- 新卒における定着率の現状(日本全体・事業規模別・業界別)
- 新卒社員の定着率が低下する原因と対策
- 定着率改善に成功した企業の取り組み事例
「なぜ、新卒採用した社員の離職が続いてしまうのか」
「定着率を改善する具体的な方法を教えてほしい」
このような悩みを持つ人事担当者の方もいるのではないでしょうか。
実際に大学卒の新卒採用では、定着率が67.7%という調査結果も出ており、年々低下しているのが現状です。
採用活動に時間とコストをかけたにもかかわらず、早期退職が続いてしまうと、職場の生産性が低下し、企業のイメージや評判にも影響します。
そこで本記事では、新卒社員における定着率の現状と低下によるリスクを解説し、その原因と対策例を紹介します。
定着率向上に成功した企業事例を通して、実践的な手順や取り組み方を学び、人材戦略の検討に役立ててみてください。
新卒における定着率の現状(平均)
新卒の定着率について、2023年10月に厚生労働省から公表された調査資料をもとに紹介します。
以下の表は、調査結果の離職率から定着率を算出(100%ー離職率)し、学歴ごとにまとめたものです。
学歴 | 2020年卒 | 2019年卒 | 前年比 |
大学卒 | 67.7% | 68.5% | ー0.8% |
短大等卒 | 57.4% | 58.1% | ー0.7% |
高校卒 | 63.0% | 64.1% | ー1.1% |
中学卒 | 47.1% | 42.2% | +4.9% |
参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
2020年卒の定着率は、前年と比べて全体的に低下しており、日本全体の定着率83〜87%(※)と比較してみても、新卒の定着率は低い傾向です。
(※令和4年 雇用動向調査結果(厚生労働省)の離職率をもとに算出)
定着率の計算方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、自社の状況を把握するときの参考にしてみてください。
事業規模別の定着率
続いては、事業規模別の定着率をみていきましょう。
2020年卒の新卒定着率は、従業員数が多い企業ほど高くなっており、大学卒と高校卒のいずれも同じ傾向があります。
事業規模 | 大学卒(前年比) | 高校卒(前年比) |
1000人以上 | 73.9%(ー0.8%) | 73.4%(ー1.7) |
500〜999人 | 69.3%(ー1.1%) | 68.2%(ー1.7) |
100〜499人 | 67.1%(ー1.1%) | 63.3%(ー1.6) |
30〜99人 | 59.4%(ー1.2%) | 56.4%(ー0.2) |
5〜29人 | 50.4%(ー0.8%) | 48.7%(+0.4) |
5人未満 | 45.9%(+1.8%) | 39.3%(ー0.2) |
参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
前年(2019年卒)と比較すると全体的に定着率が低下しており、高校卒においては、大企業ほどその変化量が大きくなっています。
産業・業界別の定着率
続いては、産業・業界別の定着率を紹介します。
以下の表は、定着率の高い5つの産業をまとめたもので、鉱業・採石業・砂利採取業においては、前年よりも7%近く上昇しています。
産業 | 2020年卒 | 2019年卒 | 前年比 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 89.5% | 89.4% | +0.1% |
鉱業・採石業・砂利採取業 | 86.5% | 79.9% | +6.6% |
製造業 | 81.0% | 81.5% | ー0.5% |
金融業・保険業 | 73.7% | 74.9% | ー1.2% |
情報通信業 | 72.1% | 72.2% | ー0.1% |
一方で定着率の低い5つの産業においては、全体的に定着率がさらに低下しており、宿泊業・飲食サービス業では50%以下となっています。
産業 | 2020年卒 | 2019年卒 | 前年比 |
宿泊業・飲食サービス業 | 48.6% | 50.3% | ー1.7% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 52.0% | 52.6% | ー0.6% |
教育・学習支援業 | 54.0% | 54.5% | ー0.5% |
医療・福祉 | 61.2% | 61.4% | ー0.2% |
小売業 | 61.5% | 63.9% | ー2.4% |
参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
新卒社員の定着率低下によるリスク
新卒社員の定着率が低下すると、以下のようなリスクが生じます。
定着率の低い状況が「企業にどのようなリスクがあるか」を再確認し、改善に向けた対策を検討していきましょう。
採用・教育にかけたコストや時間が無駄になる
新卒社員の早期離職によって、採用・教育に費やしたコストや時間が無駄になってしまい、再び採用活動をしなければなりません。
主な採用コストとして、以下のような費用が挙げられます。
内部コスト | ・人事担当者や面接官の人件費 ・採用試験に伴う交通費や宿泊費 ・各種資料の送付費用 |
外部コスト | ・面接やセミナーの会場費 ・採用サイトの求人広告掲載費 |
就職みらい研究所の調査によると、2019年度の新卒採用における平均採用コストは、一人当たり96.3万円となっており、2018年度の71.5万円から増加しています。
たとえば、3年間で20人を採用した場合は1926万円のコストがかかり、年平均だと642万円の試算となります。
社員数が少ない企業においては、コスト増加に伴って経営面への影響も出やすいため、採用の段階から定着を見据えた人材の見極めが必要です。
業務の停滞により生産性が低下する
新卒社員が早期離職した場合、業務の引き継ぎや人員の再配置が必要となり、既存社員は多くの時間と労力を割く必要があります。
その結果、本来やるべき業務が停滞し、組織全体の生産性低下につながってしまうため、チームの連携や人間関係にも影響を及ぼしかねません。
また、定着率が低い状況が続くと、社員は「この会社では長く働けないかもしれない」と感じ、モチベーションやエンゲージメントの低下も考えられます。
厚生労働省の資料によれば、ワークエンゲージメント(仕事への熱意や活力)が高まると、新卒社員の定着率が上昇し、労働生産性も向上すると示しています。
すなわち、定着率の低下によってワークエンゲージメントが低くなるのと同時に、労働生産性も低下してしまうというわけです。
ワークエンゲージメントの要素を含んだ「従業員エンゲージメント」という概念も存在します。以下の記事でそれぞれの違いを詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
企業の評判やイメージが悪くなる
現代の若い人は、インターネット上の情報をもとに企業を選ぶ傾向があり、SNSや口コミサイトでの評判が重要な判断材料となっています。
そのため、定着率が低い企業のネガティブな印象から「働きにくい環境」「成長機会が少ない」といった、悪い評判の拡散につながりかねません。
大学生を対象とした業界イメージ調査では、マイナスイメージとなる22個の要素のなかに「定着率」が設けられており、企業イメージへの影響の強さが伺えます。
参考:2024年卒大学生業界イメージ調査|マイナビキャリアリサーチ
また、企業イメージの悪さが社内にも広まることで、社員のモチベーションも低下し、さらに離職者が増える可能性もあります。
若手社員への技術継承ができなくなる
新卒社員の離職が続いてしまうと、ベテラン社員からの技術継承が困難となり、組織全体の専門性が損なわれるリスクがあります。
企業が持つ独自の専門技術やノウハウは、現場での実務経験を通じて徐々に習得されるものです。
しかし、若手社員が会社に定着しないと、技術や知識を次世代に引き継ぐ機会が失われ、企業の長期的な成長が妨げられます。
経済産業省の資料によると、2022年の製造業の若手社員数(34歳以下)は、2012年からほぼ横ばいの24.4万人ですが、2002年の31.4万人と比べると減少傾向です。
参考:2023年版ものづくり白書概要|経済産業省・厚生労働省・文部科学省
ベテラン社員が定年を迎え退職してしまうと、技術継承できず製品などの品質にもバラツキが生じ、企業の信用低下も考えられます。
新卒社員の定着率が低下する5つの原因【対策例も解説】
新卒社員の定着率が低下する原因として、以下の5つが挙げられます。それぞれの原因の対策例も解説します。
原因 | 対策例 |
残業の多さや休日に取りにくさ | DXを推進して業務を効率化させる |
給与・福利厚生への不満 | 役割・役職に応じた給与を支給する |
上司や同僚との人間関係のストレス | 社員同士が交流できる場を設ける |
入社前と入社後のギャップ(ミスマッチ) | 採用基準を明確に定めて適性を見極める |
キャリア形成を支援する制度が不十分 | 早い段階で重要な業務を与える |
早期離職する理由や対策方法については、別の記事でも詳しく解説しています。「若い人が定着しない会社の特徴」を解説した記事もありますので、本記事と合わせて確認してみてください。
残業の多さや休日に取りにくさ
定着率が低下する原因の一つは、残業が多く長時間労働が続くような状態や、休暇が取得しにくい雰囲気などの労働環境に対する不満です。
新人・若手を対象とした調査によれば、離職経験者の25.0%の人は「労働環境・条件がよくない」を理由に離職しており、もっとも多い回答割合でした。
参考:「新人・若手の早期離職に関する実態調査」の結果を発表|リクルートマネジメントソリューションズ
とくに社会人未経験の新卒社員は、仕事に慣れるまでにも時間がかかり、疲労やストレスを蓄積しやすい傾向があります。
そのため、終業後の休息時間が取れなかったり、休日にリフレッシュができなかったりすると、労働環境に不満を抱き離職の可能性が高まります。
【対策例】DXを推進して業務を効率化させる
DX(デジタルトランスフォーメーション)で業務効率化を図り、社員への負担を軽減することで、長時間労働の削減や休暇取得の促進につながります。
介護付き老人ホームを運営する企業では、少子高齢化によって介護ニーズが高まっているものの、人材不足の問題があり事業運営も厳しい状況でした。
そこで、社内でビジョン委員会を立ち上げて、経営理念の変更をはじめ、以下のような業務効率化を目的とするICT推進を行っています。
- 給与明細書の電子化システムを導入
- 勤怠システムの自動管理(タッチオンタイム)を設置
ICT推進により、時間単位で休暇が取れる制度の導入につながり、全スタッフがその制度を利用しています。
また、勤怠システムの自動管理によって正確に労働時間を管理できるようになり、給与計算担当者の時間外労働もほぼゼロになりました。
採用活動においてもAIツールなどを活用すれば、候補者の評価・分析といった人事業務の効率化も可能です。
リーディングマークの『ミキワメ 適性検査』は、ミキワメAIによる社内分析で採用基準を策定できる便利なツールです。ミキワメAIについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
給与・福利厚生への不満
成果に見合った給与が支払われないことや、他社よりも給与水準が低い状態など、待遇への不満で離職するケースも少なくありません。
給与以外にも、社員や家族の生活を支援する福利厚生が充実していない点も、定着率が低下する原因の一つです。
リクルートの調査によると、新人・若手の離職経験者のなかで、18.4%の人が「給与水準に満足できない」を理由に離職しており、2番目に多い回答割合でした。
参考:「新人・若手の早期離職に関する実態調査」の結果を発表|リクルートマネジメントソリューションズ
採用前に提示した待遇・労働条件と、入社後の実情が異なると「聞いていた内容と違う」と不満を抱き、会社への信用も低下してしまいます。
【対策例】役割・役職に応じた給与を支給する
年功序列による昇給だけではなく、役職・役割・成果に応じた給与またはインセンティブの支給によって、待遇への不満の軽減につながります。
オフィス環境事業を行っている企業では、若年層の昇給スピードの上昇と、中堅層のメリハリある昇給を実現するため、以下のような人事制度を導入しています。
若年層(18〜35歳) | 昇給テーブルの再設計を行い、昇格昇給額を5割増加 |
中堅層 | 貢献度に応じた処遇により、賃金のベースアップを実現 |
新しい人事制度によって、同社全体で前年比5.3%の賃上げに成功し、課題であった昇格基準の透明性の確保にもつながっています。
参考:賃金引き上げに向けた取組事例(株式会社オカムラ)|厚生労働省
上司や同僚との人間関係のストレス
上司や同僚とのコミュニケーション不足など、人間関係のストレスが原因で離職を決断してしまうケースもあります。
リクルートの調査によれば、新人・若手の離職経験者のなかで、14.5%の人が「職場の人間関係がよくない、合わない」を理由に離職しており、3番目に多い回答割合でした。
参考:「新人・若手の早期離職に関する実態調査」の結果を発表|リクルートマネジメントソリューションズ
とくに新卒社員は「職場はどのような雰囲気なのか」「上司や先輩はどんな人柄か」など、会社の状況を詳しく知りません。
そのため、上司からの指導やフィードバックが行われなかったり、社員同士の声かけが少なかったりすると、長く働けるかどうかと不安を感じてしまいます。
【対策例】社員同士が交流できる場を設ける
社員同士で交流できる場を提供したり、社内イベントを開催したりすることで、コミュニケーションが取りやすい人間関係を構築できます。
厚生労働省の「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」では、人間関係の問題解決につながる方法として、以下のような取り組みが紹介されています。
取り組み例 | 内容 |
コミュニケーションスペース(リラクゼーションエリア)の設置 | ・窓の配置や照明の工夫 ・テラスの設置 ・自販機の配置、飲料無料化 |
THANKS(ありがとう)カードの導入 | ・上司や同僚に対して感謝の気持ちを伝える ・感謝や賞賛の風土づくり |
社内報・社内SNS・コミュニティ掲示板の活用 | ・自己紹介ページを設置 ・自分の経歴を紹介するコーナーの設置 ・従業員同士でコミュニケーションが取れる場の提供 |
参考:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(人間関係)|厚生労働省
社会人経験のない新卒社員においては、先輩を指導役とするメンター制度の導入によって、入社後の不安や悩みを相談しやすい環境が整えられます。
入社前と入社後のギャップ(ミスマッチ)
新卒社員は、企業から提供された情報をもとに期待感を持って入社しますが、入社後の業務や職場環境が想像と異なると、ミスマッチによって離職するケースがあります。
リクルートの調査においても、新人・若手が離職した理由のなかで、以下のようなミスマッチに関する回答が多数ありました。
- 職場の人間関係がよくない、合わない(14.5%)
- 上司と合わない(14.5%)
- 希望する働き方ができない(14.5%)
- 経営方針・価値観など、会社の方向性と合わない(7.9%)
参考:「新人・若手の早期離職に関する実態調査」の結果を発表|リクルートマネジメントソリューションズ
また、離職者が増加すると、新たな人材を確保するために再び採用活動をしなければならず、採用担当者の負担が増加するデメリットもあります。
以下の記事では、ミスマッチの原因やデメリットについて詳しく解説しています。ミスマッチを防ぐための対策にも触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。
【対策例】採用基準を明確に定めて適性を見極める
自社独自の採用基準を定めて、個々の適性を見極めるプロセスの構築によって、企業と社員とのミスマッチの軽減につながります。
デジタル広告の運用代行を行っている企業では、採用基準が「成長意欲がある人」という抽象的な内容だったため、面接官によって評価のバラツキがありました。
そこで、社員の性格タイプや自社らしい傾向の分析結果をもとに、明確な採用基準を決められる適性検査を導入しています。
採用時は、適性検査の結果を参考にしながら、以下の点を重視しています。
- ミッションに共感し、入社後に体現していけそうか
- どういう傾向がある人なのか
- 採用するうえでの懸念事項はなにか
- 面接で質問すべき事項はなにか
面接官の「感覚的なものさし」と、適性検査の「定量的なものさし」との掛け合わせによって、採用や面接の精度が向上しました。
事例:中長期の組織の理想像から逆算をした採用基準を設定|デジタルアスリート株式会社
新卒採用における適性検査の目的や評価項目については、以下の記事で詳しく解説しています。おすすめツールも紹介していますので、導入を検討している人事担当者の方は参考にしてみてください。
キャリア形成を支援する制度が不十分
新卒社員は、自らのキャリア形成や将来の展望に期待して入社するため、会社からの支援が不十分であると離職の原因になります。
リクルートの調査によれば、新人・若手の離職経験者のなかで、10.5%の人が「今後のキャリアが描けない、目指すキャリア形成につながらない」を理由に離職しています。
参考:「新人・若手の早期離職に関する実態調査」の結果を発表|リクルートマネジメントソリューションズ
- どのような役割・ポジションで能力が発揮できそうか
- スキルアップにつながる教育・研修が用意されているか
上記のようなキャリアパス(道すじ)が明確でないと、社員は「この会社では成長できそうにない」と感じ、離職につながってしまいます。
【対策例】早い段階で重要な業務を与える
入社してから早い段階で、責任のある重要な業務を任せることで、当事者意識を持った行動や発言を行い、自己成長へとつながります。
建設足場事業を行っている企業では、建設業界でよくイメージされる3K(きつい・汚い・危険)を払しょくするため、職場の環境改善に取り組んでいます。
その一つの取り組みが、さまざまな仕事へのチャレンジ精神を持つ人材を採用し、会社の成長スピードや変化に対応できるように育成することです。
求職者に身近なモデルをみてもらう機会を提供するため、入社1年目の社員に新規採用のプロジェクトリーダーを任せています。
また、若手社員がリーダーとなってプロジェクトを運営する機会も用意しており、結果を出していくことで自信や成長につなげています。
新卒社員の定着率を高めるための手順
新卒社員の定着率を高めるには、以下の3つの手順を踏む必要があります。
定着率の計測は、一般的に1年や3年といったスパンで算出するため、長期的な視点で施策や戦略を検討しなければなりません。
以下の記事では、定着率を上げるための方法や具体例を解説していますので、施策を検討するときの参考にしてみてください。
定着率を上げる7つの方法と具体例|改善のステップや企業事例も解説
1:離職した原因の分析
定着率改善に向けた最初のステップは、新卒社員が離職した原因の特定と分析です。
離職時の面談やアンケート調査を通じて、業務内容の不一致やキャリアパスの不透明さなど、離職を決断した具体的な理由を収集します。
その離職理由をもとに、以下のような離職者の情報を考慮しながら分析を進めます。
- 年齢層
- 所属していた部署
- 入社から離職までの期間
「共通する問題点はなにか」「どこを改善すれば離職を防げるか」を分析し、解決すべき課題の優先順位を決めましょう。
2:施策の検討・実行
つぎは、離職原因の分析結果をもとに具体的な施策を検討・立案し、実行に移すステップです。
施策の検討にあたっては、経営層の考えだけではなく社員のフィードバックも取り入れ、他社の成功事例を参考にしながら進めていきましょう。
具体的な施策としては、以下のような取り組みがあります。
離職原因 | 施策例 |
成長機会が少ない | 個々の能力に合わせてスキルアップが可能な教育制度に見直す |
企業文化との不一致 | 社内報やメルマガで経営層の考えを伝え、企業文化や価値観の浸透を図る |
施策を実行するときは、目的と内容を全社員に説明し、理解と協力を得ることが必要です。
3:施策の効果検証
最後のステップでは、施策の実行によって「どのような効果があったか」「定着率はどのように改善されたか」を評価します。
以下のように、数値を用いて具体的な目標を定めておきましょう。
- 入社3年後の定着率:90%以上
- 従業員満足度:85点以上
- エンゲージメントスコア:80点以上
定着率は、一般的に4月から3月までの年度で計測しますが、長期的な人材戦略を立てるときは、3年や5年といった期間で計測するケースもあります。
また、従業員満足度やエンゲージメントを効率的に測定するには、サーベイの活用が不可欠です。
以下の記事では、エンゲージメントサーベイの概要や調査方法を詳しく解説していますので、効果検証のツールとして活用してみてください。
新卒社員の定着率が向上した企業事例
新卒社員の定着率向上につながった企業について、具体的な取り組み内容を3つ紹介します。
社内の課題を洗い出して対策を打つのが先決ですが、他社の成功例を参考にすることで、より実践的な施策のアイデアが得られます。
また、定着率の高い会社が実践している取り組みは別記事でも解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
事例1:職場環境の改善で「若い人から選ばれる企業」に
建築・土木業を行う八洲建設では、若い人から「ここで働きたい」と選ばれる会社になるため、労働時間・休日に着目した職場環境改革をスタートさせました。
改革にあたっては、トップダウンではなく社員もプロジェクトに参加し、実行しながら改善していく「アジャイル型組織改革」を実施しています。
具体的には、以下のような取り組みを行い、大幅な労働時間の短縮に成功しています。
主な取り組み | 効果 |
取引先との協力体制強化 | 週5日間工事の達成(85%の現場) |
土日休みの実行、振替休日の完全取得 | 年間休日124日の達成 |
現場への直行・直帰の実施 | プライベート時間が1日平均95分以上の増加 |
オンライン決裁の導入 | 移動・業務時間の大幅短縮 |
この改革によって、求人応募者は取り組み前と比べて11倍となり、若手社員が定着する足がかりとなりました。
参考:2021 若者職場定着取組事例紹介(八洲建設株式会社)|愛知県
事例2:成果よりも「チャレンジしたこと」を評価する仕組み
電気ヒーターの開発や販売を行う河合電器製作所では、顧客に寄り添った提案を目指すため、量産型からオーダーメイド型のビジネスモデルへの転換を決意しました。
そのためには、社員一人ひとりがアイデアや発想を活かし、いきいきと働きながらレベルアップする環境が必要だと考え、以下のような施策を行っています。
主な取り組み | 内容 |
メンター制度 | メンティ(指導を受ける人)がメンター(指導者)を指定し、月1回の面談を実施 |
入社5年間ひとり暮らし制度 | 新入社員の自立を目指し、家探しをトレーナーがアドバイス |
チャレンジ制度 | ・成果よりもチャレンジしたことを評価 ・幹部の前で自分の取り組みを10分間プレゼン |
多岐にわたるプロジェクト | 社内の改善点をテーマとしたプロジェクトチームを発足し活動 |
上記のさまざまな取り組みによって活気のある職場へと改善され、入社3年以内の離職率ゼロを実現しました。
参考:2021 若者職場定着取組事例紹介(株式会社河合電器製作所)|愛知県
事例3:離職可能性のある社員を察知して即対応
不動産総合コンサルティング事業を行うフォーラス&カンパニーでは、早期離職の課題を抱えており、とくに新卒入社3年目の社員の離職が続いている状況でした。
社員の状態は店長を経由して聞いていたものの、吸い上げられていない部分があったため、本人の「SOSサイン」が受け取れるサーベイツールを導入しています。
具体的には、以下のような手順で離職可能性のある社員へのサポートを行っています。
- 調査対象の社員に対して、調査理由を共有してからサーベイを配信
- 回答者全員の結果を確認し、最優先ケア・優先ケアの人を把握
- ケア対象の社員がいる店舗で、各店長が状況を確認
- 「本人の心境を聞いてほしい」ことを店長に伝達
- 店長と人事による会議を月1回行い、社員への対応方法を検討
サーベイの活用によって、離職傾向が出ている社員をいち早く察知できるようになり、具体的な打ち手までわかるようになりました。
事例:離職傾向をいち早く察知し、若い世代の離職の減少を目指す|株式会社フォーラス&カンパニー
まとめ:働きやすい環境を整えて新卒社員の定着を図ろう
新卒の定着率は、日本全体の各業界と比べても低い状況であるため、将来会社を担っていく人材を育成するうえでも、原因の特定と対策が不可欠です。
もう一度、定着率が低下する原因と対策例を確認してみましょう。
原因 | 対策例 |
残業の多さや休日に取りにくさ | DXを推進して業務を効率化させる |
給与・福利厚生への不満 | 役割・役職に応じた給与を支給する |
上司や同僚との人間関係のストレス | 社員同士が交流できる場を設ける |
入社前と入社後のギャップ(ミスマッチ) | 採用基準を明確に定めて適性を見極める |
キャリア形成を支援する制度が不十分 | 早い段階で重要な業務を与える |
採用においては、入社前後のギャップを減らすために、個々の特性を見極めて、能力やスキルを発揮できる部署への配置が重要です。
また、配属後は満足度やエンゲージメントを定期的に確認し、社員の不安や不満を取り除くことで、離職の防止につながります。
リーディングマークが提供するミキワメサービスは、採用と人材マネジメントの両面で定着率改善をサポートします。無料トライアルも実施中ですので、ぜひお試しください。
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