職務適性検査の導入を検討しているものの「どのような方法で、なにを検査するのか」と、疑問を感じている人事担当者の方もいるでしょう。
職務適性検査は、採用試験や人員の適正配置など、さまざまなシーンで活用されています。
採用時に検査を導入することで、面接や書類ではわからない「潜在的な性格や能力」が把握でき、より深い自社との適性が評価可能です。
本記事では、職務適性検査の概要や測定項目、導入によるメリットをわかりやすく解説していきます。
代表的な検査ツールも紹介していますので、自社の人事施策に適したツール選定の参考にしてみてください。
職務適性検査とは?
職務適性検査とは、人材が「自社の職務や仕事に対して、適性があるかどうか」を測定するための検査のことです。
おもに、採用試験の一つのプロセスとして導入されており、候補者の能力や性格、適性を客観的に評価(アセスメント)する目的があります。
具体的には、組織の能力・性格を検査で把握しておき、異動候補者の能力が活かせる職場や、性格の類似点が多い職場への人員配置です。
職務適性検査のような「評価・分析・データ活用」を行うアセスメントツールには、他にもさまざまな種類があります。
以下の記事では、アセスメントツールの種類や特徴を詳しく解説しています。おすすめツールも紹介していますので、導入を検討するときの参考にしてみてください。
職務適性検査は厚生労働省『GATB』によって普及
職務適性検査は、1987年に『GATB(General Aptitude Test Battery)』が、事業者用に改訂されてから一般的に普及し、企業が活用するようになりました。
現在は『厚生労働省編 一般職業適性検査(GATB)』として、採用や配属先の決定のときに活用されています。
検査では、職業適性の9つの能力(適性能)を測定し、その結果を6段階(A〜E)で評価して職務適性を判定します。
参考:GATB(厚生労働省編一般職業適性検査)の概要|独立行政法人労働政策研究・研修機構
詳しい検査の特徴については、後述の検査種類のなかで解説しています。
企業が職務適性検査を導入する目的
企業が職務適性検査を導入する最終的な目的は、自社の職務にマッチした人材を採用し、組織の生産性を高めることです。
その目的を果たすために、候補者の基礎的な学力や能力、行動特性を測定し、客観的な評価の基準として職務適性検査を活用しています。
候補者の性格や職場適応力など、数値化された検査結果を参考にすることで、自社の適性を評価しやすくなり、採用ミスマッチが防げます。
ミスマッチによるデメリットや対策については、以下の記事で詳しく解説しています。採用活動で悩んでいる人事担当者の方は参考にしてみてください。
職務適性検査のおもな測定項目
職務適性検査では、おもに以下の項目を測定します。
各項目をバランスよく測定し評価することで、人材の能力や適性を客観的に把握し、採用や人員配置の意思決定に役立ちます。
以下より、各測定項目を一つずつ解説していきます。
1:基礎知的能力
基礎知的能力の検査では、文章読解や演算などの問題を通して、仕事をするうえで必要な基礎的な能力を測定し、以下のような点を評価します。
- 思考力や演算処理能力など、基本的な知的能力を持っているか
- 社会人としての教養や知識、ビジネスマナーがあるか
- 問題解決に必要な論理的思考力を持っているか
業務遂行に必要な「作業の速さ・正確さ」や「課題をこなす力」も、職務適性の評価には欠かせないポイントです。
2:パーソナリティ(性格)
パーソナリティ(性格)の検査では、個々の性格特性や傾向を測定し、以下のような点を評価します。
- 協調性や責任感をどの程度持っているか
- どのような価値観や考え方の軸を持っているか
- 行動意欲やバイタリティがあるか
「他者を尊重する性格であるか」や「リーダーの資質を持っているか」も、業務を行うにあたって重要な評価項目です。
検査を通して、さまざまな視点から性格を評価することで、より深い人材の理解につながります。
3:コンピテンシー(職場適応力)
コンピテンシー(職場適応力)は、特定の職務においてハイパフォーマンスを出す人の行動特性を意味し、検査では以下のような点を評価します。
- 高い成果につながる行動特性を持っているか
- 目標達成に向けた強い意志や、決定力を持っているか
- 良好な対人関係を構築するための素質があるか
採用の場面では、候補者の「過去の行動・動機」について質問することで、面接ではわからない本質的な行動特性が見極められます。
また、組織内の「高い成果をあげる従業員」の特性をもとに、活躍可能性の高い人材の採用も可能です。
4:ストレス耐性(メンタル耐性)
ストレス耐性(メンタル耐性)の検査では、仕事に対するストレスやプレッシャーに関する質問を行い、以下のような点を評価します。
- ストレス耐性がどの程度あるか
- 抑うつ傾向があるか
- 失敗を糧にして成長する力があるか
検査では、日常的にみられる行動パターンやモノの見方、刺激に対する反応などを多角的に測定します。
仕事上での問題や困難な状況に直面しても、臆することなく柔軟に対応できるかも評価のポイントです。
職務適性検査のテスト形式
職務適性検査のテスト形式には、以下の4つの方法があります。
形式 | 概要 |
---|---|
Webテスト | インターネットを利用して、パソコンやスマホを用いて受検する方法 |
ペーパーテスト | 紙(マークシート)を使って回答する受検方法 |
テストセンター | 適性検査の提供会社が全国に会場を設置し、受検者を招いてパソコン受検する形式 |
インハウスCBT | 企業が自社で会場を準備し、受検者を招いてパソコンを受検する形式 |
Webテストは、受検者の都合に合わせて検査ができ、学業や仕事の状況に応じた柔軟な受検環境を整えられます。
ペーパーテストは、自社で準備して手軽に行えますが、対象者が多いと集計や採点に時間がかかってしまう点がデメリットです。
各テスト形式の特徴を把握し、自社の企業規模や運用方法に合わせて選択しましょう。
職務適性検査を導入するメリット・デメリット
ここからは、職務適性検査を導入する「メリット」と「デメリット」を解説していきます。
デメリット |
---|
すべての適性を把握できるわけではない |
職務適性検査だけでは、自社との適性を完璧には評価できませんが、検査結果にもとづいた評価は、公平かつ客観的な判断を可能にします。
以下の記事では、メリットとデメリットをより詳しく解説しています。比較表を使って各適性検査の特徴を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
メリット|職務適性を客観的に評価できる
職務適性検査によって、人材の能力や特性が数値化できるため、客観性を担保した人物評価が可能です。
採用の場面においては、面接や履歴書の情報だけで候補者を評価してしまうと、面接官の主観に左右されてしまう可能性があります。
検査による客観的なデータにもとづいて面接を行えば、候補者の言動や行動の不一致もわかり、面接の質が向上します。
実際に適性検査を導入した企業では、あらかじめ自社の組織分析をしてから、そのデータをもとに候補者の面接を行いました。
組織分析によって、自社の社風や従業員に共通している項目が可視化されたため、どの面接官が担当しても共通の視点で対応できています。
また、候補者が採用基準に当てはまっているかの判断も、適性検査の結果を参考にしています。
企業事例:株式会社プロレド・パートナーズ様
採用面接に検査結果を活用することで、候補者の強み・弱みの部分について深掘りした質問もでき、より深い人物像の把握が可能です。
メリット|潜在的な能力や性格を可視化できる
面接や書類の情報だけではわからない、潜在的な能力や性格を可視化できるのも、職務適性検査の強みの一つです。
検査では、仕事をするうえで必要な思考力や情報処理能力、個々の性格・価値観などが測定できます。
そのため、検査結果をもとに「この業務に適している人材かどうか」が客観的に評価でき、個々の能力を活かせる職場への人員配置が可能です。
採用で適性検査を活用している企業では、1次選考で面接、2次選考で適性検査を行い、その両方の結果を照らし合わせながら最終選考をしています。
適性検査の結果から、候補者の性格データを可視化して、性格タイプごとの行動パターンの把握を行いました。
その結果「自社で活躍している人物像」に近い人材が見極められ、データにもとづく根拠のある採用ができています。
企業事例:株式会社フォーラス&カンパニー様
上記のような採用プロセスの強化や、適材適所の人員配置に活用することで、個々のポテンシャルを見逃すリスクも減らせます。
デメリット|すべての適性を把握できるわけではない
職務適性検査を実施しただけでは、職務に対するすべての適性が判断できるわけではありません。
あくまで、人材の能力・性格を可視化した客観的な情報源として、採用や人員配置の場面で活用するという認識が必要です。
検査結果を活用するときは、以下の点に注意しておきましょう。
- 受検者が自分の意思とは違う回答をする可能性も考えておく
- 面接や書類、業績などと組み合わせて総合的に判断する
株式会社リクルートの「就職白書2024」によると、87.5%の企業が採用プロセスに「適性検査・筆記試験」を導入しています。
一方で面接(対面)は、実施率が94.1%とほとんどの企業が行っている点から、適性検査と面接を併用している企業が多いことも伺えます。
また、あらかじめ自社の特性を分析しておくことも、より正確に適性を評価するときのポイントです。
職務適性検査の成功事例と失敗事例
ここでは、職務適性検査を導入して「成功した事例」と「失敗した事例」をご紹介します。
成功事例からは適切な導入方法や活用法、失敗事例からは回避すべき誤ったアプローチについて学び、自社で活かすべきポイントを確認してみましょう。
職務適性検査の成功事例
会社名 | デジタルアスリート株式会社 |
事業内容 | デジタルマーケティングの代行支援 など |
従業員数 | 100人(2023年10月1日現在) |
同社の採用では、求める人物像が「成長意欲がある人」という抽象的な内容になっており、面接官によって評価のバラつきがありました。
そこで「定量的なものさし」を組み合わせた採用基準を作るため、適性検査『ミキワメ』を導入しています。
最終面接前に候補者が適性検査を受検し、その結果を面接官に提供して選考を行いました。
面接での感覚的な評価と、検査結果の定量的なデータの組み合わせによって、採用や面接の質が向上しました。
また「自社で活躍している人材に近いタイプであるか」といった、新しい観点での評価にも役立っています。
企業事例:デジタルアスリート株式会社様
職務適性検査の失敗事例
職務適性検査で失敗するケースは、企業側が検査を「単なる採用プロセスの通過点」として捉えてしまっている点です。
企業によっては、自社の採用目標を達成するため、安易に人員確保を目的にしている場合があります。
そのため「とりあえず適性検査を受検してもらおう」という考えから、検査結果をあまり重視せず、自社の風土や職務とのミスマッチが発生してしまいます。
代表的な職務適性検査の種類
ここからは、職務適性検査でよく活用されるツールをご紹介します。
豊富な導入実績と信頼性のある3つの検査をピックアップしました。
上記のほかにも、さまざまな検査ツールがあります。以下の記事では、24種類のおすすめツールを紹介していますので、比較検討時の参考にしてみてください。
また、職務適性検査には無料で受検できる検査もあります。以下より解説する3つのツールと一緒に確認してみてください。
GATB|厚生労働省編 一般職業適性検査
検査内容 | ・紙筆検査(知的能力、言語能力、数理能力など7項目) ・器具検査(指先の器用さ、手腕の器用さ) |
時間 | ・紙筆検査:約60分(※T版の場合) ・能力検査:15〜30分 |
テスト形式 | ペーパーテスト |
対象範囲 | ・新卒採用 ・中途採用 ・社員 |
費用(税込) | ・検査用紙(T版):4510円/10部 ・手引(採点盤付き):1850円 ※器具検査を行う場合は、別途検査盤が必要 |
公式サイト | https://www.koyoerc.or.jp/assessment_tool/gatb_biz.html |
提供者 | 一般社団法人 雇用問題研究会 |
企業が職務適性検査を一般的に利用するようになったのは、この『GATB(厚生労働省編一般職業適性検査)』が始まりです。
『GATB』は、16種類の検査から9つの能力(適性能)を評価し、40種類もの職業の適性が判定できます。
そのため、採用選考や従業員の人員配置・能力開発など、さまざまな場面で活用可能です。
ミキワメ|株式会社リーディングマーク
検査内容 | ・性格検査(価値観、コミュニケーション、バイタリティなど) ・能力検査(言語理解、文章構成力、図表処理など) ・ストレス耐性検査(職場適応力、メンタスヘルスなど) ・自社のハイパフォーマーとの適性度分析 |
時間 | ・性格検査:10分 ・能力検査:20分 |
テスト形式 | Webテスト |
対象範囲 | ・新卒採用 ・中途採用 ・社員 |
費用(税込) | ・システム利用料:3万3000円〜/月(年間契約) ・受検料:550円/人(既存社員は無料) |
公式サイト | https://mikiwame.com/ |
提供企業 | 株式会社リーディングマーク |
適性検査『ミキワメ』は、従業員への性格検査(10分)を通して組織分析を行い、その基準をもとに人材の「活躍可能性」を見極められる検査です。
検査結果から各部署との適性度合いも確認できるため、個々の能力や適性に合った職場への配属にも活用できます。
カスタマーサクセスチームによって、組織分析や採用基準の策定をサポートしてくれるため、導入当初でも安心して運用できます。
SPI|株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
検査内容 | ・性格検査(組織適応性、面接チェックポイント) ・基礎能力検査(コミュニケーション、思考力など) |
時間 | ・テストセンター、インハウスCBT、Webテスト:65分 (性格検査:30分、能力検査:35分) ・ペーパーテスト:約110分(性格検査:約40分、能力検査:70分) |
テスト形式 | ・Webテスト ・ペーパーテスト |
対象範囲 | ・新卒採用 ・中途採用 |
費用(税込) ※大卒採用向け SPI3-Uの場合 | ・初期費用:無料 ・テストセンター:6050円/人 ・インハウスCBT:4400円/人 ・Webテスト:4400円/人 ・ペーパーテスト:5500円/人 |
公式サイト | https://www.spi.recruit.co.jp/ |
提供企業 | 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ |
『SPI』は企業の業種や規模に関係なく、採用選考や面接、配属先の選定などあらゆる場面で活用できます。
また、従業員を対象とした検査もできるため、性格・考え方・価値観など、入社後からの変化を確認しながら人材育成にも役立てられます。
『SPI』の検査内容や適性検査との違いは、別の記事で解説していますので、より詳しい内容を知りたい方は確認してみてください。
(参考)無料で受検できる職務適性検査
職務適性検査のなかには、無料で受検できるツールもあります。厚生労働省や大手企業が運営している3つのツールをご紹介します。
ツール | 概要 |
---|---|
職業適性テスト(Gテスト) | ・厚生労働省が運営する「職業情報提供サイト」で実施できる検査 ・3種類の検査(約10分)を行い、8種類の職業グループとの適性を判定 |
職業適性検査 | ・「ベネッセ教育総合研究所」が提供している検査 ・興味や関心(36問)と、秘めた能力(5〜10問)の質問で、回答者に向いている職業を診断 |
適職診断 | ・求人検索サイトを運営する「求人ボックス」が提供している検査 ・30問の質問に回答して、心理学にもとづいた性格タイプと、強みを発揮できる職業を診断 |
上記のような無料ツールは、診断結果を参考にして、受検者自身が職務適性を判断するためのツールです。
企業においては「自社の特性にマッチした人材確保」が職務適性検査の目的であるため、組織分析ができる検査ツールの導入を検討しましょう。
職務適性検査を導入するときの注意点
職務適性検査を導入するときは、以下のような点に注意しましょう。
- 直面している課題や組織のニーズを明確に把握する
- 自社の業種や職務に合致する「求める人材像」を決める
- 目的や予算に合った検査ツールを導入する
職務適性検査は、採用や配属先の選定など、あらゆる場面で活用できる効果的なツールです。
しかし、検査をするだけが目的になってしまうと、検査ツールの導入費用や受検環境を整えるための時間が無駄になってしまいます。
自社に必要な人材を見極めるため、職務適性検査と他のプロセスを組み合わせた評価基準の設定が重要です。
まとめ:職務適性検査で人材の「見えない部分」を把握しよう
今回の記事では、職務適性検査の概要や評価項目、導入によるメリットなどを解説してきました。
デメリット |
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すべての適性を把握できるわけではない |
職務適性検査は、人材採用や人員配置の効率化、組織のパフォーマンス向上に大きな効果をもたらします。
検査を導入するときは、組織の課題やニーズを明確にしたうえで、自社に合った検査ツールを選定しましょう。
自社独自の採用基準を策定できる適性検査『ミキワメ』では、無料で資料のダウンロードができますので、ツール選定時の参考にしてみてください。
ミキワメは、候補者が活躍できる人材かどうかを500円で見極める適性検査です。
社員分析もできる30日間無料トライアルを実施中。まずお気軽にお問い合わせください。