- パルスサーベイにおける7つの質問項目【35の質問例】
- 質問設計で考慮すべきポイント
- パルスサーベイの実施手順・活用事例
離職率の改善に向けてパルスサーベイを検討しているものの、どのような質問で調査が行われるのか、よくわからない方もいるのではないでしょうか。
パルスサーベイは、主に「仕事に対するモチベーション」や「会社への愛着」など7つの質問項目から選定し、月1回や週1回の頻度で調査を行います。
年1回の満足度調査だけでは、課題を見つけても対応が後手に回りがちですが、パルスサーベイの実施によって、社員の意識や職場環境の変化をタイムリーに把握可能です。
本記事では、パルスサーベイの具体的な質問項目や質問例、設計時のポイントを詳しく解説します。調査の手順や企業の活用事例も紹介していますので、組織改善のヒントとしてお役立てください。
パルスサーベイの目的や活用方法をまとめた資料をご用意していますので、以下のリンクからダウンロードしてご活用ください。大企業の人事担当者の方に聞いた「効果があった離職対策」も紹介しています。
>>「パルスサーベイとは?代表的なサーベイの種類と活用事例」の資料をダウンロードする(無料)

パルスサーベイの概要

パルスサーベイとは、社員の心理状態や組織に対する考えを調査し、課題・問題点の早期発見と迅速な対応を目的としたサーベイです。
年1〜2回の頻度で行う従業員満足度調査とは異なり、週1回や月1回などの短い間隔で定期的に調査を行います。質問数も約3〜10問と少なく短時間で回答できるため、社員にも負担をかけません。
パルスサーベイでは、エンゲージメントやモチベーションを数値やグラフで可視化し、スコアの変動が大きい社員を察知したり、部署・年齢ごとの傾向を分析したりできます。
心理的な負担を抱えている社員を特定し、1on1で心当たりを聞き出すことで、休職・離職につながる前に迅速なサポートが可能です。
パルスサーベイの概要やメリットをより詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。よく利用されているツールも紹介しています。

パルスサーベイの7つの質問項目【質問例あり】

パルスサーベイを実施するときは、目的やテーマに沿った質問項目の選定が必要です。質問は大きく7つの項目に分けられます。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
質問項目 | 質問例 |
---|---|
仕事に対するモチベーション | ・現在の業務に対してやりがいを感じていますか? ・仕事を進めるうえで、自主性を持って取り組めていると感じますか? |
会社への愛着(エンゲージメント) | ・会社の経営方針やビジョンに共感を持っていますか? ・あなたの業務が会社の目標達成に貢献していると感じますか? |
ワークライフバランス | ・仕事とプライベートの時間をバランスよく確保できていますか? ・あなたの業務量は適切に管理されていますか? |
労働環境・働きやすさ | ・作業スペース(デスク、椅子、パソコンなど)に満足していますか? ・職場の雰囲気がよく、働きやすい環境だと思いますか? |
上司・同僚とのコミュニケーション | ・仕事の進捗に関して、定期的に上司からのフィードバックがありますか? ・チーム内で情報共有が適切に行われていますか? |
人事評価・フィードバック | ・評価基準は明確でわかりやすいと感じますか? ・あなたの成果に対して、適切な評価を受けていると思いますか? |
スキル・キャリアアップ | ・会社の研修や教育プログラムは、あなたのキャリアに役立つと感じますか? ・キャリアアップに向けて、仕事以外での学びに取り組んでいますか? |
質問の内容次第で、職場の課題や社員の心理状態を正しく把握できるかが決まるため、質問例を参考に、自社の目的に合った質問を考えてみましょう。
仕事に対するモチベーション
現在の仕事に対して「どの程度の意欲を持って取り組んでいるか」を測定し、社員のモチベーションの傾向や低下している原因を見つけ出します。
目標を達成したときの「満足感」や「充実感」もモチベーションに含まれるため、仕事の難易度や職務の適性度合いなどの質問も重要です。
そもそもモチベーションは「やる気・意欲・動機づけ」の意味を持ち、以下の2種類に分類されます。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
外発的動機づけ | ・報酬や賞罰を得るために行動を起こすこと ・与えられる報酬や賞罰によって左右される |
内発的動機づけ | ・喜びや満足感など「実体のない感情」を得るために行動を起こすこと ・行動自体が報酬の役割を果たす |
モチベーションの理論を把握したうえで、職場・社員の特徴を分析できれば、モチベーションを向上させる全社的な施策を打ち出せます。
以下の記事では、モチベーションの基本概念や維持・向上のために見直すポイントを詳しく解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。

以下より、5つの質問例を紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
質問例 | 回答例 |
---|---|
現在の業務に対してやりがいを感じていますか? | ・感じている ・やや感じている ・どちらとも言えない ・あまり感じていない ・感じていない |
やりがいを感じる業務や場面をお聞かせください | (自由記述) クライアントから感謝の言葉をもらえたとき |
現在の業務で「達成感」や「充実感」はありますか? | ・ある ・少しある ・どちらとも言えない ・あまりない ・ない |
仕事を進めるうえで、自主性を持って取り組めていると感じますか? | ・感じている ・やや感じている ・どちらとも言えない ・あまり感じていない ・感じていない |
この1ヵ月間で「もっと挑戦したい」と思う機会はどのくらいありましたか? | ・頻繁にある ・ときどきある ・ほとんどない ・ない |
会社への愛着(エンゲージメント)
会社に対して「どの程度の愛着を持ち、長く働き続けたいと考えているか」を調査し、組織・個人のエンゲージメントを可視化します。
たとえば、会社の経営方針やビジョンに対する共感度を測定すれば「会社の方向性に納得しているか、仕事に意義を感じているか」を評価できます。
エンゲージメントが高い状態は「仕事を通して会社に貢献したい」という表れですが、一方で低い状態が続いてしまうと、離職者の増加につながりかねません。
また、信頼できる上司・同僚が職場内にいるかも、エンゲージメントを左右する要素であるため、後述のコミュニケーションの質問項目とともに確認が必要です。
「エンゲージメントは理解したけど、モチベーションとの違いがよくわからない」と疑問を持っている方は、以下の記事を確認してみてください。エンゲージメントとモチベーションの違いや高める方法や、企業の成功事例を解説しています。

以下より、5つの質問例を紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
質問例 | 回答例 |
---|---|
会社の経営方針やビジョンに共感を持っていますか? | ・共感している ・やや共感している ・どちらとも言えない ・あまり共感していない ・共感していない |
あなたの業務が会社の目標達成に貢献していると感じますか? | ・感じている ・やや感じている ・どちらとも言えない ・あまり感じていない ・感じていない |
どのような業務で貢献できているかお聞かせください | (自由記述) 社内の業務プロセスを見直し、手順を簡素化したことで作業時間を削減できた |
会社が提供する製品・サービスに誇りを持っていますか? | ・持っている ・やや持っている ・どちらとも言えない ・あまり持っていない ・持っていない |
もし知人が転職を考えていた場合、この会社を勧めたいと思いますか? | ・思う ・やや思う ・どちらとも言えない ・あまり思わない ・思わない |
ワークライフバランス
ワークライフバランスに関する項目では、仕事と私生活の調和がとれているか、ワークライフバランスを支援する環境・制度が整っているかを確認します。
たとえば、現在の勤務時間や時間外労働に関する質問を行えば、各職場の労働時間と照らし合わせて、疲労やストレスとの関係性を把握できます。
近年ではリモートワークを導入する企業も増え、柔軟に働ける環境が整っているものの、仕事と私生活の境界が曖昧になることも少なくありません。
とくにフルリモートを行う企業においては、パルスサーベイで社員の心理状態や休息の取り方を確認し、状況に応じて対面でのコミュニケーションが求められます。
以下より、5つの質問例を紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
質問例 | 回答例 |
---|---|
仕事とプライベートの時間をバランスよく確保できていますか? | ・できている ・ややできている ・どちらとも言えない ・あまりできていない ・できていない |
業務時間外に仕事の対応を求められることがありますか? | ・頻繁にある ・ときどきある ・ほとんどない ・ない |
休暇を取得しやすい職場環境だと思いますか? | ・思う ・やや思う ・どちらとも言えない ・あまり思わない ・思わない |
あなたの業務量は適切に管理されていますか? | ・管理されている ・管理されていない ・よくわからない |
ワークライフバランスに関する要望があれば、自由にお聞かせください | (自由記述) 育児中の社員が働きやすいように、時短勤務や在宅勤務などの選択肢を増やしてほしい |
労働環境・働きやすさ
労働環境・働きやすさに関する項目では、オフィスの快適さや、職場の雰囲気のよさなどを調査し、より働きやすい環境にするための改善点を把握します。
働きやすさを阻害する物理的な環境として、空調や照明、休憩スペースなどに不備がある場合、社員の健康や作業効率に悪影響を及ぼす可能性があります。
職場の雰囲気においては、心理的安全性を確保するために、社員の発言を拒絶することなく、誰でも安心して発言できる環境を整えることが重要です。
社員が失敗を恐れず積極的に行動できる環境になれば、組織の成長を後押しするイノベーションの創出につながり、より働きがいのある職場環境になります。
以下より、5つの質問例を紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
質問例 | 回答例 |
---|---|
作業スペース(デスク、椅子、パソコンなど)に満足していますか? | ・満足している ・やや満足している ・どちらとも言えない ・あまり満足していない ・満足していない |
業務に必要な設備やツールは、適切に整備されていますか? | ・整備されている ・やや整備されている ・どちらとも言えない ・あまり整備されていない ・整備されていない |
リモートワークを積極的に活用するためのサポートはありますか? | ・ある ・どちらとも言えない ・ない |
休憩時間を設けて、十分なリフレッシュができていますか? | ・できている ・ややできている ・どちらとも言えない ・あまりできていない ・できていない |
職場の雰囲気がよく、働きやすい環境だと思いますか? | ・思う ・やや思う ・どちらとも言えない ・あまり思わない ・思わない |
上司・同僚とのコミュニケーション
上司・同僚とのコミュニケーションが円滑に行われているかを調査し、職場の雰囲気や風通しのよさを確認します。それぞれ確認すべき点は、以下のとおりです。
上司 | ・業務進捗や課題などの報告・相談がしやすいか ・部下が自由に意見や質問を言える雰囲気があるか ・部下の意見を尊重しつつ、適切なアドバイスをしているか |
同僚 | ・役割や業務負担をお互いに把握できているか ・気軽に意見交換ができる雰囲気があるか ・お互いに励まし合い協力できる関係性か |
円滑なコミュニケーションが実現すれば、業務の効率や品質が向上するだけでなく、社員の心理的な負担も軽減され、気軽に意見交換ができる職場を作り出せます。
以下の記事では、社内のコミュニケーションを活性化する方法やアイデアを多数紹介しています。チームの連携強化を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。

以下より、5つの質問例を紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
質問例 | 回答例 |
---|---|
仕事の進捗に関して、定期的に上司からのフィードバックがありますか? | ・ある ・どちらとも言えない ・ない |
上司は、あなたの意見や提案をしっかり聞いてくれると感じますか? | ・感じる ・やや感じる ・どちらとも言えない ・あまり感じない ・感じない |
同僚とのコミュニケーションは円滑だと思いますか? | ・思う ・やや思う ・どちらとも言えない ・あまり思わない ・思わない |
チーム内で情報共有が適切に行われていますか? | ・できている ・ややできている ・どちらとも言えない ・あまりできていない ・できていない |
社内のコミュニケーションを活性化するアイデアがあれば、自由にお聞かせください | (自由記述) 仕事以外の交流の場として、グループ活動を会社でサポートしてほしい |
人事評価・フィードバック
人事評価の項目では、評価制度の透明性や公正性に関する質問を行い、成果に対して適切な評価がされているかを確認します。
評価制度では、役職・役割に応じた評価基準を設定し、社員一人ひとりの目標に対して「達成すべきこと」を明確にするのが理想的です。
フィードバックの項目においては、業務進捗の確認や人事評価に加えて、課題解決に向けた具体的な行動が示されているかを確認しましょう。
フィードバックが不十分または不明確な場合、社員は自分の業務に対する認識を誤る原因となり、モチベーションの低下や会社への不満が生じてしまいます。
適切な評価基準の設定と質の高いフィードバックを行い、社員の意欲向上と人材育成の促進を目指しましょう。評価基準の決め方や人事評価の流れについては、以下の記事で詳しく解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

以下より、5つの質問例を紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
質問例 | 回答例 |
---|---|
評価基準は明確でわかりやすいと感じますか? | ・感じる ・やや感じる ・どちらとも言えない ・あまり感じない ・感じない |
あなたの成果・業績に対して、適切な評価を受けていると思いますか? | ・思う ・やや思う ・どちらとも言えない ・あまり思わない ・思わない |
目標に対する進捗や課題に関して、具体的なアドバイスがありますか? | ・ある ・どちらとも言えない ・ない |
具体的にどのようなアドバイスがありますか?自由にお聞かせください | (自由記述) 「目標達成のプロセスを明確にして、行動可能なタスクに分割しよう」とアドバイスを受けた |
上司は、成果以外の努力や過程を評価していると感じますか? | ・感じる ・やや感じる ・どちらとも言えない ・あまり感じない ・感じない |
スキル・キャリアアップ
スキル・キャリアアップの項目では、能力・スキルに見合った役割や、自己成長の機会が与えられているかを確認します。
企業としては、自社での具体的なキャリアパスを示し「どのような能力・スキルを磨くべきか」を明確に伝えなければなりません。
新たなスキルを習得するための教育制度や、専門的な技術・ノウハウを学ぶ外部研修など、自己成長の機会を積極的に提供することで、モチベーションの向上にもつながります。
また、職務ごとに昇進・昇格の道筋を提示すれば、社員は自身のキャリアをイメージしやすくなるため、結果的に「この会社で働き続けたい」という意志が強くなります。
以下より、5つの質問例を紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
質問例 | 回答例 |
---|---|
会社の研修や教育プログラムは、あなたのキャリアに役立つと感じますか? | ・感じる ・やや感じる ・どちらとも言えない ・あまり感じない ・感じない |
今後習得すべきスキルについて、具体的なアドバイスを受けたことがありますか? | ・ある ・どちらとも言えない ・ない |
具体的にどのようなアドバイスがありますか?自由にお聞かせください | (自由記述) 「複数の業務を効率的に進めるために、プロジェクトマネジメントの基礎を学ぼう」とアドバイスを受けた |
キャリアアップに向けて、仕事以外での学びに取り組んでいますか? | ・取り組んでいる ・取り組んでいない |
仕事以外での学びについて、取り組んでいることをお聞かせください | (自由記述) 英語を学ぶために、オンラインの語学レッスンを受けている |
パルスサーベイの質問設計における3つのポイント

パルスサーベイの質問設計を行うときは、以下の3つのポイントを考慮しましょう。
質問が曖昧な表現だったり、毎回単調な内容だったりすると、正確な回答を得られず施策に活かせません。各ポイントを押さえて、質の高いサーベイを目指しましょう。
質問が指す「時期」を明確に記載する
質問設計を行うときは、質問が指す時期を「この1ヵ月間」や「過去3ヵ月」と記載し、どの時期・期間を振り返るかを明確に伝えましょう。
たとえば「最近、仕事に対してやりがいを感じていますか?」という質問をした場合、人それぞれで「最近」の解釈が異なります。
過去1週間なのか、1ヵ月間なのか、回答者によって異なる期間をイメージしてしまう可能性があるため、明確な時期を記載し「同じ基準」でデータを集める必要があります。質問例は以下のとおりです。
- 直近1ヵ月間において、適切な業務量を与えられていると感じますか?
- 今年度に入ってから、職場の人間関係に変化を感じましたか?
特定の期間を指定して質問を行うことで、回答のばらつきを防げるうえに、データの一貫性を保ちながら特徴や傾向の分析もしやすくなります。
項目ごとに複数の質問を設ける
質問項目に対してひとつの質問だけでは、表面的な回答しか得られず深い分析ができないため、各項目で複数の質問を設けましょう。
たとえば、モチベーションに関する質問を行う場合、以下のように異なる視点で質問を設けるのが理想的です。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
質問項目 | 視点 | 質問例 |
---|---|---|
モチベーション | やりがい | あなたの仕事は会社の目標達成に貢献していると感じますか? |
業務量 | 業務の優先順位を決め、計画的に進められていますか? | |
達成感 | この1ヵ月の業務で達成感を感じた瞬間はありましたか? |
複数の切り口から同じテーマの質問を行うことで、各スコアに影響を与えている要因を細かく分析でき、より正確なデータを収集できます。
また、パルスサーベイの精度を上げるために選択式の質問だけでなく、自由記述の質問を設けて、社員のリアルな声も収集しましょう。
質問内容に緩急をつけバリエーションを持たせる
全社員に同じレベル(度合い)の質問を行うと、職務や役割の違いによって回答にばらつきが生じるため、質問内容に緩急をつけバリエーションを持たせましょう。
たとえば、エンゲージメントに関する質問では、以下のように異なるレベルでの質問設計が必要です。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
質問項目 | レベル(度合い) | 質問例 |
---|---|---|
エンゲージメント | レベル1(低) | この会社を友人や知人に勧めたいと思いますか? |
レベル2(中) | 会社の成長に貢献できていると感じますか? | |
レベル3(高) | この会社で一生働き続けたいと思いますか? |
レベルごとに質問を設ければ、誰でも高スコアをつけそうな項目や、愛着の強い人だけが高スコアをつける項目などがわかり、回答の変化をより正確に捉えられます。
パルスサーベイの適切な頻度とは?

出典:エンゲージメントサーベイの歴史・市場|日本の人事部(株式会社HRビジョン)
パルスサーベイの適切な頻度は、各企業の目的や職場環境によって異なりますが、週1回・月1回・四半期に1回で実施するケースが多いようです。
株式会社HRビジョンの調査によると、パルスサーベイを実施している企業のうち、52.0%が「1ヵ月に1回」、8.0%が「1週間に1回」の頻度で行っています。
たとえば、月1回の頻度でサーベイした場合「今月のエンゲージメントは先月よりも低下している」など、短期的な変動は確認できますが、以下のような影響も考えられます。
- サーベイが繁忙期に重なり、ストレスで一時的にネガティブな回答になった
- 上司との意見の相違が発生した直後にサーベイを受けた
これらの影響を考慮すると、エンゲージメント低下は誤差の範囲としても捉えられるため、過去データとの比較や実施時期の検討もしなければなりません。
一方で、常に社員に状態を把握しようと毎日サーベイを行う場合、社員の負担が増して「サーベイ疲れ」を引き起こし、回答率が低下する可能性もあります。
試験的にパルスサーベイを配信し、頻度を調整したうえで、スマホで簡単に回答できるようにするなど、社員の負担とならない工夫が必要です。
パルスサーベイの目的と実施頻度の目安として、一例を紹介します。
目的 | 頻度の目安 |
---|---|
職場環境が変化した社員の心理状態を把握する | 1週間に1回 |
エンゲージメントを継続的にモニタリングする | 月1回 |
組織改善の施策の効果を検証する | 1~3ヵ月に1回 |
パルスサーベイの目的や頻度、活用方法をまとめた資料を無料で提供していますので、以下のリンクからダウンロードしてご活用ください。大企業の人事担当者の方に聞いた「効果があった離職対策」も紹介しています。
>>「パルスサーベイとは?代表的なサーベイの種類と活用事例」の資料をダウンロードする
パルスサーベイの実施手順・流れ

パルスサーベイを実施するときは、以下のステップに沿って進めましょう。
適切な手順でサーベイを行うことで、調査データの質が向上し、改善策の検討・立案につながる潜在的な課題を発見できます。
1.調査目的・テーマの設定
まずは、パルスサーベイの調査目的・テーマを設定し「なにを知りたいのか」「どの課題を解決したいのか」を明確にしましょう。目的を設定するときには、現在の組織体制や状態を踏まえて、目指すべき方向性を検討します。
たとえば、企業が急成長している場合は「仕事のモチベーション」や「組織文化に対する共感」をテーマにすれば、組織の変化によって社員の考えも変わっていないかどうかがわかります。
一方で、業績が停滞している場合には「従業員エンゲージメント」や「ワークライフバランス」に焦点を当てると、休職・離職につながりそうな要因の把握が可能です。
「収集すべきデータが得られず、施策検討に活用できない」といった問題が発生しないように、調査目的やテーマを明確に設定しましょう。
2.調査方法(サーベイツール)の選定
調査目的・テーマを設定したら、どのような方法で調査を行うのかを決めましょう。
自社システムやGoogleフォームでもアンケート調査は可能ですが、結果の集計・分析や組織改善を効率的に行うには、サーベイ専用のツールが必要です。
サーベイツールを選定するときは、以下のポイントを考慮しましょう。
- 調査結果を自動で集計し、グラフや数値で可視化できるか
- 調査目的に合わせて質問項目を柔軟に変更できるか
- 社員へのサポートや組織改善のアドバイスが提供されるか
- 直感的に操作できる仕様になっているか
- モバイル端末に対応しているか
また、匿名で実施するサーベイツールもありますが、社員個人へのケアやサポートをしたい場合は、実名式のツールを選定しましょう。
以下の記事では、おすすめのサーベイツールを目的別に紹介しています。自社の課題に合わせて比較検討したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

3.質問項目の設定
社員の心理状態や考えを正確に把握するため、調査目的に応じた質問を設定しましょう。高頻度で実施するパルスサーベイにおいては、質問を多くし過ぎると正確な回答が得られない可能性があります。
そのため「毎回固定の質問」や「重点的に調査したい質問」など、目的に沿った最低限の質問を設け、状況に応じて調整しましょう。
5段階で回答する定量データに加えて、自由記述欄による定性データをバランスよく組み合わせることで、より深い分析が可能です。
【例】
- 現在の仕事内容に満足していますか?(5段階での回答)
- 「1」で回答した理由を教えてください(自由記述)
また、質問内容はシンプルでわかりやすい表現を心がけ、負担なく直感的に回答できるように配慮するのも重要です。
4.サーベイの実施
サーベイを実施するときは、事前に配信スケジュールを決め、調査目的や回答方法を社員に周知してから調査を行いましょう。
定期的に調査を行うパルスサーベイにおいては、組織状態の変化を正確かつタイムリーに把握したいため、回答の負担がない時期を選定する必要があります。
また、業務の合間に短時間で回答できるように、質問は3〜10問程度で構成しましょう。
回答の締め切り前には、サーベイツールのリマインド機能を活用しながら、社員の積極的な参加を促す工夫も必要です。
5.結果の集計・分析
サーベイ配信後は、ツールを活用してデータの集計と傾向・課題の分析を行いましょう。
調査結果は、回答形式や質問内容に応じて、定量データ(回答のスコア)と定性データ(自由コメント)に分類されます。自由記述欄の意見やコメントについては、トピックごとに回答をまとめるなどして、職場ごとの課題や傾向を確認しましょう。
また、ツール上で「組織・部署・入社年」の比較や、過去からの変化を分析すれば、データ同士の相関関係(Aが高いとBも高いなど)がわかります。
調査結果の詳しい分析方法を知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。具体例を用いてわかりやすく解説しています。

6.社員へのフィードバック
サーベイ実施後は、調査結果を社内で共有し、組織のよい点と改善点を含めて「ありのままの状態」を伝えなければなりません。
一方的に結果を提示するのではなく、社員の意見や考えを聞く場を設けるなど、フィードバックする機会をつくりましょう。フィードバックを行うときは、以下の手順で「フィードバックミーティング」を行うのが効果的です。
- ミーティングの目的を説明
- ミーティングでのルールを提示
- サーベイのデータを提示
- データに対する解釈
- 「未来」に向けた話し合い
- アクションプランづくり
以下の記事では、ミーティングを含めたサーベイフィードバックの方法を詳しく解説しています。企業が実践している取り組みも紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

7.改善策の検討・実行
パルスサーベイの結果とフィードバックミーティングをもとに、具体的な改善策やアクションプランを検討しましょう。
たとえば、上司と部下のコミュニケーション不足が判明した場合、以下のような取り組みが考えられます。
- 管理職向けのコーチング研修の導入
- 定期的な1on1ミーティングの実施
- SlackやTeamsなどのコミュニケーションツールの活用
改善策を進めるなかで、新たな問題が浮き彫りになったり、思うように効果が出なかったりするため、定期的な進捗確認とアップデートが必要です。
社員の離職を減らすための施策に悩んでいる人事担当者の方は、以下の記事を確認してみてください。定着率を上げる方法や企業事例を解説していますので、自社に合った施策のヒントを見つけられます。

パルスサーベイの活用事例5選

パルスサーベイは、組織改善に向けた具体的な行動を促進するツールとして、さまざまな業界で活用されています。実際の活用事例を5つ紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
取り組み | 効果 |
---|---|
最優先ケアの社員を把握して1on1でのアプローチを実施 | 社員一人ひとりと向き合って離職の原因を分析できる体制が整った |
先輩社員(エルダー)が後輩社員のメンタル面の把握に活用 | 離職者が「月に1名」から「2ヵ月に1名」まで減少した |
定量的な数値にもとづいたマネジメントに対するフィードバック | 定量的な数値をもとに「改善の必要性」をフィードバックできた |
3問の質問で社員のコンディションとエンゲージメントを把握 | 約30秒で回答でき、従業員の負担軽減につながった |
BIツールを活用して組織・個人のさまざまな情報を可視化 | 組織・従業員の結果を可視化できる仕組みを構築できた |
各企業が「どのような目的でパルスサーベイを活用しているか」を把握し、自社の組織課題を解決する手段としてサーベイを取り入れてみてください。
最優先ケアの社員を把握して1on1でのアプローチを実施
介護施設の運営を行う株式会社エターナルキャストでは、慢性的な人手不足の傾向にある福祉業界において、パルスサーベイを活用して離職率の改善に取り組みました。
ツールには『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』を採用し、性格検査で社員一人ひとりの性格を16タイプに分類したのちに、サーベイで社員の状態の可視化をしています。
基本的な運用は、現場にもっとも近い部署である福祉事業部とエリアマネジャーが、最優先ケア(誰をケアするか)を決めて1on1による支援をしています。
回答した社員には研修手当を出すなど、サーベイへの参加意欲を高めつつ、社員一人ひとりと向き合って離職の原因を分析できる体制を整えました。
現場からは「自分では気づかなかった深層部分のストレスに気づけた」といった声もあり、パルスサーベイ導入の効果を感じています。
事例:ここ何年も離職率85%が続いていた原因特定ができるように|株式会社エターナルキャスト
適性検査やサーベイを提供する株式会社リーディングマークは、新サービス『ミキワメ マネジメント』のリリースを発表しました。
離職率の改善はもちろん「人・企業・日本の生産性を上げる」をコンセプトに、AIを活用したマネジメント(1on1)ができるHRプラットフォームです。
社員一人ひとりの成長を最大化させる「強い組織」を目指している方は、以下のリンクからお気軽にお問い合わせください。
先輩社員(エルダー)が後輩社員のメンタル面の把握に活用
インフラ構築やシステム運用・開発を行う株式会社サイバーネーションでは、ICT業界の特性上、社員が顧客先に常駐することも多く、日々の状況確認が困難な状況でした。
また、先輩社員が後輩社員の仕事をサポートする「エルダー制度」を導入していたものの、コロナ禍で対面でのコミュニケーションができず、後手の対応になっていました。
そこで、社員の状態把握を効率的かつ簡単にできる『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』を導入し、先輩社員(エルダー)に対して活用を促しています。
先輩社員は、後輩社員の業務状況や人間関係、メンタル面の把握に補足ツールとして活用し、月次報告書をまとめるときにも情報を反映しています。
サーベイ導入前は離職者が「月に1人」いましたが、各個人の些細な変化に気づき支援を強化したことで、現在では「2ヵ月に1人」まで減少しました。
事例:対面でのコミュニケーションが減ったなかでも離職者が半減|株式会社サイバーネーション
定量的な数値にもとづいたマネジメントに対するフィードバック
インターネット広告代理業を行うウェブソア株式会社では、組織拡大に伴って社員の状況を把握するのが難しくなったため、パルスサーベイの導入に踏み切りました。
月1回のサーベイで社員の状態を定点観測し、社長と役員が結果を確認して社員へのサポートをしています。
また、事業部長に対して組織全体の結果をフィードバックする試みもしており、組織のよいところ・悪いところをすべて伝えて「前向きな取り組み」として実施しています。
以前は、組織やマネジメントに関するフィードバックは困難でしたが、サーベイの定量的な数値をもとに「改善の必要性」をフィードバックできるようになりました。
導入して日も浅いため大きな変化は出ていない状況ですが、社員に対して「会社がなにかをやり始めた」という点は伝えられていると感じています。
事例:社員一人ひとりが理想的な状態で働ける会社であり続けるためのサーベイ導入|ウェブソア株式会社
3問の質問で社員のコンディションとエンゲージメントを把握
メディア事業などを展開する株式会社サイバーエージェントでは、従業員の増加に伴って個々のコンディションを把握できていない課題がありました。
そこで、調査(サーベイ)を行うシステムを自社で開発し、全従業員に対して「3問の質問+自由記載欄」で構成されているサーベイを毎月1回実施しています。
3問のうち2問は、本人・チームのコンディションを5段階で回答する設問で、残りの1問は、サーベイ実施時期における重要な事項を設問にしています。
短時間で回答できるパルスサーベイの導入によって、自由記載欄に記入しない場合は約30秒で回答でき、従業員の負担軽減にもつながりました。
参考:従業員のコンディション把握のためのサーベイ(サイバーエージェント)|人事院
BIツールを活用して組織・個人のさまざまな情報を可視化
ITサービス企業大手の日本電気株式会社(NEC)では「150%の力が発揮できるエンゲージメントの高い職場」を目指し、以下の2種類のサーベイを活用しています。
- エンゲージメントサーベイ(年1回、65問程度)
- パルスサーベイ(3ヵ月に1回、25問程度)
ただ単に従業員の満足度を測るだけでなく、働きがいや業務への没頭などを指すエンゲージメントに注目し、従業員一人ひとりの創造力向上に努めています。
パルスサーベイにおいては、さまざまな情報を可視化するBIツール(Business Intelligence tools)を利用し、従業員がサーベイ結果を確認できる仕組みをつくりました。
パルスサーベイに関するよくある質問

パルスサーベイに関する「よくある質問」に回答します。
導入や運用に関する疑問を解決し、パルスサーベイで組織改善を促す仕組みを構築しましょう。
パルスサーベイとストレスチェックは両方すべき?
社員の健康や心理的な負担を把握・管理するためには、パルスサーベイとストレスチェックの両方の実施が望ましいです。
たとえば、パルスサーベイで日々の状態変化を把握して1on1を行い、メンタルヘルス不調につながる原因をストレスチェックで深掘りするといった運用ができます。
どちらの調査も社員の心理状態を把握する点においては同じですが、目的や実施頻度に違いがあります。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
調査 | 目的 | 実施頻度 |
---|---|---|
パルスサーベイ | 社員の心理状態(意欲・活力など)の変化をタイムリーに察知し、迅速なサポートにつなげる | 週1回、月1回 |
ストレスチェック | 社員の心理的な負担やストレス状況を把握し、メンタルヘルス不調を防ぐ(労働安全衛生法で義務づけられている) | 年1回 |
エンゲージメントサーベイや従業員満足度調査との違いは?
パルスサーベイ・エンゲージメントサーベイ・従業員満足度調査は、いずれも社員の状態や考えを把握するための調査ですが、目的や実施頻度、調査項目に違いがあります。
※以下の表は右にスクロールできます
調査 | 目的 | 実施頻度 | 調査項目 |
---|---|---|---|
パルスサーベイ | 社員の状態変化を察知し、早期にケア・サポートを行う | ・月1回 ・週1回 | ・やる気、モチベーション ・やりがい、充実感 |
エンゲージメントサーベイ | 組織のエンゲージメントを可視化し、改善策の検討と立案を行う | ・半年に1回 ・年1回 | ・組織への貢献意欲 ・仕事に対する熱意や活力 |
従業員満足度調査 | 労働環境や人間関係に対する満足度を測定し、職場環境の改善を行う | ・半年に1回 ・年1回 | ・仕事に対する満足度 ・職場環境に対する満足度 |
これらの調査は、異なる視点で組織や社員の状態を測定するため、目的に応じて適切な使い分けが必要です。
以下の記事では、各調査の違いやメリット、活用方法をわかりやすく解説していますので、どの調査を行えばいいか悩んでいる方は参考にしてみてください。

パルスサーベイは「意味ない」と言われる理由は?
パルスサーベイは、短時間で社員の心理状態を調査・分析できる便利なツールですが、以下の理由から「意味ない」「無駄」と批判されることもあります。
- 同じような質問でマンネリ化している
- 調査することが目的になっている
- 調査回数が多くて会社側の対応が遅れる
株式会社welldayの調査によると、パルスサーベイを受けた人のなかで「改善された実感がなく、毎回形式的な回答になっている」といった声があるのも現状です。
参考:Wellが「従業員・組織サーベイへの意識と改善状況」を独自調査|株式会社wellday
調査を戦略的に活用する体制をつくり、社員からのフィードバックを組織改善に反映させることで、パルスサーベイは「意味のある調査」になります。
以下の記事では、パルスサーベイの効果を最大化する方法や、調査で考慮すべきポイントを解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。

適切な質問項目・頻度を設定してパルスサーベイを実施しよう

パルスサーベイは、社員の心理状態をタイムリーに把握し、組織の傾向や特徴をデータで可視化できる便利なツールです。
しかし、目的に沿った質問設計をしなければ、表面的な回答ばかりが増えてしまうため、以下の7項目から自社に合ったものを選定する必要があります。
質問内容においては、特定のテーマに焦点を絞るのと同時に、緩急をつけたバリエーションを持たせることで、本質を突く有益な情報が収集できます。
まずは、パルスサーベイの質問と頻度を設定し、組織の変化にすぐ対応できる体制を整えたうえで、施策の検討につなげていきましょう。

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