離職率とは、一定期間内に離職した人の割合を表す指標です。離職率が高いことには複数のデメリットがあります。
本記事では、離職率の意味や計算方法、離職率が高い場合のデメリット、離職率を下げる方法などについて詳しく解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
離職率とは
離職率とは、「労働者全体のうち、一定期間内に離職した人の割合」を表す指標です。
入社1年以内や3年以内など、短期間で離職した人の割合を表すことが一般的ですが、対象者や期間について法律で定められているわけではありません。
そのため、以下のようにさまざまな定義づけが可能です。
1月1日現在の常用労働者数に対して1年間で離職した人の割合
新卒入社後3年以内に離職した人の割合
中途入社後1年以内に離職した人の割合
離職率の計算方法
離職率の定義によって、計算方法も異なります。
前述した3つの例について、それぞれ計算方法を確認しましょう。
1. 1月1日現在の常用労働者数に対して1年間で離職した人の割合
厚生労働省は、離職率を「1月1日現在の常用労働者数に対して1年間で離職した人の割合」と定義しています。計算式は以下の通りです。
計算式:離職率(%)=1年間の離職者数(人)÷1月1日時点の常用労働者数(人)×100
参考:調査の結果|厚生労働省
例えば、1年間の離職者数が12人、1月1日時点での常用労働者数が250人だった場合、「12(人)÷250(人)×100=4.8(%)」で、離職率は4.8%となります。
2. 新卒入社後3年以内に離職した人の割合
新卒入社後3年以内に離職した人の割合は、以下の計算式で求めます。
計算式:離職率(%)=新卒入社後3年以内に離職した人数(人)÷新卒入社した人数(人)×100
例えば、2018年4月に新卒入社した人が300人、そのうち2021年3月までに離職した人が18人だった場合、「18(人)÷300(人)=6.0(%)」で、離職率は6.0%となります。
なお、就職して3年以内に離職する労働者が非常に多い問題を「753(シチゴサン)現象」と言います。中学卒業者7割、高等学校卒業者が5割、大学卒業者が3割という、学歴別の離職率を表しています。
参考:「新卒社員が辞めない会社」ランキングTOP300 | 就職・転職 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
3. 中途入社後1年以内に離職した人の割合
中途入社後1年以内に離職した人の割合は、以下の計算式で求めます。
計算式:離職率(%)=中途入社後1年以内に離職した人数(人)÷中途入社した人数(人)×100
例えば、2020年4月に中途入社した人が16人、そのうち2021年3月までに離職した人が3人だった場合、「3(人)÷16(人)×100=18.75(%)」で、離職率は18.75%となります。
日本の離職率の実態
離職率が計算できても、それだけでは自社の離職率が高いのか低いのかは判断できません。比較対象として、日本の離職率の実態をつかんでおきましょう。
日本全体の離職率
厚生労働省が毎年実施している雇用動向調査によると、令和2年(2020年)の離職率は14.2%でした。令和元年(2019年)の離職率は15.6%であり、前年から1.4%低下しています。
なお、男女別にみると男性の離職率が12.8%、女性の離職率が15.9%で、女性がやや高い結果となりました。雇用形態別にみると、一般労働者が10.7%、パートタイム労働者が23.3%で、パートタイム労働者の離職率が高いことがわかります。
産業別の離職率
また、令和2年(2020年)の産業別の離職率は以下のとおりです。
産業 | 離職率 |
鉱業、採石業、砂利採取業 | 5.6% |
建設業 | 9.5% |
製造業 | 9.4% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 10.0% |
情報通信業 | 9.2% |
運輸業、郵便業 | 13.3% |
卸売業、小売業 | 13.1% |
金融業、保険業 | 7.7% |
不動産業、物品賃貸業 | 14.8% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 10.3% |
宿泊業、飲食サービス業 | 26.9% |
生活関連サービス業、娯楽業 | 18.4% |
教育、学習支援業 | 15.6% |
医療、福祉 | 14.2% |
複合サービス事業 | 7.8% |
サービス業(他に分類されないもの) | 19.3% |
離職率が最も低かった産業は「鉱業、採石業、砂利採取業」で5.6%、逆に高かった産業は「宿泊業、飲食サービス業」で26.9%でした。産業別にかなりの開きがあることがわかります。
参考:産業別の入職と離職
離職率が高い企業の特徴
同じ産業・業界でも、離職率の高い企業・低い企業があります。
離職率が高い企業には、次のような特徴があります。
- 採用時のミスマッチ
- 教育・研修が不十分
- 人事評価や給与に不満がある
- 職場の人間関係が悪い
- 労働環境・労働時間が過酷
- 将来に不安がある
採用時のミスマッチ
採用時のミスマッチとは、企業と求職者のニーズがズレることをいいます。特にミスマッチが起こりやすいのは、社内の人間関係や労働環境です。
参考:採用のミスマッチを防ぐためには|原因と有効な対策4選【事例つき】 | Wantedly
主な原因は、以下の2点です。
採用前に十分な情報を伝えられていない
面接で自社にマッチングした人材を見極められていない
教育・研修が不十分
十分な教育・研修の機会がないまま現場での仕事がスタートすると、社員が「仕事を丸投げされている」と感じ、企業に対して不信感を抱く恐れがあります。
また、取引先や顧客とトラブルを起こし、上司や先輩社員に迷惑をかける可能性もあります。その結果、本人にとって居心地の悪い職場となり、離職につながるケースがあります。
人事評価や給与に不満がある
人事評価の基準が曖昧で、成果が昇給やボーナスに反映されないと、社員が「自分は正当に評価されていない」と感じ、離職を決断することがあります。
また、同業他社や他業界と比べて給与が低い場合、社員のモチベーションが低下し、より給与の高い企業や業界へ転職するケースがあります。
職場の人間関係が悪い
職場の風通しが悪くコミュニケーションがとりづらい、ハラスメントが横行しているなどの問題がある企業も、離職率が高くなります。
また、職場の人間関係が悪いと、社員が問題を一人で抱え込み、すぐに対処できない場合があるため注意が必要です。
労働環境・労働時間が過酷
過酷な労働環境・労働時間も、離職率が高まる理由の1つです。
残業や休日出勤が多い、体力・精神面での負担が大きい、ストレスの大きな環境で仕事をしなくてはならないといったケースが該当します。
将来に不安がある
企業や業界の将来に不安がある場合も、社員が離職を決断することがあります。
企業外は市場や業界の動向です。そして企業内は、経営方針や社風、経営者や上司の考え方・振る舞いなどです。
将来への不安を完全に払拭するのは難しいですが、それでも社員が希望を持てるような取り組みが求められます。
参考:離職率が高くなる代表的な7つの原因と対処法を解説 | 人材派遣・人材紹介のマンパワーグループ
離職率が高いことのデメリット
離職率が高いことで、企業に複数のデメリットが生じます。
代表的なデメリットは、コストが無駄になることです。社員が離職した場合、その社員にかかった採用コストや教育コストを回収できなくなります。
具体的な金額は採用方法によって異なりますが、1人離職するだけでも企業にとって大きな損失になることは間違いありません。当然、その損失は離職率が高いほど大きくなります。
また離職率が平均以上の企業は、求職者から「ブラック企業」と認識されやすいです。一度ブラック企業と認識されてしまうと、「長時間労働」「休日出勤」「サービス残業」「パワハラ」といったマイナスのイメージが膨らんでしまいます。一度このようなイメージがついてしまうと、それを払拭するのは簡単ではありません。
その結果、優秀な人材を確保しづらくなり、労働環境が悪化するなど、ますます離職率が高くなる悪循環に陥ります。
参考:離職率が高くなる要因とは? 現状と企業がとるべき対策 | コラム | 人材管理・タレントマネジメントシステムのスキルナビ
離職率を下げるためには?
離職率を下げるための代表的な取り組みとしては、以下の5つが挙げられます。
- 採用前に情報発信を行う
- 教育・研修システムの見直し
- 人事評価制度・給与体系の見直し
- 社内コミュニケーションの改善
- 労働環境の改善
採用前に情報発信を行う
採用後のミスマッチを防ぐため、採用前に企業に関する情報を発信することが大切です。
既述のとおり、社員の離職につながる要因は複数ありますが、離職者が入社前後に感じるギャップは、企業に関する情報不足が原因で生じる可能性があります。離職者のなかには、事前に十分な情報を持っていれば入社に至らなかった人もいるかもしれません。
そのため、会社説明会やWeb媒体での情報発信はできるだけ企業の情報が伝わるよう工夫しましょう。インターンシップやOB訪問なども、社内の雰囲気や働く社員の声を伝えるよい機会です。
また、自社の情報をできるだけ魅力的に発信し、優秀な人材の獲得を目指すことはもちろん大切ですが、発信する内容が偏ると入社後のミスマッチにつながるため注意しましょう。
人事評価制度・給与体系の見直し
人事評価制度や給与体系が原因で離職率が高い場合、それらを見直すことも必要です。
人事評価制度や給与体系といった社内制度に問題があると、社員はやりがいや将来への希望を持って働くことができなくなります。社員が納得感を持って長く働けるよう、必要に応じて制度の見直しを行いましょう。
社内コミュニケーションの改善
人間関係が原因で離職率が高い場合は、社内コミュニケーションの改善が必要です。例えば、社員同士が気軽に交流できる喫茶スペースをつくるなどの工夫は、コミュニケーションの活性化に有効です。
また、「1on1ミーティング」を活用し、上司と部下の信頼関係を強化するのも1つです。上司と部下の間に強い信頼関係ができれば、部下に悩みが生じた際に相談・解決しやすくなります。
なお、1on1ミーティングの実施時は上司の傾聴スキルが求められます。必要に応じて考課者研修を行うのもおすすめです。
労働環境の改善
残業や休日出勤が多いなど、ワーク・ライフ・バランスの実現が難しい場合も社員が離職しやすくなります。この場合、離職の原因となっている労働環境の改善が求められます。問題点を洗い出し、対策を講じましょう。
もちろん、業界や企業によってはある程度過酷な労働環境にならざるを得ないケースもあります。その場合、社員を採用する前の段階で実情を伝え、納得して働けるかどうか十分に確認するべきです。
教育・研修システムの見直し
教育・研修システムが十分に整っているか、改善の余地はないかも見直しが必要です。
教育・研修は、入社時だけ行うものではありません。新人教育を受けた社員がその後も活躍できるよう、フォローアップ研修の開催も検討してください。
その際、「今後どのように成長していきたいか」など個人の目標を見直す機会をつくるものよいでしょう。入社後の自分の成長を振り返り、新たな目標を立てることで離職の可能性を抑えることができます。
離職率改善に成功した企業の事例
離職率の改善に成功した企業の事例を紹介します。
サイボウズ株式会社
サイボウズは創業以来、毎年15~20%前後の離職率で推移していました。
しかし、2005年には28%まで上昇してしまいました。青野社長によると、「オフィスの雰囲気も正直良くない状況」だったそうです。そのため、「どんな人でも気持ちよく働ける環境を作っていこう」とあらゆる人事制度整えました。
具体的には、選択型人事制度(ライフスタイルの変化に合わせて働き方を選択できる制度)や社内部活動などです。また、社長がトップダウンで決めるのではなく、ボトムアップ型で社員と一緒になって整備しました。
その結果、2012年には離職率が4%下がりました。
参考:サイボウズ青野社長に聞く、離職率を28%から4%に下げる方法。 | キャリアハック
株式会社鳥貴族
鳥貴族の離職率は飲食業界の平均を大きく下回っています。
- 各部門の連携
- 選考会議の導入
- 組織の壁をなくしフランクな関係作り
- 無断残業NG
積極的な利益還元 これらの対策を講じたことで、社員の働きやすさや労働環境の整備に成功しました。鳥貴族人財部 採用教育課マネージャーの久保山豪さんは「鳥貴族で働く私たちみんなで、正しい会社をつくっていきたい」と述べています。
まとめ
離職率は、一定の期間内に離職した人の割合を表す指標です。
離職率は業界・企業によって大きく異なりますが、離職率が高いことで企業にとって多くのデメリットがあります。
また、離職率を下げる取り組みによって、業務効率化や業績向上につながる可能性もあります。
本記事を参考に、ぜひ離職率を下げる取り組みを行ってみてください。
ミキワメは、候補者が活躍できる人材かどうかを500円で見極める適性検査です。
社員分析もできる30日間無料トライアルを実施中。まずお気軽にお問い合わせください。