カルチャーフィット(カルチャーマッチ)とは、企業の組織風土や文化に人材が適合することを指します。カルチャーフィットした人材を採用すると、採用後のミスマッチを防げるため、定着率が上がることが期待できます。
組織カルチャーには、言語化しやすいルールの他に、価値観や人間関係といった抽象的要素も含まれるため、明確な定義づけが大切です。
本記事では、カルチャーフィットとは何か、採用時に見極める方法や事例を解説します。組織カルチャーの定義づけについても紹介しているので、カルチャーフィットを人事採用に取り入れたい方は参考にしてみてください。
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)とは?
カルチャーフィットとは、カルチャーマッチとも呼ばれ、企業の組織風土や文化(組織カルチャー)に人材が適合することです。
組織カルチャーとして、下記のような例が挙げられます。
- 社員の挑戦を重視する創造的なカルチャー
- 社員一人ひとりの成果を追い求める結果重視のカルチャー
- 社員同士の協力を大切にする調和的カルチャー
- 社内の規律を重んじる秩序のあるカルチャー
組織カルチャーを構成する要素は、明文化されている企業理念やルール、社員の行動や人間関係、価値観などがあります。
組織カルチャーの要素と人材がもともと持っている理念や行動指針が合致すると、カルチャーフィットしやすいです。
こうした人材は企業に定着しやすいことから、早期離職の防止や組織の生産性の向上も期待できます。
スキルフィットとの違い
スキルフィットは、人材の持つスキルが業務や職務に適合することを指すため、カルチャーフィットと意味が異なります。
スキルフィットは大切な考え方ですが、スキルフィット中心の人材採用や配置は、コミュニケーションや連携において支障が出る恐れがあります。
そのため、人材採用では、スキルフィットだけでなくカルチャーフィットの観点を持つことが重要です。
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)が注目される理由
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)が注目される理由には、下記のように企業側と労働者側の2つの観点があります。
企業側の理由 | 労働者側の理由 |
---|---|
・少子高齢化により生産年齢人口が減っていく中で、優秀な人材を自社に留めておきたい ・採用後のミスマッチを防ぎ、早期離職を減らしたい | 自分に合った職場でストレスなく働きたい |
日本では、少子高齢化によって、労働に従事する世代である15歳以上64歳以下の「生産年齢人口」の減少が進んでいます。
予測では、2050年には日本の総人口が約1億人になり、生産年齢人口比率は今よりもさらに低下する見込みです。(※)
※ 参考:人材マネジメントの在り方に関する課題 P6|経産省産業政策局 産業人材制作
労働者については、日本労働組合総連合会の「コロナ禍における職業生活のストレスに関する調査2022」から、次の2つがわかっています。
- 労働者の約74%は仕事にストレスを感じており、その大きな原因が「職場の人間関係」である
- 働くうえでのストレスをなくすために希望する施策については、「適正な人員配置・組織体制などの見直し」が約39%ともっとも大きな割合を占めている
「職場の人間関係」と「人員配置・組織体制」は、組織カルチャーの要素です。つまり、仕事にストレスを感じている人は、カルチャーフィットしていない可能性が高いといえます。
カルチャーフィットした人材の採用によって企業は課題を解消し、労働者もストレスなく働けるようになるため、双方のニーズを満たすことが可能です。
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)するメリット3つ
人材がカルチャーフィット(カルチャーマッチ)には、次の3つのメリットがあります。
それぞれを具体的に解説します。
1:採用時のミスマッチを低減できる
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)を採用基準の1つとして取り入れることで、採用時のミスマッチを削減できます。
ただし実現のためには、下記のような事前準備と適切な運用が必要です。
採用基準が組織カルチャーの観点だけに偏らないようバランスを保つことが大切です。手間はかかりますが、うまくいくと人材採用や育成にかかるコスト削減や生産性アップなどの効果を見込めるため、注力する価値があります。
下記の記事で、採用時のミスマッチがもたらすデメリットと発生原因について解説しているので、採用後のミスマッチが気になる方は参考にしてみてください。
2:早期離職を予防できる
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)した人材を採用できると、「組織カルチャーが自分に合わない」という理由で早期離職する人材が減ります。
また、自分の能力や特性を発揮しやすいため、モチベーションを維持しながら働くことが可能です。定着率が上がることで、人材採用や育成にかかるコストを削減できます。
下記の記事では、早期離職の対策方法と早期離職を防ぐために活用できる「ストレス耐性の計測方法」を紹介しています。合わせて参考にしてみてください。
3:社内コミュニケーションが円滑になる
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)した人材は、もともと持っている価値観や行動指針が企業と近い傾向にあります。はじめから向いている方向が同じなので、人間関係における摩擦やトラブルが起きにくくなります。
日本労働組合総連合会の「コロナ禍における職業生活のストレスに関する調査2022」にもあるように、労働者が仕事にストレスを感じる原因の第1位は「職場の人間関係」です。
カルチャーフィットした人材を採用することで、コミュニケーションが円滑になり、人間関係によるストレス軽減にもつながります。
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)しないデメリット
以下は、人材がカルチャーフィット(カルチャーマッチ)しないことによるデメリットです。
- 居心地の悪さから安心して働けず、定着しない
- 社員のエンゲージメントとともにモチベーションが低下する
- 組織連携やコミュニケーションがうまくいかない
カルチャーフィットしない人材が増えると、組織内のトラブルが頻発し、全体の生産性や業績に悪影響を与えることがあります。
たとえば新しいプロジェクトや取り組みを開始する際、価値観の不一致が障壁となり進行の妨げとなる恐れがあります。
採用時点で応募者が自社にカルチャーフィットした人材かどうかを見極められると、こうしたデメリットを解消できるでしょう。
社員のエンゲージメントやモチベーションを向上させる方法は、以下の記事で詳細を解説しています。詳しく知りたい方はご覧になってみてください。
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)を目指した採用の準備
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)の観点を人材採用に取り入れるためには、次の3つの準備が必要です。
一つひとつ準備を整えて、カルチャーフィットした人材の採用を心がけましょう。
1:自社の組織カルチャーを定義する
まずは、自社の組織カルチャーを言語化し、明確に定義づけします。
たとえば、アメリカの大手通販サイトAmazonは、「全員がリーダー」というキャッチフレーズと14項目の「Our Leadership Principles(OLP)」という行動理念を掲げています。リーダーである社員は、どう考え、どう行動するべきかを明文化しているわけです。
これを防ぐためには、既存社員に対して適性検査を行い、定量データを収集および分析するのも良いでしょう。
活用する適性検査は、一般的な性格傾向を把握するだけでなく、収集したデータと採用応募者のデータを照らし合わせる機能を有していると便利です。
弊社、株式会社リーディングマークが提供するミキワメなら、既存社員のデータから組織カルチャーを分析し、採用基準を策定できます。ミキワメの扱いに長けたカスタマーサクセスチームがサポートいたしますので、ぜひ一度お問い合わせください。
2:カルチャーフィットを含めて採用基準を策定する
次は、カルチャーフィット(カルチャーマッチ)の観点も含めて採用基準を策定します。採用基準は、既存社員の傾向(組織カルチャー)を反映させながら「理想の応募者像」をつくり上げます。
適性検査の定量データにもとづいて組織カルチャーを分析し、採用基準を策定するなど、客観的な視点で進めましょう。
採用基準の策定方法については、下記の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
3:社内外に組織カルチャーを周知する
最後に、採用基準と共に組織カルチャーを社内外へ周知します。これにより、応募前に応募者自身がカルチャーフィット(カルチャーマッチ)性を確認できるので、採用後のミスマッチの削減が可能です。
先ほど紹介したAmazonも、自社サイトの採用情報ページに16項目のOLPを掲載しており、応募前にチェック可能です。
社内にも周知することで、既存社員が組織カルチャーを再認識し、さらなる統制が取れるようになるでしょう。
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)性を見極める4つの方法
人材採用で応募者のカルチャーフィット(カルチャーマッチ)性を見極める方法は、主に次の4つです。
自社に合った方法を複数取り入れて、自社にカルチャーフィットした人材を見つけましょう。
1:インターンで直接交流する【新卒採用向け】
新卒採用に向けてカルチャーフィット(カルチャーマッチ)性を見たいときは、インターンで直接関与しつつ判断する方法があります。
組織カルチャーの定義と採用基準を社内で共有しておくと、すべての社員がインターン生のカルチャーフィット性の有無を判断できます。
評価が担当者の主観に偏りすぎないよう、複数名でチェックすると効果的です。
2:リファレンスチェックで情報を得る【中途採用向け】
リファレンスチェックで得た情報を分析すると、面接前にカルチャーフィット性を見極められます。リファレンスチェックとは、第三者に応募者の情報を尋ねる情報収集の方法です。
ただし情報提供者の主観が入る可能性もあるため、リファレンスチェックのみに頼らず、適性検査や面接の結果も踏まえて採用の可否を決定しましょう。
関連記事:なぜ適性検査は転職・中途採用時に使われる?導入する3つの目的と検査の種類を紹介
3:カルチャーフィット(カルチャーマッチ)診断を行う
応募者に対してカルチャーフィット(カルチャーマッチ)診断を実施することで、定量データから客観的にカルチャーフィット性を見極めることが可能です。
採用活動でよく利用される適性検査の中には、カルチャーフィット診断に適しているものがあります。事前に既存社員にも実施しておくと、組織カルチャーの定義づけに役立ちます。
自社の社風を分析し、採用基準の策定に活用できる適性検査『ミキワメ』は、カルチャーフィット診断に最適です。詳しい検査内容は、下記の記事で解説しているので、合わせてご覧ください。
4:面接でカルチャーフィットに関する質問を設定する
面接でカルチャーフィット(カルチャーマッチ)に関する質問を設定することで、応募者のカルチャーフィット性を見極められます。
カルチャーフィット性を見極めるための質問例は、次の通りです。
見極めたいカルチャーフィット性 | 質問例 |
---|---|
社員の挑戦を重視する創造的な風土 | 「これまでの経験の中で、一番の挑戦はなんですか?」 |
社員同士の協力を大切にする調和的風土 | 「これまでで、もっともチームワークを発揮した経験についてお聞かせください」 |
質問の作成は、リファレンスチェックで得た情報や適性検査の結果などを踏まえたうえで進めると効率的です。
適性検査の結果を活用する方法は、以下の記事で詳細をご覧ください。
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)診断に活用できる適性検査
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)診断に活用できる適性検査には、下記があります。
適性検査 | 概要 |
---|---|
ミキワメ | ・株式会社リーディングマークが提供 ・性格検査、ストレスマネジメント特性検査、能力検査、自社のハイパフォーマーとの適性度分析といった幅広い分析に対応 |
SPI | ・株式会社リクルートマネジメントソリューションズが提供・性格検査と基礎能力検査に対応 |
GAB | ・日本エス・エイチ・エル株式会社が提供 ・知的能力、パーソナリティ、職務適性、将来のマネジメント適性がわかる |
玉手箱Ⅲ | ・日本エス・エイチ・エル株式会社が提供 ・知的能力と性格検査に対応 |
V-CAT | ・株式会社日本能率協会マネジメントセンターが提供 ・ストレス耐性や持ち味といった性格検査に特化 |
適性検査ごとに特色が異なるので、自社に合ったものを選ぶことが大切です。
下記の記事では、「新卒採用・中途採用・中小企業」それぞれの適性検査選びを解説しています。参考にしてみてください。
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)の導入成功事例
人材採用にカルチャーフィット(カルチャーマッチ)の観点を導入し、成功した事例を3つ紹介します。
自社の採用活動をブラッシュアップする際の、参考にしてみてください。
最終面接でカルチャーフィットを見極める|ココナラ株式会社
個人のスキルを売買できるマーケット「ココナラ」を展開するココナラ株式会社は、ヒアリングをもとにカルチャーフィットを見極めています。
人生のターニングポイントにおいて、応募者がどのような価値基準で選択してきたかをヒアリングすることで、自社の社風に合っているか判断可能です。
組織カルチャーを明記したカルチャーブックは、既存社員の道標として活用されています。これを応募者にも共有し、事前に組織カルチャーを擦り合わせることで、入社後のミスマッチを防ぐことに成功しています。
参考:ココナラが語る、組織が急成長してもぶれないカルチャーを築く方法|共感採用はなぜ必要か vol.01【Event Report】
現場従業員にインタビューする|ブラックライン株式会社
経理業務変革プラットフォームを提供するブラックライン株式会社は、現場の従業員によるインタビューを活用してカルチャーフィット性を判断しています。現場の従業員が応募者と「一緒に働きたいか」を1つの基準としているのが特徴です。
明確化された組織カルチャーである「コアバリュー」は、従業員と協力して作成されました。こうした協調的な風土を大切にするためには、カルチャーフィットした人材を採用することが重要です。
参考:コアバリューで一枚岩の組織を従業員主体でつくり、「働きがい認定企業」で採用ブランディングを加速
ミキワメでカルチャーフィットを数値化する|ファビー株式会社
グルメサイトfavyを展開する株式会社favyは、ミキワメによってカルチャーフィットを数値化することで、採用時にカルチャーフィットした人材を見抜けるようになりました。
ミキワメの導入前までは、担当者の感覚で採用の可否を判断する傾向にあり、既存の組織カルチャーが変わってしまうリスクを感じていました。
ミキワメを導入したことで、客観的な視点からカルチャーフィット性の有無を判断できるようになったわけです。これにより、採用のミスマッチの削減につながりました。
参考:感覚だったカルチャーフィットを数値で判断。自社に合う人材を可視化するfavyの新しい採用のカタチ
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)切りによる不採用は要注意
「カルチャーフィット(カルチャーマッチ)切り」とは、カルチャーフィットを重視するあまり、採用時点でカルチャーフィットしない人材を不採用にすることです。
カルチャーフィット切りによって、採用後のミスマッチを防げるように思いますが、下記の問題が起きる可能性もあります。
- 似たような意見ばかりになり、創造性が損なわれる可能性がある
- 慣れ合いや同調が生じやすくなり、規律や秩序が乱れる
こうした問題の発生を防ぐためには、バランスのよい人材採用や育成が必要です。カルチャーフィットは、あくまで採用基準の観点の1つと捉えるようにしましょう。
まとめ:カルチャーフィット(カルチャーマッチ)した採用には適性検査を活用しよう
カルチャーフィット(カルチャーマッチ)とは、組織の風土や文化などの組織カルチャーに人材が適合することを指します。
カルチャーフィットに重点を置いた採用は、採用後のミスマッチを防ぐことが期待され、そのため多くの注目を受けています。
ただし、組織カルチャーを形成する要素は、明文化されたルールだけでなく、価値観や人間関係なども含まれるため抽象的です。そのため、まずは組織カルチャーを言語化し、定義づけることが大切です。
何もデータがない状態で組織カルチャーを定義づけようとしても、採用したい人材の願望が入り、本来の目的から逸れてしまう恐れがあります。
そこで、既存社員に対して適性検査を実施し、定量データを収集および分析することで、客観的な定義づけが可能です。
ミキワメなら、既存社員のデータを分析し、組織カルチャーを可視化できます。さらに、応募者のデータを照らし合わせることで、カルチャーフィットしているかを判断することも可能です。
まずは無料で体験いただき、検査内容を確認してみてください。
ミキワメは、候補者が活躍できる人材かどうかを500円で見極める適性検査です。
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