人材管理には、人材採用だけでなく「人材育成・人材配置・人事評価」といったさまざまな項目があります。
社員の得意分野を生かせる人材配置で力が発揮できると、生産性が向上し企業目標の達成に近づくことが可能です。
社員のパフォーマンスやバリューが正当に評価されれば、モチベーションやエンゲージメントが向上し、離職防止にもつながります。
今後、生産年齢人口が減少を続ける日本では、人材管理の充実による優秀な人材の確保は必要不可欠です。
本記事では、人材管理の充実を目指す経営者や人事担当者の方に向けて、人材管理の重要性と具体的な方法を解説します。
成功させるポイントにも触れていますので、自社の人材管理に生かしてみてください。
人材管理とは?|企業の成長を支える業務
人材管理とは、企業目標の達成を最終目的とし、以下の方法を用いて人材を効果的に統制・管理することです。
企業は社員が得意分野を最大限に生かし、積極的に業務に取り組めるよう、適切な環境や制度を整備します。
人材管理を進める中で、配置にミスマッチが生じている、あるいは公平な評価がされていないといった課題が見えてくることがあります。
これらの課題を分析し改善を繰り返すことで、企業は優秀な人材を確保しながら持続的な成長を目指すことが可能です。
人材管理の課題と重要性
日本企業が従来の人材管理で成長できていたのは、「人口増加」「高度経済成長」「企業目標や理念の共有が容易な土壌」といった要因があったからです。
日本の人材管理を支えていた要因がなくなった今、企業は多くの経営課題と人材管理課題を抱えています。
経産省が2019年に発表した「人材マネジメントの在り方に関する課題」によると、主な課題は次の3つです。
3つの課題を紐解きながら、人材管理の重要性について解説します。
少子高齢化による生産年齢人口の減少
日本は少子高齢化によって、15歳以上64歳以下の労働に従事する年代である「生産年齢人口」の減少が進んでいます。
このまま少子高齢化が進むと、2050年には日本の総人口が約1億人にまで落ち込み、生産年齢人口比率の低下が加速する見込みです。(※)
企業は、労働者の確保が難しくなると予想されるため、確保した貴重な人材の離職を防ぐ意味でも人材管理の充実が重要になります。
※参考:人材マネジメントの在り方に関する課題 P6|経産省産業政策局 産業人材制作室
従来のマネジメントシステムの崩壊
少子高齢化の進行と時代の変化により、「新卒一括採用」「終身雇用」「年功序列制度」といった従来の人材マネジメントシステムが崩壊しつつあります。
かつて企業は新卒一括採用で大量の人材を安定的に確保でき、社員は終身雇用制度のおかげで安定した収入が保障されていました。
これにより日本企業では人材の入れ替わりが少なくすみ、企業目標や理念の共有がしやすかったため成長を遂げられたわけです。
今後、企業が成長するためには、柔軟な人材マネジメントシステムによる離職率の抑制と人材の育成・保持が重要です。
経営課題の解消
経産省によると、経営課題と人材管理における課題は下記のように連動しています。
社会の変化 | 経営上の優先課題の例 | 人材管理の課題例 |
---|---|---|
グローバル化 | 海外市場でのシェアの獲得 | 多様な人材ポートフォリオの構築 |
デジタル化 | テクノロジーの変化スピードへの対応 | 変化に対応するための従業員の再配置・再教育 |
少子高齢化 | 労働期間の長期化による個人キャリアの意識向上 | 自律的なキャリア構築の支援 |
参考:人材マネジメントの在り方に関する課題 P9|経産省産業政策局 産業人材制作室
人材管理における課題を解消することで、経営上の課題解決につながります。
適切な人材管理体制を整え、グローバル化やデジタル化などの社会の変化に対応しましょう。
人材管理の方法
人材管理の方法は、大きく分けて次の5つです。
それぞれの概要を確認し、従来の特徴とこれから求められる方法例を解説します。
人材採用
人材採用は、企業目標の達成を目的として、人的資源を確保するために行います。
新卒一括採用が難しくなった今、下記のように柔軟な人材採用が必要です。
従来の人材採用の特徴 | これから求められる人材採用の例 |
---|---|
・新卒一括採用 ・専門的人材のみを中途採用 | 新卒・中途に関わらず、必要なスキルや経験をもつ、あるいは役割を果たせる素養をもつ人材の確保 |
参考:人材マネジメントの在り方に関する課題 P15|経産省産業政策局 産業人材制作室
自社に合った質の高い人材を確保するためには、求める人材像を明確化し、経営陣と現場で共通認識をもつことが大切です。
人材育成
人材育成では、企業の目標達成に向けて社員それぞれの成長をうながします。
これからの労働者の減少を考えると、下記のように社員のスキルや能力をふまえた柔軟な人材育成制度が必要です。
従来の人材育成の特徴 | これから求められる人材育成の例 |
---|---|
・全体的な能力の底上げを重視 ・階層別、年次別研修による均質的な教育体制 | ・タレントマネジメントを積極的に行い、幹部候補を選抜 ・集中的な育成投資および保持 |
参考:人材マネジメントの在り方に関する課題 P15|経産省産業政策局 産業人材制作室
人材育成には「できないことをできるようにする」側面もありますが、やりすぎると自己効力感やモチベーションの低下につながるので注意が必要です。
得意分野を伸ばすことで、社員のエンゲージメントの向上をうながしましょう。
人材配置・異動・出向
人材配置では、社員の特性を生かした配置で、企業目標の達成や生産性の向上を目指します。
人材配置には、採用した人材の配置だけでなく、既存社員の異動や出向の管理もふくまれます。
人材育成をしながら長く活躍してもらうためには、下記のように社員の希望と特性に合った配置が大切です。
項目 | 従来の特徴 | これから求められる制度例 |
---|---|---|
配置・異動 | 1人の社員がさまざまな部署や職種を経験する異動制度 | ・個人希望やタレントマネジメントによる配置 ・1人の社員が同一部署、職種の中で異動 |
出向・転勤 | 会社都合による転勤、出向 | 会社都合による転勤、出向の廃止 |
参考:人材マネジメントの在り方に関する課題 P15|経産省産業政策局 産業人材制作室
個々の得意分野を把握する際は、適性検査の活用も検討するとよいでしょう。
ミキワメは、既存社員の傾向と照らし合わせながら、社員それぞれの得意分野と社内での活躍度を把握できる適性検査です。
人材配置の決定材料としてだけでなく、人材育成でも活用できます。
無料受検でミキワメの内容を確認できますので、ぜひ利用してみてください。
人事評価・考課
人事評価は、社員のパフォーマンスやバリューを評価し、等級や報酬を決めることでモチベーションの維持・向上や企業目標の達成を目指す制度です。
給与や昇進を判断する人事考課が従来の人事評価の目的でしたが、これからは下記のように人材育成の側面が重要視されます。
分類 | 従来制度の特徴 | これから求められる制度例 |
---|---|---|
評価制度 | 給与や昇進の判断を目的として評価を実施 | ・社員それぞれのパフォーマンスに重点をおいて評価 ・ローパフォーマンス向上のための施策を計画、実施(人材育成の側面) |
等級制度 | 勤続年数にもとづいた内部公平性重視の等級制度(年功序列) | 職務や役割の大きさにもとづいた等級制度 |
報酬制度 | 社員の能力だけでなく、勤続年数や家族構成をふまえて給与を決定 | 職務や役割の大きさにもとづいた固定報酬と、離職リスクの高さに応じた変動報酬による個々に合わせた支給 |
参考:人材マネジメントの在り方に関する課題 P15|経産省産業政策局 産業人材制作室
「頑張れば評価が上がり、評価が上がれば報酬が上がる」という人事評価制度は、社員のモチベーションの維持・向上をうながします。
離職を防ぐことにもつながりますので、人事評価制度の充実と明示は大切です。
下記の記事で、人事評価の「目的・評価基準・適切な運用方法・改善方法」を解説していますので、合わせてご覧ください。
労務管理
労務管理は、勤怠管理や給与計算、福利厚生の手続きといった事務的業務と働き方にかかわる管理業務です。
働き方が変わる中で、下記のように労務管理も変わりつつあります。
項目 | 従来の特徴 | これから求められる制度例 |
---|---|---|
勤務時間 | 社員の事情に関わらず、会社の規定に則った勤務時間 | フレックスタイム制や時短勤務のように、ワークライフバランスを考えた勤務時間 |
勤務形態 | 出社型 | リモートワーク |
勤怠管理 | タイムカードといったオフラインでの勤怠管理 | オンラインでの勤怠管理 |
福利厚生 | 夏季休暇や慶弔見舞金といったオーソドックスな福利厚生 | アニバーサリー休暇や学習補助制度といった企業の売りとなる独自の福利厚生 |
従来の特徴と比べると、最近は柔軟な働き方が求められることがわかります。
とくに福利厚生や勤務形態は、若年層が企業を選ぶ際のチェックポイントにもなっているため、適切な整備が必要です。
人材管理で得られるメリット
人材管理で得られる主なメリットは、次の5つです。
それぞれのメリットを理解すると、あらためて人材管理の重要性がわかります。
組織力が向上する
人材配置によって、社員それぞれが特性を生かせる職種や部署に配属されると、組織力の向上が期待できます。
社員それぞれの得意分野で力が発揮されることで、全体の底上げになるからです。
組織力向上は、企業目標を達成する上で欠かせないため、適切な人材採用および人材配置が大切です。
生産性が向上する
人材配置によって効果的に社員を配置する、あるいは適切に人材育成を行うことで、全体の生産性向上をうながします。
たとえば適性検査を用いて人材育成を行うと、企業目標に連動する個人の行動目標を立てる際、それぞれの特性に合わせて設定が可能です。
個々の得意分野を生かせる配置や制度は、社員にとっても働きやすい環境になるため、離職防止にもつながります。
社員のモチベーションが向上する
適切な人材管理によって得意分野を生かせるようになると、社員はモチベーション高く働けます。
さらに社員のパフォーマンスやバリューが正当かつ公平に評価されると、エンゲージメントがアップし、離職の防止にもつながります。
これを実現するためには、適切な人材配置を実施し、人事評価制度を整備・明示することが大切です。
モチベーション向上については、以下の記事で詳しく解説しています。本記事と合わせてご覧ください。
また、社員のパフォーマンスを高める方法には、モラールサーベイを実施することも有効です。詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
人材配置を最適化できる
人材管理体制を整備すると、人材配置が最適化され、社員が得意分野を生かして活躍できるようになります。
これによってエンゲージメントが向上し、離職防止効果も期待できます。
実は弊社、株式会社リーディングマークは、過去に3年間連続で離職率が30%を超えるという厳しい状況に直面していました。
毎日どこかで業務の引継ぎが行われている苦しい状況を打開するため、さまざまなアクションを起こし、最終的に離職率を4%まで改善できました。
この経験から、営業マネージャーだった社員が新規プロダクトの企画・開発に取り組むことになり、結果として適性検査クラウド「ミキワメ」が誕生しました。
下記の記事で、事例の詳しい内容と残り5つのアクションについて解説していますので、ぜひご覧ください。
採用活動を最適化できる
社内の人材管理が整備されると、採用活動で企業の魅力として打ち出すことが可能です。
正当な人事評価や育成制度を明示することが、優秀な人材確保につながります。
さらに労務管理において、世代のニーズにマッチした福利厚生制度は、若年層の心をつかむ要素の1つです。
人材管理のデメリット
人材管理のデメリットは、管理業務の負担が増えることです。
最近はとくに価値観や労働観の変化が激しく、時代のニーズに合わせた柔軟な対応が求められます。
たとえば、新型コロナウイルスの蔓延にともなって起きたリモートワークの普及もその1つでしょう。
時代のニーズを汲み取りいち早くリモートワークを取り入れたことで、逆境を乗り越えられた企業は数多くあります。
人材管理を成功させる3つのポイント
人材管理を成功させるためには、次の3つのポイントを押さえる必要があります。
人材管理を成功させて、企業目標の達成に近づけましょう。
1:経営戦略の1つとして捉える
人材管理を成功させるためには、経営戦略の1つとして捉えることが大切です。
社員と企業の成長を関連づけながら人材管理を推し進めることで、企業全体の底上げと生産性のアップをうながし、企業目標達成を目指します。
これを実現するためには、経営陣が下記の例のように企業目標の達成に合わせて戦略的に人材管理を行うことが大切です。
- グローバル化、世界市場への進出を見据え、外国籍人材を採用する
- 適性検査といったツールで社員の能力に関する定量的データを収集・分析し、個々の能力を最大限に生かせる配置や育成を行う
- 組織力向上のためにリーダーを育成するべく、計画的かつ段階的に研修を行う
- 社員のステップが上がるにつれて、職務や責任の重さにあった報酬を受け取れる制度を構築する
2:時代の流れを反映する
人材管理を成功させるためには、人材採用や人材育成制度に時代の流れを反映することが大切です。
株式会社マイナビが実施した「マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査」によると、学生の企業選択において以下の2項目に大きな変化が見られます。
卒業年 | 安定している会社を重視する割合 | 自分のやりたい仕事(職種)ができる会社を重視する割合 |
---|---|---|
2014年 | 22.1% | 42.6% |
2015年 | 27.3% | 40.3% |
2016年 | 26.3% | 40.2% |
2017年 | 28.7% | 38.4% |
2018年 | 30.7% | 38.1% |
2019年 | 33.0% | 38.1% |
2020年 | 39.6% | 35.7% |
2021年 | 38.3% | 35.9% |
2022年 | 42.8% | 34.6% |
2023年 | 43.9% | 32.8% |
出典:マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査|株式会社マイナビ
過去10年間を見ると、「安定している会社を重視する割合」は上昇し、「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社を重視する割合」は低下しています。
今後は、社会課題への意識が高いといわれるZ世代の次の「α世代」の参入も想定し、人材採用戦略を立てる必要があります。
さらに若年人口の減少を考えると、新卒採用だけでなく経験豊富な中高齢者の採用も不可欠です。
3:情報を一元的に管理する
人材管理では、勤怠状況や人事評価の結果、業務内容といった社員に関するさまざまなデータを集め一元的に管理する必要があります。
たとえば人事部が社員の異動調整を行う際、社員の人事評価結果や業績のデータを所属部署で管理していると、業務が停滞してしまうでしょう。
情報を一元的に管理しておくことで、人員が不足している部署から、必要なスキルを持った人材へのアプローチも可能になります。
人材管理を効率化するためのツール
人材管理を効率化するツールとして、次の2つがあります。
それぞれの代表的なサービスも紹介しますので、参考にしてみてください。
人材管理システム
人材管理システムは、社員に関するさまざまなデータを一元管理できるツールで、人材管理システムにおける入力、管理業務の負担を軽減できます。
代表的なサービスは、次の通りです。
自社の目的に合った人材管理システムを導入し、管理業務を効率化させましょう。
適性検査
適性検査は、社員の特性や能力を定量的データに落とし込み、可視化できるツールです。
人材採用だけでなく、人材配置や社員それぞれの成長を目指す上での行動指針の設定にも活用できます。
代表的な適性検査の例は、次の通りです。
適性検査 | 能力検査の概要 | 性格検査の概要 |
---|---|---|
ミキワメ | 一般的な国語・数学における知識を使って問題を解く力を測定できる | 受検者が自社で活躍する可能性を14段階で表示、各部署との相性や似た性格の社員がわかる |
SPI | 一般的な国語・数学における基礎知識と能力が測定できる | 受検者の性格や仕事への取り組み方、考え方が可視化される |
GAB | 一般的な国語・数学の知識を使って問題を解く力を測定できる | 受検者の特性と一般的な職務適性を可視化できる |
社員を育て、長く働いて欲しい場合は、適性検査からわかる性格傾向に合わせた配置や育成が重要です。
適性検査には他にも種類があり、自社に合ったものを選ぶ必要があります。
下記の記事で24種類の適性検査のメリット・デメリットを解説していますので、適性検査選びの参考にしてみてください。
まとめ:適性検査を取り入れて効率的な人材管理を実現しよう
人材管理を充実させると、企業は下記のメリットを享受できます。
社員にとっても、正当な評価が報酬につながることや得意分野を生かせることは、大きな魅力です。
生産年齢人口が減少を続ける中で、企業は優秀な人材を社内で育成し、保持する必要があるため、人材管理の充実が求められます。
「人材採用・人材配置・人事評価」では、適性検査による定量的データを用いることで、客観的かつ公平な視点で人材管理が可能です。
ミキワメなら、社員のデータをもとに、自社の部署や職種への適性や受検者が活躍する可能性を14段階で表示できます。
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