングサーベイ」...

定着率の改善を行うときのポイント

定着率改善_ポイント

定着率の改善を行うときは、以下の2つのポイントを押さえておきましょう。

「とりあえず労働時間を見直そう」などと根拠のない施策を行うのではなく、社員の意見やデータにもとづいた取り組みの検討が不可欠です。

現場社員のリアルな意見を聞き出す

現場で働いている社員のリアルな意見やニーズを収集することで、離職につながる原因や潜在的な課題が明確になります。

社内アンケートサーベイを活用して意見を聞き出し、改善策に反映できれば、取り組むべき課題に焦点を当てた解決策となり、社員の満足度も高まります。

また、アンケートに回答した社員も「自分の意見で職場環境が改善された」と実感し、会社への信頼度も高まるため、働き続けたいという気持ちが湧いてくるのです。

社内調査を検討している方は、社員の状態をタイムリーに可視化できる『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』の活用がおすすめです。

データの確認画面や操作感を体験できる「無料トライアル」も実施中ですので、下記のリンクから詳細を確認してみてください。

時代のニーズに合わせた施策を検討する

定着率改善に向けて働き方改革を進めるためには、日本の政策や時代の流れ、ニーズに合わせた施策を検討しなければ効果が得られにくいです。

現代の労働市場は急速に変化しており、社員が求める働き方や価値観も従来とは異なる視点を持つようになりました。

とくに、新たなスキル・知識を習得するリスキリングや、社員の健康や幸福を重視したウェルビーイング経営などが注目され、仕事環境も大きく変化しています。

企業は時代の変化に柔軟に対応し、社員の期待に応えていくことが、定着率を改善させるカギとなります。

定着率が向上した企業の取り組み事例

定着率向上_企業取り組み_事例

社員の定着率向上に成功した企業について、2社の取り組みを解説します。

離職の課題を抱えていた企業が、どのような施策で解決につながったのか、自社の状況と照らし合わせながら確認してみてください。

定着率の高い会社が実践している取り組みは、以下の記事でも詳しく解説しています。さまざまな視点で施策を検討したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

定着率の高い会社_特徴_メリット
定着率の高い会社の特徴やメリットとは?6つの取り組み事例を解説定着率の高い会社は、適性に合わせた業務を与え、柔軟に働ける環境を提供している点が特徴です。採用・教育コストの削減と、企業イメージ向上のメリットがあります。実践している具体的な取り組みを解説します。...

事例1:採用ミスマッチを減らし早期離職者がゼロに

食料品の卸売業などを行うアサヒ物産株式会社では、採用時の基準があいまいな状態なうえに、人事担当者の意見で採用・不採用を決定していました。

そのため、入社してほしい候補者に内定を出しても、ミスマッチによって早期離職するケースがありました。

同社では採用ミスマッチを減らすため、以下のようなステップで新たな取り組みを実施しています。

  1. 社員一人ひとりの特徴や部署ごとの性格傾向を分析
  2. 分析データをもとに独自の採用基準を設定
  3. 面接時に採用基準と照らし合わせて選考

この取り組みによって、新卒社員の約5割の人が離職していた状況から、現在では早期離職者がゼロ(※)となり、採用ミスマッチの防止につながっています。

(※適性検査導入から2024年1月までの期間)

【事例:アサヒ物産株式会社】

新卒採用の離職者はゼロ、内々定者は10倍に

採用ミスマッチを解消した事例については、以下の記事でも解説しています。改善に取り組んだ企業のリアルな声も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

ミキワメ導入事例:採用ミスマッチを解消できた事例【3選】 【公式】ミキワメ適性検査の資料を無料ダウンロード 人材不足や人材流動性の高まりが激しくなる現代。 「獲得したい優秀人材の内...

事例2:採用・人材マネジメントの両面で改善策を実施

PCなどの修理事業を展開するグローバルソリューションサービス株式会社では、早期離職の課題があり、とくに入社後3ヵ月〜半年の離職を改善したいと考えていました。

まず採用においては、社員の性格傾向をもとに採用基準を明確にし、候補者が「本当に自社と合っているか」をより詳細に評価するようにしました。

採用時に行う適性検査だけでスクリーニングするのではなく、面接の結果と検査結果を合わせて、候補者を深く理解できるように選考しています。

次に取り組んだのが、入社後の社員の活力やメンタル状態を把握する作業です。

月1回サーベイを配信し、以下のようなステップでケアが必要な社員(アラートが上がった社員)へのサポートを行いました。

  1. 調査結果を人事が確認し「ケア対象の社員」を把握
  2. 店長もしくは人事と対象社員が面談を実施
  3. 社員の現状を聞き取って対応策を検討

採用と人材マネジメントの両面での施策を行ったことで、20%だった離職率が13%にまで改善し、早期離職の課題も解決の兆しが見えてきています。

まとめ:定着率を改善して組織全体の生産性を高めよう

定着率上げる方法_まとめ

社員を会社に長く定着させるためには、採用時の適性の見極めや、社員が満足のいく職場環境の整備など、あらゆる面の課題解決が必要です。

もう一度、定着率を向上させる7つの方法を確認しておきましょう。

施策検討時は、時代の流れを注視しつつ社員の意見やニーズを聞き入れることで、本当に解決すべき課題が明確になります。

持続的な改善を通じて社員の定着を図り、組織全体の生産性と満足度を高めていきましょう。

離職・休職を防ぐミキワメ ウェルビーイングサーベイ

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