- エンゲージメントサーベイの結果と分析方法
- エンゲージメントサーベイの分析を効率化するツール
- エンゲージメントサーベイの活用事例3選
「エンゲージメントサーベイの調査結果はどのように分析するのか」
「分析したデータを活用する具体的な方法がわからない」
このように頭を悩ませている経営者や、人事担当者の方もいるのではないでしょうか。
組織改革に向けた施策を検討するときは、サーベイの結果を多角的に分析し、部署や役職など属性ごとに課題を明確にする必要があります。
本記事では、エンゲージメントサーベイにおける4つの分析方法と、その結果を活用する具体的な手法を解説します。
企業の取り組み事例も紹介していますので、自社で調査結果のデータ分析・活用するときの参考にしてみてください。
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エンゲージメントサーベイの全体的な流れ(実施〜分析〜活用)
まずは、エンゲージメントサーベイの全体的な流れを確認しておきましょう。
本記事では、下記のステップ「6・8」について詳しく解説します。
ステップ | 内容 | |
---|---|---|
1 | 目的設定と計画 | サーベイの目的を明確にし、調査範囲を設定する |
2 | サーベイツールの選定 | 機能面やサポート面を確認し、調査したい項目が測定できるツールを導入する |
3 | 調査内容の設計 | 目的に沿った質問項目・内容を検討し、実施時期や頻度を計画する |
4 | サーベイ実施 | 従業員に対してサーベイの目的・重要性を説明し、調査を実施する |
5 | データ収集と集計 | 実施期間が経過したら回答を収集し、ツールで結果の整理とデータの一元化を行う |
6 | データ分析 | 属性ごとの傾向や、過去の結果からの変化を分析する |
7 | 結果報告・フィードバック | 分析結果を経営層・関連部署に報告し、従業員へのフィードバックを行う |
8 | 施策の検討・立案 | 分析結果にもとづいて、具体的なアクションプランを決める |
9 | 施策の評価・改善 | 施策の効果を評価し、必要に応じて修正する |
エンゲージメントサーベイを組織改善に役立てるためには、調査目的にもとづいた計画と実施、結果の分析が不可欠です。
以下の記事では、エンゲージメントサーベイを実施する目的と、活用による効果を解説しています。活用時の注意点も紹介していますので、導入時の参考にしてみてください。
エンゲージメントサーベイの結果を分析する4つの方法
エンゲージメントサーベイの結果を分析するときは、次の4つの方法を活用してみてください。
上記いずれかの方法だけで分析するのではなく、複数の方法を掛け合わせることで、多角的な視点で組織の課題が見えてきます。
以下より、各分析方法とそれぞれの具体例を解説していきます。
属性ごと(部署・役職・年齢など)の傾向を把握する
エンゲージメントサーベイの結果を分析するときは、部署・役職・年齢などの属性に分類し、その特徴や傾向を把握します。
属性ごとに分析することで、組織全体の課題だけではなく、特定の属性における問題点や強みが明確になります。
エンゲージメントスコアをもとに分析した具体例は、以下のとおりです。
属性 | 分類 | スコア (判定) | 傾向 | 対策 |
---|---|---|---|---|
部署 | 営業部 | 65(C) | 営業部では、営業成績の評価に対する不公平さを感じている可能性あり | 誰でも同じ評価ができる明確な基準を設ける |
人事部 | 87(A) | |||
経理部 | 76(B) | |||
役職 | 一般社員 | 78(B) | 中間管理職は、経営目標に対する強い責任を感じ、ストレスが蓄積している可能性あり | 人員を補強して責任の分散を図る |
中間管理職 | 68(C) | |||
上級管理職 | 85(B) |
上記のように、属性を細かく分類して調査結果を分析することで、スコアの傾向がより明確になり、対象を絞って施策が検討できます。
過去に実施したサーベイの結果と比較する
一度のサーベイだけでは、調査時点での組織状態しか把握できないため、継続的に調査を行い、過去のデータと比較することが重要です。
従業員のエンゲージメントスコアの変化や、施策による効果検証を時系列で確認していきましょう。
たとえば、以下の表のように各項目のスコアが変化していたケースです。
項目 | 前年度スコア (判定) | 今年度スコア (判定) | スコア変化率 |
---|---|---|---|
エンゲージメント(総合) | 70(C) | 78(B) | +11.4% |
職場環境 | 65(C) | 72(C) | +10.8% |
キャリア開発 | 60(D) | 70(C) | +16.7% |
待遇・報酬 | 61(D) | 65(C) | +6.6% |
全体的なスコアは改善傾向ですが、待遇・報酬の面では変化率が低くなっているため、労働条件や報酬制度の見直しが必要だと判断できます。
過去データと比較する分析方法は、PDCAを回しながら継続的に改善活動を行っていくための重要な手法です。
他のデータとの相関関係を分析する
サーベイの結果を他のデータと関連付けて分析することで、どの要素が組織のパフォーマンスや従業員の行動に影響を与えているかがわかります。
たとえば、部署ごとのエンゲージメントスコアと離職率の相関関係を調べるため、以下のようなデータを取得したとします。
部署 | エンゲージメントスコア(判定) | 離職率 |
---|---|---|
営業部 | 72(C) | 15% |
人事部 | 78(C) | 8% |
経理部 | 69(D) | 20% |
スコアが高い部署ほど離職率が低くなっており、両者のデータ間には「負の相関(※)」があることを示しています。
したがって、エンゲージメントの向上施策(勤務制度の充実など)によってスコアが上昇すれば、離職率の低下が見込めるという相関関係がわかるのです。
(※)「Aが高いときBは低い」「Aが低いときBは高い」という関係。一方で「Aが高いときBも高い」「Aが低いときBも低い」という関係は正の相関と呼ぶ。
自由記述の回答データから重要度を評価する
エンゲージメントサーベイでは、従業員が自由に回答できる質問項目を設けているケースがあります。
選択式の設問では把握しきれない部分を、自由記述の回答データから抽出し分析することで、設問カテゴリーごとの重要度の評価が可能です。
たとえば、カテゴリーごとに「どのようなことを改善してほしいですか?」という自由記述欄を設けて、以下のように回答率を調べたとします。
カテゴリー | 自由記述欄の回答率 | ||
A事業所 | B事業所 | C事業所 | |
ワークライフバランス | 25% | 31% | 29% |
職場環境 | 48% | 51% | 44% |
キャリア開発 | 10% | 15% | 9% |
待遇・報酬 | 17% | 21% | 18% |
「職場環境」のカテゴリーでの回答率が高く、従業員も強く改善を望んでいることが予測できます。
そのため、ワークライフバランスを充実させる施策よりも、職場環境の改善に向けた施策を優先的に実施すると判断できるのです。
参考:組織サーベイで自由記述の質問を作る際のポイント|ビジネスリサーチラボ
エンゲージメントサーベイの分析を効率化するツール
エンゲージメントサーベイの分析を効率的に行うには、作業工数を削減しつつ高精度の分析ができる専用ツールの活用が不可欠です。
以下の3つのツールは、シンプルな操作で組織状態を多角的に分析できるため「高度な知識は持っていない」という方にもおすすめです。
ツール | 特徴 | 費用(税込) |
---|---|---|
ミキワメ ウェルビーイングサーベイ | ・ウェルビーイング(幸福度)を数値化し、部署ごとの傾向を分析できる ・ケアが必要な従業員を可視化し、性格に応じたサポートができる | 要問い合わせ ※企業規模によって異なる |
カオナビ | ・人材データベースと照合でき、比較や分析がしやすい ・コンディションデータを長期保存して、傾向や推移が分析できる | 要問い合わせ ※利用人数によって異なる |
Wevox | ・他部署と比較しながら多角的な切り口で分析できる ・各現場での職場活性化のポイントを把握できる | ・ベーシック:月額330円〜/人 ・スタンダードプラン:月額660円〜/人 |
上記以外にも、サーベイの集計・分析を効率化できる多種多様なツールがあります。以下の記事では10種類のツールを徹底比較していますので、検討時の参考にしてみてください。
エンゲージメントサーベイにおける分析のポイント
エンゲージメントサーベイの結果を分析するときは、次の4つのポイントを押さえておきましょう。
スコアが低い項目だけに着目するのでなく、高いスコアの傾向から「他部署でも活かせるところはないか」と分析することが重要です。
以下より、各ポイントを解説していきます。
階層ごとに構造化して要因分析する
サーベイの結果は、階層ごと(回答結果のカテゴリー)に分類してデータを構造化し、各階層における課題の要因分析が重要です。
構造化によって、個人の課題やその要因が把握できるだけではなく、その他の部門や組織全体との相関(影響度合い)も分析できます。
具体例として、以下のようなステップで分析を行いましょう。
ステップ | 具体例 | |
---|---|---|
1 | 回答データを分類し構造化 | a:仕事への熱意や活力(スコア:81) b:企業理念への共感(スコア:77) c:上司と部下の信頼関係(スコア:65) |
2 | 分析ポイントの抽出・決定 | スコアが低い「c」を分析ポイントに決定 |
3 | 課題の特定・要因の分析 | ・上司は的確な指示を出し、サポートしているか ・不安や悩みを相談しやすい職場環境か ・上司は部下の業績を公平に評価しているか |
また、データ分析にAIを活用することで、組織のあらゆるデータを効率よく分析できます。
「ミキワメAI」の開発に至った経緯は、以下の記事で詳しく紹介していますので、ご興味のある方は確認してみてください。
エンゲージメントの「高い・低い」の両面を考慮する
サーベイの結果を分析するときは、低いエンゲージメントに目を向けて改善するだけではなく、高いエンゲージメントにも着目しましょう。
エンゲージメントが高い属性(部署・年齢層など)が把握できれば、その部署の職場環境や施策を良好事例として社内で共有できます。
具体的には、以下のようにエンゲージメントが「高い集団」と「低い集団」で分けて、それぞれ必要な施策を検討していきます。
エンゲージメントが低い部署 | エンゲージメントが高い部署 |
---|---|
従業員が働きやすいように、職場環境や業務プロセスの見直しをする | キャリアアップ研修など、成長の機会を与える |
上司からの声かけなど、部下へのサポートを強化する | 職場内のコミュニケーションの頻度や質を維持する |
エンゲージメントの向上による効果は、組織への愛着が高まって離職率が低下するなどさまざまです。その他のメリットや向上施策について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
「組織・仕事」それぞれに対するエンゲージメントを分析する
そもそもエンゲージメントには、組織への貢献意欲を示す「従業員エンゲージメント」と、仕事への熱意・活力を示す「ワークエンゲージメント」があります。
両者のエンゲージメントを区別し、それぞれの観点から現状・課題を分析することで、組織運営と職場環境の両軸での施策が検討できます。
具体例は以下のとおりです。
組織へのエンゲージメント | 仕事へのエンゲージメント | |
---|---|---|
課題 | 経営ビジョンに対する理解や共感が得られていない | 業務がマンネリ化していることで、やりがいを感じにくくなっている |
施策 | 社内ポータルサイトを活用して、定期的に経営の進捗状況を共有する | 個々の能力が活かせる業務を担当させて、モチベーションを高める |
「従業員エンゲージメント」と「ワークエンゲージメント」の違いについては、以下の記事でも詳しく解説しています。より理解を深めたい方は確認してみてください。
分析がしやすい質問設計(質問数・項目)にしておく
サーベイを実施する前に、適切な質問設計(質問数や質問項目など)をしておくことで、収集したデータの解釈や分析がスムーズに行えます。
設計内容ごとの具体例は、以下のとおりです。
設計内容 | 具体例 |
---|---|
質問数 | 回答する従業員の負担を考え、1回の調査を約15問にする |
頻度 | 毎月サーベイを配信して、従業員の状態をタイムリーに把握する |
質問項目 | 職場での働きやすさやコミュニケーションに関する質問に限定して、職場環境の改善に取り組む |
自由記述欄 | 各項目ごとに自由記述の質問を設けて、従業員の本音部分を聞き出す |
設計時は、サーベイの目的を明確にしたうえで、自社に合った運用方法を決定し「実施〜分析〜活用」のサイクルを回せるようにしておきましょう。
以下の記事では、エンゲージメントサーベイの質問項目や質問例を詳しく解説しています。質問設計を行うときの参考にしてみてください。
エンゲージメントサーベイの分析結果を活用する方法とは?
ここからは、エンゲージメントサーベイの分析結果を活用する方法について、3つの取り組みを解説していきます。
上記の具体的な方法やアイデアを参考にして、自社でも活用できそうな点がないか検討してみてください。
経営層と情報共有して組織課題を検討する
サーベイの分析結果は経営層へ共有し、組織全体が一丸となって課題を検討することで、よりエンゲージメントを高められる施策の立案が可能です。
たとえば「この会社で働き続けてもスキルアップが期待できない」と、自分の成長機会が少ないといったネガティブな回答があったとします。
この結果が経営層に共有されれば、部門間の垣根を越えた交流や人事異動、他社・他業種への派遣など、人事部門だけでは実行できない施策を取り入れられます。
ただし、職場環境を改善するときは、経営層の考えに加えて、現場で働いている従業員のリアルな声も取り入れて施策を検討しましょう。
エンゲージメントを向上させる人事施策を実行する
サーベイの結果を活用し、エンゲージメントを向上させる人事施策によって、組織の持続的な成長とパフォーマンス向上につながります。
具体例として、次のような施策が挙げられます。
- 現代のビジネスに合わせた研修・教育の実施
- インセンティブ制度(給与以外の報酬制度)の整備
- ライフスタイルに合わせて働けるような労働条件への見直し
- 兼業・副業を許可する制度の構築
人事施策を行ったとしても、エンゲージメントはすぐに高まらないため、サーベイを活用しながら施策後の効果をモニタリングしていきましょう。
各部署の良好事例を社内で共有する
サーベイの結果からスコアの高い部署を特定することで、その部署の取り組みを良好事例として社内で共有できます。
たとえば、業績評価に対する満足度が高い部署では、各メンバーが具体的かつ達成可能な目標を明確に設定していたとします。
しかし別の部署では、上司からの一方的な指示で業務を進め、メンバー個々の目標が定まっておらず、評価に対する不満が強い傾向です。
前者の取り組みが、人事評価の満足度向上に影響していると分析できれば、後者の部署でも同じような施策を行って、業務プロセスを見直しできます。
上記のように良好事例を他部署へ水平展開することで、業務の進め方や仕組み、考え方を社内に広められ、全社的な改善を可能とします。
エンゲージメントサーベイの活用事例3選
エンゲージメントサーベイの結果を活用し、組織改革を行っている企業の取り組みを3社ご紹介します。
各事例の取り組みを参考にして、自社の課題に応じたエンゲージメントの向上施策を検討してみてください。
事例1:「働き方改革」の施策の効果検証を継続的に実施
伊藤忠商事株式会社では、従業員エンゲージメントを継続して高めていくことが、企業価値の向上につながると考え、サーベイを積極的に活用しています。
働き方改革の一環として朝型勤務制度を導入し、従業員に対して「夜は早く帰り、朝早く出社して効率的に働く」という意識の定着を図りました。
調査結果から、多様な働き方へのニーズが高まってきたため、従来の朝型勤務に「朝型フレックスタイム」や「在宅勤務」の制度を追加導入しました。
継続的に働き方改革を行ったことで、2022年の労働生産性が2020年の基準値から5.2倍にまで上昇し、目標としている「企業価値の向上」につながっています。
事例2:グローバルで競争・挑戦する企業風土への変革に活用
株式会社荏原製作所では、全世界の荏原グループの従業員を対象とした「グローバルエンゲージメントサーベイ」を実施しています。
同社がサーベイを行う目的は、グローバルな視野で競争・挑戦する企業風土を構築し、各組織ごとの課題改善に向けた取り組みを行っていくためです。
その取り組みのなかで、海外拠点におけるキーポジションへの後継者計画の整備や、早期に活躍するための人材育成に注力しています。
また、エンゲージメントスコアの経年比較を参考に改善している点も、同社がサーベイを有効活用できている要因と言えます。
参考:人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書(P19〜21)|経済産業省
事例3:要素別に改善アクションを整理してプロジェクトを発足
未知株式会社では「個人へのアプローチに注力したい」という考えのもと、サーベイを活用しながら社員一人ひとりのスコア変化を把握しています。
サーベイ導入当初は、ケアが必要な社員を把握し、上長に対して「少し悩んでるかもしれないから面談してほしい」と働きかけ、対話する場を設けていました。
現在はサーベイの活用範囲を広げて、次のようなエンゲージメントに関わる要因ごとに改善アクションを整理し、各プロジェクトを進行中です。
- 会社への愛着
- 業務負担
- 人間関係
具体的には、他の社員へのポジティブ発信を促すため、その人の「好きなところや助けられたこと」を紙に書いて渡す、といった取り組みをしています。
サーベイの活用によって、社員同士で声を掛け合うようになり、コミュニケーションの機会が増えたことで、働きやすい職場環境が整いました。
事例:サーベイの結果から改善アクションを実施し、エンゲージメントが劇的に改善|未知株式会社
組織改善に向けてエンゲージメントサーベイの分析結果を活用しよう
今回の記事では、エンゲージメントサーベイの分析方法と、分析結果の活用方法について解説しました。
調査データを有効活用するために、4つの分析方法を再確認しておきましょう。
サーベイで得られた結果は、単なる収集データではなく、組織改善の足がかりとなる貴重な情報源です。
従業員の声を的確に捉えて組織改善につなげるために、サーベイの実施と調査結果の分析を継続していきましょう。
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