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エンゲージメントと業績の関係をデータで解説|企業が取り組むべき施策も

エンゲージメント_業績_関係_データで解説_取り組むべき施策
この記事でわかること
  • エンゲージメントと業績の関係性【データで解説】
  • 業績にも間接的に影響あり!エンゲージメント向上のメリット
  • エンゲージメントを高める方法・企業の成功事例

経営立て直しを図る企業のなかには、「業績が落ち込む原因として、エンゲージメント低下が関係しているのだろうか」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

アメリカの調査会社であるギャラップ社の調査によると、エンゲージメントの高い企業は、低い企業よりも売上高が18%高いことがわかっています。

人材不足や離職率の高さが課題となる昨今、企業の持続的な成長には、会社への共感・貢献意欲を示す「エンゲージメント」の向上が欠かせません。

本記事では、エンゲージメントが業績に与える影響を、調査機関のデータにもとづいて詳しく解説します。

業績アップにつながるエンゲージメント向上施策も紹介しますので、「自社でなにを取り入れ、どう改善していくべきか」を検討してみましょう。

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エンゲージメントと業績に相関関係はある?【生産性に影響あり】

エンゲージメント_業績_相関関係_生産性_影響

エンゲージメントが高い職場は、従業員一人ひとりが組織として一体感を持ちながら仕事に取り組むため、生産性が高く、業績にもいい影響を与えると考えられます。

組織分析・研究を行うギャラップ社では、職場のエンゲージメントと組織の成果に関する調査レポートを公開しており、そのなかで業績(売上)への影響度について触れています。

エンゲージメントが高い「上位25%の企業」と「下位25%の企業」を比較した結果によると、以下のように上位25%の企業では、収益性・生産性ともに高いことがわかりました。

項目上位25%の企業(下位25%の企業との比較)
収益性23%高い
生産性(売上高)18%高い
生産性(生産実績・評価)14%高い

参考:Gallup 2024 Q12 Meta-Analysis|Gallup, Inc.をもとに作成

企業規模や経営戦略によって影響度は異なりますが、エンゲージメントと業績の両者には少なからず相関関係があると言えます。

業績(売上)が向上すれば、職場環境の改善や従業員の給与アップなど、さらにエンゲージメントを高める施策につなげられます。

高エンゲージメントの持続によって業績はさらに向上する

エンゲージメントを一時的に高めたとしても、飛躍的に生産性は向上しないため、高エンゲージメントの状態を持続できるような取り組みが重要です。

タワーズワトソン株式会社の調査によると、高エンゲージメントを持続できる企業では、平均的な成長を上回る業績成長がみられると報告されています。

1年間の業績成長率をみると、エンゲージメントの低い企業の成長率(収益)8.2%に対し、持続可能なエンゲージメントの高い企業は18.3%と、2倍以上の成長率となりました。

出典:この10年間、従業員意識調査の焦点はなぜ「エンゲージメント」なのか|タワーズワトソン株式会社

また、持続可能なエンゲージメントの高い企業は、エンゲージメントの低い企業の約3倍も営業利益率が高いという結果も出ています。

この調査結果から、定期的に従業員の不満や悩みを聞き、組織改善を継続する仕組みをつくることで、さらなる業績向上につながることがわかります。

以下の記事では、エンゲージメントスコアの計測方法や高める方法を解説していますので、組織状態の把握に苦慮している方は、ぜひ参考にしてみてください。

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従業員満足度の業績への影響とは?エンゲージメントとの違い

従業員満足度が高いからといって、必ずしも業績アップに直結するわけではありません。

たとえば、好待遇・働きやすい職場環境といった満足度が高い組織でも、その居心地のよさが逆効果となり、主体的に行動する従業員が減ってしまう場合があります。

単に「会社に満足している」だけでは、高いモチベーションで成果を出し続けるとは限らないため、満足度とともにエンゲージメントの向上が必要です。

「従業員満足度」と「エンゲージメント」は、両者とも従業員の心理状態をあらわす指標ですが、以下のような違いがあります。

※以下の表は右にスクロールできます

意味特徴
従業員満足度従業員が組織に対して「どのくらい満足しているか」を示した指標・待遇や労働環境の改善によって高められる
・仕事に対する行動そのものには影響しにくい
エンゲージメント組織のビジョンに共感し「目標達成に向けて貢献したい」と感じる意欲・組織目標への共感を促すことで、従業員のつながりを強固にする
・自らの力で成果を出そうとする行動につながる


以下の記事では、従業員満足度とエンゲージメントの違いについて、概念・構成要素・測定方法の視点で詳しく解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。

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エンゲージメントが重要視される背景【日本の現状から考察】

エンゲージメント_重要視_背景_日本の現状

少子高齢化と人口減少が進む日本においては、企業の人手不足も顕著に現れているなか、強い経営基盤を構築する第一歩として「エンゲージメント」が注目されています。

政府の基本方針によると、豊かさと幸せを実感できる経済社会にするには、従業員一人ひとりの生産性を高めて、企業の「稼ぐ力」の強化が必要だとしています。
参考:経済財政運営と改革の基本方針2024|内閣府

エンゲージメントは、生産性(業績)にいい影響を与える要素として重要視されているものの、日本全体におけるエンゲージメント率の低さが課題の一つです。

ギャラップ社の調査(2024年)によると、各国のエンゲージメント率を比較したところ、OECD加盟国において日本は最低の7%となりました。

【エンゲージメント率(OECD加盟国:38ヵ国)】※以下の表は右にスクロールできます

コスタリカ36%ラトビア22%チェコ16%アイルランド9%
アメリカ32%カナダ21%フィンランド15%オーストリア9%
メキシコ32%デンマーク21%韓国14%スペイン9%
チリ32%ノルウェー21%スロバキア14%スイス8%
コロンビア25%イスラエル20%ギリシャ13%フランス8%
アイスランド24%ハンガリー20%ドイツ12%ポーランド8%
エストニア24%ポルトガル19%イタリア10%ルクセンブルグ8%
スウェーデン24%リトアニア19%英国10%日本7%
オーストラリア23%スロベニア17%ベルギー10%
ニュージーランド23%オランダ16%トルコ10%

参考:State of the Global Workplace Report|Gallup, Inc.をもとに作成

また、生産性に関する公益財団法人 日本生産性本部の調査によると、日本の一人当たりの労働生産性は、OECD加盟38ヵ国のなかで29位となっています。

これらの調査結果から、企業としてはエンゲージメントを軸にした経営に注力し、従業員一人ひとりの働きがいを生み出す組織づくりが求められているのです。

エンゲージメント向上によるメリット(業績アップ以外)

エンゲージメント向上_メリット_業績アップ以外

「エンゲージメント向上による業績アップ」の過程においては、以下のような効果も間接的に影響しています。

エンゲージメントが組織にもたらす業績以外のメリットも理解し、自社の施策に活かしてみましょう。以下の記事では、エンゲージメントの向上施策や企業事例を解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

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離職率(定着率)の改善

組織のエンゲージメントが向上すれば、社員一人ひとりが目標を持って仕事と向き合うようになり、組織の成長に対し「貢献する働きをしたい」という意志が強くなります。

「やりがいのある仕事」を通して、いま働いている会社で長期的なキャリア形成をイメージできれば、結果として離職率の改善につながるのです。

厚生労働省の調査によると、ワークエンゲージメント(仕事への活力)が高い企業ほど離職率の低下がみられ、スコア「6の企業」は「3の企業」に比べて、約2倍の上昇率となりました。

出典:令和元年版 労働経済の分析(ワークエンゲージメントと離職率)|厚生労働省

また、人手不足の企業でも離職率低下がみられたことから、社員のエンゲージメント向上は、経営状況に関係なく取り組むべき施策と言えます。

組織としては、継続的な1on1面談やキャリア形成の支援を通じて、社員との接点を保ちながら、離職リスクを早期に察知する体制が求められます。

「入社して間もない社員が、すぐに離職してしまう」と悩んでいる人事担当者の方は、以下の資料をチェックしてみてください。定着率向上のポイントや、企業の成功事例をわかりやすく解説しています。

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モチベーションの向上(職場活性化)

社員のエンゲージメントが向上することで、自分の内側から湧き上がる興味や関心(内発的動機づけ)が促され、仕事に対するモチベーションも高まります。

その結果、職場内の発言・提案・フィードバックが活発に行われるようになり、創造性や自発性を引き出すきっかけになります。

厚生労働省の調査によると、ワークエンゲージメントが高い企業ほど、自発性(指示や命令がなくても自律的に仕事に取り組む)も高いことがわかりました。これは人手不足の企業でも同じ傾向が見られます。

出典:令和元年版 労働経済の分析(ワークエンゲージメントと自発性)|厚生労働省

また、エンゲージメントの高い状態を維持できれば、他の社員への積極的な支援によって、役割外のパフォーマンス向上につながる可能性もあります。

組織としては、社員のキャリア支援を行うとともに、仕事の成果を称える表彰制度の導入など、目標と成長を関連付けるような仕組みづくりが求められます。

顧客満足度の向上

エンゲージメントの高い社員は、自社商品・サービスへの思い入れが強いため、顧客に対しても積極的かつ熱意のある対応をとります。

たとえば、顧客ニーズを先読みした行動を起こせれば、その質の高い顧客対応が企業価値となり、新規契約やリピート購入につながります。

厚生労働省の調査においても、ワークエンゲージメントが高い企業ほど、顧客満足度も上昇していることがわかりました。人手不足の課題を抱えている企業においても同様の結果です。

出典:令和元年版 労働経済の分析(ワークエンゲージメントと顧客満足度)|厚生労働省

組織としては、エンゲージメントと顧客満足の因果関係を社内に浸透させ、現場における「顧客対応の質」が、企業価値そのものであることを意識付ける必要があります。

エンゲージメントを高める6つの方法【業績向上にも有効】

エンゲージメント_高める方法_業績向上_有効

エンゲージメント向上と業績アップを連動させる取り組みとして、具体的な6つの施策を紹介します。以下の取り組みは、日本経済団体連合会(経団連)の会員企業も取り入れている施策です。

※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください

方法具体例
企業理念・ビジョンの浸透・経営トップによるメッセージの発信
・理念やビジョンを浸透させる教育
ワークライフバランスの支援体制の構築・労働時間や終業・始業時刻の見直し
・有給休暇を取得しやすい環境の整備
エンゲージメントサーベイの実施・社員の価値観や考えから職場の課題を可視化
・調査結果をもとに、悩みや不満をヒアリング
定期的な1on1ミーティングの開催・部下が直面している課題の解決策を提案
・部下の体調把握とコンディション確認
キャリア形成促進のサポート・将来の成長を支援するキャリア面談の実施
・職種ごとに必要なスキルをまとめたキャリアマップの作成
社内コミュニケーションの活性化・部門横断型の勉強会や交流イベントの開催
・クラブ活動などのコミュニティ活動への支援

以下より一つずつ解説します。

また、現場ですぐに実践できる取り組みを知りたい方は、エンゲージメントの測定方法や高め方をまとめた以下の資料もご活用ください。無料でダウンロードできます。

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企業理念・ビジョンの浸透

組織のエンゲージメントを高めるには、企業理念やビジョンを全社員に共有・説明し、一人ひとりの「仕事を行う意義」を認識させる必要があります。

組織の目標を「伝える」だけでなく、具体的な形として「体現する」ような取り組みを行うことで、社員の主体性や積極性を引き出すきっかけとなります。具体策は以下のとおりです。

具体策内容
経営トップによるメッセージ発信社内メールや動画、朝礼などで経営トップが組織ビジョンや理念を自らの言葉で語る
理念・ビジョンを浸透させる教育各職場の成功事例をもとに「どのような行動が成果につながったのか」を討論する

たとえば、JALグループ(日本航空)では、JALの商品・サービスに携わる社員の意識・価値観・考え方として「JALフィロソフィ」を策定し、定期的に勉強会を実施しています。

全社員が部門・役職に関係なく同じ空間に集い、日々の仕事から得た気づきや体験を共有し合うことで、企業理念の浸透と実現を図っています。

この事例のように、職場の枠組みを超えてディスカッションする機会を設け、企業理念の形骸化を防ぐことが重要です。

ワークライフバランスの支援体制の構築

個々のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を提供することで、心身の健康が保たれるだけでなく、仕事への意欲や集中力も高まります。

厚生労働省では「仕事と生活の調和」を実現する取り組みとして、以下のような施策を推奨しています。

※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください

具体策内容
労働時間の見直し・業務計画を策定し、業務の見直しや人員確保を行う
・フレックスタイム制を活用し、個々の事情を踏まえて、生活時間の確保に配慮する
有給休暇を取得しやすい環境の整備・休暇取得が健康の保持のために重要なことを全社員に伝える
・土日と有給休暇を組み合わせた長期休暇の取得を促す
終業・始業時刻の柔軟性の確保・社員の生活時間や睡眠時間を確保する(勤務間インターバル)
・深夜業務の回数を制限し、社員の健康と生活時間を確保する

参考:雇用・労働仕事と生活の調和|厚生労働省

また、働きやすい環境を整備することは、優秀な人材の確保と定着にもつながる重要な施策です。

企業のエース社員を対象とした株式会社リーディングマークの調査によると、現在の会社に入社した決め手として、43.3%の人が「働き方に柔軟性があった」と回答しました。

社員のライフステージに応じた柔軟な働き方を支援し、長期的に安心して働ける環境を整備することで、結果として組織に対する貢献意欲(エンゲージメント)が高まるのです。

以下の記事では、施策を検討・実行するうえで必要な「組織づくり」について詳しく解説しています。強い組織をつくるための方法や企業の成功事例を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

組織づくり
組織づくりの目的や基本原則とは?強い組織をつくるための方法と事例組織づくりとは、企業理念にもとづいて組織文化を構築し、事業内容に応じた組織構造を形成することです。企業の成長に伴って、社内制度の見直しやマネジメント層の人材育成が必要です。企業事例を交えて解説します。...

エンゲージメントサーベイの実施

エンゲージメントサーベイを定期的に実施することで、社員の価値観・考えから職場の課題が可視化されるため、組織改善を行うための重要な情報源となります。

現場の隠れた課題・不満の可視化によって、感覚に頼らない「データにもとづく意思決定」が可能となり、問題が深刻化する前に対策が打てます。

実際にエンゲージメントサーベイを導入した企業では、社員の離職につながる問題を事前に察知し、1on1面談において「悩み・不満・メンタル状況」のヒアリングを行っています。

調査結果から「ケアが必要な人」がわかるようになったことで、組織全体の傾向や個々の性格特性を踏まえたアプローチが可能となり、休職者が12人から6人に減少しました。

事例:ミキワメ導入後に休職者が2分の1まで減少|株式会社情報戦略テクノロジー

エンゲージメントサーベイは、個人の業務負担の偏りを把握したり、心の健康状態を可視化したりするなど、社員のマネジメントにも活用可能です。詳しい活用方法や成功事例を知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。

ミキワメ導入事例:従業員エンゲージメントを向上できた事例【3選】 企業の経営課題のなかには、人材関連の課題が多く存在します。 「従業員との対話が不十分で、双方満足できるマネジメントができていない...

定期的な1on1ミーティングの開催

上司と部下が1対1で行う1on1ミーティングは、業務の進捗確認に加えて、部下が直面している課題を解決に導くために行われる重要な取り組みです。

社員の悩みに対し「どのような方向性で行動するか」を的確にアドバイスできれば、仕事への活力を引き出すとともに、組織としてのサポートする姿勢を示せます。

たとえば、LINEヤフー株式会社では、社員一人ひとりの能力を最⼤限に引き出せるように、以下の方法でフィードバックを行っています。

  • 多面フィードバック(成果につながる行動を上長・同僚・部下がフィードバック)
  • 1on1ミーティング(上司による部下の課題解決と目標達成への支援)

週1回(30分程度)で行う1on1ミーティングでは、部下の体調把握やコンディション確認を行うなど、仕事・健康の両面でサポートしようとする企業の姿勢がわかります。

参考:人材成長支援|LINEヤフー株式会社

1on1を通して部下のパフォーマンスを高めるには、段階を踏みながら対話の方法を変えていく必要があります。以下の記事では、対話の質を高める1on1の流れを解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

マネジメント_1on1
マネジメントにおける1on1の位置づけ!効果的な活用法と成功のポイント こんにちは。株式会社リーディングマーク「組織心理研究所」の佐藤映です。 前回の記事「理想の1on1とは?」に引き続き、マネジメン...

キャリア形成促進のサポート

社員一人ひとりが将来のビジョンを描けるようなサポートを行うことで、持続的にエンゲージメントを高められる環境をつくれます。具体的な施策は、以下のとおりです。

  • キャリアの方向性を本人の希望を聞きながら決める「キャリア面談」の実施
  • 職種ごとに必要なスキル・知識を見える化する「キャリアマップ」の作成

実際に、実力主義の考えを持つ株式会社リーディングマークでは、社員が宣言した目標に対して、上司・事業家が認定する「ミッションチャレンジシート」を導入しています。

自己宣言した「業務目標・志・姿」に対し、組織として全力でサポートする体制を整えたことで、27歳の役員が誕生するなど、若手社員が活躍する事例も出てきました。
参考:社内制度|株式会社リーディングマーク

この事例のように、社員一人ひとりの成長実感を高めることが、結果的に組織全体のエンゲージメント向上へとつながります。

社内コミュニケーションの活性化

社内コミュニケーションの活性化を図るためには、部署や役職の枠を越えて良好な人間関係を構築することが大切です。これにより、組織としての一体感や帰属意識が生まれます。

近年では、職場から離れた場所で仕事をする機会も増え、意識的なコミュニケーション設計が求められます。

たとえば、SlackやTeamsなどのチャットツールを活用すれば、日常的な業務連絡に加えて、部署を横断しての勉強会や交流イベントを場所に関係なく開催可能です。

企業事例として、ソニー生命保険株式会社の取り組みを紹介します。

同社では、社員がいきいきと働くために「こころ」の健康が重要と考え、社員間の円滑なコミュニケーションを目指した施策に取り組んでいます。

  • 上司との定期的な1on1ミーティング
  • 部門横断的に新規事業を検討・創出するプロジェクトの実施
  • 社員の自主的なコミュニティ活動の支援(クラブ活動 など)

また、女性ライフプランナー同士のコミュニケーション活性化を目的とした「女志会」を開始し、先輩社員による講演やキャリア別の情報交換なども行っています。

参考:多様な社員の活躍(サステナビリティへの取組)|ソニー生命保険株式会社

以下の記事では、社内コミュニケーションを活性化させるアイデアを多数紹介しています。すぐに実践できる取り組みも解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

社内コミュニケーション_活性化
社内コミュニケーション活性化のアイデア10選|事例や成功のコツも社内コミュニケーション活性化の取り組みとして、社内イベントの開催や1on1ミーティングの実施、サーベイ活用によるサポート強化などがあります。活性化のアイデア10選と企業の取り組み事例を解説します。...

エンゲージメントの高い企業が実践する取り組み事例

エンゲージメント_高い企業_実践_取り組み事例

エンゲージメントの高い企業の実例として、3社の取り組みを紹介します。

※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください

取り組み効果
毎月のサーベイで「いま」困っている人を把握・普段のコミュニケーションではわからない不調を発見できるようになった
・エンゲージメントスコアが7年間で160%向上した
離職の原因を分析する体制の構築・社員の離職原因を分析できる体制が整った
・2018年から2022年にかけて売上向上を実現した
社員育成にマーケティングの考え方を採用「働きがいのある会社」で5位に選出された

以下より、それぞれの取り組みと効果を詳しく解説します。

また、スターバックスや小松製作所など、そのほかの企業が実践する取り組みも知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

従業員エンゲージメントが高い企業事例
従業員エンゲージメントが高い企業事例|自社で実践できる施策も解説従業員エンゲージメントが高まると、離職率の低下や業績の向上が期待できます。本記事では、従業員エンゲージメントが高い企業の取り組み事例やエンゲージメントを向上させる施策について解説します。...

毎月のサーベイで「いま」困っている人を把握|ペンシル

インターネットコンサルティングを行う株式会社ペンシルでは、毎月のサーベイ配信によって個人へのサポートが可能となり、エンゲージメント向上を実現しました。

具体的な流れとしては、サーベイで組織・個人の「心の健康状態」を可視化し、前回からの急激なスコア変化やコメントの有無を確認します。

たとえば、スコアが大きく変動している社員がいるときは、マネージャーとの1on1ミーティングを行い、不安や悩みを聞きながら解決に向けた行動をアドバイスしています。

実名で回答するサーベイを導入したため、個人の状態にフォーカスした対応が可能となり、普段のコミュニケーションではわからない不調を発見できるようになりました。

「いま」困っている人へのサポートが可能となったことで、社員のエンゲージメントスコアは、7年間で160%向上しています。(2024年4月時点)

離職の原因を分析する体制の構築|エターナルキャスト

介護施設を運営する株式会社エターナルキャストでは、社員の離職原因を分析するサーベイを導入したことで、定着促進とともに売上向上(業績アップ)を実現しました。

具体的な取り組みとして、まず性格検査の結果から全社員の性格を16タイプに分類し、一人ひとりの性格傾向や行動特性を把握しています。

その後のサーベイでは、性格検査結果を踏まえて個々の心理状態を可視化し、ケアを求めている社員へのアプローチを行いました。

介護業界の特性上、社員の平均年齢が高く、ITツールへの抵抗感が強い社員もいましたが、直接パソコンから回答できるよう個別に支援しています。

サーベイの導入により離職原因を分析できる体制が整ったことで、現場からも「自分では気づかないストレスに気づけた」といった声がありました。

同社のさまざまな取り組みが実を結んだ結果、49%の社員が5年以上の勤務を続けており、2018年から2022年にかけて売上向上にも成功しています。

以下の記事では、早期離職を防ぐための対策について、企業の事例を交えながら詳しく解説しています。離職率改善に取り組んでいる人事担当者の方は、本記事と合わせて確認してみてください。

早期離職_理由_原因
早期離職する7つの理由と具体的な対策方法|改善した企業事例も紹介入社後3年以内に会社を離れる早期離職の理由は、仕事内容や人間関係とのミスマッチがあります。早期離職により採用コストの損失や組織運営に悪影響を及ぼします。本記事では対策方法と企業事例を解説しています。...

社員育成にマーケティングの考え方を採用|セールスフォース

顧客管理システム(CRM)などの開発を行うセールスフォースでは、マーケティングの考え方を社員育成に取り入れ、エンゲージメントの向上を図っています。

具体的には、顧客が商品を認知してから購入に至るまでの一連の流れ「カスタマージャーニー」を社員に置き換え、以下のような「社員ジャーニー」を作成しました。

  1. ポジションごとの立ち上がり支援
  2. 職種・職位に沿った社員ごとの育成
  3. 管理者・マネージャーの育成とサポート

入社して間もない社員は、座学だけでなく同期の社員との交流を深めるボランティアを行うなど、育成プロセスに応じたプログラムを用意しています。

これらの取り組みが認められ、2025年度の「働きがいのある会社」では5位に選出されました。

エンゲージメントに関するよくある質問

エンゲージメント_よくある質問

エンゲージメントに関する「よくある質問」について、詳しく解説します。

以下より、一つずつ回答します。

エンゲージメントスコアの平均点はどのくらい?

株式会社リーディングマークの調査によると、10点満点に換算した場合のエンゲージメントスコアの平均点は、個人平均で「6.10点」、組織平均で「6.33点」となっています。
(※調査機関や測定ツールによって異なる)

上記のスコアは、同社が独自で算出した「ウェルビーイングスコア」であり、エンゲージメントや従業員満足度などを含めた合計得点です。

エンゲージメントの要素だけを抽出すると、平均点は以下のような結果となりました。

※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください

個人平均組織平均
仕事への活力
(ワークエンゲージメント)
6.20点6.58点
会社への愛着
(従業員エンゲージメント)
6.49点6.88点

なお、調査レポートの詳細を確認したい方は、以下の記事をご覧ください。属性ごとのエンゲージメントの傾向や、職場環境の改善に向けた役立つ情報がわかります。

>>『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』調査レポート ~性別・年代・業界・企業規模別の分析結果~|組織心理研究所(リーディングマーク)

日本のエンゲージメントが低いのはなぜ?

日本のエンゲージメントが他国に比べて低い理由の一つは、年功序列や終身雇用が定着しているため、仕事に対する姿勢が受け身になりやすいことです。

そのほかにも社会的・組織的な要因は複数あり、ニッセイ基礎研究所がまとめた記事によると以下が挙げられています。

  • どんな仕事や勤務地でも引き受けるといった、服従を重視していること
  • 正社員と非正規社員など、区分間での移動が難しいこと
  • ワークライフバランスの問題に対する意識が不足していること
  • 業績評価の際に、適切なフィードバックが十分に行われていないこと

参考:日本の従業員エンゲージメントの低さを考える|ニッセイ基礎研究所

日本企業はこれらの課題を真摯に受け止めたうえで、働き方改革やキャリア支援などの施策を通して、エンゲージメント向上を目指す必要があります。

まとめ:業績・売上アップにはエンゲージメントの向上が必要

業績・売上アップ_エンゲージメント向上_必要

エンゲージメントは、従業員満足度を含めた総合的な指標として、企業の業績や生産性にいい影響を与える経営資源と言えます。

高いエンゲージメントを持続することで、離職率の低下や職場の活性化、顧客満足度の向上といった効果が期待でき、結果として業績アップにもつながります。

しかし、年功序列や終身雇用が定着している日本企業においては、エンゲージメントの低迷が続いており、働き方改革の推進が急務です。

このエンゲージメントが低い状況を経営課題として捉え、データにもとづいた現状分析と戦略的な施策展開を通して、社員がいきいきと働ける組織づくりが求められます。
>>「エンゲージメントを高める6つの方法」を確認する

まずは組織課題の見える化を行い、社員の声にもとづいた施策を検討してみましょう。

ABOUT ME
佐藤 透
ミキワメラボの編集者・コンテンツマーケティングを担当。大学卒業後、複数のIT企業で勤務。HR領域や新しい働き方のトレンドに興味を持ち、2022年からリーディングマークに従事。

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