- 新卒採用のミスマッチを防ぐ方法【入社前・入社後】
- 新卒採用でミスマッチが起きる原因・会社側の課題
- 採用ミスマッチ防止に取り組む企業の事例
新卒採用において、入社後に「思っていた人物と違った」「経験やスキルが不足している」と感じた経験はないでしょうか。
時間とコストをかけて採用したにもかかわらず、入社後のミスマッチによって離職者が増えると、職場の士気や生産性の低下につながりかねません。
本記事では、新卒採用におけるミスマッチの原因や会社側に潜む課題、入社前後で実践すべき対策について詳しく解説します。
この記事を読み終えれば、早期離職を未然に防ぐための知識を得て、自社に合う人材を見極める採用プロセスが構築できるようになります。
以下の資料では、活躍できる人材を見極めるために「採用担当者がすべき対応」を紹介していますので、本記事と合わせてご活用ください。
>>「自社で活躍できる人材の見極め方 ~採用のミスマッチをゼロにする~」の資料をダウンロードする

新卒採用におけるミスマッチの現状(離職状況)

厚生労働省の調査をもとに、新卒採用におけるミスマッチの現状を考察してみましょう。
調査結果によると、新卒で採用した社員の約3割が入社後3年以内に離職(早期離職)しており、2017年からの推移をみると離職率は増加傾向にあることがわかります。
※以下の表は右にスクロールできます
卒業年 (大学卒) | 全体離職率 (3年以内) | 宿泊・飲食 サービス業 | 生活関連 サービス業 | 小売業 | 情報通信業 | 製造業 |
---|---|---|---|---|---|---|
2017年 (平成29年) | 32.8% | 52.6% | 46.2% | 39.3% | 29.4% | 20.4% |
2018年 (平成30年) | 31.2% | 51.5% | 46.5% | 37.4% | 27.4% | 19.0% |
2019年 (平成31年) | 31.5% | 49.7% | 47.4% | 36.1% | 27.8% | 18.5% |
2020年 (令和2年) | 32.3% | 51.4% | 48.0% | 38.5% | 27.9% | 19.0% |
2021年 (令和3年) | 34.9% | 56.6% | 53.7% | 41.9% | 29.3% | 20.6% |
参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」をもとに作成
業種によって離職率に違いはありますが、宿泊・飲食サービス業においては約5割、つまり2人に1人は入社後3年以内に会社を辞めていることになります。
こうした背景には、入社前の期待と現実のギャップ、職場環境・人間関係に対する不満など、ミスマッチを含めた複数の要因が考えられます。
早期離職の原因をより詳しく知りたい方は、以下の記事も確認してみてください。離職率の改善に成功した企業事例も解説しています。

離職理由から見えてくるミスマッチの兆候
新卒社員の離職理由を分析すると、企業とのミスマッチの兆候が浮かび上がってきます。
リクルートの調査によると、以下のように「職場の人間関係が合わない」「希望する働き方ができない」など、ミスマッチに関する離職理由が多数挙げられています。
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出典:新人・若手の早期離職に関する実態調査|株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
ミスマッチが起きる兆候は、内定から入社直後にかけて現れはじめ、徐々に会社と心理的な距離をとる行動がみられるようになってきます。
【兆候の具体例】
- 発言や質問が減り、会議や雑談で存在感が薄くなる
- 指示待ちの姿勢になり、自発的な行動や提案がなくなる
- 有給休暇の取得が急増し、会社にいる時間が少なくなる
会社側としては、離職者から会社を辞めた理由を収集・分析し、どの段階でミスマッチが生じたのかを把握する必要があります。以下の記事では、離職の兆候を察知する方法を詳しく解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

【入社前】採用ミスマッチを防ぐための対策6選

新卒採用のミスマッチを防ぐには、企業情報の提供や選考基準の設定など、入社前の対策が必要です。具体策として、以下の6つが挙げられます。
これらの対策に加えて、社内制度の見直しやキャリア形成のサポートを行うことで、社員の離職防止にもつながります。以下の記事では、具体的な離職防止策を多数紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

なお、本記事では「入社後」に行うミスマッチ防止策も解説しています。先に確認したい方は、以下のリンクからご覧ください。
>>「【入社後】採用ミスマッチを防ぐための対策3選」をチェックする
自社のよい側面・悪い側面の両方を伝える
採用活動においては、つい自社の魅力や強みを前面に押し出してしまいますが、ミスマッチ防止の観点からは「弱みや課題」を含めた情報提供が必要です。
応募者は入社後の環境を想像しながら意思決定するため、理想と現実のギャップが大きいと早期離職のリスクが高まります。以下のように、自社の「いいところ・悪いところ」の両方を明確に伝えましょう。
【具体例】※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
よい側面 | ・新人研修やメンター制度が充実しており、未経験の分野でも着実に学べる体制が整っている ・フラットな組織で上司との距離が近く、意見を言いやすい風土である |
悪い側面 | ・繁忙期には業務量が多くなり、残業が発生しやすくなる ・成果主義のため、結果を出すことが評価に直結しやすい反面、プレッシャーを感じる場合がある |
また、現場社員の声を交えて「リアルな職場の雰囲気」を伝えることで、応募者は入社後の働き方をイメージしやすくなり、結果としてミスマッチ防止につながります。
採用基準を定め「求める人物像」を明確にする
採用ミスマッチを防ぐには、自社が求める能力やスキルなどを定義し、どのような人物が自社に合うのかを言語化する必要があります。
ただ漠然と「コミュニケーション力がある人」や「明るい性格」といった基準では、面接官の主観に頼った判断になりがちです。
自社で活躍している社員の共通点を分析し、成果を出すために必要な資質・価値観を明確にしたうえで、他社にはない独自の採用基準を策定しましょう。
たとえば、適性検査ツールの『ミキワメ』では、コミュニケーションやバイタリティなど27項目で候補者の特徴を分析し、自社にフィットする人材かどうかを可視化します。

このように「どの特性が高くて低いのか」が数値やグラフでわかれば、面接官同士の目線合わせもできるため、判断のばらつき防止と一貫性のある採用が可能です。
以下の資料では、社内で採用の評価基準を揃える方法や、実際の評価基準の具体例を紹介しています。活躍人材を見極めるための参考としてぜひご活用ください。
適性検査で能力・スキルを見極める
新卒採用では、社会人経験がない学生の適性を見極める必要があるため、書類や面接だけでは、応募者の能力・スキルを正確に把握できません。
しかし、採用時の補助ツールとして適性検査を活用すれば、面接では見抜きにくい論理的思考力やコミュニケーションスキルなどを数値で可視化できます。
適性検査では、以下に示すように「能力検査」と「性格検査」を行い、学力・性格の両面で総合的に評価します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
能力検査 | ・基礎学力 ・一般常識(社会人基礎力、マナー など) ・言語能力(語彙力、文章読解、論理的思考力 など) ・非言語能力(計算、推論、数的理解力 など) ・英語理解力 |
性格検査 | ・性格(人間性、考え方、価値観 など) ・行動特性(対人力、協調性 など) ・コミュニケーション能力 ・ストレスマネジメント特性 |
適性検査の結果はひとつの判断材料にすぎませんが、面接や書類選考と組み合わせることで、採用精度の向上とミスマッチの防止につながります。
検査結果の見方や活用方法について知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。SPIやGABなど種類別に詳しく解説しています。

選考前にカジュアル面談を行う
選考前にカジュアル面談を行うことで、応募者は緊張せず本音を話しやすくなり、自社に対する認識や価値観をより正確に伝えられます。
企業側にとっても、書類や面接だけでは見えにくい人物像・考え方を把握する機会となり、組織文化とフィットするかどうかの判断に役立ちます。
マイナビの調査によると、採用活動で「企業認知」のために実施したこととして、19.7%の企業が「面接以外の個別面談」と回答しました。
この結果には、カジュアル面談のほかにセミナーやOB・OG訪問なども含まれていますが、企業は選考以外のさまざまな方法に注目していることが伺えます。
候補者との対話を通じて、双方が「この企業・この人と働けそうか」を確かめる時間となれば、結果として入社後のギャップが生じにくくなります。
面接で性格を踏まえた質問を行う
採用面接においては、スキルや経験を問う質問だけでなく、性格・価値観を踏まえた質問を行うことで、入社後「どのような働きをするか」が判断できます。
たとえば、候補者の「人柄」「考え方」「行動傾向」を把握したい場合は、以下のような質問をしてみましょう。
【質問例】
- これまでの人生で、挫折した経験はありますか?
- その挫折をどのように乗り越えてきましたか?
- 周囲と意見が対立したとき、どのように対処してきましたか?
- 周囲からどのような人だと言われることが多いですか?
- 目標を立てたあと、それを達成するためにどのような行動をとりますか?
また、面接前に適性検査や性格診断を実施していれば、その結果を踏まえた面接が可能となるため、より深く候補者の性格・価値観を把握できます。
リファラル採用(紹介による採用)を実施する
リファラル採用を実施することで、社風や働き方をよく理解した既存社員が「自社に合いそうな人」を紹介してくれるため、性格・適性のマッチ度向上につながります。
既存社員の知人・友人を通じて、採用候補者を紹介してもらう採用手法のこと。
紹介される候補者も、事前に職場のリアルな情報を得られるため、入社後の働き方にギャップを感じにくくなります。
リファラル採用は、中途採用の手法としてイメージされがちですが、ある調査では「中途採用で導入している企業の7割以上が新卒採用でも実施している」といった報告もあります。
ただし、既存社員の紹介により、組織の多様性が失われたり公平性が保てなかったりする可能性もあるため、推薦理由の提示や選考プロセスの確立が必要です。
【入社後】採用ミスマッチを防ぐための対策3選

採用活動において「入社=目標達成」と捉えてしまいがちですが、社員の定着と活躍を実現するには入社後のサポートも必要です。具体策として、以下の3つが挙げられます。
これらの施策によって、新卒社員の定着率向上はもちろん、職場全体のエンゲージメント向上にもつながり、長期的な人材戦略の基盤となります。
また、入社前のミスマッチ防止策については、本記事の前半で解説していますので、以下のリンクからご覧ください。
>>「【入社前】採用ミスマッチを防ぐための対策6選」をチェックする
メンター制度を導入し、精神的なサポートをする
メンター制度を導入することで、経験豊富な先輩社員が新入社員のサポート役となり、仕事に関する不安・悩みを気軽に相談できる環境が整います。
日本メンター協会の調査によると、企業がメンター制度を導入する目的として、その多くが「職場コミュニケーションの活性対策」「メンタルヘルス対策」と回答しました。
とくに新卒社員の場合は、仕事の進め方だけでなく、組織文化に対する理解や人間関係の築き方にも戸惑う可能性があります。
そのため、上司とは異なる立場のメンターを配置することで、職場にも馴染みやすくなり、ミスマッチの原因となる「会社に対する不満」の軽減につながるのです。
定期的に1on1ミーティングを行う
1on1ミーティングは、上司と部下の間で定期的に行われる「対話の場」であり、新卒社員の悩みやキャリア観を把握するために有効な手段です。
とくに入社して間もない社員は、仕事に慣れる過程において「期待とのギャップ」に悩みやすく、定期的な対話を通してミスマッチの兆候を把握する必要があります。
ただし、感覚的に行う1on1ミーティングでは、社員の価値観・考えを変えるようなアドバイスができません。
社員一人ひとりが目標を持ち、個々のパフォーマンスを最大限に引き出すようにマネジメントすることで、ミスマッチ防止と同時に「活躍人材の育成」にもつながります。
以下の記事では、マネジメント理論にもとづく理想的な1on1の流れを解説しています。「うまく社員と対話できていない」と悩んでいる人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

また、株式会社リーディングマークでは、1on1を起点としたマネジメント支援プラットフォーム『ミキワメ マネジメント』を提供しています。ご興味のある方は、以下のリンクより詳細を確認してみてください。
サーベイを活用し、心理的フォロー体制を強化する
新卒社員に対して定期的にサーベイを実施することで、言語化しにくい心理的な不調や孤独感、価値観のずれといった「ミスマッチの兆候」を早期に発見できます。
社員のモチベーションやエンゲージメント(会社に貢献する意欲)をアンケート形式で測定する調査。測定対象や内容、頻度によってサーベイの種類が異なる。
参考:サーベイの意味とは?10種類の解説と導入メリット・注意点を徹底調査!
サーベイの定点観測により、心身の状態や会社への愛着(エンゲージメント)などの変化を捉え、離職の可能性があるかどうかの確認が可能です。

調査結果にもとづいた面談が可能なフォロー体制を整えることで、社員は「自分の声を拾ってもらえている」という安心感を与えられます。
なお、組織全体の状態・傾向を把握したい場合は匿名での調査で問題ありませんが、ケアが必要な社員を特定しサポートしたいときは、実名式のサーベイを導入しましょう。
AIの活用も採用ミスマッチ防止に効果あり!

AI活用の波が広がりつつあるなか、業務効率化の手段として活用されるだけでなく、採用要件設定や適性検査などの採用プロセスにもAIが組み込まれています。
マイナビの調査(上図)によると、採用活動にAIを取り入れているか新卒採用担当者に質問したところ、49.1%(※)が「AIを取り入れている」と回答しました。
(※)「積極的に取り入れている」「取り入れている」の合計
さらに、採用者の質にどのような影響があったかを聞いてみると、「ミスマッチが起こりにくくて良いと思う」といった声もありました。
たとえば、AI搭載の適性検査を活用することで、過去の採用データや従業員情報を学習・解析し、候補者の強みや弱みを可視化したり活躍可能性を予測したりできます。
自社のカルチャーや求める人物像にマッチする人材を提案してくれるため、より精度の高い採用が実現します。(ただし、AIはあくまで支援ツールとして活用し、人間の判断と組み合わせる必要がある)
以下の資料では、人事業務でChatGPTを活用する方法や、実際の活用事例を紹介しています。AI活用の第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。
新卒採用でミスマッチが起きる主な原因

ここまで新卒採用のミスマッチ防止策を解説してきましたが、なぜミスマッチは起きるのでしょうか。主に以下の5点が考えられます。
これらの根本的な原因を正しく理解し、自社の採用フローや育成計画の見直しを検討していきましょう。
中途採用でのミスマッチに悩んでいる人事担当者の方は、以下の記事を確認してみてください。具体的なミスマッチ防止策や、企業の成功事例を解説しています。

理想の働き方と現実にギャップが生じている
新卒採用でミスマッチが起きる原因として、学生時代に思い描いていた働き方と、実際の業務内容や職場環境にギャップが生じている点が挙げられます。たとえば、以下のように入社前の情報と実態が異なるケースです。
- やりがいのある仕事と聞いていたのに、電話対応や資料整理などの事務的な仕事が中心だった
- ワークライフバランス重視の会社と聞いていたが、配属先では毎日残業が発生し、休暇も取りにくい
実際に、企業の人事担当者を対象としたマンパワーグループの調査によると、8割以上の人が新卒採用におけるミスマッチを経験していることがわかりました。
そのミスマッチの要因を質問したところ、36.3%が「本人の期待と実態にギャップが生じた」と回答し、全体で3番目に多い結果となりました。
参考:新卒採用におけるミスマッチは8割超|マンパワーグループ株式会社
言葉や説明だけでは自社の本当の姿を伝えきれないため、インターンシップや社員との座談会を通して、リアルな働き方を包み隠さず伝える工夫が必要です。
会社のビジョンに対して共感を得られていない
新卒採用でミスマッチが起きる背景として、会社が掲げる理念やビジョンに対し、社員から共感を得られていない点が挙げられます。
たとえば、経営理念が示されているだけで、その意味や行動指針が説明されていなかったり、現場レベルまで浸透していなかったりするケースです。
入社後に「この会社はなにを目指しているのだろうか」と疑問を持つと、次第に将来に対する不安が生まれ、結果として離職の原因になってしまいます。
企業側としては、選考過程において「候補者がどのような価値観を持っているか」を深く掘り下げ、お互いにフィットするかどうかの確認が必要です。
以下の記事では、組織風土(組織カルチャー)への共感・適合を意味する「カルチャーフィット」について解説しています。候補者とのフィット性を見極める方法も紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

上司・先輩社員と性格が合わない
上司や先輩社員との人間関係に関する問題も、ミスマッチの原因の一つに挙げられます。
たとえば、厳しい指導方法が新卒社員に強いプレッシャーを与えたり、コミュニケーションのとり方の違いがストレスになったりするケースです。
実際に、マンパワーグループの同調査においても、人事担当者の37.0%が「配属先のメンバーや上司との相性がよくなかった」と回答し、もっとも多い割合となりました。
性格や価値観が合わない職場では、仕事のモチベーション低下にもつながるため、配属前に適性検査の結果を確認し、性格傾向の近い職場を選定するなどの対応が必要です。
また、管理職を対象としたコミュニケーション研修を実施し、若手社員との接し方を伝えることで、相互理解と信頼関係の構築が促進されます。
労働条件・給与水準に不満がある
新卒社員が企業に抱く不満として、労働時間や休日数、給与水準が「想像していた条件と違った」といった認識のずれが挙げられます。
20代の会社員を対象としたマイナビの調査によると、早期離職の理由として「仕事内容に対する給与が見合っていないと感じた」の回答が、3番目に多い36.5%でした。
また、32.3%の人は「休日数や残業時間が想定と違った」と回答していることから、労働条件や待遇への不満もミスマッチの一因として考えられます。
企業としては、募集時点での情報提供の精度を高めるのと同時に、人事制度やキャリアパスの提示など「将来の見通し」を描けるような説明が求められます。
求める能力・スキルが不足している
新卒採用におけるミスマッチの一因として、入社後に「業務遂行に必要な能力・スキルが想定より不足していた」というケースが挙げられます。
マンパワーグループの同調査においても、人事担当者の30.3%が「必要とされる経験やスキルが足りなかった」と回答していることがわかりました。
また、社会人経験のない新卒社員に対し、即戦力としての活躍を期待しすぎて「求めていた人材と違う」といった状態に陥る点も、ミスマッチにつながる原因です。
過度な期待は新卒社員にとっても大きなプレッシャーとなるため、求める水準に達するまでの人材育成やサポートを行うなど、入社後の取り組みも必要です。
採用で見落としがちな会社側の4つの課題

採用ミスマッチが起きる背景には、候補者側の原因だけでなく、以下のような会社側の課題も考えられます。
これらの見過ごしがちな課題に気づき、採用ミスマッチ防止と離職率改善に向けた施策を検討していきましょう。
面接の印象だけで合否判断をしている
採用面接は、候補者を知るうえで重要なプロセスですが、第一印象・話し方・態度の良し悪しだけで合否を決めてしまうと、入社後のミスマッチにつながりやすいです。
面接官が「コミュニケーション力の高さ=自社で活躍できる」といった解釈をしてしまっては、適性があるかどうかを客観的に判断できません。
また、面接官によって人物評価にばらつきがあると、入社後のミスマッチが起きるだけでなく、優秀な人材を見逃すリスクも考えられます。
効果的な対策としては、過去の行動を掘り下げる質問をしていく行動面接や、適性検査の客観的データにもとづく面接など、候補者の「活躍可能性」を見極める施策が求められます。
自社の魅力ばかりを伝えている
採用活動で自社の魅力を伝えることは、学生の関心を引くために重要ですが、よい面ばかりを強調しすぎると、入社後にギャップを感じやすくなります。
たとえば「自由な社風」「充実した教育体制」といったポジティブな側面だけを伝えると、労働時間の長さや休暇の取りやすさなど、実際の働き方が伝わりません。
マイナビの同調査においても、20代社員の早期離職の理由として、以下のように「想定よりも…」とギャップを感じた回答が多くみられました。
- 想定よりも仕事量が多かった(28.9%)
- 想定よりも仕事がきつかった(28.6%)
- 想定していた仕事内容ではなかった(21.1%)
会社側としては、自社の課題を共有したり、現場で働く社員の声を届けたりすることで、応募者との「価値観のすり合わせ」が促進されます。
オンライン面接が主流となり、適性や人柄を見抜けていない
コロナ禍以降、採用面接を効率化できるオンライン面接が主流となりましたが、対面とは異なる「画面越し」の面接により、適性や人柄を見抜けない課題もあります。
オンライン面接では、非言語コミュニケーション(表情・しぐさ)がわかりにくく、質問に対する応募者の細かな反応を見逃しやすいです。
企業の人事担当者を対象としたプロフェッショナルバンクの調査によると、面接の実施方法では、以下のように「対面面接よりもオンライン面接の方が多い」結果となりました。

出典:オンライン面接による先進的な採用アプローチ実態調査|株式会社プロフェッショナルバンク
その一方で、オンライン面接と対面面接の両方を実施している企業も見受けられるため、両手法の特徴を活かした採用プロセスも浸透してきていると考えられます。
ミスマッチ防止の観点からすると、オンライン面接だけで採用判断を行うのではなく、対面面接と組み合わせたり、適性検査で多面的な評価をしたりする工夫が必要です。
新入社員を受け入れる体制が整っていない
新卒で入社した社員は、社会人としての基礎が未熟なため、上司やメンター(先輩社員)の丁寧な指導・サポートが不可欠です。
しかし、新入社員を受け入れる体制が整っておらず、適切なサポートができない状態だと、早期離職するリスクも高まってしまいます。
20代会社員を対象としたマイナビの調査によると、早期離職の理由として「入社後、受け入れ態勢やサポートが不十分だった」と、24.9%の人が回答しました。
会社側としては、人事と現場で連携しながらフォロー体制を強化し、新入社員との継続的なコミュニケーションを図ることで、早期離職の防止につながります。
採用ミスマッチの具体的な損失とは?

採用ミスマッチが起きると、入社して間もない社員の離職につながり、「採用や人材育成にかけた時間・コストが無駄になる」などの直接的な損失が出てしまいます。
経営者・役員を対象としたリーディングマークの調査(上図)によると、短期離職の影響として「後任探しの手間」「業務負担・採用コストの増加」といった回答がありました。
また、短期離職者が今後増えると仮定したときに「会社経営に与える影響は大きいと感じるか」と聞いたところ、以下のような結果となりました。
- 非常にそう感じる(33.3%)
- ややそう感じる(49.0%)
- あまりそう感じない(11.7%)
- 全くそう感じない(6.0%)
調査結果からわかるように、企業の成長戦略において人材は重要な資産であり、ミスマッチによる損失は経営課題として捉えなければなりません。
以下の記事では、リーディングマークの独自調査「短期離職に伴う経営へのインパクトと本音調査」の詳細をまとめています。本記事と合わせて確認してみてください。

企業における採用ミスマッチ防止の取り組み事例

採用ミスマッチを防ぐために、企業では多角的な取り組みを実践しています。3社の具体的な事例を紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
取り組み | 効果 | |
---|---|---|
入社前 | 性格検査の結果をもとに「自社と合っている特徴」を面接で確認 | 独自の採用基準で活躍人材を見極められるようになり、入社初年度で1位の営業成績を出す人が現れた |
自社の特徴を踏まえた「オリジナルの採用基準」を策定 | 面接官の「自分と合う・合わない」といった主観が減り、根拠を持った採用ができるようになった | |
入社後 | サーベイのサジェスト機能で「悩みを抱えている社員」を把握 | 離職の可能性を事前にキャッチしてアプローチできるようになり、休職者が12人から6人に減少した |
以下より詳しい取り組みを解説しますので、自社の採用・人材戦略に沿ったミスマッチ防止策を検討してみてください。
性格検査の結果をもとに「自社と合っている特徴」を面接で確認
社員研修などの支援事業を展開する株式会社 サン・プランナーでは、採用面接における明確な基準がなく、担当者の感覚で採用判断を行う部分がありました。
その根拠がなかった判断を正確なものにするため、適性検査の『ミキワメ』を導入し、社員全員が受検した性格検査の結果をもとに「面接の評価基準」を決めました。
適性検査は採用選考の序盤に取り入れ、面接前に必ず結果を確認できる状態にし、面接のときには「自社の活躍人材との類似度」を以下のように確認しています。
活躍見込み度が高く出た人 | 本人との会話のなかで「本当に検査結果の傾向・考え方を持っているのか」をとにかく深掘りする |
活躍見込み度が低めに出た人 | 「本当に見逃しても問題ない人材なのか」を最終確認する |
適性検査でマッチ度「S判定」が出た人を採用したケースでは、偏差値が高い大学生というわけではなかったものの、入社初年度の1年間の営業数字が全社で1位となりました。
採用基準の根拠データがない状態でしたが、適性検査で自社独自の基準を策定できました。
事例:曖昧な採用から科学的アプローチへ|株式会社 サン・プランナー
自社の特徴を踏まえた「オリジナルの採用基準」を策定
住宅総合リフォーム専業会社のフレッシュハウスでは、採用面接において面接官の目線統一ができておらず、主観(感覚)で合否判断を行っていました。
以前は別の適性検査を使っていましたが、毎回同じような解説が出てきている印象だったため、良し悪しではない比較と個性を捉えられる『ミキワメ 適性検査』を導入しています。
まずは性格検査を既存の営業社員に受検してもらい、売上を上げている人や新卒入社者の特徴などを分析したうえで、オリジナルの採用基準を作りました。
しかし、営業成績が優秀な人の特徴だけを見ようとすると、個人の色が強く出ており納得できなかったため、以下の点も踏まえて試行錯誤しています。
- 所長の特徴を確認する
- 営業成績とマネジメントの両方がうまくいっている人の特徴を調べる
- クレームが多い営業の特徴も参考にする
採用基準をもとに合否判断ができるようになったことで、面接官の「好き・嫌い」「自分と合う・合わない」といった主観が減り、根拠を持った採用ができるようになりました。
事例:面接官の目線を揃えるために適性検査を導入|株式会社フレッシュハウス
サーベイのサジェスト機能で「悩みを抱えている社員」を把握
システム内製支援事業を展開する株式会社情報戦略テクノロジーでは、新卒社員の定着率に課題があり、退職時にはじめて社員の悩みがわかる状況でした。
退職前に問題を把握していれば対処できたケースもあったため、事前に「悩み・不満・メンタル状況」をキャッチできる『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』を導入しています。
個々の性格特性に合わせて「ケアが必要な人」をアラートで知らせてくれるうえに、AIのサジェスト機能で「このような状態かもしれない」といったアドバイスも提供されます。
その情報をもとに、数値が悪かった部分を本人に伝えながらヒアリングすることで、直接「悩みはないか」と聞くよりも、本質的な対話ができるようになりました。
離職の可能性をアラートで事前にキャッチし、面談でアプローチできるようになった結果、休職者が12人から6人に減少しています。
事例:ミキワメ導入後に休職者が2分の1まで減少|株式会社情報戦略テクノロジー
新卒採用のミスマッチに関するよくある質問

新卒採用のミスマッチに関する「よくある質問」について、詳しく解説します。
以下より、一つずつ回答します。
新卒採用のミスマッチの割合はどのくらい?
厚生労働省の調査によると、新卒で入社した人の約3〜4割は早期離職していますが、離職理由すべてがミスマッチに関するものではありません。学歴別でみると以下のような結果となりました。
【早期離職率】
- 大学卒:34.9%
- 高校卒:38.4%
- 短大卒など:44.6%
- 中学卒:50.5%
人事担当者を対象とした別の調査においては、ミスマッチを経験した人のなかで、57.9%の人が「採用した社員が早期離職した」と回答しています。
新卒採用の「ミスマッチ」とは?どんな意味がある?
新卒採用におけるミスマッチとは、入社前に期待していた働き方と実際の職場環境にギャップが生じるなど、企業と社員の間で「認識のずれ」がある状態を指します。
採用ミスマッチの種類として、主に以下の5点が挙げられます。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
種類 | 概要 |
---|---|
社風・働き方 | 会社の組織文化や勤務体系が、社員の期待・意向と合わない状態 |
職務・業務内容 | 社員が「自身でやりたいと思う仕事」と「会社から与えられた仕事」が合わない状態 |
労働条件・待遇 | 会社が定めている労働条件・給与体系が、社員の期待や要望に合わない状態 |
職場の人間関係 | 上司や同僚との性格が合わず、コミュニケーション不足が生じている状態 |
適性・スキル | 社員の適性・スキルが、会社の求めるレベルに達していない状態 |
ミスマッチの意味についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。採用ミスマッチの原因や対策も解説しています。

まとめ:独自の採用基準を定め、新卒採用のミスマッチを防ごう

新卒採用におけるミスマッチは、早期離職や生産性低下といった影響を及ぼすため、企業の経営課題として取り組まなければなりません。
まずは、ミスマッチが起きる原因を突き止めたうえで、以下のように「入社前・入社後」の両面で対策を検討しましょう。
これらの多面的な対策を行うことで、採用ミスマッチによる損失を最小限に抑え、企業の採用・人材戦略の質を高められます。
人事担当者の方は、採用フローの見直しを図るとともに「ミスマッチの兆候を見逃さない」仕組みを構築していきましょう。

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貴社の将来をつくる優秀な新卒学生と出会えます。