採用基準の決め方は、中途採用と新卒採用で多少異なります。中途採用では即戦力になる人材が必要なため、経験や能力が重視されます。
しかし、能力さえあればよいわけではありません。自社との整合性や、既存社員との相性も重要です。
今回の記事では、中途採用を行う際の基準の決め方や重視すべき項目について解説します。
採用基準を見直すタイミングや改善方法も紹介しますので、中途採用で良い人材を確保するために役立ててください。
中途採用と新卒採用の違い
中途採用と新卒採用の違いを「採用の目的」「採用スケジュール」「採用・教育コスト」の3項目でまとめると以下のとおりです。
採用の種類 | 採用の目的 | 採用スケジュール | 採用・教育コスト |
---|---|---|---|
中途採用 | 即戦力となる人材の獲得 | 随時採用 | 採用コスト:高教育コスト:低※新卒採用との比較 |
新卒採用 | 未来の幹部候補の育成 | 一括採用 | 採用コスト:低教育コスト:高※中途採用との比較 |
それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
採用目的の違い
中途採用の主な目的は、即戦力となる人材を確保することです。企業の求める能力やスキルを備えた人材を採用できるため、企業風土や仕事のやり方になじめさえすれば、すぐに戦力として活躍できるでしょう。
一方で、新卒採用には、現場の戦力となる人材に加え、未来の幹部候補を獲得する目的もあります。
ポテンシャルの高い人材を獲得し、時間をかけて育成することで、自社の理念や文化にマッチした優秀な幹部に成長してくれるでしょう。
スケジュールの違い
中途採用では必要に応じて特定のスキルを持った人材を採用します。そのため、採用時期は不定期となる場合がほとんどです。
新卒採用は卒業時期である3〜4月の一括採用が一般的です。しかし、最近では人材不足対策や採用対象者のグローバル化により、新卒対象であっても通年募集を行う企業が増えています。
採用・教育にかかるコストの違い
中途採用は、新卒採用と比較すると採用コストが高く、教育コストは低い傾向があります。
先述のとおり、中途採用は不定期で随時募集が行われます。そのため、一括で採用活動を実施する新卒採用よりも、一人当たりの採用コストが高くなってしまうのです。
一方で、中途採用者はすぐに戦力として活躍できます。社会人経験があることから、ビジネスマナーなどの基礎的な教育も必要ありません。採用後の教育コストを抑えられる点は、中途採用の強みといえるでしょう。
中途採用のメリット
中途採用の主なメリットは以下の3点です。
- 即戦力になる
- 他社の経験やノウハウを獲得できる
- 短期間で採用できる
それぞれ詳しく紹介していきます。
即戦力になる
中途採用では「新規プロジェクトに必要な人材を獲得したい」「中堅社員が退職したため欠員を埋めたい」など、具体的な目的にマッチした人材を獲得できます。
とくに、人材不足が深刻化している現代において、業務に必要なスキルを持つ中途採用社員は非常にありがたい存在となるでしょう。
他社の経験やノウハウを獲得できる
中途採用で獲得できる人材は、他社で培った経験やノウハウを備えています。そうした知識や技術を獲得できる点も中途採用のメリットです。
とくに同業他社からの入社であれば、前職の人脈を活用できる可能性があるため、新たな取引先や顧客開拓も期待できます。
また、新卒採用の社員にとっても、中途採用はよい刺激となります。新卒社員は自社しか知らないため、どうしても考え方が凝り固まってしまいがちです。
短期間で採用できる
短期間で採用できる点も中途採用のメリットです。
新卒社員の場合、入社時期は卒業後に限定されます。選考から採用までに間が空くため、必要なタイミングで人材を確保できないケースもあります。
中途の場合は、必要に応じて随時採用が可能です。急な増員や欠員の補充が必要となっても、すぐに人材を確保できます。
中途採用のデメリット
中途採用の主なデメリットは以下の3点です。
- 離職のリスクが高い
- 自己流にこだわる場合がある
- ミスマッチ発生時のダメージが大きい
それぞれの項目について詳しく解説します。
離職のリスクが高い
中途採用者はすぐに離職してしまうリスクがあります。すでに転職経験があり、転職に対する抵抗感が薄いためです。
また、キャリアアップへの意識が高いこと、新卒社員よりも企業に対する愛着が少ないことも、離職につながる要因といえます。
即戦力になることを期待して採用した人材がすぐに離職すると、人材不足に陥り、業務が滞ってしまうおそれがあります。採用にかけた時間やコストが無駄になるのも大きな痛手です。
自己流にこだわる場合がある
中途採用者は即戦力となるスキルや経験を有しています。すでに仕事の進め方が決まっているため、自社のフローを無視して、自己流で進めてしまうケースも少なくありません。
独自のやり方で仕事をした結果、思わぬミスをしたり、チームワークを乱したりする危険性があるため注意が必要です。
ミスマッチ発生時のダメージが大きい
即戦力を期待して採用したものの、求めていた人材と異なっていた場合、自社に大きな影響を与えるおそれがあります。
中途採用者は経験者であるがゆえに、柔軟性に乏しい傾向があります。そのため、再教育しても思うような成果が出ないことも少なくありません。
さらに、中途採用者は経験やスキルを評価されての登用であるため、給与が高くなるのが一般的です。成果が出ない社員を雇用し続けることによる、経済的なダメージも深刻なものとなるでしょう。
中途採用において重視すべき採用基準
中途採用において重視すべき採用基準は次の5項目です。
- 経験
- コミュニケーション能力
- 自社との適合性
- 志望動機
- 勤務条件
それぞれの項目について、詳しく紹介します。
経験
中途採用において最も重視すべきポイントは経験です。
即戦力として活躍してもらうためには、募集している部署やプロジェクトチームに必要な能力やスキルを有していることが重要です。
コミュニケーション能力
新卒・中途に関わらず、コミュニケーション能力の有無は重要な選考基準です。
どのような職種であっても、人と関わる場面は必ず訪れます。コミュニケーション能力がなければ、円滑な人間関係の構築や取引先からの信頼獲得ができず、業務上大きな問題が生じかねません。
また、中途採用者は採用後すぐに上司となる可能性もあるため、単純なコミュニケーション能力だけではなく、人材マネジメント能力も必要です。
面接時にマネジメント経験の有無や人との関わりにおいて大切にしている点を聞き取り、候補者のコミュニケーション能力を評価しましょう。
自社との適合性
自社の風土に適応できる人材であるかどうかもチェックしましょう。
たとえ優秀な人材でも、自社に合わない場合、ほかの社員とトラブルを起こしたり、早期離職につながったりするおそれがあります。
とくに、中途採用者は前職での経験があるため、自社の社風になじめないケースも少なくありません。
正当な評価を行うには、どのような人物像が自社に向いているかを明確にし、面接官同士で共有しておく必要があります。協調性、誠実性、主体性といった重視すべき項目と、それらの判断基準についてすり合わせをしておきましょう。
志望動機
志望動機が前向きであるかを確認することも重要です。中途採用者のなかには、ネガティブな理由で前職を退職しており、生活のためにやむをえず転職活動をしている人もいます。そのため、自社への興味や向上心に欠けている場合もあるでしょう。
中途採用者は、入社後すぐに即戦力として、重要な役職や大きなプロジェクトに関わる可能性があります。意欲のない人材を採用してしまうと、チーム全体のモチベーション低下につながりかねません。
志望動機は、中途採用者の意欲を評価するための判断材料となります。履歴書に書かれた志望動機をもとに、面接での質問で掘り下げ、意欲の有無を確認しましょう。
勤務条件
中途採用者は前職と勤務条件を比較するため、ミスマッチや齟齬が生じると内定辞退や離職につながるおそれがあります。
条件について説明し、希望に合っているか、また納得できない場合はどのような条件を希望するかをしっかりと聞き取りましょう。
採用基準の決め方
採用基準は明確に決めなくてはなりません。基準が曖昧なまま選考を行うと、必要とされる人物像とのミスマッチが生じやすくなるためです。
自社の課題や現場が求める人物像について調査を行ったうえで、採用基準を設定することが重要です。採用基準を決める際の手順を以下に紹介します。
会社の経営方針や課題を把握する
まずは自社の経営方針を把握するところから始めましょう。経営方針とは、経営理念を実現するための方向性や目的を示すものです。
経営方針を把握することで、自社が現在抱えている課題や、将来的に目指すべき目標が明確となります。課題や目標が定まれば、必要とされる人物像も見えてきます。
現場にヒアリングを行う
採用予定の現場にヒアリングを行うことも重要です。
経営層が経営方針に沿って決めた採用基準が、必ずしも現場のニーズに合致するとは限りません。現場の声を取り入れないまま採用すると、ミスマッチによる生産性の低下や離職につながってしまいます。
現場で求められる経験やスキルに加え、人間性についても現場の希望を聞き、評価基準に取り入れましょう。
モデル社員のコンピテンシーを分析する
経営陣と現場の意見は重要ですが、主観的な視点が含まれている可能性があります。そこで、客観的に評価基準を設定するために有効な方法が、コンピテンシーの分析です。
コンピテンシーとは、優秀な社員に共通してみられる行動特性です。行動特性は、行動のもととなる価値観や思考、性格を指します。
スキルや経験と異なり数値化が難しいものの、行動の質そのものに関わることから、評価基準に盛り込みたい項目です。
自社で高いパフォーマンスを発揮している社員のコンピテンシーを分析し、評価基準に反映させることで、より客観的かつ精度の高い選考が可能となります。
採用したい人物像を明確にする
経営方針、現場の声、コンピテンシー分析を総合して、採用したい人物像を明確化します。
人物像がはっきりとすれば、面接担当者による評価のバラつきがなくなり、自社にマッチした人材を雇用できます。
ただし、あまりに評価基準を盛り込みすぎると、選考基準が厳しくなる点に注意が必要です。以下のような手法を取り入れることで、効率の良い選考ができるでしょう。
- 選考基準に優先順位をつけ、要素ごとに傾斜をかけて配点する
- 「必要条件」と「尚可条件」に分類する
採用基準を見直す際のポイント
「採用基準を設定したものの、マッチする応募者が集まらない」「採用はできてもミスマッチが生じる」という場合は、採用基準の見直視が必要です。採用基準を見直す際に注意すべきポイントを解説します。
転職市場の相場と合っているか
応募者が少ない場合は、転職市場の相場を確認しましょう。転職市場の相場に対して自社の採用基準が高すぎる場合、本来自社にマッチしているはずの人材に敬遠されているおそれがあります。
たとえ応募者が現れたとしても、選考が厳しいため不採用になってしまえば、優秀な人材を取りこぼしかねません。
求人サイトや同業他社と比較して、応募条件が厳しくなりすぎていないかという観点から、基準の見直しを行いましょう。
とくに、売り手市場になっている時期や、求人件数が多い職種は、採用基準が厳しいと同業他社との採用競争に負けてしまいます。転職市場の状況に合わせて、採用基準の緩和や待遇の改善を検討することが重要です。
採用基準が自社の現状に合っているか
雇用ミスマッチが生じる場合は、自社の現状をあらためて分析する必要があります。
現場の課題や目標は常に変化しています。その時々の状況と採用基準が合ってないと、求める人材を雇用できず、ミスマッチによる業務効率の低下や離職が生じかねません。
現場の担当者にヒアリングし、課題解決のために必要な人物像を設定し直すことで、現状とのズレを解消できます。
採用担当者と現場の感覚に剥離はないか
中途採用者の離職率が高い場合は、採用担当者が設定した基準が現場にマッチしていない可能性があります。
たとえ優秀な人材であっても、求める人物像が既存社員とかけ離れたものになっていれば、能力を十分に発揮できないでしょう。
また、求める人物像は能力のみにとどまりません。チームの雰囲気になじめるか、ほかの社員と協調性を持って仕事に取り組めるかといった人間性も重要です。
既存社員一人ひとりの能力や個性を把握し、相性の良い応募者を採用することで、チームのパフォーマンス向上や離職率の低下につながります。
採用基準の評価法にバラつきはないか
一次面接で高い評価を得た応募者が、二次試験では評価されず不採用になってしまう場合は、選考基準にバラつきが生じている可能性があります。
評価にバラつきが生じる主な原因と対策を、以下の表にまとめました。
原因 | 対策 |
---|---|
採用基準に関する情報共有ができていない | 採用基準設定の段階から面接担当者を巻き込み、一緒に作成する項目の定義を明確にする例)単に「コミュニケーション能力」とするのではなく「人の話を聞き、理解して適切な返答をする」のように正確に定義づける |
採用基準の優先順位や評価方法がわからない | 採用基準に優先順位をつける評価シートを利用する点数方式にする |
面接担当者の選考スキルが低い | 面接担当者向けのトレーニングを実施する面接担当者間でミーティングを行い、採用トレンドや効果的な面接手法について情報を共有する |
中途採用者の採用基準は能力と人間性が重要
中途採用者は即戦力になることを期待して採用するため、経験やスキルを重視して選ぶ必要があります。同時に、自社の企業風土や既存社員となじむためのコミュニケーション能力や人間性にも目を向けなくてはなりません。
経営方針や現場の意見、コンピテンシー分析など、複数の視点から理想とする人物像をイメージし、明確な基準を設定することが重要です。雇用ミスマッチや評価のバラつきを防ぐためには、ツールを活用して客観的な視点から人材を評価するとよいでしょう。
ミキワメ適性検査は、既存社員の性格傾向から社風を分析し、採用基準を自動的に生成するツールです。採用基準をもとに、候補者の評価や性格特性、各部署に対する適性を客観的に評価できます。
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