- エンゲージメント調査の目的や効果
- エンゲージメント調査の質問項目・質問例
- エンゲージメント調査をする際の注意点
会社を離職する社員が増えてきて「どのような原因や問題があるのか」と、困っている経営者や人事担当者の方もいるのではないでしょうか?
そんな離職原因となりうる、社員の組織に対する愛着の度合いや、心理状態の変化を把握するために「エンゲージメント調査」の実施が大切です。
エンゲージメント調査を行うことで、目に見えない組織課題の発見や、社員の離職の意思・傾向が察知できるため、事前に対策や改善ができます。
本記事では、エンゲージメント調査の目的や得られる効果、測定する指標を詳しく解説しています。
エンゲージメント調査に適したツールも紹介していますので、自社のエンゲージメントレベルを把握する一つの方法として、導入時の参考にしてみてください。
以下の記事では、エンゲージメント調査におすすめのツールを10個紹介しています。すぐにツールの比較検討をしたい方は参考にしてみてください。
エンゲージメント調査とは?
エンゲージメント調査とは、社員のエンゲージメント(組織への貢献意欲や愛着心)を数値化し、現状把握から課題改善につなげる調査のことです。
調査の主な目的は、社員が「組織のビジョンに共感して、同じ方向性を持っているか」や「意欲的に仕事に取り組んでいるか」を把握するためです。
エンゲージメント調査は主にアンケート形式で行われ、回答結果をもとに「エンゲージメントスコア」を算出します。
以下の記事では、エンゲージメントスコアについて詳しく解説しています。計測する方法やスコアが高い企業事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
調査結果から社員のエンゲージメント向上の施策を行うことで、離職リスクの軽減や生産性の向上が期待できます。
エンゲージメントの意味とは?【組織との強い結びつき】
エンゲージメントの言葉そのものには「約束」や「契約」の意味があります。
ビジネスにおいては「組織と社員との結びつきや信頼関係を強くすること」を意味し、組織への「貢献意欲」や「愛社精神」とも表現できます。
エンゲージメントには、大きく分けて2種類に分類され、具体的な意味や内容は以下のとおりです。
エンゲージメントの種類 | 意味・内容 |
---|---|
従業員エンゲージメント | 社員が企業理念やビジョンに共感して「組織のために貢献したい」と感じる意欲をあらわす指標のこと |
ワークエンゲージメント | 仕事に対してポジティブな感情を持ち「活力・熱意・没頭」の3要素がすべて満たされた心理状態のこと |
エンゲージメントが高い企業は、社員同士のコミュニケーションが活発に行われ、組織貢献のために主体的に働く社員が多い傾向です。
「従業員エンゲージメント」と「ワークエンゲージメント」は、以下の記事でそれぞれの違いを解説しています。
従業員満足度調査(ES調査)との違いとは?
エンゲージメント調査と従業員満足度調査(ES調査)は似ているような調査ですが、以下のように測定する内容に違いがあります。
調査の種類 | 測定する内容 |
---|---|
エンゲージメント調査 | 組織と社員との関係性や、組織に対する貢献意欲を測定する |
従業員満足度調査 | 仕事内容や労働条件に満足しているかどうかを測定する |
従業員満足度は、エンゲージメントにも大きく関わりがあるため、エンゲージメント調査で測定する指標のなかには、満足度が含まれているものもあります。
以下の記事では、従業員満足度を構成する要素について詳しく解説しています。満足度を高める具体的な取り組みも紹介していますので、改善策の検討に役立ててみてください。
エンゲージメントと働きがいの違い
エンゲージメントと働きがいはよく似た言葉ですが、意味や概念に違いがあります。
用語 | 意味・概念 |
---|---|
エンゲージメント | 組織と社員を強く結びつけ信頼関係の「基礎部分」を築くのこと |
働きがい | 報酬や労働条件に納得し、モチベーション高く働いている「状態や結果」のこと |
エンゲージメントが高い状態とは「組織のビジョンに共感して、仕事に対して情熱を持っている」といった、組織と社員の関係性が強いことを指します。
一方で働きがいとは、組織に対する信頼感を持ちながら、働き方や待遇に納得して、不満を感じず働いている状態のことです。
したがって、エンゲージメントを高めることで、次第に働きがいを感じるようになるといった、両者の関係性があると言えます。
エンゲージメント調査を行う3つの目的
エンゲージメント調査を行う主な目的は、以下の3つが挙げられます。
エンゲージメント調査が、組織の課題解決や人材確保にどれだけ貢献するかを理解することで、組織成長に向けての一歩が踏み出せるでしょう。
以下より、エンゲージメント調査の目的を一つずつ解説していきます。
隠れた課題・問題点を可視化する
エンゲージメント調査を行う目的の一つは、組織や社員の隠れた課題・問題点を可視化することです。
組織内には、社員が抱える隠れた懸念点や不満が存在するため、それらが表面化しない限り適切に対処できずトラブルに発展する場合もあります。
しかし、エンゲージメント調査を行うことで、社員が抱えている本音部分の意見が集められ、見えていなかった日常的な課題・問題点が表面化できます。
離職の意思・傾向を把握する
エンゲージメント調査を行う二つめの目的は、エンゲージメントや心理状態の変化から、社員の離職の意思・傾向を把握することです。
定期的な調査によって、エンゲージメント低下を察知して、離職傾向がタイムリーに把握できるため、適切なタイミングで対処できます。
そのため、離職の意思がみられる社員に対して、個別相談やミーティングをするキッカケにもなり、社員へのサポートも強化できます。
ウェルビーイング経営の一環として行う
エンゲージメント調査は、組織に関わるすべての人の幸福な状態を目指す「ウェルビーイング経営」の一環としても実施されます。
ウェルビーイング経営とは、社員の「身体的・精神的・社会的」の健康と幸福を促進する経営手法のことです。
ウェルビーイング経営は、現場の声を聞き入れた社員視点の改善を行っていく手法であるため、運営プロセスのなかでエンゲージメント調査を活用します。
エンゲージメントが高まれば、健康面だけではなく社会面(経済面・家族関係など)も満たされ、社員のウェルビーイング(すべて満たされた幸福な状態)が実現します。
ウェルビーイング経営について詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。ウェルビーイング経営の概要や健康経営との違いをわかりやすく解説しています。
エンゲージメント調査は意味ない?効果とメリット
エンゲージメント調査によって得られるメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
エンゲージメント調査は組織改善に向けた重要なプロセスであり、一概に無意味だとは言い切れません。
以下の記事では、エンゲージメント調査が無駄だと言われる理由を解説しています。効果的な活用方法や手順も紹介していますので、エンゲージメント調査導入時の参考にしてみてください。
以下より、エンゲージメント調査を行うメリットについて解説していきます。
社員の休職・離職リスクが軽減する
エンゲージメント調査によるメリットの一つは、社員の休職や離職のリスクが軽減されることです。
調査によって表面化した課題を改善することにより、働きやすい労働環境や働きがいのある職場になり、社員の離職意思が低下します。
サーベイツールの『ミキワメ ウェルビーイング』では、調査結果からケアが必要な社員を把握し、性格を踏まえたサポートのアドバイスが提供されます。
休職・離職リスクの軽減に向けたアプローチをすることで、企業への定着を促し、持続的な人材戦略の構築の手助けとなるでしょう。
生産性が高まり業績アップにつながる
エンゲージメント調査の実施によって、組織の生産性が高まり業績アップにつながることが期待できます。
調査結果を反映させた施策の実行により、社員の仕事に対する熱意や意欲が高まり、組織全体の生産性が向上します。
実際に経済産業省の調査資料によると、エンゲージメントが高い上位25%の企業は、下位25%の企業よりも、生産性や業績が向上することがわかっています。
下記はエンゲージメントが高い上位25%の企業と、下位25%の企業の違いを表しているグラフです。
出典:企業の戦略的人事機能の強化に関する調査(39ページ)|経済産業省
エンゲージメント調査を適切に行うことは、生産性や売上、利益率の向上などにつながります。
以下の記事では、エンゲージメントを高めるための施策例を解説しています。実際の企業が行った取り組み事例も紹介していますので、人事担当者の方は施策検討の参考にしてみてください。
社員の声を吸い上げた施策が実行できる
社員の声を吸い上げたエンゲージメント調査によって、現場の状況に合った施策の実行が可能です。
たとえば、労働時間が長くプライベートの時間を取りにくい問題が表面化すれば、フレックスタイム制度を導入した柔軟性のある労働環境に改善できます。
社員の声を吸い上げた施策の実行によって、社員自身も自分の意見が聞き入れられたことを実感するため、よりエンゲージメントも高まるでしょう。
エンゲージメント調査で測定する指標
エンゲージメント調査で測定する指標には、主に以下の3つが挙げられます。以下の表でそれぞれの指標を簡単に解説します。
指標 | 内容 |
---|---|
エンゲージメント総合指標 | 社員の「組織に対する印象」や「満足度」などの総合的な指標 |
ワークエンゲージメント指標 | 仕事に対して「どの程度の熱意を持って取り組んでいるか」を調査する指標 |
エンゲージメントドライバー指標 | エンゲージメントを高めるため、社員が当事者意識を持って取り組む要素を示す指標 |
エンゲージメント指標を測定し提示することで、社員のエンゲージメント状況を正確に評価し、組織内での課題や改善点の把握に役立ちます。
また、自社のエンゲージメント指標からの変化を把握するために、定期的なエンゲージメント調査が大切です。
以下の記事では、エンゲージメント指標についてより詳しく解説しています。指標の変動に影響する要素や測定方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
エンゲージメント調査方法と実施頻度
エンゲージメント調査の方法には「パルスサーベイ」と「センサス」の2種類があり、それぞれの概要や実施頻度は以下のとおりです。
調査方法 | 概要 | 実施頻度 |
---|---|---|
パルスサーベイ | 定期的に短期間の調査を行い、1回あたり約5〜15問の質問で構成されている | 週1回・月1回 など |
センサス | 年単位で調査を行い、1回あたり約50〜150問の質問で構成されている | 年1〜2回 など |
パルスサーベイは高頻度ので調査により、社員のエンゲージメントや心理状態の変化をタイムリーに把握できるため、組織の状況が頻繁に変わる企業に向いています。
一方センサスは、全社員の声を一度に集約し、包括的な質問によって組織全体のトレンドや問題点が洗い出せるため、大規模な組織に適しているでしょう。
パルスサーベイについて詳しく確認したい方は、以下の記事をご覧ください。実際の質問例やおすすめのツールも紹介しています。
エンゲージメント調査の質問項目・質問例
エンゲージメント調査の質問項目は多岐にわたり、組織の目的やニーズに合わせた設計が重要です。
一般的なエンゲージメント調査の「質問項目」と「質問例」を紹介します。
質問項目 | 質問例 |
---|---|
経営・組織との関わり | ・組織の目標やビジョンに共感していますか? ・経営者は社員の意見を聞いていると感じますか? |
人事評価・キャリア形成 | ・会社や上司がキャリア形成をサポートしていると感じますか? ・あなたの仕事が正当に評価されていると感じますか? |
労働条件・待遇 | ・担当している仕事を負担に感じていますか? ・仕事とプライベートの両立に満足していますか? |
仕事に対する熱意・誇り | ・仕事に対して情熱を持って取り組んでいますか? ・あなたの仕事や業務に誇りを感じますか? |
人間関係・コミュニケーション | ・上司とコミュニケーションが取れていると感じますか? ・フィードバックを受ける機会があると感じますか? |
質問項目を設計する際は「この調査でなにを把握したいのか」「どの部分を改善していきたいのか」を明確に決めておきましょう。
エンゲージメント調査の質問項目をより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。質問設計や運用のポイントも紹介しています。
エンゲージメント調査に適したツール3選【費用も比較】
ここからは、エンゲージメント調査に適した3つのツールを紹介します。
ツールを導入することによって、エンゲージメント調査をより効率的に実施し、改善策の検討や社員へのサポートの一助となるでしょう。
ミキワメ ウェルビーイング(株式会社リーディングマーク)
費用 | 要問い合わせ ※利用人数によって異なる |
実施頻度(時間) | ・性格検査:年に1回程度(10分/回) ・ウェルビーイング検査:月に1回程度(約2分/回) |
特徴 | ・社員の幸福度を高めてエンゲージメントを向上させる ・ケアが必要な社員を可視化して休職 ・離職を防ぐ・社員の性格・心理状態に応じたサポートの打ち手を提供する |
公式ホームページ | https://mikiwame.com/well-being.html |
提供会社 | 株式会社リーディングマーク |
『ミキワメ ウェルビーイング』は、エンゲージメントや心理状態の調査結果から、ケアが必要な社員を可視化して、適切なサポートができる調査ツールです。
高頻度で調査を行うパルスサーベイ(実名制)を採用しており、社員のエンゲージメント変化をタイムリーに察知できます。
社員一人ひとりの性格を考慮した「改善の打ち手のアドバイス」が提供されるため、より社員に寄り添ったサポートが可能です。
ラフールサーベイ(株式会社ラフール)
費用 | 月額1万6000円〜 ※税別 |
実施頻度(時間) | ・ショートサーベイ:月に1回(3分程度/回) ・ディープサーベイ:年に2〜4回(15分程度/回) |
特徴 | ・エンゲージメント状態を可視化して課題や強みを発見できる ・カスタマーサクセスにより組織改善をサポートしてくれる ・セルフマネジメントを促進するコンテンツが充実している |
公式ホームページ | https://survey.lafool.jp/ |
提供会社 | 株式会社ラフール |
『ラフールサーベイ』は、ウェルビーイング経営に向けた組織のエンゲージメント状況の把握・改善を目指す調査ツールです。
社員のエンゲージメント以外にも、仕事の満足度や離職リスク、ストレス度合いなどのさまざまな要素を調査して可視化できます。
また、セルフケアコンテンツや貢献意欲を高める「感謝のキモチ」の機能も備わっており、社員のエンゲージメント向上や離職防止が期待できるでしょう。
HRBrain(株式会社HRBrain)
費用 | 要問い合わせ ※利用人数によって異なる |
実施頻度(時間) | ・組織診断サーベイ:自由に設定可能 |
特徴 | ・独自の設問と社員ごとに分析で的確な組織改善ができる ・人材データベースを駆使した多角的な分析ができる ・他のサービスと組み合わせて自由度の高い運用ができる |
公式ホームページ | https://www.hrbrain.jp/employee-experience |
提供会社 | 株式会社HRBrain |
『HRBrain』の組織診断サーベイは、組織のエンゲージメント状況を可視化し、優先度の高い課題から具体的なアクションへの接続までできる調査ツールです。
設問内容や実施頻度、対象者など柔軟にカスタマイズができるため、自社の目的に合った運用ができます。
HRBrainを利用している他社データの平均値を参考にして比較・検証でき、自社の立ち位置の把握や、改善の方向性の検討に役立つツールと言えるでしょう。
エンゲージメント調査をする際の注意点
エンゲージメント調査を行う際は、以下のような点に注意して実施しましょう。
- 調査の目的を決めて、社員に説明したうえで実施する
- 社員の負担にならない頻度・質問数で調査する
- 調査した結果は社員にフィードバックする
- 調査後はスピーディーに改善策を実行する
- 改善の効果検証のために、継続的に調査を行う
回答する社員は、忙しい日常業務のなかで対応しなければならないため、負担に感じてしまうと正確なデータが取得できない可能性もあります。
業務の繁忙期を避けることや、短時間で回答できる質問設計にするなど、社員の負担感への考慮が必要です。
また、調査することが目的になってしまうと、社員からの不満や不信感につながるため、調査結果を反映した迅速な改善が求められます。
エンゲージメント調査でランキング上位の企業は?
「株式会社働きがいのある会社研究所(GPTW)」によって、働きがいのある会社(エンゲージメントが高い会社)が発表されており、1位〜3位の企業は以下のとおりです。
順位 | 大規模企業 (1000人以上) | 中規模企業 (100人〜999人) | 小規模企業 (25人〜99人) |
---|---|---|---|
1位 | シスコシステムズ合同会社 | 株式会社コンカー | 株式会社あつまる |
2位 | 株式会社セールスフォース・ジャパン | アチーブメント株式会社 | 株式会社現場サポート |
3位 | DHLジャパン株式会社 | 株式会社CKサンエツ | 株式会社バーテック |
参考:2023年度「働きがいのある会社」ランキング|GPTW
ランキング上位の企業は、キャリア成長できる機会の提供や、成果に対する表彰制度の導入などの取り組みを行っており、社員のエンゲージメント向上に大きく影響しています。
また、社員同士のコミュニケーションが活発に行われ、部門を超えて交流しやすい雰囲気があるといった声も上がっています。
まとめ:離職率低下を目指しエンゲージメント調査を導入しよう
今回の記事では、エンゲージメント調査の目的や効果、測定する指標について詳しく解説しました。
エンゲージメント調査は、社員が抱えている不満や疑問、エンゲージメント変化を把握するための重要な方法です。
調査結果を基盤にした組織改善を行っていくことで、社員一人ひとりのエンゲージメントが高まり、組織との関係性がより強固なものになるでしょう。
「この会社で働き続けたい」と貢献意欲の高い社員を増やすためにも、人事担当者の方はエンゲージメント調査の導入を検討してみてください。
従業員のメンタル状態の定期的な可視化・個々の性格に合わせたアドバイス提供を通じ、離職・休職を防ぐパルスサーベイ。30日間無料トライアルの詳細は下記から。