- 組織づくりの基本原則と具体的な進め方
- 組織づくりで重視すべき点と企業の取り組み事例
- 組織拡大に伴って求められる施策【30人・50人・100人の壁】
「強い組織をつくるにはどのように進めればよいのか」
「組織全体が同じ方向を向いて業務に取り組めるようにしたい」
組織の拡大とともに、社内制度の整備や社員のマネジメント強化など、さまざまな課題に直面する人事担当者の方もいるのではないでしょうか。
風通しのよい組織文化を構築し、社員同士の結束力を高めるためには、段階を踏みながら組織づくりに取り組まなければなりません。
本記事では、組織づくりの基本原則や具体的な進め方、企業の取り組み事例について詳しく解説します。
組織拡大に伴う取り組みや注意点にも触れていますので、組織の安定的かつスムーズな運営に向けて参考にしてみてください。
組織づくりとは?
組織づくりとは、企業理念やビジョンにもとづいて組織構造・文化を構築し、人材(資源)が効果的に機能する状態をつくり出すプロセスのことです。
人員配置や業務分担などの基本的な組織運営に加えて、社員全員が同じ目的に向かって働き続けられる環境をつくることが、組織づくりの基本です。
組織づくりの主な取り組みとして、以下が挙げられます。
- 組織風土の構築と浸透
- 指揮命令系統の明確化
- 社員の強みを活かせるチーム編成
- 働きやすい職場環境の整備
- 人事や会計などのシステム導入
社員一人ひとりのやる気を引き出し、目標達成に向けて働ける環境を整えるためにも、企業は組織づくりに注力しなければなりません。
組織づくりの目的
組織づくりの主な目的は、全社員が同じ方向性を持って仕事に取り組み、組織のなかで成長し続けられる環境・体制を整えることです。
目的を細分化すると、以下のような点も挙げられます。
- 社員の役割や責任範囲を明確化し、円滑な業務遂行を図る
- 部署間や社員間の連携を強化し、組織全体のパフォーマンスを向上させる
組織づくりにおいては、社員が心身ともに健康で幸福感を得られるような環境にすることが、結果的に企業の成長や業績向上につながるのです。
以下の記事には、企業の生産性を高めるための組織づくりについて、グローバル企業の代表者による講演をまとめています。幸福を実現する「ウェルビーイング」の考え方を取り入れた組織づくりを紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
強い組織・よい組織とは?
「強い組織」や「よい組織」とは、すべての社員が企業理念・ビジョンを理解し、目標達成に向けて一人ひとりが主体的に行動している組織です。
職場環境に目を向けると、部門や役職に関係なく円滑なコミュニケーションが行われ、組織全体が一体となって課題解決に取り組んでいる状態と言えます。
強い組織に成長させるには、経営者メッセージや組織文化を共有する場を設けたり、社員個々の強みを活かした人員配置をしたりする施策が必要です。
全社員が共通の目標に向かって協力する環境を構築できれば、社員一人ひとりが仕事への責任感と高いモチベーションを持って行動するようになります。
組織づくりにおける5つの基本原則
組織づくりの基本原則には、以下の5つがあります。
基本原則 | 概要 |
専門化の原則 | 専門分野のスキルアップと生産性向上のために分業化する取り組み |
権限責任一致の原則 | 与えた権限と責任の重さに差が生じないように、権限と責任範囲を明確にする取り組み |
統制範囲の原則 | 管理者が統制(管理)できる範囲の人数をコントロールする考え方 |
命令統一性の原則 | 複数の担当者から異なる指示を受けないように、指示・命令を出す担当者を統一する方法 |
権限委譲の原則 | 上司が自分の仕事を部下に与えて、権限の一部を委ねる方法 |
これらの原則を理解し実践することで、組織づくりがスムーズに進み、企業の成長を加速させる土台を整えられます。
以下より、各原則を一つずつ解説していきます。
専門化の原則
専門化の原則とは、社員の専門分野におけるスキルアップと生産性向上のために「分業化」する施策のことです。
人事部門を具体例として挙げると、採用・労務・社内研修の業務を「誰でも対応可能」とする体制ではなく、それぞれの業務に専門の担当者をつけるといったイメージです。
部門内の全社員が同じ業務を行うと、能力・スキルの差によって業務の成果にバラツキが生じたり、効率が低下したりする場合があります。
そのため、個々の能力・スキルを活かせる業務を分け与えることで、それぞれが各業務への専門性と効率性を高められるのです。
権限責任一致の原則
権限責任一致の原則とは、職務に見合った権限と責任範囲を明確にし、社員に与えた権限と責任の重さに差が生じないようにする方法です。
たとえば採用業務において、担当者に面接進行や候補者評価の権限を与えた場合、採用目標が達成できなかったとしても、その責任を負わせるのは避けるべきです。
与えた権限に対して責任が重すぎると、業務に取り組む前からモチベーションが低下し、スムーズな組織運営が困難になります。
その一方で責任が軽すぎると、まじめに業務に取り組まなかったり、手抜きが生まれたりするため、権限と責任のつり合いがとれるように検討が必要です。
統制範囲の原則
統制範囲の原則とは「一人の管理者が統制(管理)できる範囲・人数」をコントロールする考え方のことで、スパン・オブ・コントロールとも呼ばれています。
一般的に管理できる人数は5〜8人と言われており、管理する人数が多すぎると以下のようなデメリットが生じます。
- 管理者の負担が増えて細かな指導ができない
- 孤立する社員が出てしまう
- 社員のキャリアアップや能力開発が進まない
業務内容や職場環境によって管理可能な人数が異なるため、スムーズに組織運営できる人数を見極めなければなりません。
命令統一性の原則
命令統一性の原則とは、一人の社員が複数の担当者から異なる指示を受けないよう、指示・命令を出す担当者を統一する考え方のことです。
複数のチームで業務を行う場合、各チームのトップが指示を出すと混乱や業務の重複が発生するため、指示者を統一して迅速かつ正確な指示が伝わるようにします。
たとえば、人材育成に携わっている担当者が、マネージャーから「リーダー層を増やすための研修を強化しよう」と指示されたとします。
一方で人事部長からは「現場ですぐ使えるスキルアップ研修を優先しよう」と要望された場合、両者の指示のすり合わせや検討が必要となり、円滑な業務遂行ができません。
指示者が統一されることで、意見の食い違いや混乱を防ぎ、組織全体のパフォーマンス向上につながるのです。
権限委譲の原則
権限委譲の原則とは、上司が自分の仕事を部下に与えて、権限の一部を委ねる方法です。
部下は自分の判断で業務を進められることで、責任感や自主性などスキルを身につけつつ、意思決定スピードの向上が図れます。
たとえば、人事部門の担当者が、社員の評価やフィードバックの権限を与えられた場合、各部署の評価者(社員の上司)と協力しながら評価内容を精査できます。
管理職に承認を得なくても評価内容を確定できるため、社員へのスムーズなフィードバックが可能です。
権限委譲についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。権限委譲の意味や実施時のポイント、企業の成功事例を解説しています。
組織づくりの進め方3ステップ
組織づくりを進めるときは、以下の3ステップを実践してみましょう。
職場環境や働く人の変化によって組織構造は変わっていくため、常に状況を把握しながら組織づくりを継続していく必要があります。
以下より、各ステップを詳しく解説していきます。
1:組織文化の明確化・構築
組織づくりの第一ステップとして、企業が大切にする価値観や行動基準を定め、指針として社員に共有しましょう。
指針を通して組織文化が浸透すれば、社員は企業の目標やビジョンに共感し、組織に関わるすべての人が同じ方向性を持って行動します。
ただし、指針だけでは最前線で働く社員に届かない可能性があるため、社内研修やワークショップを開催し、社員同士で議論する場を設けなければなりません。
組織文化に対する共通認識を持つことが「組織づくり」の土台となり、社員同士の絆を強め、一体感の醸成につながるのです。
2:組織構造の形成
次のステップは、事業内容や目的に応じた「組織構造の設計・形成」です。
組織構造の形成によって、各部署・チームの役割や指揮命令系統が明確になり、情報伝達や意思決定がスムーズに進行します。
代表的な組織構造の形態として、以下の3つが挙げられます。
組織の拡大や業務の複雑化に応じて組織構造を見直し、より効率的な組織運営ができるように検討し続ける必要があります。
構造1:機能別組織
機能別組織は、業務内容や機能に応じて、部門・チームに分けて人員配置する組織構造です。
たとえば、製造業の企業においては、以下のような組織構造が考えられます。
部門 | 業務内容 |
研究・開発部門 | 製品開発のための調査・研究・設計 |
製造部門 | 製品の生産・検査・出荷 |
マーケティング部門 | 市場動向の調査・分析、販売戦略の検討 |
営業部門 | 顧客への営業・製品販売 |
機能別組織は、各部門・チームの業務内容が明確に分かれており、専門性を高めやすく業務効率も向上します。
一方で、各部門の意見の食い違いによって、業務が停滞する可能性もあるため、定期的な部門間会議を通して連携強化を図らなければなりません。
構造2:事業部制組織
事業部制組織は、複数の事業を展開するときに、それぞれの事業で独立した部門を設ける組織構造です。
具体的には、以下のような形態を指します。
事業 | 事業部 | 部門 |
〇〇 | 〇〇事業部 | 研究・開発部門 |
製造部門 | ||
営業部門 | ||
△△ | △△事業部 | 研究・開発部門 |
製造部門 | ||
営業部門 | ||
◇◇ | ◇◇事業部 | 研究・開発部門 |
製造部門 | ||
営業部門 |
事業部制組織は、各事業部が独自の目標・戦略を持ち自立的な運営ができるため、迅速な意思決定ができます。
一方で、経営層による確認が行われず、方針から逸れる可能性もあるため、各事業部が企業のビジョンを確認しながら事業を進めなければなりません。
構造3:チーム型組織
チーム型組織は、プロジェクトや目的ごとにチームを編成する組織構造であり、具体的な形態は以下のとおりです。
統括 | チーム | 人員配置 |
事業統括チーム | 〇〇チーム | リーダー |
メンバー | ||
△△チーム | リーダー | |
メンバー | ||
◇◇チーム | リーダー | |
メンバー |
チーム型組織は、プロジェクトごとに専門チームを設けることで、多くの知識や知見が集まり、イノベーションを生み出す効果があります。
一方で、チーム間での情報共有が難しい場合や、チーム内での役割が曖昧になる可能性もあるため、リーダーによる適切な指示・調整が求められます。
3:社内システムの整備(人事・会計など)
最後のステップは、組織運営を効率的に行うための「社内システムの整備」です。
社員の採用から入社、退職までの一連のプロセスをデジタル化することで、人事部門の負担を軽減するだけでなく、社員自身も各情報へのアクセスが容易になります。
主なシステムとして、以下が挙げられます。
- 採用管理システム
- 人事評価システム
- 勤怠管理システム
- 給与システム
- 会計システム
システム導入後は、社員へのオンボーディングで具体的な活用方法を教育し、システムへの理解とスムーズな導入をサポートしましょう。
組織づくりで大切なこと【企業の取り組み事例】
組織づくりを実践するときは、さまざまな施策を打ち出さなければなりません。
そこで、組織づくりに効果的な6つの取り組みと、関連する企業事例を合わせて解説します。
強い組織をつくるためには、組織文化の浸透や人材育成の強化など、複数の取り組みを並行して実践していきましょう。
企業理念・ビジョンの浸透を図る
組織づくりの基盤となるのは、企業理念・ビジョンを社員に浸透させ、社員一人ひとりの行動や意思決定の方向性を統一させることです。
組織の明確なビジョンが描かれていなければ、現場で働く社員は「なにを目標として仕事に取り組めばいいのか」と困惑し、行動につなげられません。
企業理念の浸透を図るには、全社員が話し合える研修やワークショップを定期的に開催し、何度も繰り返し考える機会を与える必要があります。
また、企業理念を体現するような働きをした社員には、表彰やインセンティブなど目に見える形の評価によって、より企業理念の浸透が図れます。
事例:社員自らが企業理念実践にチャレンジし続ける風土を醸成
ヘルスケア事業を展開するオムロン株式会社では、日々の仕事における企業理念実践の取り組みを共有・賞賛する「TOGA(The OMRON Global Awards)」を実施しています。
TOGAの狙いは、社員自らが社会的課題の解決に向けた目標を立て、その過程で企業理念の浸透とチャレンジし続ける風土を醸成することです。
具体的には、以下のプロセスで社員の内に秘めた知識や技能を引き出し、組織内での共有・共鳴を図っています。
- 旗(目標)を立てる
- 宣言する
- 実行する
- 振り返り、共有する
- 共鳴する
TOGAグローバル大会では、約6,900テーマ(のべ約5万人)のエントリーがあり、パートナー企業や投資家を含めて、社内外に共感・共鳴の輪が拡大しています。
個々の役割と指揮命令系統を明確にする
組織運営を円滑に進めるためには、社員一人ひとりの役割を決めたうえで「誰のどのような指示で業務を行うのか」を、明確に定めておかなければなりません。
指示する人やルートが曖昧だと、業務が重複したり重要なタスクが見過ごされたりする事象が発生し、結果として組織全体の業務効率が低下します。
業務内容を明確化するため、役職や役割ごとに職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成し、以下のような項目をまとめておきましょう。
- 職務の名称や配属部署
- 詳細な業務内容
- 責任や権限の範囲
- 期待される成果
- 求められる経験・スキル
- 指揮命令系統
また、定期的なミーティングを開催し、業務の進捗状況を報告し合うことで役割に対する理解が深まり、チーム全体の一体感も生まれます。
事例:専門性の高い役割を明確化する高度専門職制度の実施
住宅・ヘルスケア事業を展開する旭化成株式会社では、新事業の創出や既存事業の強化を目指し、専門性の高い人財の層を厚くする「高度専門職制度」を実施しています。
この制度では、部門を問わず活躍が期待される人材を「高度専門職」と定義し、以下の5つに区分しています。
区分 | 概要 |
エグゼクティブフェロー | 「新しい技術領域の創出」や「技術領域の拡大」の実績を持つ社員 |
プリンシパルエキスパート | 各技術領域におけるトップ技術者 |
シニアフェロー | 定年後も「エグゼクティブフェロー」「プリンシパルエキスパート」での活躍が期待される社員 |
リードエキスパート | プリンシパルエキスパートに次ぐ専門職(プリンシパルエキスパートの候補者) |
エキスパート | リードエキスパートに次ぐ専門職(リードエキスパートの候補者) |
高度専門職制度の実施により、役割の明確化と処遇の向上が図られ、高度専門職の人数が2018年の124人から、2023年には347人まで増加しています。
企業理念にもとづく人材育成の仕組みをつくる
企業が持続的に成長するためには、企業理念の浸透に加えて、理念にもとづく中長期的な人材育成の仕組みづくりも必要です。
企業のビジョンを反映した育成プログラムがあれば、社員は働く意義を感じながら自己成長への意欲を高め、結果として専門性の高い人材が集う「強い組織」になります。
まずは、中長期的な視点で組織の目指す姿を明確にし、その組織をつくるために必要な人材を言語化した、採用基準や育成方針を策定しましょう。
人員配置においては、社員一人ひとりの能力・性格・キャリアを考慮することで、自社に欠かせない優秀な人材を育て、組織の専門性を高められます。
以下の記事では、人材の適性を客観的に評価・分析する「人材アセスメント」について詳しく解説しています。導入手順やおすすめツールも紹介していますので、人材育成の取り組みとして参考にしてみてください。
事例:中長期計画をもとに採用基準を決め、戦略的な組織づくりを実現
デジタル広告運用の代行支援を行うデジタルアスリート株式会社では、中長期計画にもとづいて「組織の理想像から逆算した採用基準」を設定しています。
以前は採用ターゲットが曖昧でしたが、適性検査の活用によって明確になり、自社のハイパフォーマーに近いタイプの人材を判断しやすくなりました。
具体的には、適性検査の受検結果をもとに、最終面接で以下の点を確認しています。
- 会社のミッションに対する共感が得られているか
- 入社後にミッションを体現していけそうか
- どのような性格を持った人材なのか
面接官の「感覚的なものさし」と、適性検査の「定量的なものさし」の掛け合わせによって、採用精度が向上し、戦略的な組織づくりを実現しています。
事例:中長期の組織の理想像から逆算をした採用基準を設定|デジタルアスリート株式会社
適性検査の結果の活用方法については、以下の記事で解説しています。参考にしてみてください。
リーダー・マネージャー層を育成する
企業理念を体現する強い組織をつくるためには、組織の先頭に立って指揮する「リーダー」と、部下へのアドバイスを行う「マネージャー」の存在が欠かせません。
最前線で働く社員は、組織の目標達成に向けて業務を行うため、指揮・管理する優秀なリーダー・マネージャー層の人材育成が必要なのです。
具体的には、リーダーシップ研修や現場での実践を通して、以下のポイントを学べる機会を設けましょう。
- 対人関係や行動特性などの性格分析を行い、自己理解を深める
- リーダーやマネージャーがとるべき行動を理解する
- プロジェクト進行の過程や成果を振り返る
以下の記事では、リーダーやマネージャーに欠かせないマネジメントについて、必要な能力やスキルを詳しく解説しています。人材育成に取り組んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
事例:女性リーダーを育成するためのキャリア支援・育成研修の実施
キリンホールディングス株式会社では、イノベーション創出を目的とした多様な人財を活用するため、積極的に女性リーダーの育成を実施しています。
以下のような取り組みを通して、女性が仕事にやりがいを持ち、自己成長し続けることへの意識の向上を図っています。
取り組み | 内容 |
キリンウィメンズカレッジ | 中堅女性社員を対象に、ビジネスリテラシーを備えた次世代リーダーの育成を目的とした研修 |
キャリアワークショップ | 入社3年目の女性社員と直属リーダーが参加し、ライフイベントとキャリアの両方を充実させる方法を考える |
早回しのキャリア形成 | 女性社員がライフイベント前に職務経験を積む |
これらの取り組みによって女性リーダーの比率が、2013年度から2021年度にかけて2倍以上に上昇しており、女性の活躍できる場が広がっています。
社員の特性・性格を考慮した人員配置をする
組織全体のパフォーマンスを最大化するためには、社員一人ひとりが能力を発揮できるように、適材適所の人員配置が不可欠です。
個々の強みを活かせる人員配置であれば、効率的に業務を進められるだけでなく、各自が能力を発揮しつつ、お互いに弱みをカバーし合える環境をつくり出せます。
あらかじめ社員の特性や性格傾向を調査・可視化しておくことで、類似する性格タイプの社員を配置したり、活躍人材の育成に向けた配置をしたりすることも可能です。
また、自身のキャリアの方向性を再考し、より活躍できる役割を求めて成長しようとするため、長期的な会社への定着も期待できます。
以下の記事では、定着率を高めるための方法について、企業の取り組み事例を交えて解説しています。組織づくりの一環として、自社における定着率の把握と改善に取り組んでみてください。
事例:部署ごとの特性を可視化し、適材適所への人員配置を実施
新卒採用のマッチングイベントを運営する株式会社リアライブでは、自社で活躍できる人材を効率よく見極めるため、性格分析ができる適性検査を導入しています。
導入のきっかけは、活躍人材の離職が続き、人材業界だからこそわかる「人が人を見極める」ことの難しさを痛感したためです。
新卒採用では説明会に来た人全員に適性検査を受検してもらい、中途採用では一次選考に合格した人を受検対象としています。
事前に、社内向けの適性検査(性格分析)でハイパフォーマーの特性を把握することで、選考時にその人物像に近い候補者を見極められ、選考が効率的になりました。
また、部署ごとの特性も明確にできたため、適材適所の人員配置がしやすくなり、個性を活かしつつバランスのとれた組織づくりが実現しました。
事例:ハイパフォーマーを一目で見極めることができた|株式会社リアライブ
人事評価制度を可視化して社員に共有する
組織づくりを進めるうえでは、社員が自己成長する喜びを感じながら、モチベーション高く仕事に取り組める環境をつくらなければなりません。
成果に対する評価・称賛を受けて成長を実感するため、どのような点が評価されたのかがわかるように、評価項目や基準の見える化が必要です。
公平・公正な人事評価制度を整備するときは、以下の基準を設けましょう。
業績評価 | 社員が達成した成果を評価(目標達成度、売上 など) |
能力評価 | 社員が持つ知識やスキルを評価(リーダーシップ、問題解決能力 など) |
情意評価 | 社員の勤務態度や人間性を評価(協調性、コンプライアンス意識 など) |
人事評価の基準や評価方法をより詳しく知りたい人事担当者の方は、以下の記事を確認してみてください。適性検査を活用した評価方法も解説しています。
事例:仕事の能力をモジュール化して評価し、社員の習熟度を可視化
外用薬の製造・開発を行う万協製薬株式会社では、各部門において「達成すべき仕事の能力」を細かくモジュール化(基準化)しています。
その基準にもとづいて、以下のように社員の能力や達成度を評価し、賞与・昇給への反映や正規登用の目安にしています。
- 各項目の難易度ごとに3段階のランク付け
- 各項目の習熟度を4段階で点数化
能力や習熟度が可視化されたことで、社員の成長意欲の向上につながり、会社としてもモジュールの総点数の伸びや、人材育成の進み具合がひと目でわかるようになりました。
参考:中小企業・小規模事業者の人材活用事例集(万協製薬)|中小企業庁
組織の拡大や変化に合わせてすべきこと・注意点
組織拡大に伴って、社員数や職場環境も変化し、組織を一つにまとめるのが困難になるなど、さまざまな課題に直面します。
ここでは、組織の成長とともに必要な取り組みについて詳しく解説します。
企業規模 | 取り組み |
30人の壁 | 社員と意思疎通を図るマネージャーの配置 |
50人の壁 | 法令上の義務への対応・社内制度の整備 |
100人の壁 | 事業拡大を見据えた専門性の高い人材の採用 |
どのような企業規模であっても、事業をより成長させていくためには、社員のエンゲージメント(愛着や貢献意欲)を高めなければなりません。
以下の記事では、企業が実践しているエンゲージメント向上施策を詳しく解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
【30人の壁】社員と意思疎通を図るマネージャーの配置
創業当初は、経営者と社員との距離が近くコミュニケーションもとりやすい環境ですが、社員数が30人規模になると、社員との意思疎通がしにくくなります。
経営者自らが全社員とコミュニケーションを図るのは困難になるため、チームごとに社員の状態を把握するマネージャーを配置しましょう。
各マネージャーは、自分のチームの目標や業務プロセスを決定し、明確な指示を出すことで、業務を円滑に進めながら社員とのコミュニケーションが図れます。
また、経営者とマネージャーで定期的にミーティングを行えば、経営方針やビジョンを踏まえた指示ができ、社員も目標達成に向けて業務に取り組めます。
マネージャーは、社員との1on1ミーティングを通して、業務の進捗状況や日ごろの悩みを把握しながら、チームとして成果を出せるような業務調整が必要です。
社内コミュニケーションを活性化する方法や効果的な1on1については、以下の記事を参考にしてみてください。
【50人の壁】法令上の義務への対応・社内制度の整備
社員数が50人を超えると、労働安全衛生法にもとづく対応が求められ、主に以下のような義務の対象となります。
対象となる義務 | 内容 |
産業医の選任 | 健康診断や面接指導、健康管理などを職務とする産業医を1人以上選任 |
健康診断結果の報告 | 定期健康診断結果の報告書を所轄する労働基準監督署に提出 |
ストレスチェック制度の実施 | 労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止するためのストレスチェック |
衛生管理者の選任 | 作業環境の安全性や、社員の健康について管理監督する衛生管理者を1人選任 |
衛生委員会の設置 | 労使が一体となって、労働者の危険や健康障害の防止対策を審議する委員会 |
法令上の義務が生じることで、社内規定や就業規則の策定・改訂が必要となり、社員に対しても具体的な運用方法を伝えなければなりません。
また、人事評価制度や教育・研修制度の整備など、人事部門としての業務も増えてくるため、人事担当者の採用や社内システムの導入も検討しましょう。
【100人の壁】事業拡大を見据えた専門性の高い人材の採用
社員数が100人を超えてくると、複数事業の運営や市場ニーズの変化に対応するために、専門スキル・知識を持った人材の確保がより重要になります。
事業拡大を見据えて、事業企画・法務・財務などの専門職を増員し、組織の基盤を強化しましょう。
優秀な人材を採用するには、まず自社のハイパフォーマー社員の行動特性や思考を分析し、可視化したデータをもとに独自の採用基準を定めなければなりません。
採用基準が曖昧な状態だと、面接官の主観に頼ってしまう可能性があるため、活躍可能性を定量的に把握し、自社が本当に求める人材を採用しましょう。
また、社員数が100人以上になると、組織も縦割り構造に変化し、他の部門・チームがどのような業務をしているのか把握しづらくなります。
そのため、組織体制や各部門・チームの業務内容を可視化し、すべての社員が組織に対する理解を深めることが事業成功のカギです。
ハイパフォーマーの詳細については以下の記事で詳細を解説しています。本記事と合わせてご覧になってください。
まとめ:組織づくりは制度・環境の柔軟な見直しが成功のカギ
組織づくりは、企業規模や労働環境の変化に応じて、柔軟に組織構造や社内制度を見直ししていかなければなりません。
組織づくりを進めるうえでは、以下の点を重視して取り組みましょう。
社員数の増加によって法令上の義務が生じ、人事部門の業務も増えていくため、採用担当者や教育担当者といった専門人材の採用も必要です。
まずは、ハイパフォーマー社員の分析結果をもとに採用基準を策定し、活躍人材を見極められる仕組みを整えましょう。
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