社員の基本情報や人事評価など、人材情報を集約して管理したいと考えている人事担当者の方もいるのではないでしょうか。
人材データベースとは、社員一人ひとりのあらゆる情報を集約して一元管理できるデータベースのことを指します。人材データベースを構築する目的は、適切な人員配置やタレントマネジメントの人事施策などに活用するためです。
社員の情報を一元管理することで、データベースを社内で共有して、課題解決に向けた施策が効率的に検討できます。
本記事では、人材データベースの目的や項目、導入するメリットについて詳しく解説しますので、自社の人材管理の参考にしてみてください。
人材データベースとは?
人材データベースとは、社員一人ひとりの基本情報や能力など、人材情報のデータを網羅的に集約・管理する仕組みのことです。
集約されるデータには、氏名や生年月日などの基本情報に加え、性格検査や人事評価、勤怠データなどのさまざまな情報があります。
人材データベースを構築することで社員の情報を社内で共有したり、適材適所の人員配置に活用したりでき、戦略的な組織・チームの構築ができます。
人材データベースを構築する5つの目的
人材データベースを構築する主な目的は、以下の5つが挙げられます。
組織の成長や業務効率化を実現するために、人材データベースを活用して社員の働きやすい労働環境を構築することが重要です。
人材データベースを構築する目的について、以下より解説していきます。
社員の能力や性格に合った人員配置をする
人材データベースを活用して人員配置することで、社員一人ひとりの能力や性格に合った適材適所のチームや部署へ配属できます。
社員の個性を活かした人員配置によって、自分のスキルや能力を十分に発揮して、生産性やモチベーションの向上にも影響を与えます。
また、社員に向いている職務や、性格傾向の近い社員を考慮した人員配置にすることで、仕事内容や人間関係のミスマッチも防げるでしょう。
ミスマッチが発生する原因は他にもあるため、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。ミスマッチを防止するための対策も解説しています。
タレントマネジメントの人事施策に活用する
人材データベースを構築する目的の一つは、タレントマネジメントの人事施策に活用することです。
タレントマネジメントとは、社員の才能や素質の情報を集約・管理して、以下のような人事施策を戦略的に行うことを言います。
- 人材育成のための研修制度を構築する
- キャリア開発に向けた自己啓発を推進する
- 成果に応じた表彰や報酬を提供する
人材データベースには、社員一人ひとりの適性や能力などの情報が蓄積されており、それを活かした戦略的な人材育成やキャリア計画の検討が可能となります。
働きやすい労働環境を構築する
人材データベースには、社員の満足度や勤怠情報が含まれており、データを分析・活用することで職場の課題や問題点を把握しやすくなります。
その課題を解決するために改善を行えば、働きやすい環境を構築でき、社員のモチベーション向上やストレス軽減につながります。
社員の適性やライフスタイル、ニーズに合わせた自由度のある労働環境を提供することが大切です。
公平で適切な人事評価をする
人材データベースは、社員の「経歴・実績・スキル」などが詳細に記録されているため、客観的な情報をもとにした公平で適切な人事評価が可能です。
人事評価の公平性と適切性は、社員の組織に対する信頼度に直結し、仕事のパフォーマンスや社員のモチベーションにも影響します。
公平かつ適切な人事評価プロセスは、組織全体の透明性にもつながることから、人材データベースを活用した社内の情報共有も大切です。
人事評価について、より詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
社員名簿(労働者名簿)を作成する
人材データベースを活用して、社員名簿(労働者名簿)を作成することも、構築する目的の一つです。
労働基準法により、社員を雇用する事業者は労働者名簿の作成が義務付けられています。
参考:労働基準法(107条:労働者名簿)|厚生労働省
また労働者名簿に記載する必要事項は、以下のとおりです。
- 性別
- 住所
- 従事する業務の種類
- 雇入の年月日
- 退職の年月日及びその事由
- 死亡の年月日及びその原因
人材データベースで従業員名簿を作成することで、紙ベースでの管理が不要となり、採用時や人事異動時の名簿作成・修正の手間や時間を削減できます。
人材データベースの主な7つの項目
人材データベースに記録される内容は、以下の7つの項目です。
これらの社員情報を集約することで、生産性向上や労働環境の改善に向けた、現状の把握と施策の検討が可能となります。
以下より、人材データベースの項目を解説していきます。
1:基本情報・属性
人材データベースに記録される「基本情報」や「属性」は、以下のような項目です。
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 住所
- 連絡先
基本情報は、従業員名簿の作成や給与計算、各種手続きに必要な情報であるため、正確に記録することが重要です。
2:職務経歴・人事評価
人材データベースに記録される「職務経歴」や「人事評価」は、以下のような項目です。
- 学歴
- 職務経歴
- 業務実績
- 昇進の履歴
- 人事評価の履歴
社員の経歴や成長過程を記録することで、適切なスキルアップや昇進の機会を提供でき、客観的なデータをもとにした公平な人事評価が行えます。
3:職務内容
人材データベースに記録される「職務内容」は、以下のような項目です。
- 従事している業務
- 担当の部署・役職
- 個人の目標
職務内容は、チーム全体の役割分担や適切なポジションへの配置など、効率的な業務運営に必要な情報です。
4:性格・マインド情報
人材データベースに記録される「性格」や「マインド情報」は、以下のような項目です。
- 採用時の適性検査の結果
- 性格検査による人物タイプ
- 満足度やエンゲージメント
社員の性格やマインド面の情報を記録しておくことで、個人の適性を活かした人員配置や組織の課題把握につながります。
また適性検査の結果は、性格情報に加えて基礎的な学力や能力についても把握できるため、採用後の人事施策にも活用できます。
適性検査について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
5:スキル・保有資格
人材データベースに記録される「スキル」や「保有資格」は、以下のような項目です。
- 専門的なスキル
- 国家資格・検定
- 技能講習・特別教育
スキルや資格などの情報は、社員の得意分野や苦手分野を把握できることから、適切な業務分担やスキルを活かしたプロジェクトへの参加ができます。
6:勤怠情報
人材データベースに記録される「勤怠情報」は、以下のような項目です。
- 出社・退社記録
- 残業時間
- 出勤日数
- 休暇履歴
勤怠情報は、労働条件との適合性や給与計算に必要不可欠な情報です。
また、出勤状況や労働時間の管理が容易になるため、過重労働の予防や効率的なシフト調整が可能となります。
7:行動データ
人材データベースに記録される「行動データ」は、以下のような項目です。
- 位置情報
- 心拍数
- 睡眠時間
- 移動距離
これらの行動データは、社員がウェアラブル端末を装着することで得られる情報です。
行動データを記録することで「業務の成果」と「社員の能力」との関係性の把握や、社員の心身不調の察知などに役立てられます。
人材データベースを構築する方法
人材データベースを構築するための主な方法は、以下の2つが挙げられます。
タレントマネジメントシステムは、多機能で自社に合ったカスタマイズができる便利なツールです。
一方、Microsoft Excelは手軽に導入できますが、大規模なデータの集約・管理には労力や時間がかかることもあります。
以下より、人材データベースを構築する2つの方法を解説していきます。
タレントマネジメントシステム
タレントマネジメントシステムを活用すれば、効率的かつ容易に人材データベースを構築できます。
タレントマネジメントシステムとは、人材データベースを活用した人材育成や人事評価、人員配置など、効果的な管理・運用を行うシステムのことです。
以下の表のように、タレントマネジメントシステムには3つの種類があります。
種類 | 特徴 |
---|---|
クラウド型 | ・インターネット経由で提供されるシステム ・通信環境があれば場所を問わず利用できる |
オンプレミス型 | ・自社のサーバーに構築するシステム ・カスタマイズ性がありニーズに合った設定が可能 |
パッケージ型 | ・メーカーのソフトをパソコンにインストールして構築するシステム ・あらかじめ機能が搭載されており、導入が容易で使いやすい |
それぞれの種類によって、機能やカスタマイズ性、システムの導入費用が異なるため、自社の環境や予算に応じた検討が必要です。
Microsoft Excel
Microsoft Excelは、一般的に利用されている表計算ソフトであり、手軽に人材データベースの構築が可能です。
基本情報や職務経歴など、自社に必要なデータだけピックアップして、自由にデータベースをカスタマイズできます。
社員数が少なく小規模な企業の場合は、Excelでの管理もしやすいですが、社員数が多い大企業では、大量のデータ入力や複雑な分析に限界があります。
性格やマインドの把握はサーベイも有効な手段
人材データベースの項目の一つである、社員の性格やマインド面の情報収集には、サーベイの活用が有効な手段です。
サーベイとは、社員に対してアンケート形式の質問を行い、満足度やコンディションなどを数値化して評価・分析する調査のことです。
また、サーベイでは性格やマインドの現状把握に加えて、社員のニーズや組織への不満も把握できるため、労働環境の改善や良好な人間関係の構築に活用できます。
サーベイはさまざまな種類があるため、詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
人材データベースを導入するメリット
人材データベースを導入するメリットは、主に以下の3点が挙げられます。
人材データベースを導入して活用することで、効率的な組織運営と組織全体の生産性向上につながるでしょう。
以下より、人材データベースを導入するメリットについて解説していきます。
性格の類似点を考慮した人員配置ができる
人材データベースに記録された社員の性格情報を活用することで、性格の類似点を考慮した人員配置ができます。
メンバー同士の性格傾向や人物タイプが近い職場では、活発で円滑なコミュニケーションが行われ、協力関係や連携が強化されます。
協力的で良好な人間関係が構築できれば、社員一人ひとりのモチベーション維持にもつながり、組織全体のパフォーマンス向上も期待できるでしょう。
サーベイツールの『ミキワメ ウェルビーイング』では、性格検査の結果から「16個の人物タイプ」に社員を分類し、性格傾向の近い社員がいる職場へ人員配置できます。
『ミキワメ ウェルビーイング』について詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
参考記事:ミキワメ ウェルビーイングとは?社員の幸福度を高め離職・休職を防ぐ
また、サーベイツールには多くの種類があります。各サービスの特徴を確認したいご担当者様は、以下の記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。
参考記事:【2023年版】エンゲージメントサーベイツール10個の特徴を比較|ミキワメラボ
人材データを活用した施策が検討できる
人材データベースに蓄積された情報を分析して、社内のトレンドや傾向を把握することで、必要な人事施策や労働環境の改善が検討できます。
たとえば、社員の人材データから潜在能力や将来性を発見できれば、育成プログラムの提案やキャリアアップに向けた人員配置が可能となります。
社員の意見やニーズに沿った施策を実行することで、従業員満足度やエンゲージメント(組織と社員との強いつながり)の向上にもつながり、離職リスクも低下するでしょう。
「従業員満足度」や「エンゲージメント」について詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
社員の情報を社内で共有できる
人材データベースは社員の情報を一元管理しているため、経営者や人事担当者、上司などの社内で情報共有ができます。
情報共有できることで、人事異動時の対応や異なる部門間での連携が容易になり、業務の進行がスムーズに行えます。
また、データベースの情報をもとに社員への適切なケアやサポート、コミュニケーションの機会を作り、組織全体の連携も高められるでしょう。
人材データベースを導入するデメリット
人材データベースを導入するデメリットは、主に以下の2点が挙げられます。
人材データの収集や管理だけを目的にするのでなく、改善に向けた分析や戦略の検討が必要です。
以下より、人材データベースを導入するデメリットについて解説していきます。
人材データを施策に活用できない場合がある
人材データベースを導入しても「うまく施策に活用できない」「効果的な施策がわからない」など、課題や問題が生じる場合もあります。
データの収集や管理は重要な業務ですが、具体的な施策や戦略につながらなければ、人材データベースを活用できているとは言えません。
施策に活用できない状況を避けるためには、具体的な施策案や社員へのサポートをアドバイスしてくれるシステムの導入や、経営者を含めた組織全体での施策立案が重要です。
システム導入にはコストがかかる
人材データベースのシステム導入には、初期費用や月額費用が必要となり、導入効果とコストのバランスを検討する必要があります。
しかし、システムの導入費用を単にコストや損失として捉えず、将来的な組織の効率化や生産性向上につながる投資と捉えることも重要です。
各社が提供しているサービスによって費用が異なるため、システムの機能やカスタマイズ性を考慮して比較し、システム導入の検討をしましょう。
人材データベースを導入・活用する際のポイントや注意点
人材データベースを導入・活用する際は、以下のような点に注意しましょう。
これらのポイントを意識して人材データベースを活用することで、効率的な運用や有効な施策の検討ができます。
以下より、人材データベースを導入・活用するポイントについて解説していきます。
活用する目的を明確にして導入する
人材データベースを導入する際は「適材適所の人員配置をする」「キャリア制度の整備をする」など、活用の目的を明確にすることが重要です。
目的が不明確なまま導入すると、社員の人材データ収集や管理だけが目的になり、導入費用や管理時間がムダになってしまいます。
具体的な目的を決めることで、自社に合った機能やサービスを有する人材データベースの選定ができ、導入後も効果的に活用できるでしょう。
閲覧権限やデータ更新のルールを決める
人材データベースには、社員の住所や生年月日、人事情報などの個人情報が含まれているため、運用前に「誰がどの情報を閲覧・編集できるか」を決めておきましょう。
また、データの正確性を保つために、情報の修正や変更があった場合は、常に更新していく必要があります。
人事担当者による更新の労力を軽減させるため、基本情報や保有資格など社員自身でも編集ができるように、更新ルールを決めることも大切です。
導入当初から完璧なデータベースを求めない
人材データベースを導入した当初から、完璧なデータベースを求める必要はありません。
まずは基本的な情報入力からスタートし、部署単位やチーム単位で徐々にデータを充実させていくことが大切です。
継続的にデータを更新・改善していくことで、自社独自の人材データベースを構築でき、効果的な施策の検討ができます。
まとめ:人事課題の解決に向け人材データベースを活用しよう
今回の記事では、人材データベースの概要や構築する目的、メリットについて詳しく解説しました。
人材データベースを活用することで、適切な人員配置や労働環境の整備、公平な人事評価の施策検討ができることから、社員の満足度向上にもつながります。
「タレントマネジメントシステム」や「Microsoft Excel」によって人材データベースを構築でき、社員の性格やマインド情報の把握については、サーベイツールの活用も有効です。
人事担当者の方は、人材戦略の強化や業務効率化の施策に活用するために、本記事を参考にして「人材データベース」や「サーベイ」の導入を検討してみてください。
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