「サーベイの結果は、どのようなケースでバレてしまうのか」
「匿名と実名、どちらの方法で調査を行うべきか迷っている」
エンゲージメントサーベイの導入を検討するなかで、調査結果が関係者以外に漏れてしまうことを懸念している人事担当者の方も多いでしょう。
サーベイは社員の本音を引き出し、職場環境の改善につなげる有効な手段です。しかし、調査の目的や活用方法が正しく共有されていないと、社員は安心して回答できません。
そこで本記事では、エンゲージメントサーベイの結果がバレるケースに加えて、以下の内容を詳しく解説します。
- サーベイの結果がバレてしまった場合に生じる影響
- 「匿名」と「実名」でサーベイを行うメリット・デメリット
- サーベイの信頼性を向上!サーベイ活用のポイント
調査時の注意点や導入実績が豊富なサーベイツールも紹介していますので、目的に応じて最適な方法を検討してみてください。

- エンゲージメントサーベイの結果がバレる4つのケース
- エンゲージメントサーベイの結果がバレるとどうなる?4つの影響
- 「実名」と「匿名」どちらで実施すべき?サーベイの選び方
- 【実名】エンゲージメントサーベイを実施する3つのメリット
- 【実名】エンゲージメントサーベイを実施するデメリット
- 【実名】エンゲージメントサーベイを行うときの注意点
- 【匿名】エンゲージメントサーベイを実施する3つのメリット
- 【匿名】エンゲージメントサーベイを実施するデメリット
- 【匿名】エンゲージメントサーベイを行うときの注意点
- エンゲージメントサーベイの信頼性を高める方法3選
- エンゲージメントサーベイに関するよくある質問
- サーベイの目的に応じて「実名」と「匿名」を使い分けよう
エンゲージメントサーベイの結果がバレる4つのケース

エンゲージメントサーベイの結果がバレてしまう原因として、以下の4つのケースが考えられます。
以下より、それぞれの原因を詳しく解説します。自社でも同様のケースがないか再確認してみてください。
実名回答での内容が第三者に漏れる
実名でエンゲージメントサーベイを実施する場合は、回答者の個別データが、外部や関係者以外の社員に漏れてしまうリスクがあります。
たとえば、人事部がある社員の回答内容を閲覧したときに、上司の指導方針に対する不満が書かれていたとします。その情報が誤って上司本人に伝われば、回答者と上司との関係が悪化し、職場の雰囲気にも影響を及ぼしかねません。
また、回答した社員も「自分の意見が筒抜けになっている」と感じ、秘匿性を守らない会社として認識されてしまいます。
回答が第三者に漏れてしまうと、今後の調査にも影響を及ぼすため、情報管理を徹底する社内体制を整え、状況によっては匿名でサーベイを実施しましょう。
自由記述欄のコメントから回答者が特定される
エンゲージメントサーベイでは、自由記述欄に記載されたコメントや具体的なエピソードから、回答者が特定されるケースもあります。
たとえ匿名で実施していても、特定の出来事に対する意見や、立場・役割による言い回しによって、「この発言はあの社員だな」と推測できてしまいます。
自由記述を求めるときは、個人が特定されるエピソードや個人名を記載しないよう、サーベイ実施前に注意喚起しましょう。
結果の閲覧範囲が適切に設定されていない
調査結果の閲覧範囲が適切に設定されていないと、関係のない社員まで閲覧できる状態になってしまい、秘匿性が保たれません。
とくに実名でサーベイを実施する場合、健康状態や人間関係などのデリケートな情報が社内に広まると、回答者に不利益が生じてしまいます。
サーベイを導入した時点で、調査結果へのアクセス制限を設定し、閲覧できる担当者を明確に決めておくことが重要です。
また、調査の実施・運用を行う担当者は、結果の取り扱いに関して定期的なチェックを行い、不適切な閲覧や情報漏洩が起こらないように管理体制を整えておきましょう。
評価者同士で回答内容が共有されてしまう
サーベイの結果が評価者の間で共有されてしまうケースも、外部や関係のない社員に情報が漏れてしまう原因の一つです。
管理職やリーダー層が集まるミーティングの場で、調査結果をもとに議論するときは、個人の具体的な回答内容が話題になる場合があります。
〇〇さんは「職場環境が改善されていない」と答えていたが、なにか不満があるのではないか?
このように特定の社員名を挙げると、他の管理職に回答内容が伝わってしまいます。
調査結果が社内に広まることで、社員個人の印象にも影響を与えるため、関係者以外への情報共有は避けなければなりません。
エンゲージメントサーベイの結果がバレるとどうなる?4つの影響

エンゲージメントサーベイの結果が社内にバレてしまうと、以下のような組織・社員個人への影響が考えられます。
これらのリスクを防ぐためには、調査結果の取り扱いに関する管理体制を構築し、秘匿性を確保する仕組みが必要です。
以下より、それぞれの影響を見ていきましょう。
社員からの信頼が失われる
エンゲージメントサーベイの結果が関係者以外にバレると、サーベイ自体への不信感が強まり、経営層・人事・上司に対する信頼も失われてしまいます。
匿名のサーベイにもかかわらず、個人の意見が特定されてしまった場合、社員は次回以降の調査に参加しなくなる可能性があります。
情報管理に対する信頼性が損なわれると、対面でのコミュニケーションでさえも「個人的な情報が筒抜けになっているかもしれない」と疑われかねません。
その結果、本来の目的である職場環境の改善やエンゲージメントの向上を実現できず、組織全体のパフォーマンス低下につながってしまいます。
職場の人間関係が悪化する
上司・同僚に対するコメントや不満が、関係のない社員にバレてしまった場合、その情報がきっかけとなり職場の人間関係が悪化する可能性があります。
たとえば、社員Aさんに対するネガティブな意見が漏れると、周囲の社員はAさんを「関わらない方がいい人」と見なしてしまうかもしれません。
さらに職場でうわさが広まることで、Aさんが孤立してしまい、人間関係やチームワークにも影響を及ぼす可能性があります。
社員同士のコミュニケーションが途絶えると、業務が円滑に進まなくなり、組織全体の生産性の低下にもつながりかねません。
これらの影響を避けるためには、個人情報を管理する体制を整えるとともに、部署名・個人名を伏せてフィードバックするなどの配慮が求められます。
社員の本音が聞き出せなくなる
調査結果が外部に漏れるような問題が起きると、サーベイそのものへの信頼が損なわれ、次回以降の調査で本音を引き出せなくなってしまいます。
表面的な回答が増えてしまうと、心身の健康状態や会社への不満など、正確な情報を収集できず、本来の目的である職場環境の改善につなげられません。
また、無難な回答が増えると数値上は改善したように見えても、実際には課題が解決されず、放置された状態が続いてしまいます。
サーベイ実施前は、社員に対して秘匿性が確保されていることを伝え、安心感を与えることが重要です。
個人情報の漏洩など法的リスクが生じる
サーベイの結果が不特定多数の社員に広まると、予期せぬルートを介して個人情報が外部に漏れてしまう恐れがあります。
個人情報の漏洩によって、損害賠償責任に問われるといった法的リスクが生じ、企業の信頼低下につながりかねません。
社員の個人情報を安全に管理するのは企業としての責務であり、第三者に情報を提供するときは、原則本人の同意を得る必要があります。
調査結果が関係者以外に漏れないように、まずは厳格な情報管理体制を整備し、社員に対して個人情報保護の重要性を明確に伝えましょう。
参考:「個人情報保護法」をわかりやすく解説|政府広報オンライン
「実名」と「匿名」どちらで実施すべき?サーベイの選び方

「実名」と「匿名」のエンゲージメントサーベイには、以下のようにそれぞれメリットとデメリットがあります。そのため、調査目的に応じて使い分けることが重要です。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
調査方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
実名 | ・社員一人ひとりのケアやサポートができる ・立場や役割を踏まえて回答が期待できる ・社員とのオープンな関係性を築ける | ・否定的な意見や本音が出にくい ・結果が第三者にバレる可能性がある |
匿名 | ・率直な意見が集まりやすい ・匿名性が保証され、社員は安心して回答できる ・回答率が向上し、多くのデータが集まる | ・社員個人へのフォローアップが難しい ・無責任な意見や批判が出る可能性がある |
実名のエンゲージメントサーベイは、社員の心理状態や会社に対する満足度を把握し、状況に応じて個別の対応をしたいときに適しています。
一方、匿名のサーベイは、現場で働く社員の声をもとに、組織内の隠れた課題や問題を洗い出したい場合に有効な手段です。
次節より、「実名」と「匿名」それぞれの特徴を詳しく解説します。
また、エンゲージメントサーベイの特徴やメリットについては、以下の記事でも詳しく解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。

【実名】エンゲージメントサーベイを実施する3つのメリット

エンゲージメントサーベイを「実名」で実施するメリットとして、以下の3点が挙げられます。
実名式のサーベイであれば、社員一人ひとりの状態を確認しながらサポートができるため、職場内でのコミュニケーション活性化にもつながります。
以下より、各メリットを詳しく見ていきましょう。
社員一人ひとりのケアやサポートができる
実名でエンゲージメントサーベイを行うことで、人事・上司は社員が抱えている悩みや問題を把握し、状況に応じたケアやサポートができます。
社員の性格データと連携すれば「この社員はこういう性格の持ち主」といったように、具体的なイメージを持ちながら対応方法の検討が可能です。
実名式のサーベイを導入している「株式会社ペンシル」の事例を紹介します。
以前は匿名でサーベイを実施していたため、部署単位での状況しか把握できず、スコアの低い社員がいても「誰に、どのようにケアすべきか」がわかりませんでした。
そこで実名式のサーベイに変更し、以下のように運用しています。
- 月1回の頻度でサーベイを配信
- 回答を促すシステムでのリマインドと声かけを実施
- 前回からの急激なスコアの変化、個別コメントの有無を確認
実名で調査したことで、「いま困っている人が、どのようなことで困っているのか」が可視化され、離職につながるような状態でも速やかに対策が打てるようになりました。
事例のように社員一人ひとりへのフォローを行うことで、エンゲージメントやモチベーションの向上にもつながります。
以下の記事では、エンゲージメントとモチベーションを高める方法について解説しています。「社員のやる気を引き出したい」と考えている人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

立場や役割を踏まえた回答が期待できる
実名でサーベイを実施することで、社員は自分の意見に責任を持って回答します。その結果、曖昧な回答や過度な批判が出にくくなります。
たとえば、職場環境に関する質問をした場合、匿名だと「上司が話を聞いてくれない」「意見を言っても無駄だと思う」といった、感情的なコメントが集まりやすいです。
実名で回答を求めれば、「コミュニケーション不足を解消するため、チームミーティングを実施してはどうか」と、自分の立場や役割を踏まえた回答が期待できます。
また、各部署のコミュニケーション状況を比較したり、社員個人の悩みを直接聞いたりすることで、より実践的な取り組みも検討できます。
社員とのオープンな関係性を築ける
実名でサーベイを行うことで、社員一人ひとりの状況を的確に把握し、個別のサポートができます。その結果、社員との間で透明性のあるコミュニケーションが生まれ、信頼関係を築きやすくなります。
「社員は組織改善を求めて建設的な意見を伝え、企業がその声を受け止めてよりよい組織づくりに取り組む」
このような相互のやり取りが活発になることで、信頼関係がより強化されます。
エンゲージメントサーベイを実名で実施している、嘉穂無線ホールディングス株式会社の事例を紹介します。
社員の定着率は悪くない状況でしたが、会社を辞める人はゼロではなかったため、離職者を少しでも減らそうと実名式のサーベイを導入しました。
約60店舗の各店長と協力して、普段のコミュニケーションでは気づけない社員の心理状態をサーベイで可視化し、その結果をもとに個別面談を実施しています。
社員一人ひとりの状態をデータで確認しながら話をすることで、本人の異動の意向を聞き取るなど、よりコミュニケーションが円滑になりました。
社員とのオープンな対話が実現することで、組織全体の一体感が生まれ、同じ目標に向かって業務に取り組めるようになります。
【実名】エンゲージメントサーベイを実施するデメリット

実名式のエンゲージメントサーベイには、以下のようなデメリットも存在します。
回答者が実名でわかるため、社員の個人情報や回答内容が外部に漏れないよう、情報管理体制を整える必要があります。
否定的な意見や本音が出にくい
実名式のエンゲージメントサーベイは、職場環境の改善に向けた建設的な意見が出やすい一方で、否定的な意見や本音は出にくい傾向があります。
そのため、人事や上司からの反応を気にするあまり、リスクを避けた回答になったり、表面的な意見が増えてしまったりする可能性があります。
社員の本音を引き出すためには、サーベイ導入前のオリエンテーションや説明会を通じて、調査結果が評価に影響しないことを明確に伝えなければなりません。
社員への丁寧な説明を行っている事例として、株式会社笑美面(えみめん)の取り組みを紹介します。
実名式のサーベイを導入した理由は、調査結果をもとに「どの社員がケアを必要としているのか」を判断してサポートを行い、離職率を低下させるためです。
不満を溜めている社員は、実名の調査でも率直な意見を出してくれるため、離職の傾向を察知してすぐにフォローをしています。
「関係者以外には調査結果を共有しない」「人事評価には影響しない」と、社員に繰り返し伝えたことで、実名式のサーベイでも回答率はほぼ100%の状態です。
結果が第三者にバレる可能性がある
閲覧範囲を適切に設定し、実名でサーベイを実施したとしても、閲覧した関係者によって情報が共有されてしまう可能性があります。
社員が抱えている不満が予期せぬところで職場内にバレてしまうと、人間関係が悪化したり、チームの協力体制が崩れたりすることも考えられます。
実名で調査を行うときは、情報が関係者以外に漏れないようシステム上の設定を確実に行い、情報管理に関する管理職(マネージャー)への教育が必要です。
実名式のサーベイを逆手にとり、社員同士のコミュニケーションツールとして活用している「未知株式会社」の取り組みを紹介します。
同社では、個人へのアプローチに注力して離職率を改善するため、組織の状態を可視化できる実名式のサーベイを導入しました。
「ケアを求めている社員」が判明した場合は、上司による1on1ミーティングはもちろん、メンバー同士でお互いの状態(サーベイの結果)を確認し合っています。
メンバー間で「あの社員が少し悩んでいるかもしれない」といった情報と、サーベイの点数を照らし合わせて、個々への改善アクションにつなげています。
【実名】エンゲージメントサーベイを行うときの注意点

エンゲージメントサーベイを実名で実施するときには、2つの注意点があります。
実名式のサーベイは、人事評価への影響を懸念する社員もいるため、回答の活用範囲を明確に伝えておくことが重要です。
人事評価に影響しないことを伝える
サーベイに社員が安心して回答できるように、「どのような結果でも人事評価に一切影響しない」という点を伝えましょう。
実名でサーベイを実施すると、社員は「会社への不満を述べると、評価に影響するかもしれない」と考え、無難な回答をしてしまいがちです。
実施前に説明会を行い、「このサーベイは職場環境の改善を目的としており、個々の評価には影響しません」と、社員に明言することが重要です。
人事評価の基準は、業績・能力・情意(姿勢や行動など)を用いるため、サーベイの結果を反映しないように注意しましょう。
以下の記事では、人事評価の目的や基準について詳しく解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。

個人情報を安全に管理できるツールを導入する
エンゲージメントサーベイを実名で行うときは、社員名や所属部署、回答データなどの個人情報が外部に漏れないように管理しなければなりません。
その有効な方法の一つが、個人情報を安全に管理できるツールを導入することです。具体的なセキュリティ対策として、以下のような機能があります。
- 調査結果の閲覧権限の設定
- 社員のアカウント管理
- データの暗号化
- サーバーへの不正アクセス対策
- アクセスログの管理
個人情報が守られるツールを導入することで、社員が安心してサーベイに参加できる環境を整えられます。
【匿名】エンゲージメントサーベイを実施する3つのメリット

続いては、匿名でエンゲージメントサーベイを実施するメリットを解説します。主に以下の3点が挙げられます。
匿名での調査は、回答する社員にとっても心理的なハードルが下がります。「名前が出ないから自由に意見を言える」という安心感があるため、会社に対する本音を伝えやすいのが特徴です。
以下より、各メリットを詳しく見ていきましょう。
率直な意見が集まりやすい
匿名でエンゲージメントサーベイを実施することで、社員は「どのような回答をしてもバレることはない」と考え、本音や率直な意見を伝えやすくなります。
たとえば、職場の人間関係の状況を把握するため、「上司からの声かけやコミュニケーションに満足していますか?」と質問したとします。
実名で回答を求めると、上司の評価を気にしてネガティブな意見を避けるかもしれません。しかし、匿名で実施すれば、以下のような率直な意見を引き出せます。
「上司からの声かけの内容が、いつも同じに感じる」
「相談しても十分に対応してもらえていない」
社員の率直な意見を収集できれば、管理職向けのコミュニケーション研修を導入するなど、具体的な改善施策に反映できます。
匿名性が保証され、社員は安心して回答できる
匿名性が保証されたサーベイを実施することで、回答者が特定されることがなく、社員も安心して調査に参加できます。
たとえネガティブな回答をしたとしても、会社は個人を特定できないため、社内での立場が揺らいだり、人間関係が悪化したりする心配はありません。
社員が安心して回答できるように匿名性を保つことで、調査に参加するハードルも低くなり、さまざまな意見を収集しやすくなります。
回答率が向上し、多くのデータが集まる
匿名でエンゲージメントサーベイを実施することで、社員は調査に対する抵抗感を抱きにくく、回答率の向上につながります。
その結果、現場のいい点・悪い点などさまざまな意見が集まるため、統計的にも信頼性の高いデータが収集できるのです。
具体的な事例として、匿名かつ秘匿性の高いサーベイを実施した企業では、自由記述のコメントに「日頃の思い」が多数集まり、90%近い回答率を得られたケースもあります。
多様な意見が集まれば、組織の潜在的な問題が浮き彫りとなり、社員のエンゲージメントをより高められる施策が検討できます。
エンゲージメントサーベイの回答率を上げる方法を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。企業の実践的な取り組みも紹介しています。

【匿名】エンゲージメントサーベイを実施するデメリット

匿名式のエンゲージメントサーベイは、率直な意見を収集しやすいメリットがありますが、以下のようなデメリットも存在します。
このデメリットを踏まえて、エンゲージメントサーベイの質問設計を工夫する必要があります。
社員個人へのフォローアップが難しい
匿名式のエンゲージメントサーベイは、どの社員が回答したのかを特定できないため、個々のニーズや問題に対するフォローアップが困難です。
たとえば、自由記述のなかに「業務の負担が大きく、精神的に厳しい」といった意見があったとしても、どの部署の誰が回答したのかがわかりません。
社員の悩みに対して個別のサポートができない上に、全社的な施策を打ち出したところで、回答者本人の悩みが解消したのかも把握できないのです。
個別のフォローアップをしたい場合は、実名式のサーベイを検討してみましょう。
無責任な意見や批判が出る可能性がある
匿名式のサーベイは、社員の率直な意見を集められる一方で、無責任な意見や批判が寄せられる可能性もあります。
匿名をいいことに「誰が回答したかわからないから」と、自分の意見に責任を持たない回答が増えてしまい、サーベイ自体の信頼性も低下しかねません。
組織改善に有効なデータを収集するには、建設的な意見を求める呼びかけをして、調査の重要性を伝える工夫が必要です。
一方、実名式のサーベイであれば、質問に対して責任のある回答が期待できるため、信頼性のあるデータが収集できます。
【匿名】エンゲージメントサーベイを行うときの注意点

匿名でエンゲージメントサーベイを実施するときには、2つの注意点があります。
回答者を特定できるような条件(部署・職位・年齢など)を設定すると、匿名性が失われる可能性があるため、慎重な質問設計が必要です。
匿名性の確保を徹底する
匿名でエンゲージメントサーベイを行うときは、社員が安心して回答できるように、匿名性の確保を徹底する必要があります。
サーベイの設計段階では、個人を特定できない質問を設定し、特定の出来事に対する意見を求めないようにするなど、事前に質問内容を確認しておきましょう。
部署や年齢、業務内容など、複数の条件を組み合わせた質問ではなく、プロジェクト全体・チーム全体といった一般化する設計が理想的です。
また、回答データの管理や評価者に対する周知を徹底し、匿名性が守られていることを社員に示すことも、サーベイの信頼につながる重要な取り組みです。
建設的な意見を求める姿勢を示す
匿名式のサーベイの場合、否定的な意見やネガティブなコメントが出やすくなります。そのため、「現状のいいところを伸ばしていく」といった建設的な意見を社員に求めましょう。
具体的には、サーベイ導入時に経営陣や人事部が「皆さんの意見を聞いて、よりよい職場をつくりたい」と明言するのが効果的な方法です。
調査においても「働きがいを感じる点は、どのようなところですか?」といったオープンクエスチョンを活用することで、ポジティブな意見が集まりやすくなります。
サーベイは、問題や課題を解決するだけではなく、職場単位のいい点を見つけ出し、組織全体に水平展開することも目的の一つです。
エンゲージメントサーベイの信頼性を高める方法3選

エンゲージメントサーベイの結果を効果的に活用するには、社員が安心して回答できる環境づくりが必要です。
ここからは、サーベイの信頼性を高める方法として、3つの取り組みを紹介します。
以下より、それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
調査の目的や活用方法を社員に説明する
サーベイの信頼性を高めるには、調査の目的や結果の活用方法を、社員に明確に伝えることが重要です。
調査の意義を理解できないまま回答を求められると、社員は「本当に匿名なのか」「評価に影響しないか」と不安を感じてしまいます。
サーベイを行うときは、事前に以下の点を具体的に説明しておきましょう。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
説明項目 | 内容 |
---|---|
調査の目的 | 「職場環境の改善」「社員の声を施策に反映する」など、サーベイの狙いを具体的に示す |
結果の活用方法 | 回答内容をどのように分析し、改善策や施策に活かすのかを説明する |
匿名性 | 情報管理体制を構築し、情報漏洩の防止を徹底することを明言する |
人事評価への影響 | サーベイの結果が人事評価や業績に影響しないことを明確に伝える |
結果の共有範囲 | 集計結果がどのレベル(全社・部署単位 など)で公開されるかを示す |
フィードバックの流れ | サーベイの結果をどのように社員に提示し、改善アクションにつなげるかを伝える |
これらの点を丁寧に説明することで、社員は安心して回答できるようになり、結果として、職場環境の改善につながる有益な情報が得られます。
社員との対話を通じてフィードバックする
エンゲージメントサーベイは、結果の集計や分析をして完了ではありません。社員との対話を通じてフィードバックすることで、具体的な施策に反映できます。
調査結果の共有がなく改善策も提示されなければ、社員は「回答しても意味がない」と感じ、次回以降のサーベイへの協力が得られません。
フィードバックするときは、「社員との対話」に重点を置いたフィードバックミーティングを実施しましょう。
【フィードバックミーティングの手順】
- ミーティングの目的説明
- ミーティングルールの提示
- 調査結果(データ)の提示
- データに対する解釈
- 「未来」に向けた話し合い
- アクションプランづくり
調査の実施・運用を行う人事としては、結果を報告資料にまとめるだけでなく、社員と向き合う姿勢を持つことが重要です。
以下の記事では、対話重視の手法「サーベイフィードバック」について詳しく解説しています。具体的な手順を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

豊富な導入実績があるサーベイツールを導入する
エンゲージメントサーベイを効率的に運用しつつ、信頼性を確保するためには、豊富な導入実績があるサーベイツールの活用がおすすめです。
自社でアンケートを作成すると、匿名性を保つための仕組みや、データ管理のセキュリティ体制が不十分になりがちです。
しかし、信頼性のあるサーベイツールを導入することで、以下のような点から安心して活用できます。
- 匿名性の担保(回答者が特定されない設計、閲覧範囲の設定)
- セキュリティ対策(データの暗号化、アクセス制限)
- 実績による信頼性(運用のノウハウが蓄積されている)
近年では、エンゲージメントへの注目度が高まっていることから、組織の状態を客観的に把握するため、サーベイを導入する企業も増加すると見込まれています。
参考:【データ解説】エンゲージメントサーベイの導入率と市場動向|ミキワメラボ
エンゲージメントサーベイ導入を検討している方に向けて、豊富な導入実績と信頼性のあるツールを3つ紹介します。
組織の状態を可視化できるツールや、社員へのサポートの打ち手がわかるツールをピックアップしました。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
ツール | 実名・匿名 | 特徴 |
---|---|---|
ミキワメ ウェルビーイングサーベイ | 実名 | ・心の健康状態を可視化し、ケア対象の社員を特定できる ・性格を踏まえた適切な対話方法がわかる |
Geppo | 実名 ※組織サーベイは匿名も選択可能 | ・シンプルな設問でエンゲージメントを把握できる ・エンゲージメントの悪化を4つの領域で可視化する |
Wevox | 実名・匿名 ※どちらも設定可能 | ・9つの項目を可視化して多角的な分析ができる ・豊富な蓄積データをもとに他社との比較ができる |
以下より、各ツールの詳細を詳しく見ていきましょう。
また、目的別にサーベイツールを比較検討したい方は、以下の記事を確認してみてください。各ツールの特徴や費用を比較表で解説しています。

※各サービスの概要は、2025年9月現在の情報に基づき作成したものです。変更の可能性もあるため、詳細は各社Webサイトでご確認ください。
ミキワメ ウェルビーイングサーベイ(株式会社リーディングマーク)

※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
実名・匿名 | 実名 |
特徴 | ・心の健康状態を可視化し、ケア対象の社員を特定できる ・性格を踏まえた適切な対話方法がわかる |
費用 | 要問い合わせ ※利用人数によって異なる |
公式ホームページ | https://mikiwame.com/well-being.html |
提供会社 | 株式会社リーディングマーク |
実名式の『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』は、社員一人ひとりのモチベーションや心身の状態を可視化し、個別のサポートができるツールです。
性格検査の受検結果に基づいた「性格傾向に合わせた改善の打ち手」が提供され、どのようなケアをすればいいのかが即座にわかります。
月1回や週1回といった高頻度で調査を行いますが、短時間(3分間)で回答できるように設計されているため、社員に負担をかけません。
ミキワメの特徴や機能をより詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。実際に導入した企業の評判も紹介しています。

Geppo(株式会社リクルート)

※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
実名・匿名 | ・個人サーベイ:実名 ・組織サーベイ:実名(匿名の選択も可能) |
特徴 | ・シンプルな設問でエンゲージメントを把握できる ・エンゲージメントの悪化を4つの領域で可視化する |
費用(税込) | ・1〜25人:2万2000円 ・51〜100人:7万4800円 ・301〜500人: 21万7800円 など |
公式ホームページ | https://www.geppo.jp/ |
提供会社 | 株式会社リクルート |
『Geppo』は、個人サーベイ(高頻度)と組織サーベイ(低頻度)を組み合わせたツールで、社員・組織両方の課題を見える化できます。
個人サーベイでは、選び抜かれた3問の設問に回答するだけで、社員の健康状態や仕事に対する満足度などの測定が可能です。
組織サーベイは、eNPS(※)をベースとした設問設計により、職場の情報を踏まえた評価ができるため、エンゲージメントの低下要因を特定しやすくなります。
(※)自社を他の人に「どの程度勧めたいか」をあらわす推奨度。
組織サーベイとeNPSを詳しく知りたい人事担当者の方は、以下の記事を参考にしてみてください。サーベイの活用手順をわかりやすく解説しています。
Wevox(株式会社アトラエ)

※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
実名・匿名 | 実名・匿名 ※どちらも選択可能 |
特徴 | ・9つの項目を可視化して多角的な分析ができる ・豊富な蓄積データをもとに他社との比較ができる |
費用(税込) | ・スタンダードプラン:月額660円〜/人 ・ベーシックプラン:月額330円〜/人 |
公式ホームページ | https://get.wevox.io/ |
提供会社 | 株式会社アトラエ |
『Wevox』は、社員のエンゲージメントを高め、離職防止や生産性向上を支援するツールです。調査結果の集計は、実名と匿名のどちらでも設定可能です。
「現場にとって使いやすい」をコンセプトに設計されており、3分の調査でリアルタイムの分析ができる上に、回答や分析の操作性にも優れています。
蓄積されたビッグデータに基づく解析により、これまで見えてこなかった組織の特徴や課題、職場活性化のポイントがわかります。
エンゲージメントサーベイに関するよくある質問

エンゲージメントサーベイに関する「よくある質問」について、以下の2点に回答します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
エンゲージメントサーベイはやる意味がない?本当に無駄?
エンゲージメントサーベイは、社員の心理状態を可視化し、組織改善につなげるための重要な取り組みです。
しかし、以下のような運用をしてしまうと、社員から「やる意味がない」「回答するだけ無駄」と受け止められかねません。
- 目的を共有せず、調査を実施している
- 調査結果や改善策のフィードバックがない
- 分析結果をアクションプランに反映できていない
- 質問数が多すぎて社員に負担がかかっている
サーベイを組織改善の取り組みとして行うためには、まず調査目的を事前に説明し、社員の理解を得る必要があります。その上で調査結果をわかりやすくフィードバックし、実際のアクションに落とし込むことが重要です。
以下の記事では、エンゲージメントサーベイが無駄だと言われる理由と対策について詳しく解説しています。運用に悩んでいる人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

エンゲージメントサーベイの失敗例はある?
エンゲージメントサーベイは、組織の状態を客観的に把握できる有効な施策ですが、実施方法を誤ると失敗につながります。よくある失敗例は以下のとおりです。
- 回答内容から個人が特定され、職場にうわさが広まってしまう
- 職場の課題が明らかになっても、具体的な行動に結びついていない
- 「評価に影響するのでは」と不安が広がり、回答率が上がらない
- 調査が社員の負担になり、無難な回答しか得られなくなる
これらの失敗例に共通している課題は、社員が安心して自分の本音を話せる環境が整っていないことです。
サーベイは社員の声を集めるだけではなく、その声をどのように施策につなげるかで成果が大きく変わります。
サーベイの目的に応じて「実名」と「匿名」を使い分けよう

エンゲージメントサーベイは、社員の満足度やモチベーションを可視化できる有効な手段です。そのため、調査結果が関係者以外に漏れないよう、情報管理を徹底しなければなりません。
回答の集計方法には、「実名」と「匿名」の2種類があります。それぞれメリットとデメリットがあるため、目的に応じた使い分けが必要です。
>>「実名式サーベイ」「匿名式サーベイ」の選び方を確認する
実名・匿名どちらの方法においても、評価者同士での意見交換や、閲覧範囲の設定ミスによって、調査結果がバレてしまう可能性があります。
まずは、社内の情報管理体制を整え、回答内容が不用意に共有されない仕組みを構築することが大切です。情報の秘匿性を確保しつつ、効率的に運用したい場合は、サーベイツールの導入も検討してみましょう。

従業員のメンタル状態の定期的な可視化・個々の性格に合わせたアドバイス提供を通じ、離職・休職を防ぐエンゲージメントサーベイ。無料トライアルの詳細は下記から。