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ニアショアとは?注目される背景やメリット・デメリット、オフショアとの違いについても解説

ニアショアとは、都市部の企業が地方都市の企業に業務をアウトソーシングすることを指す言葉です。「ニアショア開発」とも呼ばれており、コスト削減などを目的に行います。本記事では、ニアショアを行うメリット・デメリットについて解説します。また、海外企業にアウトソーシングするオフショアについての情報もご紹介します。

ニアショアとは?

ニアショアとは、本来は自社で行う業務を地方都市の企業や距離的に近い企業にアウトソーシングすることを指します。特にIT業界で使用される言葉として浸透しており、システムやソフトウェアなどの開発業務を地方都市へ移転することをニアショア開発とも言います。

ニアショアは下記課題の解決に向いています。

  • 自社の人材不足やリソース不足を国内で解消したい
  • 地方にアウトソーシングすることでコストを下げて開発したい
  • 国によって異なる言語や文化、習慣から起因するリスクを避けたい

アウトソーシングされるのはシステムやソフトウェアの開発、運用保守などのITに関わる業務が一般的です。

ニアショアが注目されるようになった背景

ニアショアが注目されるようになった背景は下記です。

  • 都市部の企業に勤務するITエンジニアの人件費が高騰したこと
  • 地方都市にIT企業が増えたこと

地方都市に業務委託をした方が都内で業務をする場合と比較してコスト削減に繋がります。付随して、都内部におけるエンジニア単価の高騰から人材の確保が難しくなっており、ニアショア開発をすることで人材を確保しやすいのです。また、クラウドサービスなどを活用することで遠隔地でも仕事がしやすくなったことも理由として挙げられます。

このように、従来主流だった海外へのアウトソーシングに代わり、国内へのアウトソーシングも注目されているのです。
例えば、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)は、日本企業専用の運用保守サービス拠点「ニアショアセンター@東京」を同社内に2022年1月に開設することを発表しました。


参考:日本企業専用の運用保守サービス拠点、日本TCSが「ニアショアセンター@東京」を開設(BCN) – Yahoo!ニュース

ニアショアとオフショアの違い

ニアショア開発の類義語はオフショア開発です。オフショア開発は、ベトナムやインドネシアなどの人件費が安いアジアの国を中心に業務を海外の企業に発注することを指します。両者の違いは開発委託先が「日本国内の地方企業」か「海外企業」かという点です。
ニアショア開発が、地方企業にアウトソーシングするのに対し、オフショア開発は海外企業に外注する点が特徴です。

ニアショア開発とオフショア開発は、それぞれメリット・デメリットがあるため、自社にマッチするかを事前に比較検討する必要があります。

参考:オフショア開発とは – コトバンク

ニアショアを行うメリット

ニアショア開発のメリットは以下です。

  • コスト削減
  • コミュニケーションがしやすい
  • 現場責任者を育成しやすい
  • 災害やカントリーリスクを避けられる
  • 地方経済の活性化につながる

それぞれのメリットをご紹介します。

コスト削減

ニアショア開発の最大のメリットはコスト削減です。地方の最低賃金は都市部よりも低くいため、地方都市の企業にアウトソーシングすることで人件費などを抑えられます。また、日本国内のやり取りなため、従業員の移動にかかるコストの削減にも繋がります。
例えば某官公庁では、開発コスト面と人材確保を目的に、ニアショア開発を導入しました。その結果、首都圏の技術者のみで開発を行うよりも、約15%程度のコストダウンを実現しました。

https://www.saishunkansys.com/casestudy/nearshore/nearshore_web-system/

また、システム開発のSIG(2018年ジャスダック上場)の石川社長は、
ニアショア開発の体制整備は、IT(情報技術)人材が不足するなかで、人材の安定した確保につながっていると述べています。

参考:SIGの石川社長「システム開発、官公庁向けが強み」: 日本経済新聞

コミュニケーションをとりやすい

オフショア開発の場合、その国の言語や文化の違いからトラブルが起こる可能性もあります。しかしニアショア開発は言語の壁や、慣習や労働文化、時間の違いがありません。コミュニケーションミスが発生しにくく、万が一のトラブル発生時も、迅速な解決が可能です。

現場責任者を育成しやすい

オフショア開発では、自社から現場責任者を派遣しない場合、現地の人材を採用して育成しなければなりません。言葉の壁や文化の違いなどから、責任者をスムーズに育成できないリスクがあります。しかしニアショア開発ではそのようなことはありません。

災害やカントリーリスクを避けられる

ニアショア開発では、災害やカントリーリスクを極力避けることが可能です。
日本は台風や地震などの自然災害が多い国です。地方都市に拠点を設けることで、都市部での災害発生時のリスクを分散させることができます。

またオフショア開発は、国際情勢や政治情勢・デモ・為替の変動などのカントリーリスクがあります。例えば、尖閣諸島問題による日中関係の悪化や、タイで起きた大規模なクーデターなどです。
しかしニアショア開発ならそのようなカントリーリスクに巻き込まれる可能性は低いです。

地方経済や産業の活性化につながる

地方によっては、補助金などのさまざまな優遇措置が用意されている場合があり、ニアショア開発の推進に努めています。自社で開発の拠点を開設する場合、優遇措置とともに地方でITエンジニアを採用することもでき、新たな人材の獲得につながるメリットも得られます。
例えば、SCSK株式会社はニアショア開発を「事業成長に重要なもの」と位置づけ、地方拠点を積極的に拡大し、IT人材の雇用創出と人材育成を行いました。

参考:サステナビリティ:地域社会に貢献するニアショア開発 | SCSK株式会社

ニアショアのデメリット

ニアショア開発はコスト削減などのメリットを得られますが、以下のデメリットも存在します。

  • IT人材の確保が難しい
  • コスト削減の効果が小さい
  • 信頼できる業者を見つけるのが難しい
  • 業務を再委託される可能性がある

デメリットもきちんと確認しておきましょう。

IT人材の確保が難しい

現在、日本国内ではIT人材が不足している状況で、エンジニアや開発者などの確保が困難です。
経済産業省の委託事業としてみずほ情報総研株式会社が実施した「IT 人材需給に関する調査」では、IT人材の需要が供給を上回り、2030年には最大で約79万人の人材不足が起こると結論づけています。
参考: IT 人材需給に関する調査|みずほ情報総研株式会社

特に地方は都市部よりも総人口が少ないです。IT人材の数が限定されており、適材が見つからない可能性があります。希少性が高まると、アウトソーシング費用も高騰する可能性があり、ニアショア開発メリットのコスト削減効果が薄れます。ニアショア開発でIT人材が確保しづらい場合は、オフショア開発の利用も検討しましょう。

コスト削減の効果が小さい

オフショア開発は日本よりも確実に人件費の安い海外の企業にアウトソーシングするため、日本国内で行うニアショア開発よりも低コストで委託できる可能性が高いです。しかしニアショア開発は、
委託先が同じ国内であるため、想定よりもコスト削減効果が小さいことがあります。

アウトソーシングできる企業を見つけるのが難しい

要求に応えられる企業を見つけるのが困難な場合があります。有名なニアショア開発企業は、既にアウトソーシング案件を受注していることが多く、新規依頼を受けられない可能性があります。依頼先は事前に複数見つけておきましょう。

業務を再委託される可能性がある

委託先が下請け企業に再委託する可能性があります。再委託の問題点は、依頼要件の認識齟齬が起こったり、クオリティが担保されない恐れが生じることです。外注先が再委託しないよう、契約時に認識をすり合わせておきましょう。

ニアショアよりもオフショアを行うメリットは?

オフショア開発のメリットを解説します。

  • 高度IT人材の活用がしやすい
  • オフショア開発企業が豊富
  • ニアショアよりも人件費削減が期待できる

高度IT人材の活用がしやすい

ニアショア開発以上に高度IT人材を活用することが可能です。オフショア開発で人気のベトナムは、高度IT人材の教育や輩出を国策として掲げており、優秀な人材が多いです。そのため、AIやAR/VR、IoT、ブロックチェーンといった話題の先端技術を開発する事例が増加しています。
また、海外の優秀なIT人材は英語が堪能なので、英語圏の案件も依頼しやすいです。
開発内容によっては、オフショア開発のほうがメリットが多いのです。

オフショア開発企業が豊富

海外には日本よりもオフショア開発企業が多く、多様な候補から最適な企業を選択できます。ITリソースも豊富なので、大規模な開発もアウトソーシングできます。

ニアショアよりも人件費削減が期待できる

先述した通り、日本国内よりも人件費が安いため、コスト削減がニアショア開発よりも期待できます。例えばベトナムの人件費は日本の1/3程度です(総務省平成28年度調査より)。

参考:IT関連産業の給与等に関する実態調査結果|経済産業省

ニアショアとオフショアを使い分けるポイント

ニアショア開発とオフショア開発を使い分けるポイントを解説します。

目的を明確にする

何のためにアウトソーシングするのかを明確にしましょう。コスト削減ならばオフショア開発、コミュニケーション重視ならニアショア開発が向いています。

開発の規模を把握する

システム開発の規模を把握しましょう。もし大規模なシステム開発であれば、IT人材が豊富なオフショア開発がおすすめです。ニアショア開発にするなら、人材やスキルセットを事前に確認しておきましょう。

まとめ

ニアショアを利用すれば都市部の企業が抱えているコスト削減などの課題を解決できる可能性があります。ITの発展とともに今後もニアショアの需要は増していくことが考えられますが、メリットやデメリット、自社の目的などを把握した上でアウトソーシングを行うことが大切です。オフショア開発とも比較して選択しましょう。


参考:
ニアショア開発のメリットと活用 | ニアショア機構
ニアショア開発って何?オフショア開発との違いはあるの?|発注成功のための知識が身に付く【発注ラウンジ】
ニアショアとは?オフショアとの違いや企業のメリットなどを解説 – SENZOKU LAB.(専属ラボ)
【2020年版】時代はニアショア?オフショアとニアショアを徹底解説! | オフショア開発Navi
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ベトナムにおけるオフショア開発|メリット・デメリット・リスクについて | SHIFT ASIA -ソフトウェア品質保証のプロフェッショナル-
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