人事戦略

ミスマッチの意味とは?採用で生じるデメリットと3つの原因・対策を解説

ミスマッチ対策!早期離職・モチベーション低下の改善方法
この記事でわかること
  • 採用ミスマッチの種類
  • 採用ミスマッチが発生する3つの原因
  • 採用ミスマッチを防止するための対策

「ミスマッチとはどのような意味か」「ミスマッチを防ぐための対策はなにか」など、把握しておきたい人事担当の方もいるのではないでしょうか。

ビジネスにおけるミスマッチとは、企業と社員それぞれのニーズや考え方にズレやギャップがあることを言います。

ミスマッチが起きてしまうと、社員の早期離職やモチベーションが低下してしまう可能性もあるため、ミスマッチの原因を把握しておくことが重要です。

本記事ではミスマッチの原因と対策ミスマッチによって生じる採用のデメリットを解説しています。

ミスマッチの原因と対策も紹介していますので、社員の離職を防止して組織力を強化するための参考にしてみてください。

ミスマッチの意味とは?

ミスマッチ_意味

ミスマッチ(mismatch)とは、2つの組み合わせに生じるズレやギャップのことを意味し、不釣り合いである状態を指す言葉です。

一方ビジネスにおけるミスマッチとは、企業と社員の考え方やニーズに認識のズレがあることを指します。

具体的には、企業の社風や仕事内容、労働条件が社員の要望に合っていない状態のことで、社員の離職率の上昇や生産性の低下などさまざまな悪影響をもたらします。

厚生労働省の調査によると、日本における以下のようなミスマッチの割合が、他国に比べて高い水準です。

  • 学校で学んだ専門分野と就業後の仕事内容のミスマッチ
  • 自身の学歴と企業が必要としている学歴のミスマッチ
ミスマッチ_国際比較

出典:スキルや学歴のミスマッチの国際比較について|厚生労働省

企業と候補者のミスマッチを防止するために、採用時に適性検査を実施することで、候補者のスキルや適性を客観的に評価できます。

ミスマッチとアンマッチの意味の違い

ミスマッチとアンマッチは、採用時や人員配置において不一致が生じる状態を指しますが、「その原因が事前にわかっているかどうか」の違いがあります。

ミスマッチとは、採用後や人員配置後において「組織文化や働き方に合っていないことが判明する」といった状態のことです。

一方アンマッチとは、採用そのものが成立しないような状態のことを意味し、企業と社員の双方が「適性やスキルが不一致である」ことが事前にわかっている状態です。

採用ミスマッチの5つの種類【事例も紹介】

ミスマッチ_種類

ミスマッチには要素によってさまざまな種類があり、主なものは以下の5つです。

「どのような事象のミスマッチがあるのか」を把握しておくことで、早期に原因を追求して対策できます。

中途採用のミスマッチについては、以下の記事で紹介しています。本記事と合わせてご覧ください。

中途採用_ミスマッチ_原因対策
中途採用でミスマッチが起きる4つの原因|企業がすべき対策とは?中途採用のミスマッチの原因は、明確な採用基準がなく、社風や働き方に対する適性が見極められていないためです。本記事では、中途採用におけるミスマッチの原因と対策、企業の取り組み事例を紹介します。...

それでは、ミスマッチの種類について事例を含めて解説していきます。

1:社風や働き方のミスマッチ

社風や働き方のミスマッチとは、企業の文化やスタイル、勤務体系などが社員の期待や意向と合わないような状態を指します。

具体的な事例は、以下のとおりです。

【事例】

  • 自由度のある風土を求める社員が、厳格なルールや規制がある環境で仕事をして、ストレスを感じる。
  • 柔軟性のある労働時間のもとで働きたいが、企業から長時間労働を要求され、仕事とプライベートの両立が難しくなる。

社風や働き方のミスマッチは、社員の定着率や生産性に大きな影響を及ぼす場合があります。

企業と社員が同じ価値観を持って、互いにサポートし合いながら業務を進めることが重要です。

2:職務・業務内容のミスマッチ

職務や業務内容のミスマッチとは「社員がやりたいと思う仕事内容」「企業から与えられた業務」とが一致しないような状態を指します。

具体的な事例は、以下のとおりです。

【事例】

  • チーム内の役割を決めず人員配置して、社員が自身の役割や業務内容を把握・認識できず、想像とは違った業務をすることになった。
  • ある社員が多くの業務を抱えていたが、他の社員は比較的少ない業務しか担当しておらず、業務内容の配分に不満を感じた。

マンパワーグループ株式会社の「入社前後のギャップ」に関する調査によると、仕事内容にギャップを感じた方がもっとも多い結果となりました。

ミスマッチ_仕事内容_ギャップ

出典:「入社前後のギャップ」についての調査|マンパワーグループ株式会社

社員のニーズや意見を聞き取ったうえで、キャリア開発を考慮した業務内容にすることで、社員はやりがいを持って仕事に取り組んでくれます。

3:労働条件や待遇面のミスマッチ

労働条件や待遇面のミスマッチとは、企業が定めている休日制度や給与体系が、社員の期待や要望と合わないような状態を指します。

具体的な事例は、以下のとおりです。

【事例】

  • 同じ業務内容を担当する社員同士で給与の違いが判明し、公平性への不満やモチベーションが低下する。
  • 長期休暇を取る予定だったが、その時期は休暇取得に制約があることを知り、休息やプライベートの計画ができなかった。

このようなミスマッチを防ぐために、自社の労働環境をありのままに伝え、社員個人の生活環境にも配慮することが大切です。

4:職場の人間関係のミスマッチ

職場の人間関係のミスマッチとは、社員同士や上司とのコミュニケーションが円滑ではないような状態を指します。

具体的な事例は、以下のとおりです。

【事例】

  • 社員が積極的にコミュニケーションをするが、上司が閉鎖的な態度をとっており、スムーズな情報共有ができない。
  • 社員同士の連携がうまく機能せず、業務内容の重複や責任の逃れが発生し、お互いに信頼できない関係になってしまった。

社員のコミュニケーションスキルの育成や、個人の性格を評価・分析した人員配置にすることで、スムーズな業務遂行と良好な人間関係の構築ができます。

5:適性やスキルのミスマッチ

適性やスキルのミスマッチとは、社員の適性やスキルが企業の求めているレベルに達しておらず、仕事や役割と合わないような状態を指します。

具体的な事例は、以下のとおりです。

【事例】

  • 技術的な知識やソフトウェアの操作スキルを求められる仕事であったが、社員が必要なスキルを持っておらず、仕事ができなかった。
  • プロジェクトの管理経験やリーダー的なスキルがなかったため、プロジェクトを統括する仕事に適さなかった。

人材を採用するプロセスにおいては、適性検査を行って「自社の仕事に適しているか」を評価することで、適性やスキルのミスマッチが防げます。

採用ミスマッチで生じる採用のデメリット

ミスマッチ_デメリット

企業と社員にミスマッチがあると、以下のようなデメリットが発生します。

ミスマッチが生じると、社員の満足度やモチベーションが低下し、早期離職するリスクが高まるため、あらかじめデメリットについて把握しておきましょう。

以下より、ミスマッチで生じるデメリットを詳しく解説していきます。

早期離職する社員が増える可能性がある

企業と社員との間にミスマッチが生じると、早期に離職してしまう社員が増える可能性があります。

その理由は、企業の現実と社員がイメージしている価値観にギャップが生じることで、不満やストレスが蓄積して働きやすさや社員の満足度が低下するからです。

厚生労働省の調査によると、大学を卒業して就職した方の約3割が、3年以内に離職していることがわかり、平成31年の調査以前からほぼ変わらない水準です。

ミスマッチ_大学卒_離職率

出典:新規学卒者就職率と3年以内離職率|厚生労働省

また、社員の意見や要望を伝える機会が少なかったり、労働環境が改善されなかったりすると、離職する原因になります。

企業は社員に対して真摯な姿勢で耳を傾け、適切なフィードバックや環境改善をすることが必要です。早期離職の対策については、以下の記事で詳細をご覧ください。

早期離職_理由_原因
早期離職する7つの理由と具体的な対策方法|改善した企業事例も紹介入社後3年以内に会社を離れる早期離職の理由は、仕事内容や人間関係とのミスマッチがあります。早期離職により採用コストの損失や組織運営に悪影響を及ぼします。本記事では対策方法と企業事例を解説しています。...

社員を採用・育成したコストが損失になる

ミスマッチが生じて離職する社員が増えることで、採用や育成にかかったコストが損失になる場合があります。

損失になる具体的な内容は、以下のようなものです。

  • 求人広告の費用
  • 面接・選考手続きの人件費
  • 研修・教育の準備費用

エン・ジャパン株式会社の調査によると、社員一人が入社して3ヵ月後に離職した場合、約187.5万円の損失が出ると試算しています。
参考:なぜ人は辞めるのか? 退職を科学する|エン・ジャパン株式会社

また、採用や育成にかかったコストは費用面だけではなく、準備や実施にかかる時間的なコストも含まれます。

採用時に適性検査や面接を充実させることで、社員の早期離職を防ぎ、結果的に採用や育成に投じたコストは損失になりません。

社員のモチベーションが低下する

ミスマッチが続いてしまうと、社員のモチベーションが下がり、組織全体の生産性も低下してしまいます。

適性やスキルが合わない仕事に取り組んでいる状態では、業務への意欲が低下し、社員のやる気や情熱も失われてしまうでしょう。

また、社員個人のモチベーションの低下は、他の社員にも波及し、チームの連携やコミュニケーションにも悪影響が出てきます。

企業は社員の適性にあった役割や人員配置をして、社員のモチベーション向上に取り組むことが大切です。モチベーション向上については、以下の記事で詳細を解説しています。合わせてご覧ください。

採用ミスマッチが発生する3つの原因

ミスマッチ_発生_原因

ミスマッチが生じる主な原因は、以下の3つが挙げられます。

ミスマッチの原因を理解し、適性やスキルにもとづく採用や適切な人材マネジメントを行うことで、社員の定着率やパフォーマンスの向上につながります。

以下より、ミスマッチが発生する原因を解説していきます。

原因1:経歴や面接の印象だけで採用してしまう

候補者の採用時に、以下のように経歴や面接だけで判断してしまうと、ミスマッチが生じる原因になります。

  • 書類選考における経歴や学歴
  • 面接選考での対応や印象

経歴や面接だけでは、候補者の適性やスキルなどを完全に把握することが困難であるため、採用後に実際の業務に合わないミスマッチが発生します。

採用プロセスを正確かつ客観的に行い、適性や社風にマッチした人材を採用することが重要であり、採用後のモチベーション維持・向上にもつながるでしょう。

原因2:上司や同僚との性格の違いを把握していない

上司や同僚との性格の違いが明確ではないまま人員配置をしてしまうと、コミュニケーションがスムーズに行えず、人間関係のミスマッチが発生します。

性格の違いが大きい場合、チーム内の連携ミスや人間関係に摩擦が生じることもあります。

両者の意見が合わなかったり、相互理解が不足したりすることによって、チームのパフォーマンスにも悪影響が出て、生産性も低下してしまうでしょう。

社員一人ひとりの性格を把握して、円滑なコミュニケーションが取れるように人員配置することが大切です。

原因3:業務内容や労働環境のサポートがされていない

業務内容が明確ではなかったり、労働環境に対する現状把握をしていなかったりすると、社員が感じている不満や要望に気づけません。

組織や社員の状態が把握できていない場合、ミスマッチが生じていることも認識できず、企業と社員との関係性が悪化した状態のままです。

企業は業務の伝達を明確に行い、快適な労働環境を提供することで、社員とのミスマッチを防ぎ、生産性や定着率の向上につながります。

採用ミスマッチを防止するための3つの対策

ミスマッチ_防止_対策

ミスマッチを防止するためには、以下の3つの対策が有効です。

採用プロセスに適性検査を導入することや、サーベイで社員の状態を把握することで、ミスマッチが起こる前に対策できます。

以下より、ミスマッチを防ぐための対策について解説していきます。

対策1:採用時に適性検査を実施する

候補者を採用する際は、経歴や面接の印象だけで判断するのではなく、適性検査を実施して自社の業務や働き方への適性を評価しましょう。

適性検査は、候補者の基礎的な能力や人間性を把握するためのもので「企業の求める人物像とマッチするか」「業務の適性があるか」などを見極められます。

「能力検査」と「性格検査」の2種類から構成されており、主な検査内容は以下のとおりです。

種類検査内容
能力検査基礎学力や一般常識を測定
性格検査人間性や価値観のパーソナリティを測定

適性検査について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

適性検査__比較_おすすめ
【2024年版】適性検査を比較!おすすめ24種類一覧の特徴・費用・選び方適性検査の種類を比較し、おすすめのサービスを一覧で解説しています。適性検査を導入するメリット・費用・選び方を参考にしてください。...

候補者の能力や適性を数値化して客観的に評価できる点も、ミスマッチを防ぐために適性検査を実施するメリットの一つです。

対策2:性格の類似点を把握して人員配置する

人間関係によるミスマッチを防ぐ方法は、上司や同僚との性格の類似点を把握して、性格傾向が近くなるような人員配置をすることです。

性格が似たタイプや類似点が多い人同士を同じチームに配置することで、コミュニケーションや相互理解がしやすい環境となり、業務のパフォーマンスが向上します。

一般的に、社員の性格を把握する方法として、性格診断や適性検査が用いられます。

適性検査ツールの一つである『ミキワメ』では、社員が性格検査を受検した結果から「16個の人物タイプ」に分類し、性格傾向の近い社員がいるチームへの人員配置が可能です。

ミキワメ_16個_人物タイプ

『ミキワメ 適性検査』について詳しく知りたい人事担当の方は、以下の記事を確認してみてください。

ミキワメ_概要_解説
『ミキワメ 適性検査』の概要は?人材分析に特化した3つの特徴を解説適性検査『ミキワメ』は「活躍できる人材を見極める」ことに特化した適性検査です。自社の社風を分析し採用基準を策定可能です。ミキワメを導入する手順も解説していますので、自社への導入を検討してみてください。...

人間関係のミスマッチを防ぎ、社員のモチベーションを向上させるため、性格の類似点を把握できる適性検査の活用をおすすめします。

人員配置の相性とバランス

人と組織や仕事がフィットするかどうかについての研究は、Person-Organization Fit(POF:人ー組織適合)などの用語をめぐり、様々な研究が行われています。

「相性が良い」ことには、「似ている」と「噛み合う」の大きく2つの方向性があります。前者は属性や価値観の類似から相性を測るものであり、後者はお互いのニーズが合致するという観点で相性を見ます

性格が似ている人同士は、初対面での親近感や信頼感が高まりやすいとする研究などもあります。価値観や考え方が近いほうが、最初の印象がポジティブになりやすく、「この人に話を聴いてもらいたい」「この人と一緒に働きたい」という思いを抱きやすいことが想定されるのです。

似たような人ばかりを同じチームに集めると、一体感やスピード感を高めやすいですが、一方でチーム全体の価値観が偏ってしまい、健全な議論が起きづらくなったり、創造性が低下したりするリスクもあります。

チームメンバーとの相性だけではなく、仕事内容との相性なども総合的に加味しながら、より適切な人員配置を考えることが推奨されます。

解説:組織心理研究所所長 臨床心理士・公認心理師 佐藤 映

対策3:サーベイを実施して社員の意見を聞き取る

業務内容や労働環境に対するサポートを強化するために、サーベイを実施して社員の意見や抱えている不満を聞き取ることが大切です。

サーベイとは社員の満足度や組織状況を把握する調査の総称のことで、労働環境や待遇面などの改善に向けた調査ができます。

サーベイについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

サーベイ_種類_メリット_デメリット
サーベイの意味とは?10種類の解説と導入メリット・注意点を徹底調査!サーベイとは、社員の満足度や組織への信頼度を把握するための調査です。調査結果を分析し改善することで社員の満足度が向上します。本記事では10のサーベイ種類と導入するメリットを詳しく解説しています。...

サーベイツールの『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』では、ストレスやメンタル状態などのスコア変化を察知して、ケアの優先度を決めて社員をサポートできます。

ウェルビーイング_状態_推移

社員の意見集約のためにサーベイを実施することで、社員自身が「自分の声を聞いてサポートしてくれている」と実感できます。

その結果、社員のモチベーションが向上して、働きやすさや満足度が高まり、ミスマッチが原因となる離職の防止につながるでしょう。

まとめ:採用ミスマッチを防止して生産性を向上させよう

ミスマッチ_防止_生産性_向上

今回の記事では、「ミスマッチの意味・種類・デメリット」について解説しました。

ミスマッチが発生する原因と対策について、以下の表でもう一度確認しておきましょう。

ミスマッチの原因ミスマッチを防ぐ対策
経歴や面接の印象だけで採用してしまう採用時に適性検査を実施する
上司や同僚との性格の違いを把握していない性格の類似点を把握して人員配置する
業務内容や労働環境のサポートがされていないサーベイを実施して社員の意見を聞き取る

企業内のミスマッチを完全に取り除くことは困難ですが、採用時に適性検査を活用することや、社員の性格傾向を考慮した人員配置にすることで、ミスマッチを予防できます。

社員の意見や組織の状態の把握にサーベイを活用することも、ミスマッチの予防や組織改善に有効な手段と言えるでしょう。

自社に起きているミスマッチの原因と対策を検討し、組織の生産性を向上させるために、人事担当の方は、本記事を参考にしてみてください。

ABOUT ME
佐藤 透
大学卒業後、複数のIT企業で勤務。BtoB・BtoCのSEO領域に注力し、近年はオウンドメディアの「立ち上げ・戦略・集客設計」を推進。HR領域や新しい働き方のトレンドに興味を持ち、リーディングマークに従事。

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