1万人規模の介護グループの採用担当者が挑む、マネージャーの意識改革

課題:グループの成長と事業承継を重ねる中で、人事制度やマネジメント手法にばらつきが生じていた。また、採用市場の競争激化に伴う採用コストの増加や賃金上昇への対応が課題となり、若手社員を中心とした早期離職の抑制が重要な経営テーマとなっていた。
全社的な取り組みとして「離職・休職防止プロジェクト」を発足。その一環としてミキワメAIを通じたマネージャーの意識変革を実施し、一部拠点では長年の課題であった離職率を昨対比6%減を成し遂げた。
人手不足が常態化する介護業界において、採用と定着の両面で厳しい状況に直面してきたセントケア・ホールディング株式会社。採用コストをかけても1年以内に離職してしまう社員が少なくないなか、同社では全社的な「離職・休職防止プロジェクト」が発足しました。当初は新卒採用の適性検査として導入された『ミキワメAI』は、このプロジェクトを契機に、社員のコンディション把握とマネジメント支援へと活用の幅を広げていきます。今回は、人材開発部 採用定着支援課の橘様に、活用が広がっていった背景や運用の工夫、そして現場で起きた変化について伺いました。データを「受け止める」ことから始める組織づくりについても、詳しく語っていただいています
1万人を超える組織で、一人ひとりの心の状態をどう捉えるか
───まずは、橘様のご担当業務と、貴社の事業内容について教えてください。
私は人材開発部採用定着支援課に所属し、現場のマネージャーとコミュニケーションをしつつ、全社の採用と定着がよくなるように支援をしています。
メンタルトレーナーも務めており、アドラーの目的論にある「その人が何を成し遂げたいか」という考え方をベースに人に向き合ってきました。
当グループは、訪問介護や訪問看護、デイサービス、訪問入浴といった在宅サービスを中心に、地域密着型のサービスやホスピスまで幅広く手掛けています。こうした様々な事業を行っているグループ会社を合算すると、正社員、契約社員合わせて1万人を超える規模の組織になります。これだけの組織になると、一人ひとりがどんなことを考えていて、どんな思いを持っているのか、その心理状態を把握することが本当に難しいです。加えて、採用した方をどう育てていくのか、メンターとしてどうフォローするのか、そのスキルにも現場ごとのばらつきがありました。
採用コストをかけても辞めていく。定着が最重要課題になった

───介護業界全体として、人材の採用・定着はどのような状況にあるとお感じですか?
介護業界は常に人手不足で、業界全体では26万人ほどが不足していると言われています。当社でも毎年2000名以上を採用していますが、少子高齢化で市場は厳しく、人件費も採用コストも高騰しています。その一方で費用をかけて一生懸命採用してもすぐに辞められてしまうことが大きな課題となっていました。
正直なところ、グループ全体としても離職対策にそこまで着手できていなかったというのが実情です。自社の新規出店に加え事業継承で大きくなってきたため、継承前の仕組みをそのまま残しているケースも多く、情報や規定が分散していました。私自身も入社当初に経験しましたが、何かあった時に助けを求められるような相手もおらず、入社1~2年で退職される方が多くいらっしゃいました。
こうした背景の中で「離職・休職防止プロジェクト」というものが発足しました。
内部から見直さなければ、選ばれる会社にはなれない
───「離職・休職防止プロジェクト」では、どのような組織の姿を目指していたのでしょうか?
辞めるときや辞めて会社を去った後に、それでもセントケアのファンであり続けてもらえる組織が理想だと考えています。
人それぞれ事情があるので会社を辞めること自体は仕方がないと思っていますが、ご家族の介護が必要になった時に、自分がいた会社を推薦したくなるような組織を作っていきたいと思っています。また、これからは求職者の方もAIに相談しながら会社を選ぶ時代になります。口コミや内部の状態が芳しくなければ、AIに「この会社はブラックだ」と判定されてしまいます。内部体制からしっかり見直すことで、AIに選んでいただける会社になることも目指しています。
「こんな使い方ができるのか」客観的なデータと、伴走支援が決め手に
───新卒採用の適性検査としての活用が定着支援へと広がったのはどのような背景があったのでしょうか?
「離職・休職防止プロジェクト」の発足がきっかけになります。
『ミキワメAI』は、もともと新卒採用の適性検査として限定的に使っていました。それが、定着支援に取り組むことをきっかけに、より活用していこうとなり広がっていきました。
転換点になったのは、適性検査のみの利用から追加で行ったサーベイのトライアル期間です。単にツールを提供していただくだけでなく、研修の設計や運用の提案まで、カスタマーサクセスの方には伴走していただきました。実は、当初は私や一緒に本プロジェクトに取り組んでいた課長もまだ使いこなせていませんでした。しかし、伴走いただく中で性格の分布の見方や活用方法を詳しく教えていただいたことが私の中で大きな変化となり、当社なりの運用の形が見えてきました。
それまでは個人の性格やデータのみを見て働きかけていたところを、全体の分布から見た時にその方はどういう特性なのかまで分かった上で働きかけられるようになり、より納得感を生むことができるようになりました。
必要なところだけを見る。「成功体験」から輪を広げる運用

───実際に、どのようなかたちでミキワメAIを運用されていますか?
運用で大事にしていることは、マネージャーが積極的に使いたくなるよう支援することです。
当社ではマネージャーに積極的に使いたいと思ってもらうためにも、最初に成功体験を得てもらうことを意識しています。そのためにも、細かい理解よりも最初はマネージャーに「ふわっと分かった状態」で使ってもらっています。それでメンバーのマネジメントが上手くいくことが増えてくると、自然とマネージャー同士の会話の中でミキワメAIの話が出るようになりました。マネージャー同士の口コミで「ミキワメAIはマネジメントにうまく使えるもの」という認識が広がり、私自身が活用を無理強いしなくても自然と活用が広がっている状態をつくることができました。
また、私に相談するだけでなく、AIに相談することも推奨しています。部下への働きかけ方や関わり方に悩んだ時にAIに相談をするとサーベイ結果や性格を踏まえてアドバイスをくれます。
これが、部下への関わり方を振り返るきっかけになり、マネージャーの内省の機会にもなっています。私自身も、採用のときもメンバーとの面談のときも全部使っています。時間に関係なく相談に乗ってくれる、良き相談相手なんです。
「相手が問題」から「自分に何ができるか」へ。現場マネージャーの変化
───導入後、現場にはどのような変化がありましたか?
例えばあるエリアの事業所では、もともと離職率が高くいろいろな手立てを打っていたのですが、サーベイを導入するようになってからは離職率を昨対比6%減らすことができました。
何より大きかったのは、マネージャーの意識が変わったことです。これまで「メンバーに問題がある」と捉えていたところから、「自分自身に問題があったのかもしれない」と捉え直すようになってくれました。マネジメントの意識やコミュニケーションを変えるのは、本当に難しいです。だからこそ「どう関わればいいか分からない」と悩む方には「この人をこういう風にしたい、そのために自分はどうすればいいか」とAIに相談するようお伝えしています。マネジメントを原因ではなく目的から考える後押しを、ミキワメAIがしてくれていると感じます。
「仕事に行くのが楽しい」と思える組織へ
───最後に、今後の展望について教えてください。
おかげさまで、ミキワメAIの活用は約900人規模へと拡大することが決まりました。秋には関東、中部、関西と全国に広がっていく予定です。中には社長に就任されて間もない会社もあります。そんな中で、一人のマンパワーでは難しいことも、ミキワメAIが動かしてくれる。そう感じています。
最終的に目指すのは、全社員が「仕事に行くのが楽しい、ワクワクする」と思える組織づくりです。そのためには、自分自身の心の状態を知ることも、周りの人の状態を知ることも欠かせません。テクノロジーと人をうまく掛け合わせて、成長していける組織をつくっていきます。