- 社内コミュニケーションが活性化しない原因
- 社内コミュニケーション活性化に向けた取り組み【事例あり】
- 企業が実施すべき社内コミュニケーション活性化のポイント
働き方の多様化によって、社員同士のコミュニケーション不足が問題視されるなか、職場の活性化に取り組んでいる経営者の方もいるのではないでしょうか。
円滑なコミュニケーションができない状況だと、情報共有の遅れによって業務効率が低下してしまい、社員のモチベーションにも悪影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、社内コミュニケーションが進まない原因と解決策、活性化につながる10個の取り組み(アイデア)を紹介します。
企業の成功事例や取り組むときのポイントも解説しますので、社員同士のつながりを強化し、組織全体の生産性を高めていきましょう。
社内コミュニケーションとは?
社内コミュニケーションとは、社員同士での情報共有や意見・アイデアの交換によって、業務を円滑に進めようとするプロセスのことです。
組織内での連携を強化し、円滑な業務遂行と一体感の向上を目指した取り組みとして、社内コミュニケーションという言葉が用いられます。
具体的なコミュニケーションの関係には、主に3つのパターンがあります。
全体 | 組織全体のコミュニケーション |
縦 | 経営層と管理職、上司と部下など、上下関係におけるコミュニケーション |
横 | 部署間、チーム間、事業所間など、横の関係におけるコミュニケーション |
社内コミュニケーションには、業務上の形式的な報告・連絡だけではなく、日常生活や体調面などの対話も含まれます。
社内コミュニケーションの活性化が進まない原因
社内コミュニケーションの活性化が進まない原因として、以下の3点が挙げられます。
コミュニケーションが円滑に進まなければ、社内の風通しが悪くなり、組織としての業績やパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
以下より、各原因について詳しくみていきましょう。
働き方の多様化によってコミュニケーションが取りづらい
働き方改革の推進が求められるなか、リモートワークやフレックスタイムなど働き方の多様化により、社員同士で直接対話しにくい環境になってきています。
従来のオフィスは、区切られたスペースのなかで、デスクを並べて仕事をするのが主流だったため、雑談や何気ない会話が生まれやすい環境でした。
現在では、好きな席で働けるフリーアドレスや、本社以外に働く拠点を置くサテライトオフィスも導入されており、対話する機会がつくりにくい状況です。
内閣府の報告書によると、多様化する働き方に対応するためには、管理職による部下へのマネジメントやコミュニケーションが重要だと示されています。
また、部下へのコミュニケーションが不十分な場合、メンタルヘルスへの影響に加えて、生産性低下や離職率増加のリスクがあることもわかりました。
参考:令和元年度 年次経済財政報告(働き方の多様化に向けて求められる変革)|内閣府
現代の働き方においては、コミュニケーションツールやオンライン会議の導入も視野に入れて、社員同士で交流する機会をつくるのも重要です。
社員がコミュニケーションに苦手意識を持っている
社内コミュニケーションの活性化が進まない原因は、社員がコミュニケーションそのものに苦手意識を持ち「自分の意見を言えない」という心理状態からです。
株式会社JTBの調査によると、コミュニケーションに対して会社員の14.4%が「苦手」、43.1%が「やや苦手」と回答しており、全体の5割以上の人が苦手意識を持っています。
コミュニケーションの項目別にみると、以下のようになっています。
項目 | 苦手 | やや苦手 |
複数の人の前で発表すること | 41.4% | 33.3% |
初めて会う人と話すこと | 23.7% | 39.8% |
食事会や飲み会などで話すこと | 18.0% | 38.9% |
自分の意見や思いを口に出して話すこと | 17.0% | 39.8% |
社員の苦手意識を克服させるには、コミュニケーションスキルを身につける研修や、安心して意見を言える環境づくりが必要です。
社員個々のコミュニケーション能力を評価・分析したい場合は、人材アセスメントの導入も検討してみましょう。以下の記事では、詳しい手順やおすすめツールを解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
部署間・役職間での対立が起きている
部署間・役職間におけるそれぞれの立場や役割に応じて、仕事を進めるうえでの視点や主張が異なるため、意見の食い違いによって対立が起きる場合があります。
その対立状態が続いてしまうと、組織全体での協力関係をつくるのが難しく、社内コミュニケーションの活性化を妨げる要因となるのです。
HR総研の調査によると、社内コミュニケーションに課題がある関係間として、大企業の73%が「部門間」と回答しており、全体でもっとも多い割合です。
参考:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2024 結果報告|HR総研
部署間・役職間による対立を防ぐためには、共通の目標を設定したりオープンに対話できる機会を設けたりして、相互理解を深める必要があります。
社内コミュニケーション活性化の取り組み・アイデア10選
社内コミュニケーションを活性化する方法として、10個の具体的な取り組みやアイデアを紹介します。
取り組み | 効果 | コスト |
社内イベントの開催 | 部署の垣根を超えた、社員同士の交流が実現 | 高 |
定期的な1on1ミーティングの実施 | 上司・部下の双方向コミュニケーションで、問題の早期解決 | 低 |
サーベイ活用による悩み相談 | 社員の心理状態を可視化し、適切なケアが可能 | 低 |
社内報の発行 | 社内情報の共有で、組織の一体感の向上 | 中 |
コミュニケーションツールの導入 | 業務進捗をスピーディに把握し、業務効率が向上 | 中 |
社内SNS・社内ブログの運用 | 情報発信に対するフィードバックで、新たな人間関係の構築 | 高 |
メンター制度の導入 | 若手社員のスムーズなスキル習得とキャリア形成 | 高 |
社内部活・サークル | リラックスした雰囲気で、自然なコミュニケーションが可能 | 中 |
感謝の言葉を伝えるサンクスカードの導入 | 感謝・尊敬し合う組織文化の醸成 | 低 |
休憩・リフレッシュスペースの設置 | 休憩しつつ社員同士でのコミュニケーションを実現 | 高 |
難易度やコストについては、企業規模や導入するシステムによって異なるため、自社の運営方針や予算などの検討が必要です。
以下より、社内コミュニケーション活性化の取り組みを一つずつ解説していきます。
社内イベントの開催
社内イベントの開催は、社員同士の絆や親睦を深め、コミュニケーションを活性化させる効果的な取り組みです。
全社規模で行う「スポーツ大会」や、季節ごとの「懇親会」など、カジュアルに交流できる場を提供することで、日常業務の枠を超えた関係性が構築できます。
具体例として、多種多様な社内イベントを開催している企業事例を紹介します。
人材サービスを提供するパーソルグループでは「はたらいて、笑おう。」をビジョンに掲げ、社員同士の交流を図るさまざまな社内イベントを開催しました。
- ウォーキング大会
- オンライン交流会(読書会、ゲーム紹介など)
- 男性育休サポーターズの発足式
ウォーキング大会においては、所属組織を超えた新たな出会いや、社員同士の親睦が深まるなど、社内コミュニケーションの活性化につながりました。
男性育休の応援イベントでは、助産師による「おむつ替え講習」を実施し、男性の育児への参加意欲を高めつつ、父親同士で交流を深める機会にもなっています。
定期的な1on1ミーティングの実施
「上司と部下」「人事担当者と社員」のように1対1で対話する場を設けることで、個々の業務進捗や課題が明確になり、信頼関係の構築につながります。
一方的な指示や助言ではなく、双方向のコミュニケーションによって、社員が抱える課題を早期に把握し、迅速なサポートが可能です。
具体例として、キャリア形成を支援する「1on1ミーティング」を取り入れている企業事例について紹介します。
化学製品の研究・開発を行う三菱ケミカル株式会社では、社員個人の主体的・自律的なキャリア形成のため、社内公募による人員配置を実施しています。
キャリア形成を補完する取り組みとして、上司と部下の双方向のコミュニケーションによる1on1ミーティングを強化しました。
「社員一人ひとりが、キャリアデザインを実現できる機会を自らつかみ取る」ことを目指し、面談を通してよりよい選択につなげています。
以下の記事では、1on1ミーティングの進め方や注意点について詳しく解説しています。業務に関する悩みや進捗状況など、社員の状態を確認するときの参考にしてみてください。
サーベイ活用による悩み相談
社員の状態確認や意見収集を行うサーベイ(調査)の活用によって、社内の問題点や改善すべき課題を把握でき、悩み相談をするときの貴重なデータとなります。
サーベイでは、目には見えない「仕事へのモチベーション」や「会社に対する愛着」を可視化できるため、数値の変化を確認しながら社員へのサポートが可能です。
実際に、心理状態の調査結果をもとに、社員へのケアを実施している企業事例について紹介します。
適性検査・サーベイを提供する株式会社リーディングマークでは、自社サービス『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』を活用して、社員の状態把握に努めています。
「心の幸福度」の状態を2週間に1回確認しており、悩みを抱えている社員に対しては人事による面談を行い、早期に悩みを解決するように取り組みました。
また、部門の垣根を超えたコミュニケーション活性化の取り組みとして、手を挙げた人が会社づくりに貢献できる委員会制度も設けています。
以下の記事では、サーベイの結果をもとに社員と対話する「サーベイフィードバック」について解説しています。組織状態の見える化からアクションプランの実行まで、具体的な手順も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
社内報の発行
社内報は、全社的に情報共有を図るツールとしての役割があり、掲載されている情報が話のネタとなって、社員同士でコミュニケーションを図るきっかけとなります。
各部署の活動報告や社員インタビューといった情報を通じて、普段関わりが少ない部署の状況や社内の動向がわかるため、組織全体の一体感を高める効果があるのです。
具体例として、長い年月にわたり社内報を発行し続けてきた企業事例を紹介します。
トヨタ自動車株式会社では、経営トップの想いや企業理念を伝える社内報を発行しており、社員同士のコミュニケーションツールとしても活用しています。
社内報「トヨタイムズ Magazine」には、国産大衆車の開発や工販合併、1960年代の「私のドリームカー」と題した内容など、さまざまなトヨタの歴史を掲載してきました。
時代の変化に応じて、名前や内容を変えながら発行されてきた社内報ですが、現在は90年の長い役割を終えて「トヨタイムズ(オウンドメディア)」に引き継がれています。
コミュニケーションツールの導入
Web会議システムやチャットツールなどの導入によって、リモートワークや多拠点勤務においても、円滑なコミュニケーションが図れます。
対面によるコミュニケーションも重要ですが、デジタル化が進んでいる昨今においては、通話やメッセージを気軽にできる環境が好まれる傾向です。
ツールを活用すれば、社員一人ひとりの業務進捗も素早く把握でき、業務効率の向上にもつながります。
コミュニケーションツールを導入・活用している企業事例を紹介します。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社では、デジタル化・IT導入を積極的に実施しており、その一環として全社員にスマートフォンの配布を行いました。
スマートフォンの配布により、以下のような取り組みが実現しています。
- 業務連絡や社内情報を掲載した社内ツール「WE NET」のアプリ化
- 立場や場所に関係なく発信できる社内SNS「Yammer」の活用
スマートフォンで情報の閲覧やコメント入力がしやすくなり、情報収集の簡素化と全社横断での双方向コミュニケーションが可能になりました。
社内SNS・社内ブログの運用
社員同士で情報交換ができる「社内SNS」や「社内ブログ」の運用によって、部署・役職に関係なく気軽にコミュニケーションが図れる環境になります。
日頃から意識して取り組んでいることや、成果につながった事例を社員が発信することで、コメントやフィードバックを通じて新たな関係構築が可能です。
具体例として、積極的に社内SNSを活用している企業事例を紹介します。
サントリーパブリシティサービス株式会社では、現場と現場のコミュニケーションを強化するため、社内イントラネット・社内SNSを活用しています。
社内イントラネットは、業務に必要な知識・ツールの共有や、経営層のメッセージ配信で活用しており、社員がいつでも会社の情報に触れられる環境です。
社内SNSでは、距離・事業の枠を超えたコミュニケーションやコラボレーションを実現するため、現場のチャレンジやアイデアの共有に活用しています。
メンター制度の導入
経験豊富な社員が後輩社員をサポートするメンター制度は、スムーズなスキル習得とキャリア形成を支援するための取り組みです。
新入社員や若手社員が気軽に相談できる環境をつくることで、業務の悩みや不安を解消する心理的なサポートをしつつ、コミュニケーションを図るきっかけにもなるのです。
実際に、メンター制度を導入している企業事例について紹介します。
イオンリテール株式会社では「自分のキャリアは自分で切り拓く」の考えのもと、さまざまなキャリアアップ制度や教育制度を整備しています。
- メンター制度
- セルフスタディ(自己啓発支援)
- 自己申告制度(キャリアや家庭状況を申告)
メンター制度においては、入社1年目の社員に対して年齢の近い先輩社員が相談役となり、定期的に業務の不明点や悩みを質問する機会を設けます。
社内部活・サークル
共通の趣味を持つ仲間と活動する「社内部活」や「サークル」の運営によって、業務の枠を超えた人間関係が築かれ、仕事における協力関係の構築にもつながります。
業務外で行う活動は、役職や立場に関係なくリラックスした雰囲気でコミュニケーションが図れるため、自然な形で社員同士の相互理解が深まるのです。
具体例として、社内クラブ活動を多数運営している企業事例について紹介します。
ゲームや音楽、映画といったエンターテインメント事業を行うソニーグループ株式会社では、社員が誰でも参加できる約30のクラブ活動を運営中です。
クラブ活動に参加している社員は、メンバー間に「ソニーの社員」の共通点があることに親しみを持ち、コミュニケーションの深まりやすさを実感しています。
銀行業務を行うメンバーに住宅ローンの相談をするなど、さまざまな人とのつながりが増える点がクラブ活動の魅力です。
感謝の言葉を伝えるサンクスカードの導入
サンクスカードとは、仕事で助けられたことや日頃の努力に対する思いなど、社員同士で感謝の気持ちを伝え合う取り組みのことです。
お互いへの感謝に加えて「こうすればもっとよくなる」と改善点を伝えることで、ポジティブな発言をする組織文化が醸成され、社内の雰囲気が明るくなります。
具体例として、サンクスカードを取り入れている企業事例を紹介します。
航空事業を行うANAグループでは、社員のモチベーションと自律性を高めるため、仲間の仕事に感謝・リスペクトする「Good Job Card」の取り組みを行いました。
社員同士でお互いのいいところを見つけたら、カードに記入して本人に手渡したり、Webメッセージで送受信したりしています。
メッセージを送った人、もらった人の双方にポイントが付与される制度も導入し、仲間を尊重し合って、個々が仕事に自信と誇りを持つ風土づくりにつなげています。
休憩・リフレッシュスペースの設置
休憩・リフレッシュスペースは、仕事の疲れを癒やすだけではなく、その場に集まった社員同士の自然なコミュニケーションを促進する働きもあります。
自然な形で会話が進み、お互いの部署での取り組みやアイデアなどの意見交換ができるため、職場以外の社員との関係をつくるときにも効果的です。
実際に、休憩スペースに加えてさまざまな設備を導入している企業事例を紹介します。
家庭用レジャー機器の製造・販売を行う任天堂では、ドイツのオフィスに社員の働きやすさや機能性、環境に配慮した設備を設けています。
- サッカーや卓球などを利用できる多目的競技場
- おもちゃや絵本、授乳に使える椅子などを完備した親子用ルーム
- Wi-Fiが使用可能な緑地やテラスエリア
また、普段の仕事の範囲を超えて社員が交流する機会をつくるために、社員が3〜4人ずつのグループに分かれて会話を楽しむ「コーヒーブレイク」も実施しています。
社内コミュニケーション活性化の成功事例
社内コミュニケーションの活性化に成功した事例について、5社の取り組みを紹介します。
各企業の事例をもとに、社内コミュニケーションの重要性を再認識し、自社の企業規模や職場環境に応じた施策を検討してみてください。
「組織活性化プロジェクト」で部署を超えたコミュニケーション
株式会社世古工務店では、建設業界の長時間労働と休日出勤の慣習によって、日々の仕事に振り回され、社員同士のコミュニケーションも十分ではありませんでした。
そこで、新しい組織文化を形成する「組織活性化プロジェクト」を立ち上げ、部署を超えたコミュニケーションの促進を図りました。
プロジェクトは、社員の主体性を伸ばす目的もあり、研修旅行や納涼祭などの会社イベントの運営を所属メンバーに一任しています。
プロジェクト発足やコミュニケーションツール導入によって、社員間の垣根がなくなり業務効率化が進んだことで、常態化していた時間外労働が15%削減されました。
参考:中小企業向け補助金・総合支援サイト 事例ナビ(世古工務店)|経済産業省
管理職が日常的に社員と対話するスタイルを構築
建設・産業用機械の製造を行う株式会社アルファ・エンジニアリングでは、数人の離職が発生したことで人員不足となり、採用面でも人材確保に苦戦していました。
人材戦略の一つとして、社員一人ひとりとの信頼関係を構築するため、総務部長が主体となり、日常的に社員と直接コミュニケーションを図るようにしました。
総務部長のコミュニケーションスタイルが他の管理職にも波及したことで、誰でも気軽に相談できる環境の構築につながっています。
コミュニケーション活性化と給与・評価制度の見直しによって、離職の減少と技術力の向上につながり、大手企業からの受注も増加しました。
参考:中小企業向け補助金・総合支援サイト 事例ナビ(アルファ・エンジニアリング)|経済産業省
コミュニケーションを円滑にするためのチャットツールを導入
八戸東和薬品株式会社では、医薬品の在庫管理がデータ化されておらず、経験にもとづく非効率的な業務によって、長時間労働や過剰在庫などの課題が顕在化していました。
そこで、社内のさまざまな領域をデジタル化するため、以下のシステム・ツールを導入しています。
- 販売管理の基幹システム
- 顧客管理・営業支援ツール
- 配達用の位置情報ツール
- 社内チャットツール
チャットツールを導入したことで、社員同士のコミュニケーションが円滑になり、一連のデジタル化の取り組みと相まって、効率的な出荷業務が可能になりました。
また、社内の情報格差も解消され、全社員が会社の現状を認識しながら議論ができるようになり、従業員エンゲージメントの向上にもつながっています。
参考:中小企業向け補助金・総合支援サイト 事例ナビ(八戸東和薬品)|経済産業省
ケア社員のアラート情報にもとづき声かけなどのサポートを実施
ITエンジニアの派遣サービスを提供する株式会社ラクスパートナーズでは、休職するエンジニアが増加しているなか、サポートが属人的な判断で行われていました。
そこで、Googleフォームによる満足度アンケートから、社員の心理状態を可視化できるサーベイに移行し、以下のようなプロセスでエンジニアのサポートを実施しました。
- ケアを求めている社員のアラート情報を確認
- 1on1ミーティングや社員への声かけを実施
- 営業担当・プロジェクトマネージャーへの情報共有
サーベイの活用により、ケア対象の社員全員に対して適切なサポートができるようになり、四半期の休職者数が「5〜6人」から「1〜2人」まで減少しました。
事例:ケアを求める社員をサポートし休職者数の減少を実現|株式会社ラクスパートナーズ
従業員エンゲージメント(活力・貢献意欲)を調査するサーベイについては、以下の記事で詳しく解説しています。各ツールの特徴や費用も紹介していますので、比較検討するときの参考にしてみてください。
助けられたことを伝えるなどポジティブ発信を促す取り組み
企業のコーディネート事業を展開する未知株式会社では、社員のエンゲージメント低下によって、仕事を休む社員が毎日3人ほど発生している状態でした。
そこで、社員のエンゲージメントや満足度を可視化するサーベイを導入し、項目ごとに改善案を整理しつつ、ポジティブ発信を促すプロジェクトを発足・実行しました。
具体的には「同僚の好きなところ」や「仕事で助けられたこと」を見つけたときに、紙に書いて手渡したり、チャットで社内共有したりする取り組みです。
サーベイの活用によって、デジタル・対面両方のコミュニケーションが活発になり、組織としてのエンゲージメントも高まりました。
また、仕事を休む社員も「1日3〜4人」から「月1〜2人」まで減少しています。
事例:サーベイの結果から改善アクションを実施し、エンゲージメントが劇的に改善|未知株式会社
社内コミュニケーションの活性化によるメリット
社内のコミュニケーション活性化によって、以下のようなメリットをもたらします。
社員同士の意見交換が活発に行われれば、新しいアイデアが生まれやすくなり、新規事業の立ち上げといった、企業の長期的な成長にもつながります。
情報共有がスムーズになり生産性が向上する
社内コミュニケーションの活性化によって、社員同士で業務上の不明点を確認し合ったり、お互いに業務を補完し合ったりと、情報共有がスムーズになります。
部署の垣根を超えた交流が日常的に行われていれば、組織全体の連携も強化され、より迅速な情報共有が実現し、生産性の向上につながるのです。
HR総研の調査によると、大企業・中堅企業ともに6割以上の企業が、社内コミュニケーション不全によって迅速な情報共有に障害を受けていると回答しています。
また、コミュニケーション活性化に取り組んでいる企業のうち、4割は「社内の情報共有が向上している」と回答しており、効果としてもっとも多い割合でした。
参考:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2024 結果報告|HR総研
部署間・社員間の情報共有がスムーズに行われれば、業務効率が向上するだけではなく、人間関係のストレス軽減といった心理状態の安定にもつながります。
以下の記事では、ウェルビーイング(心身の健康と幸福)に取り組んでいる企業の方の談話を紹介しています。社内コミュニケーション活性化の一環として、ぜひ参考にしてみてください。
悩みや不安が解消され離職率が低下する
社内のコミュニケーションが活発になることで、悩みや不安を気軽に相談できる環境となり、休職・離職リスクの軽減につながります。
また、上司による定期的な対話やキャリア形成のアドバイスを行えば、社員は「親身になってサポートしてくれる」と実感し、離職する考えを持とうとしません。
ProFuture株式会社の「若手人材の早期離職に関する調査」によると、企業が社員の離職リスクを早期把握するため、以下のような取り組みを実施していることがわかりました。
取り組み | 実施割合 |
社内コミュニケーションの活性化 | 42% |
教育・研修制度の強化 | 31% |
職場環境の向上 | 29% |
参考:「若手人材の離職防止」に関する調査結果を公開|ProFuture株式会社
社内コミュニケーションの活性化によって、離職可能性の高い社員の把握につながり、1on1ミーティングや声かけといった迅速なサポートができます。
以下の記事では、社員が離職する原因や離職防止の方法について詳しく解説しています。企業の成功事例も紹介していますので、離職を食い止めたいと考えている人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
社員のモチベーションやエンゲージメントが向上する
社内コミュニケーションの活性化により組織の一体感が強まり、社員は組織・チームの目標達成に向けて、仕事に積極的な姿勢で取り組むようになります。
社員同士での意見交換やフィードバックが頻繁に行われるようになれば、個々の成長意欲も高まり、モチベーションやエンゲージメント(活力・貢献意欲)が向上するのです。
HR総研の調査によれば「社内コミュニケーション不全による障害を受けている業務」のなかで、社員の心理面に絞ってみると以下の項目になっています。
- 心理的安定性の向上
- 業務へのモチベーション維持向上
- 精神的ストレスの軽減
- エンゲージメント向上
上記の項目においては、大企業の3〜4割が障害を受けていると回答しており、コミュニケーション不全による社員への影響の大きさがわかります。
参考:「社内コミュニケーション」に関するアンケート2024 結果報告|HR総研
逆に捉えれば、社内でのコミュニケーションが活発に行われることで、社員の心理的な不安が解消され、仕事に対するモチベーションやエンゲージメントが高まると言えます。
エンゲージメントを高める方法をより詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。企業の成功事例を交えながらわかりやすく解説しています。
社内コミュニケーション活性化の成功につながるポイント
社内コミュニケーション活性化を成功させるために、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
経営層や人事部門からの一方的な施策を行うのではなく、実際に取り組む社員の負担を考慮し、成果を確認しながら必要に応じて改善していく姿勢が必要です。
双方向の対話を重視した施策を導入する
上司からのアドバイス・声かけの一方的なコミュニケーションだけでなく、双方向に対話できる場を設けて、社員の声に耳を傾けることが重要です。
対話を通して「上司は部下の状況を把握し、部下は上司のアドバイスを聞いて行動する」といったように、お互いの理解を深められます。
双方向の対話を重視した取り組みとして、以下のようなものがあります。
- 1on1ミーティング
- メンター制度
- 社員インタビュー
- チーム単位での意見交換会
また、部署を超えてコミュニケーションを図る場合は、社内SNSやチャットツールの活用によって、気軽にコメントし合える関係も構築できます。
社員に負担がかからない施策を実施する
コミュニケーション活性化の施策は社員の負担を増やさない工夫が必要であり、結果的にコミュニケーションが阻害され、業務が滞るのを避けなければなりません。
具体的なポイントとして、短時間で気軽に取り組めるものを選定し、強制的な参加を求めないといった対応が必要です。
たとえば、昼食を楽しみつつ会話する「ランチ会」や、社内で歩数を競い合う「ウォーキングイベント」といった取り組みがあります。
社員の自主性を尊重し、自然な対話が生まれる環境を整えることが、コミュニケーション活性化を成功させる重要なポイントです。
全社的に取り組み組織風土を改革する
部署・チーム単位でコミュニケーション活性化に取り組むことも重要ですが、全社的な施策で「積極的にコミュニケーションを図ろう」といった組織風土への改革も必要です。
あるチームだけが活発なコミュニケーションをしていたとしても、他のチームでは職場の雰囲気がよくない可能性があり、社内で格差が生じます。
そのため、全社的な取り組みによって社員の意識改革を行うことで、どの部署・チームでも同じようなコミュニケーションが図れる環境を整えられるのです。
組織全体で取り組む場合は、経営層や管理職が率先して行動する姿勢を示し、社員への積極的な参加の呼びかけによって、組織風土として根付かせられます。
社内コミュニケーションの活性化にはサーベイの活用もおすすめ
社員が自由に働く環境を選べるようになった昨今においては、社員同士が直接顔を合わせて会話しにくい職場環境になってきています。
しかし、社内コミュニケーションを活性化させなければ、情報伝達が滞ってしまい業務効率が低下するため、気軽に情報共有を図れる環境づくりが必要です。
具体的な取り組みについて、もう一度確認しておきましょう。
社員の心理状態に応じたコミュニケーションを図るためには、サーベイの調査結果にもとづくサポートが不可欠です。
社員との対話を通して、組織全体のコミュニケーション活性化を目指していきましょう。
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