要員計画を立てることは、企業の成長と成功において避けて通れない課題です。要員計画を通じて必要な人材を適切なタイミングで確保し、適材適所に配置することで、事業戦略の実現を支援します。しかし、多くの企業が要員計画の立て方に苦慮しているのが現実です。
本記事では、要員計画の基本的な概念や重要性、具体的な立て方、運用方法までを詳しく解説します。効果的な要員計画の立案と運用に役立つ知識を得たい方は、ぜひ最後までお読みください。
要員計画とは
要員計画とは、企業が事業目標を達成するために必要な人材を、適切なタイミングで確保するための計画です。以下のプロセスを経て作成されます。
- 事業目標やプロジェクトの規模にもとづいて、必要な人員数を算出する
- 各ポジションに求められるスキルセットを明確化する
- 人材の配置場所を決定する
- 採用と育成の計画を策定する
要員計画は、単なる採用計画ではありません。企業の戦略的目標に沿って、必要な人材を適切な部署に配置し、組織全体のパフォーマンスを最大化することを目的としています。
効果的な要員計画を立てるためには、人事部門と事業部門が密接に連携し、継続的にコミュニケーションをとることが不可欠です。コミュニケーションの円滑化により、事業ニーズに合った人材の確保と、社員のキャリア開発を両立させることができます。
要員計画の作成時期
要員計画の作成は、以下のようなタイミングで行われます。
タイミング | 目的 |
---|---|
年度初め | 新年度の事業計画に合わせて、必要な人員数や配置を検討・決定する |
中期経営計画の策定時 | 3〜5年先を見据えた中期的な要員計画を立てる |
大規模プロジェクトの開始前 | プロジェクトの規模や期間に応じて、専門スキルを持つ人材の確保や配置転換を行う |
市場環境の変化時 | 事業戦略の変更や新規事業の立ち上げなど、外部環境の変化に対応するために要員計画の見直しが必要となる |
このように、要員計画は定期的に作成・更新されるだけではなく、企業内外の状況変化に応じて柔軟に対応していくことが求められます。
適切なタイミングで要員計画を見直し、最適な人員配置を行うことが、企業の成長と目標達成に向けて重要となるのです。
人員計画や採用計画との違い
人員計画、採用計画、要員計画の違いは以下のとおりです。
人員計画 | 採用計画 | 要員計画 | |
---|---|---|---|
対象 | 主に既存従業員 | 新規採用者 | 既存従業員と新規採用者 |
目的 | 適材適所の配置と能力開発 | 必要な人材の外部からの獲得 | 中長期的な人材の確保と活用 |
時間軸 | 短期・中期的(1年以内) | 短期的(即時~数か月) | 中長期的(数年単位) |
範囲 | 部門別・個別的 | 職種別・個別的 | 全社的・総合的 |
人員計画とは、既存の従業員を対象とし、適材適所の配置や能力開発に重点を置いた計画です。主に短期・中期的な視点で、部門別・個別的に立案されます。
採用計画とは、必要な人材を外部から獲得することに焦点を当てた計画です。新規採用者を対象とし、即時から数か月先までの短期的な時間軸で、職種別・個別的に立案されます。
要員計画は、人員計画と採用計画を統合した上位概念です。既存従業員と新規採用者の両方を対象とし、中長期的な視点から人材の確保と活用を総合的に設計するプロセスといえます。
要員計画を立てる目的
要員計画を立てる主な目的は、以下の3つです。
- 事業戦略を実現する
- 適材適所の人員配置を行う
- 中長期的な人材育成
それぞれ詳しく見ていきましょう。
事業戦略を実現する
事業戦略を実現するには、企業の目標達成に必要な人材を適切なタイミングで確保することが重要です。要員計画を通じて、必要なスキルや経験を持つ人材を適切に配置することで、事業戦略の円滑な実行が可能となります。
コスト管理の面では、適切な要員計画によって人件費などの労務コストを適切にコントロールできます。効率的な組織運営のためには、過剰な人員を抱えないことが大切です。
適材適所の人員配置を行う
適材適所への人員配置は、要員計画において重要な目的の一つです。従業員一人ひとりのスキルや経験を考慮し、能力を最大限に発揮できる役割や部門に配置すれば、業務効率が向上します。
また、従業員が自分の強みを活かせる役割に就けば、やりがいを感じながら働けるため、モチベーションの向上にもつながるでしょう。これにより、従業員の定着率向上や生産性の向上が実現します。
要員計画は、従業員の長期的なキャリア開発にも貢献します。自分の能力を発揮し、成長を実感できる環境では、従業員の組織に対するロイヤルティが高まるため、離職率の低下が期待できます。
このように、適材適所への人員配置は、企業と従業員の両方にとってメリットのある施策です。従業員の能力を最大限に引き出し、組織の目標達成に貢献できる環境を整えることが、要員計画の大きな目的の一つといえるでしょう。
中長期的な人材育成を行う
中長期的な人材育成を行うことも、要員計画を立てる重要な目的です。将来の経営目標達成に必要な人材を計画的に育成することで、企業は長期的な競争力を確保できます。
人材育成計画を立てる際は、以下の点に留意しましょう。
- 現在のスキルギャップと将来必要となるスキルの特定
- 戦略的な研修プログラムや能力開発の機会の設計
- 社員のキャリア開発のサポート
- モチベーションとエンゲージメントの向上策の組み込み
長期的視点に立った人材育成は、以下のようなメリットをもたらします。
- イノベーションと継続的な改善の促進
- 変化する市場ニーズへの適応力の向上
- 人材の定着率アップと採用コストの削減
- 優秀な人材の獲得と維持
要員計画において中長期的な人材育成に注力することは、企業の持続的成長と競争力強化に直結します。将来を見据えた人材育成こそが、激動のビジネス環境を乗り越えるためのカギなのです。
要員計画を立てる方法
要員計画を立てる方法は以下の3つです。
- トップダウン方式
- ボトムアップ方式
- ハイブリッド方式
それぞれ詳しく見ていきましょう。
トップダウン方式
トップダウン方式は、経営層主導で要員計画を立てるアプローチです。事業計画に基づいて、必要な人員数や配置を決定します。
例えば、売上目標が年間1億円、1人当たりの売上貢献額(労働生産性)が500万円の場合、以下の計算式で必要な人員数を算出します。
必要要員数 = 売上目標 ÷ 1人当たりの売上貢献額 = 1億円 ÷ 500万円 = 20人 |
トップダウン方式のメリットは以下のとおりです。
- 会社の全体方針に沿った要員計画を立てやすい
- 経営戦略と人事戦略の整合性を取りやすい
- 人件費などのコスト管理がしやすい
一方で、トップダウン方式には以下のようなデメリットもあります。
- 現場の詳細なニーズや実情が反映されにくい
- 現場の意見が反映されにくいため、モチベーション低下につながる
- 予期せぬ変化への対応が遅れるおそれがある
トップダウン方式では、経営層の強いリーダーシップのもと、会社全体の方向性に沿った要員計画を効率的に立てられます。その反面、現場の声に耳を傾けることが難しい点がデメリットです。状況に応じて、ボトムアップ方式とのバランスを取ることが重要となります。
ボトムアップ方式
ボトムアップ方式は、現場の管理職やチームメンバーが中心となって要員計画を立案するアプローチです。実際の業務内容や必要な人材に基づいて、必要な人員数や配置を決定します。
例えば、総タスク量が月に500時間あり、1人当たりの対応可能工数が160時間だった場合は以下のように計算します。
必要要員数 = 総タスク量 ÷ 1人当たりの対応可能工数 = 500 ÷ 160 = 3.125(4人配置) |
ボトムアップ方式のメリットは以下のとおりです。
- 現場の実情やニーズを反映した要員計画を立てられる
- 現場の意見を取り入れることで、従業員のモチベーションを高められる
- 予期せぬ変化にも柔軟に対応しやすい
一方で、ボトムアップ方式には以下のデメリットがあります。
- 部門ごとに最適化された要員計画になりがちで、全体最適が難しい
- 現場の要望が予算や経営戦略と合致しない場合がある
- 調整に時間がかかり、意思決定が遅れる可能性がある
ボトムアップ方式は、現場の声を反映した要員計画を立てられる点が強みですが、全社的な視点での最適化が課題となります。トップダウン方式とのバランスを取りながら、現場と経営層の対話を重ねて、実行可能な要員計画を作成することが重要です。
ハイブリッド方式
ハイブリッド方式は、トップダウンとボトムアップの両方のアプローチを組み合わせた要員計画の立て方です。経営層の方針と現場のニーズをバランス良く反映させることができるため、多くの企業で採用されています。
ハイブリッド方式のメリットは以下のとおりです。
- 会社全体の方向性と現場の実情の両方を考慮した要員計画が立てられる
- 経営層と現場の意思疎通が促進され、協力体制が築きやすい
- 変化に対して柔軟に対応できる
一方で、ハイブリッド方式には以下のデメリットもあります。
- 意見の調整に時間がかかり、意思決定が遅れやすい
- トップダウンとボトムアップのバランスを取るのが難しい場合がある
- 両方のアプローチの短所が現れるおそれがある
ハイブリッド方式は、経営層と現場の両方の視点を取り入れることで、バランスの取れた要員計画を立案できます。ただし、両者の意見を調整するのに時間がかかったり、バランスを取るのが難しかったりする点には注意が必要です。
状況に応じて、トップダウンとボトムアップのバランスを適切に調整しましょう。
要員計画を効果的に運用するポイント
要員計画を効果的に運用するポイントは、以下の3つです。
- 定期的なモニタリングを行う
- 計画と実績のギャップを調整する
- 計画の変更を柔軟に行う
それぞれ詳しく見ていきましょう。
定期的なモニタリングを行う
要員計画の進捗状況を定期的にチェックすることが重要です。モニタリングには以下のメリットがあります。
- 問題の早期発見と迅速な対応ができる
- 計画と実績の乖離を最小限に抑える
- 必要に応じた計画の修正や調整ができる
モニタリングの頻度は、組織の規模や状況に応じて決定しますが、少なくとも月次や四半期ごとに行うことをおすすめします。
進捗状況を適切に管理し、要員計画を効果的に運用するために、定期的なモニタリングを習慣づけましょう。
計画と実績のギャップを調整する
計画と実績のギャップを定期的にチェックすることが重要です。これにより、問題をいち早く発見し、迅速に対処できます。計画どおりに進んでいるかを確認するために、以下のポイントに注意しましょう。
- 定期的な進捗状況の確認を習慣づける
- ギャップが生じている場合、原因を特定する
- 必要に応じて計画を修正し、リソースを再配分する
- チーム内で情報を共有し、全員が最新の状況を把握できるようにする
計画と実績のギャップを最小限に抑えることで、プロジェクトを円滑に進められます。定期的なモニタリングと迅速な対応が、効果的な要員計画運用のカギとなるでしょう。
計画の変更を柔軟に行う
計画の変更を柔軟に行うことが、要員計画を効果的に運用するうえで重要なポイントです。以下の点に注意しましょう。
- 経営環境や市場ニーズの変化を常にモニタリングし、計画に反映させる
- 新たな課題やチャンスに迅速に対応できるよう、計画修正のプロセスを確立する
- 関連部署との連携を密にし、情報共有と意思決定のスピードを上げる
- 計画変更による影響を適切に評価し、必要な対策を講じる
変化の激しい現代のビジネス環境では、当初の計画どおりに物事が進むことは稀です。臨機応変に計画を修正し、最適な要員配置を実現していくことが求められます。
要員計画を立てる際の注意点
要員計画を立てる際の注意点は、3つあります。
- 経営環境の変化へ対応できるように設計する
- 部門間での整合性をもたせる
- 従業員のキャリアプランとの調整をはかる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
経営環境の変化へ対応できるように設計する
経営環境の変化へ対応できるように設計するには、以下の点に留意しましょう。
- 市場や経済状況の変化を予測し、それに基づいて計画を立てる
- 必要に応じて柔軟に計画を修正できるようにしておく
- さまざまなシナリオを想定し、それぞれに対応できる計画を用意する
- 定期的に計画の見直しを行い、変化に合わせて更新する
急激な変化が起こりうる現代の経営環境においては、柔軟性と適応力がカギとなります。しっかりとした予測と準備を行いつつ、状況に応じて臨機応変に対応できる体制を整えておくことが重要です。
部門間での整合性をもたせる
各部門の要員計画を立案する際は、全社的な視点から見て整合性がとれているかを確認することが重要です。具体的には、以下の点に注意しましょう。
- 全社の中長期戦略や事業計画と整合しているか
- 他部門の要員計画と矛盾していないか
- 全社の予算や人員枠の制約内に収まっているか
- 全社最適の観点から効率的な人員配置となっているか
部門間の連携を密にし、情報共有を図りながら、会社全体としての最適な要員計画を追求していくことが求められます。
従業員のキャリアプランとの調整をはかる
従業員のキャリアプランを要員計画に反映させることが重要です。具体的には以下の点に注意しましょう。
- 従業員の希望や目標をヒアリングし、計画に組み込む
- キャリアパスの選択肢を提示し、適材適所の配置を検討する
- 教育研修の機会を設け、スキルアップを支援する
- 定期的な面談を通じ、キャリア開発の進捗を確認する
企業の成長と個人の成長を両立させることで、従業員のモチベーションを維持しつつ、長期的な組織力の向上につなげましょう。
要員計画は短期的・長期的どちらにおいても重要
人材は企業の重要な資産の一つです。適切な要員計画があってこそ、チームの力を最大限に引き出し、ビジネスを成長させることができます。
特に今、企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化するなかで、戦略的な要員計画の重要性はますます高まっています。
とはいえ、実際の採用現場では「この人は本当にうちの会社で活躍できるのか?」「部署によって採用基準がバラバラになっている」という悩みを抱えている方もいるでしょう。
そこでおすすめしたいのが「ミキワメ適性検査」です。ミキワメ適性検査では、わずか10分の検査で自社に最適な人材を見極めることができます。
現在活躍している社員の特性を分析し、その結果をもとに採用基準を自動で作成。これにより「なんとなく」の採用を「データに基づいた」採用に変えることができます。
また、候補者と各部署との相性の可視化により、適材適所の人材配置も実現できます。ミキワメ適性検査について詳しく知りたい方は、以下からお問い合わせください。
従業員のメンタル状態の定期的な可視化・個々の性格に合わせたアドバイス提供を通じ、離職・休職を防ぐパルスサーベイ。30日間無料トライアルの詳細は下記から。