採用のミスマッチを防ぐ、あるいは従業員を適切に配置するためには、一人ひとりの能力や性格傾向を把握する必要があります。
そのために面接や1on1は有効なものの、面接官によって判断にバラつきが出たり、膨大な時間がかかったりするため得策ではありません。
これに対してSPIという適性検査なら、一般的な基礎能力と性格傾向を可視化できるため、短時間でそれぞれの特性を把握できます。
本記事ではSPIとはどのような適性検査か、導入目的と結果からわかること、実施時のポイントを解説します。
SPIについて理解を深めて、自社に導入する適性検査選びの参考にしてみてください。
適性検査のSPIとは?

SPIとは、受検者の基礎能力と性格を可視化できる適性検査の1つです。
公式サイト:SPI
正式名称はSynthetic Personality Inventory(総合適性検査)で、リクルートマネジメントソリューションズから提供されています。
2023年3月期の実績では、年間1万5500社以上の企業がSPIを採用選考で利用していることがわかっています。
SPIは人材採用だけでなく、採用後のフォローや従業員のマネジメント、学生のインターンシップなど、幅広い用途が魅力です。
ただし、適性検査で自社に合った人材かを判断した場合は、自社の社風や雰囲気を反映できないSPIだけでは不十分です。
そのため他の適性検査と組み合わせたり、より目的に近い適性検査を探したりする必要があります。
SPIの実施目的

SPIの実施目的は、主に次の3つです。
SPIをふくむ適性検査は、目的に応じた使い方によって効果を得られます。
目的に合った適性検査を導入するためにも、SPIの実施目的について理解を深めましょう。
初期選考でのスクリーニング
初期選考でSPIを活用すると、自社への適性が高い応募者をスクリーニングできます。
あらかじめ「どのような人材を採用したいか」を明確にしておき、SPIのデータと照らし合わせることでミスマッチを削減できます。
応募者が多数にのぼる場合は、SPIの活用で選考の時短・効率化も可能です。
面接時の質問材料
SPIは初期選考後の面接でも質問材料として活用できます。SPIの結果からわかる性格の特徴を質問することで、より人物像を深掘り可能です。
これによって面接はより濃い時間となり、自社に合った人材を見つけることに役立ちます。
結果票の最後には「面接で確認すべきポイントと質問例」が記載されており、質問材料としての活用方法の参考にできます。
適切な人材育成・マネジメント
SPIの中でも「SPI3 for Employees」は、従業員の人材育成やマネジメントにも活用できます。
SPIのデータからわかる性格の傾向をもとに、適切なコミュニケーションや育成計画の立案が可能です。
さらに従業員に合った配属先を決める材料にもなるため、人員配置にも有効活用できます。
新入社員の配置決めや人材育成にうまく生かせると、ミスマッチからの離職防止を期待できるでしょう。
SPIと他の適性検査の違い
国内ではリクルートマネジメントソリューションズが提供するSPIの他にも、さまざまな適性検査があります。
適性検査は、目的に合ったものを選ぶことが大切ですので、それぞれの違いを理解して自社に合ったものを導入しましょう。
ここでは、数多くの適性検査を手がける日本エス・エイチ・エル社のCAB・GABとSPIの違いについて解説します。
下記の記事でもSPIと適性検査の違いを解説していますので、参考にしてみてください。
SPIとCABの違い
SPIとCABの大きな違いは、受検者の対象範囲です。SPIはどの職種・業界でも活用できる一般的な社会人の基礎能力と性格の傾向を可視化します。
これに対してCABは、IT系職種に求められる基礎能力や資質を問う適性検査です。
CABはSPIよりも受検者の対象範囲が狭く、IT系企業で活用されています。 IT系企業ではないなら、CABを導入する選択肢はないと思ってよいでしょう。
CABの検査内容については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
SPIとGABの違い
SPIとGABの大きな違いは、測定できる基礎能力です。
SPIの能力検査では一般的な知識が問われる一方、GABは知識を使って問題を解く遂行能力が問われます。
たとえばSPIの言語分野では、言葉の意味や用法が問われるため、一般的な知識があれば簡単に答えられます。
これに対しGABの言語分野は長文読解問題が中心となっており、言葉の意味だけでなく読むスピードや読解力も求められる点が特徴です。
このように測定できる基礎能力の傾向が異なるため、基礎能力を重点的に見たい場合はGABの方が適しています。
GABの検査内容については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
SPIの結果からわかること

SPI結果票には次の4つのカテゴリがあり、基礎能力と性格の特徴をつかめる点が特徴です。
- 能力
- 職務への適応のしやすさ
- 組織への適応のしやすさ
- 性格的な特徴
たとえば「性格的な特徴」では、「行動的側面」カテゴリの「持続性」という項目で、受検者の粘り強さが点数化されます。
このような性格の特徴に関する項目は合計で18個あり、限られた面接時間ではわからない人柄がわかります。
算出されたデータをもとに、基本的な特徴や仕事への取り組み方がテキストでまとめられているため、自社が求める人材像と照らし合わせることも可能です。
面接前に受検者の性格の傾向をつかめると、質問項目も立てやすくなります。
SPIの種類

SPIは2つのカテゴリの中で種類が分けられます。
それぞれについて理解を深め、適切な種類を導入しましょう。
テストの種類|活用シーンが異なる
SPIには2つのテストがあり、それぞれ活用シーンが異なります。
| テストの種類 | 活用シーン |
|---|---|
| SPI3 | 新卒・中途採用 |
| SPI3 for Employees | 従業員の人材育成やマネジメント支援など |
SPI3は人材採用のためのテストであり、内定後のフォローや配置決めにも活用が可能です。SPI3を活用してミスマッチを回避できると、新卒採用後における早期離職の抑制効果が期待できるでしょう。
関連記事:早期離職する7つの理由と具体的な対策方法|改善した企業事例も紹介
SPI3 for Employeesは、従業員の一人ひとりの特性を理解する材料となるため、コミュニケーションの円滑化や配置決めに活用できます。
SPI3とSPI3 for Employeesはテスト内容や結果票にも違いがあるため、活用シーンに合わせて選びましょう。
検査の種類|対象が異なる
SPIは受検者によって、検査の種類が異なります。
| 検査の種類 | 対象者 |
|---|---|
| SPI3-U | 新卒採用 |
| SPI3-G | 中途採用 |
| SPI3-H | 高卒採用 |
| GSPI3 | グローバル人材採用 ※英語・中国語・韓国語に対応 |
検査項目に違いはありませんが、検査の種類によって細かい問題の内容が異なります。
たとえば中途採用向けの「SPI3-G」では、新卒採用向けの「SPI3-U」には出題されない資料の読み取り問題が出題されます。
このように対象者によって問題内容や難易度が変わるため、それぞれに合った検査を用いることが大切です。新卒採用・中途採用かによって適性検査の選び方も変わるため、以下の記事も参考にしてみてください。
SPIの検査内容

SPIはどの種類でも、以下の2つの検査を実施します。
SPIについてさらに理解を深めるために、検査内容について解説します。
性格検査
SPIの性格検査は受検者の性格の特徴を把握する検査で、約300問の質問への解答を分析することで性格の傾向を割り出します。
たとえば結果票からは、「職務の適応のしやすさ」について次の項目の適応度を把握可能です。
| 分類 | 項目 |
|---|---|
| 対人 | ・関係構築 ・交渉、折衝 ・リーダーシップ |
| 協調 | ・チームワーク ・サポート |
| 活動 | ・フットワーク ・スピード対応 ・変化対応 |
| 課題遂行 | ・自律的遂行 ・プレッシャー耐性 ・着実遂行 |
| 企画 | ・発想、チャレンジ ・企画構想 ・問題分析 |
受検者の適応しやすい項目を生かせる配置や業務を任せることで、離職防止や業務によるストレスの軽減効果が期待できます。
「職務の適応のしやすさ」以外にも、「組織への適応のしやすさ」と「性格的な特徴」について、細かな項目が設定されています。
能力検査
SPIの能力検査は、次の3つに分かれています。
それぞれの検査内容について解説します。
基礎能力検査
基礎能力検査は、言語分野と非言語分野の2種類に分かれています。
言語分野では、一般的な国語の知識や語彙力、文章読解力が問われ、基礎的な国語能力が測定できます。
非言語分野は、小学校の算数から中学校の数学に近いレベルの問題が出題され、数学的能力の測定が可能です。
結果票では受検者それぞれの得点とレベル、企業内の全受検者のレベル分布が記載されています。
そのため、各受検者が全体のうちどこに位置しているかが可視化されます。
英語検査【オプション】
SPIの英語検査では、英語の基本的な4技能と語彙力を測定します。
- リーディング
- ライティング
- スピーキング
- リスニング
問題のレベルはそれほど高くなく、大学受験程度とされています。
SPIの英語検査は、企業ごとに実施するかを決められますので、業務の遂行に多少の英語力が必要な場合は活用するとよいでしょう。
構造把握力検査【オプション】
SPIの構造把握力検査では、物事の背景にある共通項や関係性の読解力を測定します。
単純な知識や技能ではなく、思考力を求める企業にとって活用しやすい検査です。
なお、構造把握力検査も企業ごとに実施するかを決められますが、テストセンターでの実施のみとなりますので、試験方法が限られる点に留意が必要です。
SPIの4つの実施方法

SPIには、次の4つの実施方法があります。
実施方法によって問題数や実施時間が異なったり、対応していない検査があったりするのでチェックしておきましょう。
WEBテスティング
WEBテスティングは、自宅や学校のパソコンから受検できる実施方法です。
利便性が高いことから導入する企業が多い一方、他の実施方法と比べて不正が発生する可能性が高いことがデメリットです。
そのため、回答中断後に再開する場合は問題が変更されるなど、不正防止策が実装されています。
| 項目 | 実施の可否・有無 |
|---|---|
| 電卓の使用 | 〇 |
| 英語検査 | ✕ |
| 構造把握力検査 | ✕ |
WEBテスティングでは基本的な性格検査と基礎能力検査の実施が可能で、電卓の使用が認められています。
以下の記事では、近年課題となっているWeb適性検査の不正について、具体的な手口や対策を解説しています。
AIを活用した本人確認システムや監視技術など、企業側が行うべき不正防止策も紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
テストセンター
テストセンターとは、検査実施中に試験官の監督をともなう実施方法で、次の2種類あります。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
| テストセンターの種類 | 実施方法 |
|---|---|
| リアル会場 | リクルートマネジメントソリューションズの運営するSPI専用会場で実施 |
| オンライン会場 | 受検者の自宅のパソコンや学校のパソコンから、SPI専用のシステムを通して実施する方法 |
リクルートマネジメントソリューションズが試験監督を行ってくれるため、企業側で用意する必要がなく、検査実施の工数を削減できます。
常設のリアル会場は下記の都市のみですが、採用シーズンは各所に臨時会場が設けられるため、全国各地で実施が可能です。
- 東京
- 大阪
- 名古屋
- 札幌
- 仙台
- 広島
- 福岡
オンライン会場はWEBテスティングと似ていますが、システム上で試験官が監督している点で異なります。
| 項目 | 実施の可否・有無 |
|---|---|
| 電卓の使用 | ✕ |
| 英語検査 | 〇 |
| 構造把握力検査 | 〇 |
構造把握力検査はテストセンターのみで実施となります。検討している場合は留意しておきましょう。
ペーパーテスト
ペーパーテストはマークシート方式のアナログ検査で、他の適性検査と併用する場合に効率的な実施が可能です。
| 項目 | 実施の可否・有無 |
|---|---|
| 電卓の使用 | ✕ |
| 英語検査 | 〇 |
| 構造把握力検査 | ✕ |
英語検査にも対応しているので、実施を検討している企業は留意しておきましょう。
インハウスCBT
インハウスCBTは、企業が検査会場とパソコンを用意して実施する方法です。
企業が用意した会場に受検者を集められるため、適性検査と面接を同日に行う場合、効率的に実施できるメリットがあります。
ただし複数のパソコンを用意する必要があるため、受検者が多数いる場合はコストがかかります。
| 項目 | 実施の可否・有無 |
|---|---|
| 電卓の使用 | 〇 |
| 英語検査 | ✕ |
| 構造把握力検査 | ✕ |
インハウスは基本的な性格検査と基礎能力検査の実施が可能で、電卓の使用が認められています。
SPIの問題を確認する方法

実際にSPIで出題される問題を見てみたい方には、下記の方法がおすすめです。
どちらも無料で利用できますので、参考にしてみてください。
SPI WEBテスティング【体験版】を利用する
株式会社ノストラムが提供する「SPI WEBテスティング【体験版】」では、サンプル問題の解答を体験できます。
1問ごとに制限時間が設けられており、実際のSPIのように時間配分を気にしながら解く必要があります。
パソコンからSPIの問題を見てみたい時におすすめです。
SPI対策アプリを使用する
スマホアプリには、無料のSPI対策アプリがあります。
上記のアプリを使ってSPIの問題をチェックしてみましょう。
SPI実施のポイント

SPIの実施時には、次の3つのポイントを押さえておくと、効果の高い使い方ができます。
費用をかけて導入する適性検査ですから、適切に活用できるよう理解を深めましょう。
なお、SPIを含む適性検査の導入の注意点は下記の記事でも解説していますので、参考にしてみてください。
能力検査と性格検査のバランスを加味する
SPIは能力検査と性格検査それぞれの数値だけでなく、バランスを加味した総合的な判断が大切です。
たとえば能力検査の数値が高くても、性格検査の傾向に適性が見られない場合もあります。
コミュニケーションやチームワークを求める場合は、多少能力検査の数値が低くても、性格の傾向が求める人材に合致する方がよい場合もあります。
企業によって求める人材は異なりますので、あらかじめ採用基準を明確にしておくとよいでしょう。
適性検査をうまく使いこなすためのポイントは以下の記事でも解説しています。参考にしてみてください。
目的と採用基準を明確にしておく
SPIをなんのために実施するのか、結果を見てどのような人材を採用するのか、目的と基準を明確にし、共有しましょう。
たとえば性格検査の各項目において、どういった傾向を重視するのか決めておくと、スクリーニングにかかる時間を短縮できます。
適性検査の採用基準を策定する方法は、下記の記事で解説していますので合わせてご覧ください。
SPI以外の視点も持つ
SPIの結果は万能ではなく、受検者の人柄を正確に把握できるものではありません。
そのため、SPI以外の適性検査や他のアプローチ方法を組み合わせることで、より深く受検者について知ることが可能です。
SPIで把握できるのは、あくまで一般的な性格の傾向であることを念頭に置き、SPIの結果だけで判断しないようにフローを設定しましょう。
適性検査の活用方法については、下記の記事を参考にしてみてください。
まとめ:SPIを理解して適切な適性検査を選ぼう

SPIはリクルートマネジメントソリューションズが提供する適性検査の一種で、一般的な基礎能力と性格の傾向を可視化できます。
検査の種類や実施方法は以下の通りで、目的に合わせて選ぶことが可能です。
ただし検査は万能ではありません。他の適性検査やアプローチ方法と組み合わせることで、さまざまな視点から受検者をとらえることが大切です。
SPIは一般的な知識と性格傾向を把握できる一方、自社に合った人材か判断するのには、材料として不十分です。
「自社に合った人材かを判断したい」とお考えの場合は、株式会社リーディングマークが提供するミキワメをご検討ください。
ミキワメなら自社の社風や部署ごとの雰囲気を自動で分析し、適切な性格傾向を見極められます。
採用基準の作成からカスタマーサクセスチームがサポートいたしますので、適性検査の導入経験がなくても安心してご利用いただけます。
まずは無料でミキワメを体験いただき、検査内容を確認してみてください。







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