企業の業績アップや組織力の向上のためには、社員の労働意欲やモチベーションが高くなければなりません。
社員のパフォーマンスを高める方法として、労働条件や人間関係といった意識調査をして改善を促進させる「モラールサーベイ」があります。
モラールサーベイは広範囲で多くの質問から構成されており、仕事の負担感やキャリア形成など、さまざまなデータの取得が可能です。
また、組織と社員との関わりを強くし企業経営に参加する手段としても、モラールサーベイは効果的な手段です。
本記事では、モラールサーベイの目的や特徴、活用時の注意点を詳しく解説しています。
混在しやすい他のサーベイとの違いについても紹介していますので、調査項目や特徴を比較して目的に合ったサーベイを検討してみてください。
モラールサーベイとは?モラールとは何かについても解説
モラールサーベイとは、社員に対してモラールや満足度を測定する調査のことで、日本では1955年に初めて開発されました。
モラールとは、企業や組織で働く社員の「士気」や「労働意欲」のことで、集団的な環境における意識や考えを表します。
組織の雰囲気や労働環境をもとに社員の働く意欲を調査し、以下の5分野から課題や改善点の分析が可能です。
- 労働条件
- 人間関係
- 管理
- 行動
- 自我
モラールサーベイを導入することで、社員の本音を聞き出し組織改善に活用できるため、社員の満足度やモチベーションの向上につながります。
モラールサーベイを実施する目的
モラールサーベイを実施する主な目的は以下の5つであり、導入前に明確に検討しておくことが重要です。
- 組織力の強化
- 社員のパフォーマンス向上
- モラール低下の原因特定
- 待遇や労働条件の問題把握
- 経営層とのコミュニケーション強化
モラールサーベイを活用して組織をよりよい状態に改善できれば、社員の満足度が向上します。
「回答した意見によって改善された」と社員自身が認識することで、組織に対する信頼度も高まることから、労働意欲や生産性の向上も期待できます。
企業は「どのようなテーマで調査するのか」「課題をどのように改善するのか」といった、モラールサーベイの実施目的を明確にしておきましょう。
モラールサーベイと他のサーベイ種類の違い
サーベイには、モラールサーベイの他にも以下のような種類があります。
それぞれのサーベイの目的や特徴を理解することで、自社に合った調査方法の選定基準となり、組織の課題解決に向けた施策の検討に役立つでしょう。
モラールサーベイと他のサーベイの違いについて、以下より詳しく解説していきます。組織内で活用されるサーベイの種類は多いため、詳しく知りたいは以下の記事をご覧ください。
モラールサーベイとエンゲージメントサーベイの違い
モラールサーベイとエンゲージメントサーベイは、社員の状態を把握する点において同じ調査方法ですが、以下のように測定する項目に違いがあります。
種類 | 主な測定項目 |
---|---|
モラールサーベイ | 社員のモラール(士気・労働意欲)を調査 |
エンゲージメントサーベイ | 組織へのエンゲージメント(愛着・貢献度)を調査 |
エンゲージメントとは、組織と社員とのつながりの状態を表し、エンゲージメントが高まれば組織への貢献度や社員の満足度も向上します。
エンゲージメントサーベイを詳しく知りたい経営者や人事担当の方は、以下の記事を確認してみてください。
モラールサーベイとパルスサーベイの違い
モラールサーベイとパルスサーベイには、以下のように実施頻度と質問数、特徴に違いがあります。
種類 | 実施頻度 | 質問数 | 特徴 |
---|---|---|---|
モラールサーベイ | ・半年に1回 ・年に1回 など | 95問 (NRK式) | モラールを中心とした包括的な調査 |
パルスサーベイ | ・週に1回 ・月に1回 など | 約5〜15問 | 高頻度でタイムリーな改善ができる調査 |
パルスサーベイツールの『ミキワメ ウェルビーイング』では、社員のコンディションや心理状態の変化をいち早く察知して、離職や休職の未然に防げます。
パルスサーベイについて詳しく知りたい経営者や人事担当の方は、以下の記事を確認してみてください。
モラールサーベイと組織サーベイの違い
モラールサーベイと組織サーベイには、以下のように評価対象や測定項目に違いがあります。
種類 | 主な評価対象 | 主な測定項目 |
---|---|---|
モラールサーベイ | 社員 | モラール(士気・労働意欲)を調査 |
組織サーベイ | 組織 | 健全性・労働環境を調査 |
組織のパフォーマンスや社員の満足度を向上させるために、モラールサーベイと組織サーベイを組み合わせることも効果的な手段と言えるでしょう。
組織サーベイについて詳しく知りたい経営者や人事担当の方は、以下の記事を確認してみてください。
モラールサーベイと従業員サーベイの違い
モラールサーベイと従業員サーベイは、社員の情報を収集する同じような調査方法ですが、測定する項目に違いがあります。
種類 | 主な測定項目 |
---|---|
モラールサーベイ | モラール(士気・労働意欲)を調査 |
従業員サーベイ | 労働環境・福利厚生などのニーズを調査 |
従業員サーベイを活用することで、労働条件や待遇面などの問題点が表面化され、社員の意見を反映させたタイムリーな改善ができます。
従業員サーベイについて詳しく知りたい経営者や人事担当の方は、以下の記事を確認してみてください。
モラールサーベイ2つの実施方式
モラールサーベイは、日本労務研究会が提供している以下の2種類の実施方法があります。
自社に合った適切な実施方式を選択することで、社員の声をより的確に捉え、組織の改善に活用できます。
以下より、モラールサーベイの2種類の実施方法を解説していきます。
1:NRK方式
NRK方式のモラールサーベイは、主に社員数が300人以上の企業が対象で、95問の質問で構成されている実施方式です。
以下の表のとおり、5分野17種目から評価・分析します。
分野 | 種目 |
---|---|
労働条件 | ・仕事の負担 ・職場の設備 ・給与 ・福利厚生 |
人間関係 | ・同僚との関係 ・上司との関係 ・幹部との関係 |
管理 | ・上司の行う管理 ・幹部の行う管理 ・意思の疎通 |
行動 | ・上司の行動 ・個人の行動 ・育成と心身への配慮 |
自我 | ・地位の安定 ・地位についての満足 ・昇進向上の機会 ・会社との一体感 |
出典:NRK方式モラールサーベイ診断内容|一般社団法人日本労務研究会
この5つの分野を総合して「士気の総合水準(TML)」を表し、社員の満足度や働く意欲を評価します。
また、質問の回答だけではなく自由意見を記載することもでき、データだけではわからない社員の悩みや意見の収集も可能です。
NRK方式を導入する際は、調査対象や目的、実施時期などの打ち合わせを行うため、事前にサーベイをする目的や現状の課題を明確にしておきましょう。
2:厚生労働省方式
厚生労働省方式のモラールサーベイは、主に社員数が20〜300人未満の中小企業を対象にした方式で、以下のように業種に応じた2種類のサーベイがあります。
種類 | 質問数 | 分野 | 領域 |
---|---|---|---|
NRCS I (第2次、第3次産業) | 39問 | ・経営方針 ・組織命令系統 ・コミュニケーション ・労働条件 ・仕事のやりがい | ・経営への信頼 ・環境整備 ・指示命令 ・組織管理 ・職場の人間関係 ・下意上通 ・経済的報酬 ・作業条件 ・職務満足 ・教育訓練 |
NRCS II (サービス業) | 40問 | ・経営への信頼 ・上司への信頼 ・顧客満足 ・労働条件 ・職場生活満足 | ・経営方針 ・人材の育成 ・指示の仕方 ・仕事の進め方 ・顧客尊重 ・職場秩序 ・経済的報酬 ・労働時間 ・職務満足 ・職場の人間関係 |
出典:厚生労働省方式・社員意識調査(NRCS)診断内容|一般社団法人日本労務研究会
1957年に「中小企業従業員態度測定」が労働省(現:厚生労働省)の協力のもと開発され、改良を重ねて現在の「厚生労働省方式」となりました。
参考:一般社団法人日本労務研究会|公式ホームページ
社員の意見を幅広く把握できることから、より働きやすい環境を構築するための施策に落とし込みやすくなります。
モラールサーベイの効果とは?実施する3つメリット
モラールサーベイを実施するメリットは、以下の3点が挙げられます。
モラールサーベイは、社員の労働意欲や人間関係などの状態について、包括的に把握できる効果的な調査手段です。
以下より、モラールサーベイを実施するメリットについて詳しく解説していきます。
課題が可視化され分析・改善ができる
モラールサーベイを実施するメリットの一つは、組織や社員が抱えている課題・問題点を可視化し、分析や改善ができることです。
たとえば、労働条件に対する社員の不満が出ている場合、勤務体系の見直しや相談窓口の設置など、社員が満足するような環境に改善できます。
NRK方式の場合は、5分野17種目から95問の質問を出題し、さまざまな視点から社員や組織の状態を調査できるため、広範囲の課題発見につながります。
経営に関わりを持ち組織力を強化できる
モラールサーベイを実施する二つめのメリットは、経営への意見やアイデアを社員が提案して組織と関わりを持ち、組織力を強化できることです。
たとえば、企業の売上が落ちてきている状況で、社員が感じている問題点を情報収集することで、営業プロセスの改善やチームワークの強化といった改善ができます。
社員が企業の経営に関わりを持ち、組織全体のモラールを高く維持できれば、社員の満足度も向上して組織と社員との結びつきがより強くなるでしょう。
調査結果を反映させた人員配置ができる
モラールサーベイを実施する三つめのメリットは、調査した結果をもとに社員それぞれに適した人員配置ができることです。
調査する項目には、以下のような人事面や環境面についての質問があります。
- 仕事の負担感や職場環境
- 上司や同僚との人間関係
- 地位や昇進のキャリア形成
社員の声を反映して仕事の負荷やニーズに合わせた人員配置をすることで、スムーズな組織運営ができることに加え、社員が働きやすい環境も構築できます。
また、サーベイに回答した社員は「自分の意見が反映された」と感じ、組織への信頼度も向上するでしょう。
モラールサーベイを実施するデメリット
モラールサーベイを実施する際には、以下のようなデメリットも考慮しておきましょう。
モラールサーベイは、社員の意見を収集してフィードバックや改善ができる効果的な手段ですが、導入する目的や予算を考慮した検討も必要です。
以下より、モラールサーベイを実施するデメリットについて解説していきます。
導入コストがかかる
モラールサーベイツールの導入にかかる代表的な費用は、以下の表のとおりです。
方式 (調査人数) | 受検方法 | 基本調査費用 (税別) | 分析・診断費用 (税別) | 報告関係費用 (税別) | 合計 (税別) |
---|---|---|---|---|---|
NRK方式 (〜400人) | Web方式 | 120000円 | 250000円 | 79800円 | 449800円 |
厚生労働省方式 (50人) | Web方式 | 80000円 | 80000円 | 160000円 |
このようにモラールサーベイツールの導入には、調査人数に応じたコストがかかります。
しかし、ツールを導入せず調査しようとした場合、自社でのツール開発やデータ分析が必要となるため、時間と労力を考慮しなければなりません。
導入コストと改善効果のバランスをよく検討し、自社に合った計画的な導入・活用が重要です。
回答の正確性が低くなる可能性がある
モラールサーベイは、社員のリアルな意見やニーズを収集することが目的です。
しかし、サーベイの回答に社員が抵抗や負担を感じてしまった場合、正確な回答が得られない可能性もあります。
NRK方式の場合、95問と多くの質問数があることから「回答を早く終わらせたい」と、社員は曖昧な回答をすることも考えられます。
モラールサーベイツールの導入から活用までのやり方
モラールサーベイ(NRK方式)の導入から活用までの流れは、以下の6つの手順です。
- 調査事項の打ち合わせ
- 調査準備・周知方法の検討
- 調査を実施
- 結果の集計・分析
- 調査報告書の作成・報告
- 改善事項の指導・サポート
導入する前に調査対象や調査時期、診断方法などを検討し、社員に対する質問は回答しやすい明確なものを選定しましょう。
また、サーベイの参加率を向上させるために、社員に向けた事前説明やコミュニケーションを図ることも重要です。
調査データから組織の課題や問題点を分析し、社員が主体的に働けるような環境を構築することで、社員のモラールや満足度が向上します。
モラールサーベイのツール以外にも多くのツールがあるため、他のツールも知りたい方は以下の記事をご覧ください。
モラールサーベイの質問項目
モラールサーベイ(NRK方式)の質問項目は、以下の5分野17種目のなかから、95問が出題されます。
分野 | 種目 | 質問項目 |
---|---|---|
労働条件 | ・仕事の負担 ・職場の設備 ・給与 ・福利厚生 | ・勤務時間 ・災害防止 ・給与の決め方 ・施設と制度 など |
人間関係 | ・同僚との関係 ・上司との関係 ・幹部との関係 | ・同僚間の相互援助 ・部下の気持ちの尊重 ・不公平をなくす努力 など |
管理 | ・上司の行う管理 ・幹部の行う管理 ・意思の疎通 | ・部下の訓練 ・会社の運営 ・改善提案 など |
行動 | ・上司の行動 ・個人の行動 ・育成と心身への配慮 | ・育成への体験 ・意見の積極的表明 ・教育への熱意 など |
自我 | ・地位の安定 ・地位についての満足 ・昇進向上の機会 ・会社との一体感 | ・仕事の繁閑に対する不安 ・職場の地位 ・手腕発揮の機会 ・帰属感 など |
出典:NRK方式モラールサーベイ診断内容|一般社団法人日本労務研究会
モラールサーベイの質問や診断属性の選定は、社員の声を的確に捉えるための重要なポイントです。
組織や業種に応じた質問設計をすることにより、組織の強みや課題を的確に把握でき、社員へのフィードバックや改善策の検討に役立てられます。
【注意】モラールサーベイ活用時のポイント
モラールサーベイを活用する際には、以下のポイントに注意しましょう。
調査結果を単なるデータ収集として終わらせず、具体的な目的やアクションプランを策定して、社内共有することが大切です。
モラールサーベイ活用時の注意点について、以下より解説していきます。
調査の目的を明確にして事前に説明する
モラールサーベイを実施する際には、事前に調査の目的を明確にし、社員に対して説明することが重要です。
「労働環境の改善」「人間関係の再構築」といった、具体的な目的を伝えることで、社員はサーベイに対して協力的な姿勢を示し、より有益な情報が収集できます。
サーベイの目的が決まっていないと、社員は組織に対して不信感を抱く可能性があるため、事前に目的を明確にしたうえで必ず社員に説明をしましょう。
調査した結果の情報開示は慎重に行う
モラールサーベイで得た結果は、個人的な意見や情報が含まれているため、情報開示する際は慎重に行う必要があります。
社員から提供された情報は、改善策を検討するために必要ですが、社員との信頼関係を構築・維持するうえで、プライバシーは必ず守らなければなりません。
調査結果を情報開示する際は「個人のプライバシー保護」と「組織改善のメリット」のバランスを考えながら、慎重に行うようにしましょう。
まとめ:モラールサーベイで社員の士気を向上させよう
今回は、モラールサーベイの概要や導入するメリット、導入手順を詳しく解説してきました。
モラールサーベイの特徴は、他のサーベイと比べて社員の意見や悩みをより具体的に把握・分析できることです。
社員の意見を反映させることで、組織力の強化や課題の解決につながり、社員のモラールや満足度の向上が期待できます。
また、社員の状態をリアルタイムに把握できるパルスサーベイと併用することで、社員の労働意欲を高めつつ心身面のケアも可能です。
組織の成長や業績アップを目指すために、経営者や人事担当の方はモラールサーベイや他のサーベイの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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