人事戦略

中途採用者が定着しない6つの原因と対策方法|企業の成功事例も紹介

この記事でわかること
  • 中途採用における「優秀すぎる人材」の特徴と失敗例
  • 優秀すぎる人材を採用するときの注意点と対策方法
  • 中途採用で優秀な人材を見極める方法

「中途採用者が定着しないのは、どのような原因が考えられるのか」
「離職率の改善につながる具体的な取り組みを教えてほしい」

このように中途採用で獲得した人材の離職が続き、再び採用活動に追われている人事担当者の方もいるのではないでしょうか。

即戦力として活躍を期待された人材が早期離職することで、採用コストの増加やチームの士気低下などの悪影響が生じます。

本記事では、中途採用者が定着しない6つの原因と対策、企業の取り組み事例を紹介します。

採用基準の見直しやフォロー体制の強化など、実践的なアプローチも詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

中途採用した社員が定着しない6つの原因

中途採用社員_定着しない原因

中途採用した社員が定着しないのは、以下の6つの原因が考えられます。

自社の状況と照らし合わせて、中途採用者が離職する原因を特定し、具体的な対策を検討していきましょう。

対策方法や具体例は後述していますので、先に確認したい方はこちらからチェックしてみてください。

入社前後でギャップがある

入社前に聞いていた業務内容や会社の雰囲気と、入社後の状況にギャップがある場合、中途採用者は「期待を裏切られた」と不満を抱いてしまいます。

エン・ジャパンの調査によると、79%の人が入社前後で「ギャップを感じた経験がある」と回答しており、そのうち55%の人はギャップが原因で離職しています。

離職原因のギャップポイントとして、以下の4つの要因が多い傾向です。

  • 職場の雰囲気(29%)
  • 仕事の内容(24%)
  • 時給・給与(9%)
  • 仕事の量(8%)

参考:2600人に聞いた「就業前後のギャップ」調査| エン・ジャパン株式会社

採用前に提供した情報が不十分だった可能性もあるため、職場で働いている社員の姿を伝えるなど、社内情報を包み隠さず伝えることが重要です。

自社で活躍できる人材の見極め方や、採用ミスマッチを防ぐ方法についてもっと詳しく知りたい方は、自社で活躍できる人材の見極め方(無料)の資料をダウンロードしてご確認ください。

また、以下の記事でも中途採用におけるミスマッチの原因や対策について詳しく解説しています。定着率の改善を目指している人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

中途採用_ミスマッチ_原因対策
中途採用でミスマッチが起きる4つの原因|企業がすべき対策とは?中途採用のミスマッチの原因は、明確な採用基準がなく、社風や働き方に対する適性が見極められていないためです。本記事では、中途採用におけるミスマッチの原因と対策、企業の取り組み事例を紹介します。...

賃金や労働条件に対する不満がある

給与や賞与が業界水準に比べて低かったり、業務量に対して報酬が見合わなかったりすると、自分の価値を正当に評価されていないと感じ、早期離職の可能性が高まります。

転職者を対象としたマイナビの調査によると、転職活動を始めた理由には、以下のように給与や労働条件に対する不満が挙げられています。

理由男性30代女性30代
給与が低かった30.6%28.5%
休日や残業時間などの待遇に不満があった17.7%21.5%

参考:転職動向調査2024年版(2023年実績)|株式会社マイナビ

給与や労働条件への不満を減らすためには、同じ業界での賃金水準を調査し、他社と競争力のある給与体系を設計しなければなりません。

厚生労働省では中途採用者における採用時の賃金情報を集計・公開しています。

以下の表は、企業規模別における30〜34歳の賃金情報を抜粋したもので、企業規模が大きいほど賃金も高くなっていることがわかります。自社の状況と比較するときの参考にしてみてください。

【全国(30〜34歳)】

企業規模(従業員数)男性女性
29人以下26万5000円22万5000円
30〜99人27万5000円23万7000円
100〜299人28万6000円24万4000円
300人以上32万8000円27万6000円

参考:中途採用者採用時賃金情報(全国版)|厚生労働省

会社からの期待と希望するキャリアに違いがある

会社が求めている役割や業務内容と、本人が描いているキャリアが合致しない場合、モチベーションの低下によって早期離職につながりやすいです。

また、会社からの大きな期待を受けて入社するため、その期待に応えられるか不安を感じてしまうケースも、離職の原因として考えられます。

​​マイナビの調査によると、転職者全体のうち15.9%の人が、成長できる環境が整っていなかったことを理由に転職活動を始めています。

参考:転職動向調査2024年版(2023年実績)|株式会社マイナビ

企業としては、社員個々の状況に合わせたキャリアパスを提示したうえで、人事や上司との定期的なキャリア面談を行うなど、スキル向上をサポートする体制が必要です。

職場の雰囲気や人間関係が悪い

社員同士のコミュニケーションが不足し、情報共有や連携がうまく取れていない状況だと「働きにくい会社」と判断され、他社への転職を考えてしまいます。

中途採用者にとっては、自身の経験を活かして頑張ろうとするなかで、職場内の人間関係が悪く業務が円滑に進まない場合、ストレスや疲労が蓄積する原因にもなります。

マイナビの調査によると、転職者全体のうち21.0%の人が「職場の人間関係の悪さ」を理由に転職活動を始めており、とくに女性の回答割合が多い傾向です。

対象者回答割合
男性20代15.8%
​​男性30代18.9%
女性20代22.0%
女性30代25.4%

参考:転職動向調査2024年版(2023年実績)|株式会社マイナビ

また、中途採用者を受け入れる雰囲気がない職場も、いじめやハラスメントへと発展する恐れもあり、離職につながってしまう原因となります。

経営方針や社風が合わない

会社の経営方針や社風(働き方・雰囲気・社内制度など)が、自分の価値観や考え方と著しく異なる場合、ストレスや不満の原因になりやすいです。

とくに中途採用者は、前職での経験にもとづく強い信念を持っており、会社の考え方を重視して入社する傾向があるためです。

転職者を対象としたマイナビの調査によると、転職活動を始めた理由には、会社の将来性や事業内容に対する不満が挙げられています。

理由男性30代女性30代
会社の将来性、安定性に不安があった27.4%20.0%
会社の事業内容に不満があった16.0%12.3%
経営者の事業戦略や企業理念に合わなかった12.3%9.2%

参考:転職動向調査2024年版(2023年実績)|株式会社マイナビ

これらの原因を解消するには、会社説明会や面接時に、会社のビジョンなどを丁寧に説明し、候補者自身が価値観と合うかを判断できるような情報提供が求められます。

教育・研修などフォロー体制が整っていない

中途採用者は、会社からの期待に応えるため積極的に行動しようとしますが、配属後の適切なフォローがないと不安を感じてしまいます。

具体的には、社内システムの使用方法や業務の進め方について教育がなかったり、上司や同僚と接する機会が極端に少なかったりするケースです。

リクルートでは、転職後の職場や仕事に対する「適応感」について、期間別の状況を調査しています。

以下の図のように、転職後の1~2年以内の群においては「適応感」のスコアが下がっており、2〜3年以内の群ではスコアが回復していることがわかります。

リクルートの調査

出典:中途採用者の適応に関する実態調査報告|株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

たとえ即戦力が期待される中途採用者であっても、転職後2年間は丁寧なフォローをしていく必要があることが調査結果からわかります。

また、中途採用者は優秀だからと放置され、フォローもなく不安や責任の重さを感じてしまうケースも少なくありません。

以下の記事では優秀すぎる人を獲得したときの注意点を解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

中途採用て_優秀すぎる人
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中途採用の離職率は高い?定着しない会社のデメリット

中途採用_離職率は高いのか_定着しない会社のデメリット

中途採用の離職率は、新卒採用と比較するとやや低い傾向ではありますが、業種や企業規模によって異なります。

リクルートワークス研究所の調査によれば、入社3年以内の離職率と各離職率での企業割合は、以下のようになっています。

離職率中途採用新卒採用
30%以上4.6%6.5%
20〜29%10.2%7.0%
10〜19%13.1%18.3%
5〜9%19.9%21.5%
4%以下52.3%46.8%

参考:企業調査による人材定着率の 新卒・中途比較(P5)|リクルートワークス研究所

離職率10%以上の企業割合を合計すると、中途採用は27.9%、新卒採用は31.8%となっており、中途採用の方がやや低いことがわかります。

中途採用と新卒採用に関係なく、離職率が高い会社は以下のようなデメリットが生じます。

  • 採用活動の再実施によって、採用コストが増加する
  • 離職者が多い会社と認知され、企業イメージや信頼が低下する

中途採用における離職率の現状や課題については、以下の記事でも詳しく解説しています。定着に向けた対策方法や企業事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

中途採用_離職率_放置_退職
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中途採用者を定着させる7つの方法と具体例

中途採用者_定着方法_具体例

中途採用者を定着させるための方法と具体例について、以下の7つの取り組みを解説します。

方法具体例
中途採用向けの採用基準を策定する適性検査で「性格の多様性」を考慮した採用
採用前に社風や働き方を明確に伝える写真付きの社員インタビュー記事を求人サイトに掲載
上司との面談を定期的に行う目指す方向性をすり合わせる自己実現への支援
中途採用者を歓迎する雰囲気をつくる「個の尊重」と「異文化の理解」を促す行動指針の策定
メンターや相談相手を決めておく「生き方・働き方相談窓口」を社内外に設置
明確なキャリアパスを提示する中途採用者にも公平なキャリアアップの機会を提供
職場でのコミュニケーションの機会をつくる心理状態を可視化して社員同士での声かけを実施

まずは自社の取り組み状況を見直し、不十分な点を洗い出したうえで、補完が必要な施策に取りかかりましょう。

定着率向上のポイントを詳しく知りたい方は、以下のお役立ち資料をダウンロードしてみてください。定着率が低い要因や、具体的な解決策の詳細を解説しています。

>>>社員の定着率向上のポイントを無料でダウンロードする

定着率改善のステップは以下の記事で詳しく解説していますので、施策検討時の参考にしてみてください。

定着率_上げる方法
定着率を上げる7つの方法と具体例|改善のステップや企業事例も解説定着率を上げるためには、採用基準を設けてミスマッチを減らすことや、柔軟に働ける労働環境を整えることが重要です。本記事では、定着率の向上させる具体的な方法と、改善に成功した企業事例を詳しく解説します。...

中途採用向けの採用基準を策定する

中途採用では、社会人を経験していない新卒採用とは異なり、過去の経験や実績をもとに採用するため、中途採用向けの採用基準を設ける必要があります。

採用基準が明確化されていれば、どの採用担当者でも偏った評価になりにくく、自社の特性に合った人材を採用できます。

具体例として、以下のような点を考慮してみましょう。

  • 募集する職種に対して、〇年以上の経験があるか
  • 前職とは異なる文化や環境に対する適応力があるか
  • 自分の意志や判断をもとに、責任のある行動が取れるか
  • 問題点・課題を解決へと導ける能力があるか
  • 自分のキャリア目標を何年後に達成したいか

採用基準を設定する方法を知りたい人事担当者の方は、以下の記事も参考にしてみてください。採用基準を明確化するメリットや、基準の決め方を解説しています。

採用基準を明確化するメリットや方法を解説 企業にとって、採用基準を明確化することは、採用を成功させるための重要なポイントです。採用基準は、企業が採用したい人物像をもとに作成しま...

具体例:適性検査で「性格の多様性」を考慮した採用

産業プラントの研究などを行う東洋エンジニアリング株式会社では、新規事業を進めるための人材確保が必要となり、キャリア採用の強化に取り組みました。

当初は、新卒採用と同様の適性検査で選考していましたが、所要時間90分の能力検査が中心だったため「性格の多様性」を考慮した検査に切り替えています。

また、キャリア採用の候補者は現職での仕事が忙しく、検査を受ける時間も限られるため、短時間で検査ができるかも重視した点です。

適性検査の結果から、性格特性が「仕事に合うか合わないか」がわかるため、能力だけではなく性格での適性判断も可能になりました。

性格特性を重視した適性検査の導入で、採用選考中の離脱者がゼロとなり、社内では「性格の多様性」をマネジメントに活かす意識も高まっています。

事例:キャリア採用候補者の負担を軽減するべく、短時間で受検できる適性検査の導入

採用前に社風や働き方を明確に伝える

採用前に、社風や自社での働き方を明確に伝えて、入社後のギャップや不満を減らすことで、結果的に社員の定着につながります。

とくに中途採用では、現在働いている会社と転職先との状況を比較するため、入社後の働く環境や雰囲気をイメージできるように伝えなければなりません。

具体的な取り組みとしては、以下のような方法があります。

  • 採用サイトに社内制度や社員インタビューを掲載する
  • 職場体験を通して現場社員との対話の機会を設ける

事前に公開する情報は、会社のよい点だけではなく、改善に向けた取り組みなどの情報も提供し、採用後のミスマッチが生じないように心がけましょう。

具体例:写真付きの社員インタビュー記事を求人サイトに掲載

看板などの設計・製作を行う株式会社協同工芸社では、民間求人サイトを活用した中途採用を進めて、複数職種での採用を実現しています。

当初は、設計職と製造職を同じ広告で募集予定でしたが、担当者より「就業経験を活かすため各職種にアプローチすべき」とアドバイスを受け、2つの広告を掲載しました。

また、写真を掲載できるという求人サイトの特徴を活かし、写真付きの社員インタビュー記事を掲載したことで、会社の雰囲気を伝えやすくなりました。

民間求人サイトの活用によって、同業種または類似業種の経験がある人材にターゲットを絞り、設計職と製造職で3人の採用に成功しています。

参考:民間求人サイト活用事例集(株式会社協同工芸社)|経済産業省

上司との面談を定期的に行う

中途採用者は優秀な人材だからといっても、新しい職場においては、業務の進め方や期待される役割に対して不安を感じたり悩みを抱えたりします。

そのため、上司との面談を通じて、日頃の悩みや業務の進捗状況を確認し、定期的にコミュニケーションを取ることが重要です。

上司と部下の1対1で行う1on1ミーティングでは、一般的に以下のような内容・頻度で面談を行いますが、目的によって異なるため注意しましょう。

面談内容・業務進捗の確認とフィードバック
・業務やプライベートの悩み
・目標設定とキャリアプラン
・心身の健康状態 など
頻度週1回、月1回 など
時間15~30分程度

上司との1on1ミーティングによって、社員は今後の方向性が明確になりモチベーションも維持され、離職の防止につながります。

具体例:目指す方向性をすり合わせる自己実現への支援

医療医薬品事業を行う第一三共株式会社では、バイオ医薬品や再生医療医薬品などの開発競争が激化しているなか、多様な人材を確保するため中途採用に注力しています。

中途採用者には、早期に高度な役割を期待する一方で、これまでのキャリアを考慮しながら「能力・適性・本人の希望」に応じた活躍の場を提供しています。

同社の「自己実現(キャリア形成)」 と「ビジネススキルアップ」を支援する取り組みは、以下のとおりです。

自己成長申告制度社員が自らの現状とこれからの自己実現の姿を会社に申告する制度
担当変更・組織間異動などの展開幅広い視野や多様な業務への対応力を高めるための支援
グループ共通の研修自らのキャリアステージに応じたグループ合同での研修

また、会社の理解を深めてスムーズに適応できるように、人事制度や就業条件などの情報を提供する、入社後の教育・研修も充実させています。

中途採用者を歓迎する雰囲気をつくる

会社や職場のメンバーから歓迎されるかどうかで、配属後の仕事に対するモチベーションや職場環境への適応に影響してきます。

そのため、新卒社員と同じように歓迎する雰囲気をつくることで、中途採用者もスムーズに職場に溶け込み、安心して業務に取り組めるようになるのです。

新たな社員を迎え入れる方法として、以下のような取り組みがあります。

  • 入社後のオリエンテーションで企業理念などを説明する
  • 経営者からのウェルカムメッセージを伝える
  • 社内イベントに招待して社員同士の親睦を深める

職場全体で歓迎する雰囲気をつくり「組織の一員」であることを伝えて、中途採用者が孤立しないように積極的に声かけを行いましょう。

具体例:「個の尊重」と「異文化の理解」を促す行動指針の策定

血管の病気治療に関わる事業を行っているテルモ株式会社では、急速なグローバル展開への対応や中長期の成長戦略を実現するため、中途採用を積極的に実施しています。

中途採用者の比率が12%を占めるなか、働きやすい企業風土を構築するため、以下のような取り組みを行いました。

  • 社内呼称「さんづけ」など、オープンにコミュニケーションを図れる組織づくり
  • 「個の尊重」と「異文化の理解」を行動指針に盛り込んで社内外に明示
  • 企業理念に共感できる人材を採用し、入社後のフォローアップ研修を実施

同社では、社員が「自分らしくいきいきと働き・学び・成長すること」を目標に掲げて、多様な人材を歓迎する体制を整えています。

メンターや相談相手を決めておく

新しい職場に適応する過程では、業務上の質問や悩みを気軽に相談できる相手を決めておくことが、中途採用者に安心感を与える重要なポイントです。

上司や同僚が相談に乗りフォローアップしていくことで、前職との違いによる戸惑いが解消され、職場にもスムーズに適応できます。

具体的な取り組みには、経験豊富な先輩社員が後輩社員をサポートするメンター制度の導入や、いつでも相談できる専用窓口の設置などがあります。

メンター制度を導入する際のポイントや、運用におけるよくある課題を詳しく知りたい方は、メンター制度設計のポイント(無料をダウンロードしてみてください。効果的なメンター制度の設計と運用方法を解説しています。

メンター制度を導入するときは​​、経営陣・人事部・上司が一体となって、中途採用者を支援していく社内体制の整備も必要です。

具体例:「生き方・働き方相談窓口」を社内外に設置

制御システムなどの設計・開発を行う横河電機株式会社では、新しい価値創出のための社員を育成するとともに、さまざまな経歴を持つ外部人材を積極的に採用しています。

中途採用者を受け入れるため、社内外に「生き方・働き方相談窓口」を3種類用意し、相談内容に応じて気軽に相談できる環境を整えました。

また、テレワークも積極的に推進しており、社員の状況に合わせて介護・育児・学びとの両立を図れるように、多様な働き方を支援する制度も整備しています。

  • 育児時間制度
  • 育児休職制度
  • 子の看護休暇制度
  • 次世代育成支援金制度

同社のさまざまな取り組みが認められ、優れた職場文化にもとづいた「働きがいのある会社」として認定も受けています。

明確なキャリアパスを提示する

中途採用者は新しい会社でのキャリアパスが明確ではないと、自身の将来の展望が見えず「この会社では理想のキャリアを築けない」と感じてしまいます。

そのため、社員の成長と目標達成に向けた具体的なロードマップを提示することで、仕事へのモチベーションが向上し、会社に対する貢献意欲(エンゲージメント)も高まるのです。

キャリアパスを明確化するためには、以下の取り組みが必要です。

  • キャリアに応じた階級・等級の設計
  • 各階級・等級における人事評価の基準を設定
  • 業績や評価に応じた給与体系の整備
  • キャリアアップに必要な研修・教育の実施

社会人経験がある中途採用者においては、さまざまな価値観や考え方を持っているため、選択肢の広いキャリアパスを設計しておくことが重要です。

具体例:中途採用者にも公平なキャリアアップの機会を提供

貨物鉄道事業を行う日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)では、事業の変革と企業文化を変える新しい風を吹き込むため、即戦力となる中途採用を実施しました。

社員が「いきいき伸び伸びと働ける職場」をつくるために、人事賃金制度の改正とともに、中途採用者にも公平なキャリアアップの機会を提供しています。

エキスパート群(経験者採用)においては、以下のように昇格・昇給の研修を等級ごとに実施しています。

等級目的研修
B等級基礎的な業務知識・技能を習得するビギナー研修
R1等級実務の中心として後輩の模範となるリーダー研修
R2等級インストラクター研修
I等級リーダーとして率先して業務に取り組むインストラクター研修
C等級職場の中心となって指導・管理するマネジメント研修

また、2015年度から2018年度までの新規採用のうち、約55%が中途採用者となっており、取締役や執行役員への登用を果たした実績もあります。

職場でのコミュニケーションの機会をつくる

中途採用した社員が定着しない理由として、職場・人間関係の悪さや、入社後のフォローがないことが挙げられています。

新しい会社での組織文化や職場に適応し良好な人間関係を築くためには、社員同士でコミュニケーションが取れる場や機会をつくらなければなりません。

コミュニケーションを活性化させる取り組み例は、以下のとおりです。

  • 気軽に会話できるリラックススペースの設置
  • すぐに相談や連絡ができるチャットツールの導入
  • 昼食を取りながら交流を図るランチ会の実施

社員同士で定期的にコミュニケーションが取れれば、お互いの信頼関係が構築され、職場の雰囲気も改善されます。

具体例:心理状態を可視化して社員同士での声かけを実施

コーポレートコーディネート事業を行う未知株式会社では、社内全体のエンゲージメント低下によって、仕事を休む社員が毎日3人ほど発生している状態でした。

そこで、社員が休む原因を突き止め離職者を出さないために、社員の心理状態を可視化して把握できるエンゲージメントサーベイを導入しました。

エンゲージメントサーベイについては、以下の記事で詳細をご覧になってください。

エンゲージメントサーベイ_目的_効果
エンゲージメントサーベイとは?実施する目的と期待される5つの効果を解説エンゲージメントサーベイとは、社員のエンゲージメントを測定して改善に活用する調査のことです。導入することでモチベーション向上や離職率低下が期待できます。サーベイの特徴や効果について解説しています。...

また、エンゲージメントサーベイツールについては、以下のお役立ち資料をダウンロードしてご確認ください。導入事例と共に、最適なツールの選び方を紹介しています。

>>>エンゲージメントサーベイツール一覧と比較10選を無料ダウンロード

サーベイの結果をもとに、社員のスコア変化に応じて上司がアプローチするのと同時に、社員同士で声かけする取り組みも行っています。

  • 相手の好きなポイントを紙に書いて渡す「お紙(推し)」
  • ポジティブな発信をする「うれしいねLINE」

サポート体制の強化によって、仕事を休む社員は月に1〜2人ほどにまで減少し、離職防止にもつながっています。

事例:サーベイの結果から改善アクションを実施し、エンゲージメントが劇的に改善

中途採用者の定着に成功した企業事例

中途採用者の定着_成功した企業事例

ここからは、中途採用者の定着に成功した企業について、2つの取り組み事例を紹介していきます。

社員の定着に取り組んでいる人事担当者の方は、各社の施策内容を参考にして、自社に取り入れられる部分がないかを見つけてみてください。

事例1:日清食品ホールディングス株式会社

日清食品ホールディングス株式会社は、カップ麺の製造・販売などグループ全体の経営管理を担っており、グローバル経営人材の獲得に向けて中途採用に注力しています。

主な目的は、高い専門性を持った人材の獲得によって、コア技術の内製化とレベルアップを促進させ、グローバルカンパニーとしての評価を獲得することです。

同社の中途採用関連の取り組みは、以下のとおりです。

  • キャリア形成や自己成長の学びを提供する社内講演会の実施
  • 理念研修や部門横断のワークショップを実施
  • 管理職・非管理職ポストを公募し、重責ポストにチャレンジする機会を提供

これらの取り組みによって、2023年度の中途採用者比率は78.1%となっており、正社員の離職率は4.6%と低い水準を維持しています。

事例2:株式会社みずほフィナンシャルグループ

株式会社みずほフィナンシャルグループでは、注力事業の分野や新しいビジネス領域における中途採用を進めており、主な取り組みは以下のとおりです。

取り組み内容
各事業部門の戦略に応じた選考それぞれの部門が、応募者のスキルや専門性を踏まえて採用
中途採用向けチャネルの多様化・エージェントからの紹介
・スカウトリクルーティングの活用(転職サイト登録者へのアプローチ)
・リファラル採用(社員からの紹介)
柔軟な処遇運営人材マーケットにおける報酬水準を踏まえて、処遇を弾力的に対応

また、採用した人材の活躍を目指し、中途採用者向けのコネクティビティ・イベント(※)も開催しています。

これらの取り組みによって、2022年度における新入社員の離職率は2.5%と、過去5年間でもっとも低い水準を実現しました。

(※)社員同士が信頼や敬意を持ってお互いにつながり合うイベント

まとめ:中途採用者が定着しない原因を特定し対策を打とう

まとめ_中途採用者_定着しない

中途採用した社員が定着しない原因は、労働条件や人間関係に対する不満、教育・研修のフォロー体制の整備不足などさまざまです。

これらの課題を解決して定着を図るためには、以下のような取り組みが必要です。

前職での経験があるからと入社後のサポートを怠ってしまうと、仕事の進め方の違いによって戸惑いや不安が生じてしまいます。

新卒社員と同じように「組織の一員」として歓迎する雰囲気をつくり、働きやすい環境を整えていきましょう。

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ABOUT ME
佐藤 透
大学卒業後、複数のIT企業で勤務。BtoB・BtoCのSEOやコンテンツマーケティングの領域で活動中です。HR領域や新しい働き方のトレンドに興味を持ち、リーディングマークに従事。

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