従業員満足度とは「仕事内容」や「労働環境」など、組織や仕事に対する社員の満足度を表した指標のことです。
テレワークやフレックス勤務といった働き方の多様化により、従業員満足度を向上させるための取り組みが重要視されています。
従業員満足度が高まることで「働きがいのある会社」と感じる人が増え、自社に定着してくれる社員の増加も期待できるでしょう。
本記事では、従業員満足度の概要や高めることで得られるメリット、状態を把握するための調査方法について詳しく解説しています。
従業員満足度の向上によって効果が出た企業の事例も紹介していますので、人事担当の方は自社への取り組みの参考にしてみてください。
従業員満足度(ES)とは?どのような指標か解説
従業員満足度(ES)とは、仕事内容や労働環境、人間関係など、社員が企業に対して「どの程度満足しているか」を表した指標のことです。
社員の離職を防止することや、モチベーションを向上させることに、従業員満足度が大きく影響します。
また、組織の生産性の向上やチームワークを強化するうえでも、重要な指標の一つです。
組織はこれらの要素を総合的に評価し、社員が働きやすい環境を提供することで、従業員満足度の向上が期待できるでしょう。
従業員満足度とエンゲージメントの違い
従業員満足度とエンゲージメントに関連性はありますが、異なる概念や意味があります。
従業員満足度とは、企業に対する「労働環境」や「待遇」などの満足度をあらわす指標のことです。
一方エンゲージメントとは「強い関係性やつながり」をあらわす言葉のことで、ビジネスにおいては「仕事への熱意」や「組織への貢献意欲」をあらわす指標です。
「従業員満足度が向上して自社への愛着が生まれ、労働意欲や貢献意欲などのエンゲージメントが高まる」といった関連性があります。
また、社員のエンゲージメントを測定する方法では、一般的にエンゲージメントサーベイを活用します。
エンゲージメントサーベイについて詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
従業員満足度を構成する要素
従業員満足度は、組織内での働き方や環境に関連するさまざまな要素によって構成されます。
主な要素とその内容は、以下の表のとおりです。
構成要素 | 内容 |
---|---|
企業理念・ビジョン | 企業が掲げている理念やビジョン、経営方針に対する社員の理解度や共感度 |
人事評価・キャリア | ・人事評価の制度に対する公平性や満足度 ・キャリア開発プログラムや研修制度の充実度 |
仕事内容 | ・仕事内容や役割に対する満足度 ・仕事へのやりがいやモチベーション |
労働環境・条件 | ・オフィス環境の快適性や満足度 ・フレックス制度やリモートワークなど働き方の自由度 |
給与・報酬 | ・成果に対する給与や報酬の妥当性や満足度 ・優れた成果や貢献に対する特別報酬やボーナスの条件 |
福利厚生 | ・通勤補助や住宅支援の満足度 ・社内イベントや保養施設利用に関する満足度 |
人間関係・チームワーク | ・上司や同僚との関係性 ・チーム内の連携やコミュニケーションの取りやすさ |
これらの要素は、企業や業種によって異なる場合があります。
従業員満足度を高めるために、企業はそれぞれの要素をバランスよく測定・評価し、社員が満足・共感するような労働環境の構築が重要です。
従業員満足度が高いとどうなる?5つのメリット
従業員満足度を高めることで、以下の5つのメリットが得られます。
企業は社員の満足度を定期的に把握し、働きやすい環境に改善していくことで、モチベーション向上や離職の防止につながるでしょう。
以下より、従業員満足度を高めるメリットについて解説していきます。
社員の離職・休職の予防ができる
従業員満足度を高めるメリットの一つは、社員の離職や休職を予防できることです。
満足度の高い社員は、仕事に対してやりがいや充実感を持って働き「この会社で働きたい」と感じるため、離職や休職にはつながりません。
また、組織やチーム内に満足度の高い社員がいると、他の社員へのサポートや連携も強化され、組織全体の満足度が高まる相乗効果も得られます。
組織の生産性が向上する
組織の生産性が向上する点も、従業員満足度が高まることで得られるメリットの一つです。
満足度の高い社員は、仕事に対する行動意欲や貢献意欲が高まり、より効果的かつ効率的に業務に取り組む傾向があります。
また、仕事内容を理解して自身の能力やスキルを発揮し、組織の目標達成に向けて努力します。
社員一人ひとりの満足度が高まることによって、組織全体のパフォーマンスにいい影響を与え、情報共有やチーム連携をとおして、業務の効率性や生産性が向上するでしょう。
社員のモチベーションが向上する
従業員満足度が高まることで社員のモチベーションが向上し、仕事に対して意欲的に取り組むようになります。
社員が満足する労働環境や待遇が実現できれば、モチベーションを高く維持したまま仕事に取り組み、他の社員にもいい影響を与えます。
社員のモチベーションを高めるために、仕事の成果を公平に評価し、それに見合った報酬を与えることが大切です。
顧客満足度(CS)が向上する
従業員満足度が高まると、顧客へのサービスや製品を提供する品質が上がり、顧客満足度(CS)が高まります。
満足度の高い社員は、仕事に対する行動意欲が高く積極的な顧客対応をして、顧客のニーズを理解したうえで、迅速かつ丁寧な対応をします。
その結果「サービスの質が高い」「コミュニケーションがスムーズ」といった、顧客からも満足した声が寄せられ、企業のイメージや業績アップにつながるでしょう。
組織力やチームワークが強化される
社員一人ひとりの満足度が高まると、他の社員と協力して目標の達成を目指し、組織力やチームワークが強化されます。
満足度の高い社員は、組織の一員としての誇りや協力意識を持ち、チーム連携や情報共有を積極的に行うことから、一体感を持って行動します。
また、お互いにコミュニケーションやサポートを活発に行い、知識の共有や信頼関係を構築することにより、業務の効率化や生産性の向上にもつながるでしょう。
従業員満足度は厚生労働省も重要視している
厚生労働省は「魅力ある職場づくり」を推進し、労働生産性の向上や人材確保のために、従業員満足度の向上に向けた取り組みが重要だと呼びかけています。
参考:「魅力ある職場づくり」で生産性向上と人材確保|厚生労働省
「魅力ある職場」を実現するためには、以下の2点を行うことが重要です。
- 顧客満足度だけでなく、従業員満足度も重視する
- 従業員の目線に立って、継続した取り組みを行う
調査結果によると「従業員と顧客の満足度の両方を重視する企業」は「顧客満足度のみを重視する企業」と比べて業績が向上しています。
また、採用人数や採用の質も確保でき、人材確保の割合も高まっています。
企業は従業員満足度の向上に対する重要性を理解して、組織が持続的に成長できる施策の検討が必要です。
従業員満足度を向上させる3つの取り組み
従業員満足度を向上させるための主な取り組みは、以下の3つが挙げられます。
これらの取り組みを実践することで、社員のモチベーションや生産性が向上し、持続的な組織の成長や発展ができるでしょう。
以下より、従業員満足度を向上させる取り組みについて解説していきます。
企業理念や経営方針を説明して共感を得る
企業理念や経営方針を社員に説明して共感を得ることは、従業員満足度を向上させるための重要な取り組みの一つです。
社員が企業のビジョンや目標に共感し、自身の仕事内容や役割を認識していることで、モチベーションや組織への帰属感を高めます。
社員に説明する際は、具体的な施策や事例を用いて、企業理念や経営方針が「どのような成果に結びつくのか」を示すことが重要です。
働きやすい労働環境に改善する
社員の働きやすい労働環境に改善することも、従業員満足度を高めるための重要な取り組みです。
以下のような改善をすることで、社員が働きやすい環境を構築できます。
- 円滑なコミュニケーションが取れる仕組みの整備
- 休暇が取りやすい制度や雰囲気づくり
- 長時間労働にならない業務配分や協力体制の構築
社員がストレスなく快適に働き、仕事に集中できる環境を整備することは、モチベーション向上や業務効率化につながります。
また、従業員満足度をより向上させるために、上司や同僚によるサポートや連携を強化することも有効な取り組みです。
福利厚生を充実させる
自己啓発の補助や住宅の購入支援など、福利厚生を充実させることも、従業員満足度を高めるための効果的な取り組みです。
福利厚生とは、企業が社員に提供する給与以外の報酬のことで、健康や生活の質を向上させるような施策・取り組みです。
社員がプライベートと仕事を両立できるような福利厚生を提供することにより、社員の生活全体の充実度が向上して、働きがいや満足度が高まります。
従業員満足度を調査する方法
従業員満足度を調査する主な方法は、以下の2種類です。
社員の満足度や組織の課題を把握するために、アンケートやサーベイを活用した調査が有効です。
人事担当の方は、調査する目的を明確にして自社に合った方法を検討してみてください。
以下より、従業員満足度の調査方法ついて解説していきます。
従業員満足度アンケート(ES調査)
従業員満足度アンケート(ES調査)とは、前述した「従業員満足度の構成要素」に対する社員の満足度を測定するための調査のことです。
アンケートで得られた結果から「どの程度満足しているか」「不満を感じていることはないか」を把握・分析することで、問題点を解説するための施策が検討できます。
質問項目は、仕事内容や労働環境、報酬など幅広い範囲を設定することで、社員のさまざまな要素に関する意見を得られます。
従業員満足度アンケートの質問項目を詳しく知りたい方は、「従業員満足度アンケートの記事」を参考にしてみてください。
従業員サーベイ
従業員サーベイとは、社員の意見や満足度を把握して、フィードバックや改善策を提供する調査方法のことです。
従業員サーベイでは、従業員満足度に加えて社員のエンゲージメントも測定でき、働きやすい労働環境の構築や人事施策の検討ができます。
企業は収集した意見に対して真剣に向き合い、従業員満足度の向上に向けた、必要な対策や改善策を検討することが重要です。
従業員サーベイのメリットなど、さらに詳しく知りたい方は「従業員サーベイとは?の記事」を確認してみてください。
従業員満足度が高まり効果が出た企業事例
従業員満足度が向上したことで、実際に効果が出た企業の事例を紹介します。
他社の成功事例を知ることで、自社の施策や取り組みに活かせるため、企業の人事担当の方は参考にしてみてください。
以下より、2つの企業事例を解説していきます。
事例1:性格に合わせたケアを行い離職率が低下
こちらの事例では、サーベイツールの『ミキワメ ウェルビーイング』を導入して、性格に合わせたケアを実施したことで、社員の離職率が低下しました。
すでに適性検査を利用しており、従業員のミスマッチを防いでいましたが、店舗配属後の離職に課題を感じていました。
ミキワメ ウェルビーイングの導入により、現在の仕事への活力やメンタル状態が把握できるようになり、社員のケアにも役立てられています。
「個人の性格に合わせた結果や打ち手」がわかるため、社員とのコミュニケーションがスムーズになりました。
月に一度のウェルビーイングサーベイを実施し、ケアが必要な社員には面談を行って現状を確認しています。
ウェルビーイングの結果が個別の性格に合わせて出ることで、コミュニケーションが効果的に取れ、適切なケアが行えるというメリットも感じられました。
事例2:社員の個性や強みを生かした人材配置
こちらの事例では、社員の個性や強みを生かした人材配置にするため、適性検査の『ミキワメ』とサーベイツールの『ミキワメ ウェルビーイング』を活用しています。
人事の領域ではデータを活用しきれておらず、結果として適材適所の人員配置がやりきれていない、離職を防ぎきれていない、という課題がありました。
社員の個性や適性を把握するためにミキワメを利用し、客観的なデータを通じて適切な人材配置を実現することが可能となりました。
離職を防ぐためにウェルビーイングサーベイを活用して、社員の心理状態を把握し適切なコミュニケーションやケアを行っています。
ウェルビーイングサーベイで社員の状態を可視化することで、離職のリスクを未然に察知し、スコアの低い人に対して面談を実施し、本人の意向に沿った人員配置を行いました。
また、新卒採用においてはミキワメのマッチ度を参考にし、自社に適した人材を見極めるための判断材料としても活用しています。
従業員満足度の平均はどのくらい?
従業員満足度の平均は、企業や業界によって異なります。
全国2531人を対象にしたリアルワン株式会社の調査によると、満足度の割合と平均値は以下のとおりです。
- 満足割合:50.5%
- 平均値:2.31 点
この結果から、約半数の人が企業に対して満足に感じていることがわかり、過去からの推移を確認しても、大きく下降することなく同じ水準を維持しています。
まとめ:社員の定着を目指し従業員満足度を高めよう
今回の記事では、従業員満足度の重要性や高めるメリット、向上させる取り組みについて解説しました。
従業員満足度は、企業の成果や生産性に密接な関わりがあるため、社員が満足するような仕事内容や労働環境を提供し、満足度を高めることが重要です。
社員が不満を感じることのない働きやすい環境に改善できれば「自社で働き続けたい」と感じる社員が増え、離職率の低下が期待できます。
また、社員の声を効率的に収集し、改善策を見つける方法として、従業員満足度アンケートやサーベイの活用が欠かせません。
従業員満足度の向上に向けた取り組みを検討するために、人事担当の方は本記事を参考にしてみてください。
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