職場環境の改善に取り組むため、従業員の意見を効率よく収集する方法がないかと悩んでいる経営者や、人事担当者の方もいるのではないでしょうか。
その意見収集の効率化と、従業員の心理状態を可視化させるのが、パルスサーベイやエンゲージメントサーベイ、従業員満足度調査です。
本記事では、パルスサーベイ・エンゲージメントサーベイ・従業員満足度調査の各目的や、調査項目の違いを徹底解説します。
各調査のメリットや具体的な活用方法、企業の取り組み事例も紹介しますので、自社に適した手法を考えるときの参考にしてみてください。
組織と従業員の「心の距離」を縮め、ひいては離職率低下や生産性向上につながるような施策を検討していきましょう。
パルスサーベイ・エンゲージメントサーベイ・従業員満足度調査の違い
パルスサーベイ・エンゲージメントサーベイ・従業員満足度調査は、どれも従業員の状態や考えを把握するための調査ですが、以下のように目的や調査項目に違いがあります。
種類 | 目的 | 頻度・回答時間 | 調査項目 |
---|---|---|---|
パルスサーベイ | 課題の早期発見とスピーディな改善 | ・月1回、週1回など ・約1〜3分 | ・やる気、モチベーション ・やりがい、充実感 ・職場環境に関する満足度 など |
エンゲージメントサーベイ | 組織状態の可視化と改善策の検討・立案 | ・半年に1回、年1回など ・約8〜30分 | ・組織への貢献意欲 ・仕事に対する熱意や活力 ・職場環境に関する満足度 など |
従業員満足度調査 | 労働環境への満足度の測定・分析 | ・半年に1回、年1回など ・約8~30分 | ・仕事内容に関する満足度 ・職場環境に関する満足度 ・待遇に関する満足度 など |
組織と従業員との関係性(エンゲージメント)や、仕事に対するモチベーションを可視化したい場合は、パルスサーベイとエンゲージメントサーベイが有効です。
そのなかでも、従業員の状態をいち早く察知して、タイムリーなケアを行いたい場合には、パルスサーベイが適しています。
従業員満足度調査は、労働環境や人間関係など「組織に対して満足しているか」の測定に特化しているため、従業員の内面的な状態の把握には適していません。
パルスサーベイの概要
パルスサーベイの理解を深めるために、3つの要素「目的」「頻度・ 回答時間」「調査項目」に絞って解説します。
短期間かつ高頻度で実施する特性を活かし、従業員の心身の健康を定期的にチェックすることで、離職可能性の判断にも役立ちます。
パルスサーベイの概要や導入のメリットをより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。おすすめツールや導入の手順も紹介しています。
【目的】課題の早期発見とスピーディな改善
パルスサーベイの大きな目的は、従業員の状態悪化や抱えている問題を早期に発見し、ケアやサポートを通して迅速に改善することです。
現代のビジネス環境では、変化が激しく、従業員の状態も常に変動しているため、問題が深刻化する前のスピーディな対応が求められます。
- 仕事への熱意やモチベーションが低下していないか
- 職場内での人間関係にストレスを感じていないか
上記のような点を上司だけが確認するのではなく、経営層や人事担当者にまで声を届けることで、各部署と連携しながら素早いサポートが実施できます。
【頻度・回答時間】月1回など・約1〜3分
パルスサーベイは、従業員の状態をタイムリーに把握するため、四半期に1回・月1回・週1回などの高頻度で実施します。
回答時間については、約1〜3分と比較的短く設計されており、次のような簡単な設問に対して選択肢から回答していくスタイルです。
(設問例)
- 今後のキャリアに役立つ仕事ができている
- 上司や社内のメンバーとの意思疎通は足りている
(回答例)
- とても当てはまる
- 少し当てはまる
- どちらでもない
- あまり当てはまらない
- 全く当てはまらない
【調査項目】心身の状態・モチベーションなど
パルスサーベイでは、従業員の心身の状態やモチベーションなど、主に個々の内面的な要素に焦点を当てて測定します。
【調査項目の例】
- やる気、モチベーション
- 仕事のやりがい、充実感
- 仕事とプライベートのバランス
- 上司や同僚とのコミュニケーション状況
- 労働環境や給与に関する満足度
- 自己成長やキャリアアップの機会
たとえば「いまの仕事にやりがいや責任を感じていますか?」という設問に対して、ある従業員が「強く感じている」と回答したとします。
翌月の調査で「あまり感じていない」と、前回より低い回答だった場合は「過度なストレスを感じているのでは」というように、状態変化の素早い察知が可能です。
エンゲージメントサーベイの概要
続いては、エンゲージメントサーベイの概要を詳しく解説します。
パルスサーベイと同様に「目的」「頻度・回答時間」「調査項目」の3つに分けてご紹介します。
分析したデータをもとに、組織改善に向けた施策を立案・実行することで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
エンゲージメントサーベイの概要や導入の効果を詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。導入から活用までの流れも解説しています。
【目的】組織状態の可視化と改善策の検討・立案
エンゲージメントサーベイの主な目的は、組織と従業員とのつながり(エンゲージメント)に関する要素を測定し、組織状態を可視化することです。
可視化された情報をもとに、次のような判断に役立てられます。
- 組織状態が健全であれば、現在の施策を継続
- 状態悪化が見られる場合は、改善策の検討と立案
改善によってエンゲージメントが高まれば、組織全体のパフォーマンス向上に直結し、従業員が離職せず長く働いてくれることも期待できます。
【頻度・回答時間】年1回など・約8〜30分
エンゲージメントサーベイは、パルスサーベイのような高頻度の調査ではなく、半年に1回や年1回などの低頻度で行われるのが一般的です。
1回の調査における回答時間は、約8〜30分と長めの時間が設定されています。
なお、エンゲージメントサーベイのなかでも、高頻度で実施するサーベイのことを「パルスサーベイ」と呼ぶ場合もあります。
【調査項目】組織への貢献意欲・仕事への熱意など
エンゲージメントサーベイでは、パルスサーベイと同様に従業員の内面的な要素を測定し、とくにエンゲージメントに関わる項目を中心に調査します。
- 経営や組織への貢献意欲(従業員エンゲージメント)
- 仕事に対する熱意や活力(ワークエンゲージメント)
- 人事評価や労働条件に関する満足度
- 人間関係やコミュニケーションの状況
上記以外にも、自由記述の項目を設けることで、従業員が抱えている悩みや不安などを直接収集できます。
エンゲージメントサーベイの質問例について確認したい方は、以下の記事をご覧ください。調査を行うときの注意点も詳しく解説しています。
従業員満足度(ES)調査の概要
続いては、従業員満足度(ES)調査について「目的」「頻度・回答時間」「調査項目」の3つに分けて解説します。
調査を通して満足度を高めるには、労働条件や給与体系の見直しだけでなく、コミュニケーションが取りやすく活気のある職場づくりも欠かせない取り組みです。
従業員満足度調査(アンケート)の概要や質問項目を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。調査の実施から活用までの流れも詳しく解説しています。
【目的】労働環境への満足度の測定・分析
従業員満足度調査の主な目的は、仕事内容や労働環境に対して「どのくらい満足しているか」の度合いを測定・分析することです。
組織へのあらゆる面の満足度を参考にして、社内制度の見直しや職場環境の改善を行い、最終的には次のような点を目指します。
- ワークライフバランスの充実
- エンゲージメントの向上
- 組織力やチームワークの強化
- 従業員の離職や休職の予防
調査をするときは、仕事面や制度面など要因ごとに項目を設けることで、各項目の満足度が分析しやすくなり、具体的な改善ポイントも明らかになります。
【頻度・回答時間】年1回など・約8~30分
従業員満足度調査は、エンゲージメントサーベイと同様に、半年に1回や年1回などの低頻度で行われます。
さまざまな面の満足度を測定するため、設問数が多い分回答時間も約8~30分と長い傾向です。
環境改善に役立てられる十分なデータを収集できますが、従業員への負担をかけないように、長めの回答期間を設ける必要があります。
【調査項目】給与・福利厚生・人間関係など
従業員満足度調査では、主に次のような「組織に対する満足度」を中心に測定します。
- 総合的な満足度
- 仕事内容に関する満足度
- 上司に関する満足度
- 職場環境に関する満足度
- 待遇・福利厚生に関する満足度
- 企業風土に関する満足度
- 人事評価に関する満足度
- 経営に関する満足度
上記のように満足度の調査項目は多岐にわたるため、調査前には「どのような満足度を調査して、なにを改善するのか」を明確にしておく必要があります。
従業員満足度の要素や高めるメリットを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。満足度を向上させる取り組みや企業事例も紹介しています。
パルスサーベイを活用するメリット・デメリット
パルスサーベイの活用には、次のようなメリット・デメリットがあります。
デメリット |
---|
本質的な課題が見えにくい場合がある |
以下より一つずつ解説していきますので、自社でのパルスサーベイの活用シーンを検討してみてください。
メリット:従業員の状態をタイムリーに把握できる
パルスサーベイを活用する大きなメリットは、高頻度の調査によって従業員の状態をタイムリーに把握し、迅速な対応ができる点です。
モチベーションの低下やストレスの蓄積が把握できれば、スコアの変動幅など自社規準にもとづいて、個人面談や声かけなどのアクションが起こせます。
サーベイツールによっては、スコア低下を自動的に感知し「ケアが必要な人」を通知してくれる機能もあります。
普段のコミュニケーションではわからない従業員の内面を、パルスサーベイを通して可視化することで、離職・休職に関わる要因の把握と、スピーディなケアが可能です。
メリット:回答時間が短く従業員に負担をかけない
パルスサーベイは、高頻度の調査(月1回・週1回など)である特性上、一度の調査における回答時間が約1〜3分と短く設計されています。
そのため、従業員の回答へのハードルが高くならず、日常業務に支障をきたしません。
忙しい業務の合間でも気軽に回答でき、調査への参加率も高められるため、より正確に組織の実態を把握できます。
組織と従業員の双方の負担を軽減できることから、定期的な調査を行いやすくなり、より頻繁なフィードバックと改善サイクルが実施できます。
デメリット:本質的な課題が見えにくい場合がある
パルスサーベイのデメリットは、調査項目が限定されており深掘りできず、本質的な課題が見えにくい場合がある点です。
定期的な調査によって、組織の状態変化を素早くキャッチできる一方で、従業員の心の奥に潜む問題や、根本的な課題が十分に把握できない可能性があります。
会社の制度や労働環境の大きな組織改革を目指す場合は、パルスサーベイだけに頼らず、他の調査手法も取り入れていきましょう。
パルスサーベイは「意味がない」と言われることもあるため、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
エンゲージメントサーベイを活用するメリット・デメリット
エンゲージメントサーベイの活用には、次のようなメリット・デメリットがあります。
デメリット |
---|
結果の分析に時間を要する場合がある |
以下より一つずつ解説していきますので、他の調査手法にはないエンゲージメントサーベイの特徴を確認してみてください。
メリット:従業員・組織の状態を可視化できる
エンゲージメントサーベイを活用する大きなメリットは、従業員の組織に対する感情や考えを可視化させて、組織全体の状態・傾向を把握できる点です。
サーベイで測定できる要素は、ツールによってさまざまです。
『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』では、以下のように6つの要素を総合的に評価して「ウェルビーイングスコア」として可視化しています。
肉体的・精神的・社会的に満たされた良好な状態。企業においては「従業員が幸せを実感し、仕事や人間関係が良好な状態である」という意味合いで使われる。
メリット:包括的な設問で多角的な意見を収集できる
組織や従業員自身に関わる包括的な設問を通して、多角的な意見を収集できる点も、エンゲージメントサーベイのメリットです。
具体的には、以下のような調査項目をもとに各設問を用意します。
調査項目 | 設問例 |
---|---|
組織との関与度 | 会社の価値観や文化に共感していますか? |
経営・事業 | 経営層は適切な意思決定をしていると思いますか? |
職場環境 | 目標達成に向けて、チーム内で協力し合う関係性が築けていると感じますか? |
仕事への意義 | 会社で働くことに誇りを持っていますか? |
労働条件 | 業績に見合った報酬を得られていると感じますか? |
調査時は、従業員の立場や役割に応じた設問設計にすることで、より組織の状態を正確に把握できます。
また、自由記述の項目を設ければ、従業員の本音や深掘りした意見を収集でき、経営層へ情報共有するときの説得力が増します。
デメリット:結果の分析に時間を要する場合がある
エンゲージメントサーベイのデメリットは、多角的な設問によって調査項目も多くなり、結果の集計・分析に時間を要してしまう点です。
とくに従業員数が多い企業の場合は、組織全体・部署・入社年など、あらゆる属性の傾向を分析しなければなりません。
サーベイツールの活用によって、調査結果の集計や分析を効率化できる一方で、組織改善をするための施策の検討や立案には、一定の期間と労力がかかります。
従業員満足度調査を活用するメリット・デメリット
従業員満足度調査の活用には、次のようなメリット・デメリットがあります。
調査を通して、組織の課題や改善点を明確に把握することで、従業員満足度を向上させるための具体的なアクションプランが策定できます。
以下より、メリット・デメリットを解説していきます。
メリット:組織への満足度を直接的に測定できる
従業員満足度調査を活用する大きなメリットは、組織の健全性やパフォーマンスに影響を与える要素(満足度)を直接的に測定できる点です。
給与や労働時間、人間関係など、従業員の働きやすさやモチベーションに関わる部分の調査で、それぞれの満足度を定量的に測定できます。
調査を通して組織改善が実施されれば、回答した従業員も「自分の意見で会社が変わろうとしている」と実感し、会社への信頼感も高まりやすいです。
メリット:給与・福利厚生などの要因別の満足度がわかる
給与体系や福利厚生、職場環境など、要因ごとの満足度を細かく把握できる点も、従業員満足度調査を活用するメリットです。
たとえば、給与面での不満が顕著な場合、給与水準の見直しやインセンティブ制度の導入などの対策が必要となります。
上記のように、各要因における課題の特定と改善ポイントを明確にしたいときは、従業員満足度調査の活用がおすすめです。
デメリット:内面的な要素(エンゲージメントなど)を測定できない
従業員満足度調査は、社内制度や労働環境への「満足度」に焦点を当てており、従業員個人の内面的な要素の測定には向いていません。
従業員のエンゲージメントやモチベーションは、個々の立場や役割、時間経過によって変化していくため、満足度だけでは把握しきれない場合があります。
人の内面から湧き出てくる仕事への熱意や、組織の成長に貢献したいと思う感情を測定したい場合は、パルスサーベイやエンゲージメントサーベイの活用が必要です。
パルスサーベイの活用方法
ここからは、パルスサーベイの具体的な活用方法と、関連する企業の事例をご紹介します。
従業員の状態把握だけにパルスサーベイを行うのでなく、個々の性格に応じたサポートにつなげるツールとして有効活用しましょう。
調査結果を共有してコミュニケーションを深める
パルスサーベイの調査結果は、人事担当者や上司が確認するのはもちろん、回答した従業員への情報共有も行いましょう。
上司が確認すべき点は、チームメンバーのスコアが低下している項目や、離職・休職につながる要因の有無などです。
一方で従業員が確認すべきことは、組織全体を見渡して「自分のチームはどのような状態なのか」という点です。
モチベーションが低下してきている状態であれば、その原因と改善策を従業員同士で話し合えるため、チーム内の活性化にもつながります。
【事例】「自分自身の状態把握」に重点を置いた調査
通信事業の大手企業であるSoftBankでは、従業員一人ひとりの「最新」の状態を可視化するため、社内でパルスサーベイを開発し活用しています。
同社の調査では「自分自身の状態把握」に重点を置いており、次の3つのカテゴリーをもとに設問を考えているのが特徴です。
- Work(仕事)
- Life(生活)
- Health(健康)
仕事とプライベートを統合する「ワークライフインテグレーション」の考え方を基準として、仕事以外の部分に関わる設問も取り入れています。
参考:なぜ、ソフトバンクの人事本部はゼロからパルスサーベイを開発したのか?|SoftBank
スコア変化に影響している要因を特定する
今回と前回のサーベイの結果を比較し、スコアの変化があった項目に着目することで、その影響要因の特定や、組織内における傾向の把握に役立ちます。
たとえば「仕事への活力」のスコアが前回より低下していた場合、業務量が急激に増えていないか、十分な休息が取れているかといった原因を推測できます。
一方で、エンゲージメントの低下が確認できれば、部署内の職場環境や人間関係を調査し、他部署でも同様の問題が起きないように対策を打つことも可能です。
また、従業員一人ひとりの性格を細かく分析し、より効果的な取り組みにつなげるには、AI技術の活用も欠かせません。
サーベイツール『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』は、ChatGPTを活用して従業員の「心の状態」を高い精度で分析できます。
以下の記事で「ミキワメAI」の開発秘話を紹介していますので、ご興味のある方は確認してみてください。
【事例】毎月のサーベイ実施でケアすべき人を把握
PCなどの修理事業を展開するグローバルソリューションサービス株式会社では、月1回サーベイを配信して、ケアすべき人の把握を行っています。
サーベイのアラート機能を活用しながら、次のようなサポートを実施しました。
- 人事が「ケアが必要な社員」を把握
- ケア対象の社員と店長(もしくは人事)が面談を実施
- 社員の現状の聞き取りをして、改善策を検討
各店舗ごとに「従業員の心の健康状態」が可視化されたため、離職傾向のある社員をいち早く察知できるようになり、サポート体制の強化にもつながっています。
事例:従業員一人ひとりの性格に合わせたケアを行うことで離職率の低下に繋がった|グローバルソリューションサービス株式会社
エンゲージメントサーベイの活用方法
続いては、エンゲージメントサーベイの具体的な活用方法と、関連する企業事例を2つずつご紹介します。
従業員と組織の間の信頼関係を強化し、持続可能な成長を実現するためにも、エンゲージメントサーベイを有効活用しましょう。
組織改善に向けたアクションプランの策定・実行に役立てる
エンゲージメントサーベイを通して、組織の健全性や従業員のエンゲージメントを評価することで、組織改善に向けたアクションプランを策定できます。
具体的には、以下のような手順で行うのが理想的です。
1:データ集計・分析 | 集計した結果を詳細に分析して、優先事項や改善の必要性を検討する |
2:調査結果のフィードバック | フィードバックを通して、調査結果の情報共有と意見の再収集を行う |
3:アクションプランの策定・実行 | 経営層と現場で課題を共有しながら、具体的なアクションプランの策定し実行する |
4:評価・改善 | アクションプランの結果を評価し、改善が必要な部分を把握する |
アクションプランの実行による効果検証は、一定期間が経過したあとに再調査を行いましょう。
月1回・週1回などのスパンで調査を行う場合は、パルスサーベイの活用も有効です。
【事例】社員一人ひとりの性格を踏まえたアプローチ
コンサルティング事業を展開する株式会社ペンシルでは、サーベイから提供される情報をもとに、社員一人ひとりの性格を踏まえたアプローチを行っています。
全社員の結果がすべて揃った段階で、前回調査からのスコアの変化や、個別コメントの有無を確認し、個々のサポート方法を検討しました。
また、毎月サーベイを配信したことで「悩みを抱えている人は、どんなことで困っているのか」がわかるようになったのも、サーベイを活用した効果です。
事例:組織と個人の心の健康状態を見える化し、エンゲージメントのさらなる向上へ|株式会社ペンシル
従業員の定着率に関わる要素を分析する
エンゲージメントサーベイの実施によって、組織と従業員との関係性や、仕事に対する熱意・貢献意欲を数値化した「エンゲージメントスコア」がわかります。
そのエンゲージメントスコアをもとに、離職リスクの高い人の特徴や傾向を把握することで、定着率向上につながるプラス要素を特定できます。
従業員が長期間にわたって働き続けるためには、エンゲージメントの向上が欠かせません。
実際の研究結果からも、従業員のエンゲージメント向上によって、一般職の人だけではなく、管理職の離職率低下につながることがわかっています。
エンゲージメントスコアの概要や計測方法を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。企業事例を通して、スコアを高める方法についても解説しています。
【事例】退職率とエンゲージメントの関係性を分析
情報システムの開発・保守を行っている企業では、エンゲージメントサーベイを活用し「退職率とエンゲージメントの関係性」の分析を実施しています。
以前から同社では、離職時の退職面談を通して離職理由を聞き取り、年齢や等級などの分析を実施していました。
退職につながる項目やその影響の大きい社員層を分析しながら、全社・組織・現場の3階層で取り組むべき施策が検討できるようになりました。
参考:エンゲージメント向上のための組織風土改革・事例|厚生労働省
従業員満足度調査の活用方法
最後に、従業員満足度調査の具体的な活用方法と、関連する企業事例をご紹介します。
調査結果を収集して終わらせるのではなく、満足度向上につながる改善策を実行し、従業員との信頼関係を築いていくことが重要です。
経年による満足度の変化をモニタリングする
従業員満足度は、個々の立場や役割の変更、人事異動による人間関係の変化など、さまざまな影響を受けて変化していきます。
そのため、半年に1回や年1回のスパンで調査を実施し、前回調査からの満足度の変化を追跡していくことが重要です。
前述したように従業員満足度調査では、仕事内容や職場環境、給与などの項目別に従業員一人ひとりの満足度が測定できます。
【事例】調査を活用した健康経営への取り組み
株式会社富士通ゼネラルでは、健康経営に向けて「健康でいきいきした職場づくり」に取り組んでいます。
健康経営とは?
従業員の身体的な健康の維持・増進に向けて、経営的な視点で施策を行う経営手法。
参考:「健康経営」について|経済産業省
健康経営をスタートさせるため、ストレスチェックによる組織評価と、従業員満足度調査の分析を行い、次のような施策を実施しています。
- 産業医による全員面談
- 臨床心理士による「傾聴・褒め方研修」
- 経営トップとの健康ミーティング
- ポジティブ発想を共有する「健康いきいきワールドカフェ」
従業員満足度調査を活用し、社員がパフォーマンスを最大限に発揮できる職場づくりを実現させた良好事例です。
参考:健康でいきいきした職場づくりから始める健康経営|株式会社富士通ゼネラル
改善策の実行による効果を検証する
社内制度の見直しなど、さまざま改善策を実行したあとは、従業員満足度調査を実施して効果検証を行いましょう。
給与水準の引き上げや、臨時ボーナスの支給など金銭面による施策は、従業員もその恩恵を実感しやすく、一時的な満足度の向上が期待できます。
しかし、人事評価の制度見直しや、コミュニケーションを活発化させる取り組みについては、社内に浸透するまでに一定期間必要です。
従業員満足度をより向上させるため、改善の兆しが見られる項目と、課題が残る項目を区別しながら、PDCAサイクルを回していきましょう。
【事例】社員の休職・離職を止められるかを検証
嘉穂無線ホールディングス株式会社では、社員の休職・離職を止められるかを検証するために、従業員満足度調査(サーベイ)を活用しています。
普段のコミュニケーションでは気づけない「社員の心理状態」をサーベイで可視化し、その結果を参考にしながら面談を実施しました。
- 人事異動後のポジションに慣れたか
- 職責が上がりストレスがかかっていないか
上記のような点を面談を通して確認し、必要に応じて「別の部署への異動を決断する」といった対応も行っています。
事例:従業員の状態を可視化し、個々の強みを活かせる組織に|嘉穂無線ホールディングス株式会社
サーベイやES調査の違いを理解して、自社に必要な手法を取り入れよう
今回の記事では、パルスサーベイとエンゲージメントサーベイ、従業員満足度調査の違いを詳しく解説してきました。
【各調査の概要】
種類 | 目的 | 頻度・回答時間 | 調査項目 |
---|---|---|---|
パルスサーベイ | 課題の早期発見とスピーディな改善 | ・月1回、週1回など ・約1〜3分 | ・やる気、モチベーション ・やりがい、充実感 ・職場環境に関する満足度 など |
エンゲージメントサーベイ | 組織状態の可視化と改善策の検討・立案 | ・半年に1回、年1回など ・約8〜30分 | ・組織への貢献意欲 ・仕事に対する熱意や活力 ・職場環境に関する満足度 など |
従業員満足度調査 | 労働環境への満足度の測定・分析 | ・半年に1回、年1回など ・約8~30分 | ・仕事内容に関する満足度 ・職場環境に関する満足度 ・待遇に関する満足度 など |
各調査の特色を理解したうえで、組織の目的やニーズに合った手法の選定が必要です。
組織の状況によっては、それぞれの調査を組み合わせることも視野に入れ、各課題に対する改善策を検討していきましょう。
従業員のメンタル状態の定期的な可視化・個々の性格に合わせたアドバイス提供を通じ、離職・休職を防ぐパルスサーベイ。30日間無料トライアルの詳細は下記から。