- 新卒社員や中途社員の早期離職を防ぐ方法
- 早期離職する社員が増えるリスク
- 早期離職の原因
近年、3年以内に離職する若手社員が増えており、どの業界においても課題となっています。
厚生労働省の調査によると、令和2年3月に卒業した人のうち3年以内で辞める人の割合は、大卒生で32.3%(前年度より0.8%上昇)、短大生で42.6%(0.7%上昇)であることがわかりました。
早期離職者の増加を防ぐためには、原因を追究し解決策を立案・実行することが重要です。
しかし、どのような対策をすればいいかわからない人もいるでしょう。
本記事では、早期離職を防ぐための対策を11個紹介します。若手社員が辞める原因や前兆も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
新卒・中途社員向けの早期離職対策一覧
新卒・中途社員向けの早期離職の防止策を以下の表でまとめます。
早期離職対策 | 具体的な施策 |
採用活動で適切な情報発信を心掛ける | 求人内容の改善 |
教育制度を整備する | 研修内容の充実 |
定期的に面談を実施する | ・1on1の実施 ・メンター制度の導入 など |
働きやすい環境や制度を整える | ・休暇制度の導入 ・短時間勤務制度の導入 など ・残業削減 など |
評価制度を見直す | ・職種・役職ごとに評価基準を制定 ・評価者研修の実施 ・360度評価やノーレイティングなど従来と異なる評価制度の導入 など |
日常的にコミュニケーションを取れる体制をつくる | ・チャットツールの導入 ・ランチや飲み会費用の補助 ・社内SNSの導入 など |
キャリア形成のサポートをする | ・ロールモデルとなる先輩の紹介 ・キャリアコンサルタントによる相談窓口の設置 など |
経営方針や企業理念などを繰り返し伝える | ・管理職による理念にもとづいた取り組みの実施 ・社員全員への定期的な周知 |
上司の教育スキル・管理スキルを向上させる | 管理職研修の実施 |
従業員サーベイを実施する | 従業員サーベイツールの導入 |
AI搭載のツールで離職の可能性を予測する | ・AI面接の導入 ・AI搭載の従業員サーベイツールの導入 |
次の章で詳しく紹介するので、ぜひお読みください。
早期離職の防止対策11選
上記で紹介した早期離職の防止対策を11個紹介します。
事例や具体例を踏まえて詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
以下の記事で定着率を上げる方法も紹介しています。離職率防止につながりますので、あわせてチェックしてみてください。
採用活動で適切な情報発信を心掛ける
ミスマッチを防ぐために、会社説明会や求人情報などで求職者のニーズにあう情報を発信しましょう。ただ魅力的な情報を伝えるだけではなく、自社の弱みや課題も隠さずに伝えることがポイントです。
よい情報ばかりを伝えて人材を募集すると、入社前後にギャップを感じ、「思っていた企業と違う」という理由で早期離職につながるおそれがあります。
職務内容や給与体系、勤務時間、組織風土など、正しく伝えて求職者に語弊がないようにしましょう。
求人方法を改善して自社にマッチする人材を獲得できた事例として、日創工業株式会社を紹介します。同社はもともと人材紹介サービスを利用していましたが、マッチする人材からの応募獲得が難かったことから、求人広告を活用しました。
求人広告には、ただ仕事内容や給与などを掲載するだけではなく、仕事の厳しさや向いていない人も掲載します。事前に仕事の厳しさや向いていない人を記載することで、現実を理解したうえで応募する人材が増えると感じたためです。
求人広告を出稿した結果、25人の応募者が集まり、入社後にもっとも活躍できる人材を2人獲得できるようになりました。
教育制度を整備する
教育制度の整備によって、社員のスキルアップに対する不満を解消するのも効果的な手段です。
パーソル総合研究所が2023年に実施した調査によると、20代の社員が仕事を選ぶうえで重視する項目として以下のことがわかりました。
- 色々な知識やスキルが得られること:22.1%(2019年より7.6%上昇)
- 資格や免許の取得に繋がること:13.7%(2019年より3.7%上昇)
- 入社後の研修や教育が充実していること12.3%(2019年より3.6%上昇)
以上より、20代はスキル向上ができる環境を望んでいると考えられます。
求職者が成長できる環境を提供するには、研修やワークショップなど学習する場を設けましょう。
社員一人ひとりに研修を実施するには、階級や必要とされるスキルに応じた内容を検討する必要があります。
たとえば新入社員や中途社員の場合は、以下のようなカリキュラムを実施してみてください。
研修の種類 | 研修の内容 |
新入社員研修 | ・企業理念や事業、商品の理解 ・社会人としてのマインドセット ・社内外のコミュニケーションの取り方 ・コンプライアンスの理解 ・仕事の進め方・人間関係の築き方 ・プレゼンテーションの仕方 |
2年目研修 | ・1年目の振り返り ・自発的に仕事を進める力の養成 ・コミュニケーション能力の養成 ・ロジカルシンキングの行い方 |
中途社員研修 | ・企業理念や事業、商品の理解 ・仕事の進め方・キャリアデザイン研修 ・役職にあわせたスキル研修 |
予算次第では外部の研修を受けることも検討しましょう。
定期的に面談を実施する
若手社員は経験不足から生じる仕事の不安や不満を抱え込みがちなため、上司に相談できる機会を定期的に設けましょう。
業務の悩みを聞き出して共感やアドバイスをすることで、信頼感や安心感を与えられます。
面談の方法としては、上司と部下が1対1で行う1on1ミーティングが効果的です。仕事の進捗や相談などを聞き、上司がアドバイスをすることで信頼関係を構築できます。
メンター制度を設けることも、離職防止につながります。メンター制度とは、若手社員と年齢の近い先輩社員がメンター(指導者)となり、支援する制度のことです。人間関係やキャリア、精神面でのサポート役となり、若手社員が安心して働けるよう促します。
メンター制度を取り入れた事例として、古野電気株式会社の取り組みを紹介します。同社では若手社員の育成が課題となっていました。
上司や若手社員などにヒアリングを行った結果、「指導者と若手社員との年齢差が大きい」「気軽に声をかけられる先輩がいない」「相談や指導を受ける時間が取れない」などの問題があるとわかりました。
問題を放置すると若手社員の離職につながることから、対策としてメンター制度を導入します。
メンター制度の研修に参加し、先輩社員(メンター)と若手社員(メンティー)のコミュニケーションを活性化できるようにしました。
結果、若手社員が仕事の悩みを率直に伝えられるようになり、業務に対し前向きに取り組めるようになったと声があがりました。
社員が悩みごとを相談できる環境を整えることで、早期離職を防ぎやすくなるでしょう。
働きやすい環境や制度を整える
ワークライフバランスを重視して、柔軟な働き方を選べるような労働条件にしましょう。
具体的には、以下のような制度の導入をおすすめします。
働きやすい環境や 制度の具体例 | 概要 |
フレックスタイム制度 | 総労働時間を守れる範囲で、始業時刻や終業時刻を労働者が自由に決められる制度 |
短時間勤務制度 | 育児や介護などにより1日の労働時間を6時間にできる制度 |
ノー残業デー | 定時で仕事を終える日や曜日を企業が設定する取り組み |
バースデー休暇 | 誕生日や誕生月に1日休暇を取れる制度 |
休暇制度を取り入れることで、従業員満足度の向上にもつながります。
休暇制度を取り入れた事例として、SCSK株式会社のバックアップ休暇を紹介します。
同社では有給休暇の取得を100%に近づけるための取り組みとして、バックアップ休暇を導入しました。
バックアップ休暇とは、有給休暇をすべて消化したあとに急遽休む必要ができた場合に年5日間取得できる休暇のことです。
導入した結果、2022年度に18人がバックアップ休暇制度を利用し、有給休暇の取得率が9割強となりました。従業員からも安心して有給休暇を取得できるといった声があがっています。
労働時間を短縮したい場合は、ただ単に現場に呼びかけるだけではなく、長時間労働の原因を正しく分析し、適切な対策を講じることが大切です。
たとえば、事務作業が多くて残業が増えている場合は、ITシステムを導入して業務の自動化を検討する必要もあります。
社内のニーズをヒアリングして、どのような制度を取り入れると働きやすくなるか考えてみてください。
評価制度を見直す
成果や業績が適切に評価されていないと感じると、若手社員のモチベーション低下につながるため、公正な評価制度を導入しましょう。
成果や能力にもとづいた報酬アップや昇進をすることが、社員のエンゲージメント向上を促し、結果的に離職を防ぎます。
評価制度は、職種や役職ごとに評価する点を変えることが大切です。たとえば中堅社員であれば、部下を育成したことも評価対象にしましょう。
評価制度以外にも、評価担当者の教育をすることが大切です。評価担当者が個人の主観にもとづいて評価してしまわないよう研修を実施してみてください。
必要に応じて評価制度を刷新することも効果的な手段です。
たとえば、上司だけでなく同僚や部下など複数の人で評価する「360度評価」を導入しましょう。
360度評価を導入しているアイリスオーヤマでは、10~30人で人事評価をしています。
同社では、「人が人を評価すると好き嫌いが入ってしまい、公正公平な評価が難しい」という課題を抱えていたため、納得感の高い評価をするために360度評価を取り入れました。
評価者には研修を受けてもらい、評価基準の理解促進や客観的に評価するような注意喚起をしているのが特徴です。
360度評価によって、若手社員からは「公平な制度で実績にもとづいて正しく評価されている」との声があがっています。
客観的な評価基準にもとづいた評価制度を導入することで、若手社員が満足し、自社で働き続けたいと感じるようになるでしょう。
日常的にコミュニケーションを取れる体制をつくる
周りの社員が積極的にコミュニケーションを取り、若手社員が孤立しないようにしましょう。
最近ではリモートワークの浸透により、相談したくても気軽にできないと言う社員がいます。
スタッフサービス・ホールディングスの調査によると、テレワークを導入している企業で働く人のうち56%が「ちょっとした相談ができない」という悩みを持っていることがわかりました。
誰にも相談できないと不安を解消できず、ストレスになってしまいます。
とくに入社2〜3年目になると、1年目よりも周囲のフォローも薄くなりやすく、より悩みや不安を打ち明けにくくなるでしょう。
コミュニケーションを促進するためには、以下のような施策が効果的です。
コミュニケーションを促進できる施策 | 概要 |
チャットツールの導入 | 気軽に情報共有や意思疎通ができるツールを導入する |
ランチや飲み会費用の補助 | 社内関係者と親睦を深めることを目的としたランチや飲み会の費用を一定額補助する |
フリーアドレス制の導入 | 固定の席がなく好きな席で働けるようにする |
社内イベントの開催 | 社員旅行やスポーツ大会などのイベントを実施する |
社内SNSの導入 | 社員のみが投稿・閲覧でき、部門間でのコミュニケーションを活性化できるSNSを導入する |
実際に以上の施策を取り入れて離職率を下げた企業もあります。
社内SNSを導入した企業として、株式会社夢現があります。同社では離職者が増えており、原因を分析した結果、コミュニケーションがうまくいっていないことがわかりました。
そこで社内SNSを導入し、コミュニケーションの活性化を図ります。社内SNSをはじめた最初のころは、従業員の顔がわかるよう顔写真を登録し、現場の雰囲気がわかるコンテンツを投稿しました
教育・研修コンテンツや社内の申請手順などもまとめ、情報の一元化も行います。
社長自身が積極的に発信をし、店舗スタッフにも情報が届くようにします。結果、店舗間やスタッフ間でのコミュニケーションの質が向上し、離職者が8割減少しました。
若手社員が話しやすい環境をつくることで、良好な人間関係を構築しやすくなり、働き続けられるでしょう。
キャリア形成のサポートをする
社員が自社でどのようなキャリアステップを踏めるかを明示することも重要です。具体的には、ロールモデルとなる先輩社員の存在を挙げ、その人を目標にする方法があります。
身近に目標とする先輩がいれば、若手社員もキャリアに対するビジョンを描きやすくなるでしょう。
昇格・異動の制度とあわせて、自社でのキャリアパスを明確に提示することも大切です。役職ごとにキャリアデザイン研修を行い、社員が将来のキャリアプランを計画できるよう支援を行ってください。
株式会社 富士通ソーシアルサイエンスラボラトリでも社員が夢を抱けるよう、キャリア支援をしています。
IT業界の同社では、多くのSEが働いていますが、SEは技術の変化が激しいことから将来に対して漠然と不安を抱いている人も多くいました。そこで、安心して働ける職場をつくるために、キャリア支援を行います。
具体的にはキャリアコンサルタントに相談できる窓口を設置したり、キャリアにあわせた研修を実施したりしました。
若手社員でも長く働けるようフォロー体制を整備した結果、新人社員の定着率が3年で90%、7年で70%となりました。
キャリアが明確になることで、モチベーションの向上につながるでしょう。
キャリア形成以外にもモチベーションを高める施策が多くあります。詳しくは以下の記事で紹介していますので、あわせてお読みください。
経営方針や企業理念などを繰り返し伝える
企業理念や経営方針を伝え、社員一人ひとりが「なぜこの仕事をしているのか」を理解して取り組めるようにしましょう。
仕事をする目的や社会への貢献度が明確になることで、若手社員がモチベーションを高めて働けるようになります。
経営方針や企業理念を浸透させるには、周知し続けることと、行動に反映させ習慣化させることが大切です。
たとえば、「日本から世界の人に笑顔を届ける」という企業理念を掲げた場合に、海外事業に挑戦したり、海外への慈善事業に取り組んだりして行動することが求められます。
企業理念や経営方針を浸透させるには、理念に沿った評価制度を策定したり、定期的に研修をしたりして、社員に行動を促しましょう。
企業理念を周知させるなら、インナーブランディング動画も効果的です。
インナーブランディング動画とは、社員に向けて企業理念や自社の方針を伝える動画のことです。主に企業理念が生まれた背景や経営層の想いなどを動画にします。動画で伝えることで、抽象的な理念を視覚的に伝えられ、社員の理解をより深められるでしょう。
インナーブランディング動画を導入している企業として、雪印メグミルク株式会社があります。同社ではCSR推進として、過去の事件を二度と起こさないよう企業行動憲章を制定しましたが、浸透を促すために動画を作成することにしました。
社長自身が企業行動憲章について話す動画にし、社長の熱意が伝わるようにします。10分以内の尺に抑え、社員が何度も視聴できるように工夫して作成しました。
結果、社員からは「説明だけでは理解が難しかった内容が、動画を見て何が大切かわかった」「社長の想いが印象に残った」などの声があり、企業行動憲章の浸透につながっていると考えられています。
上司の教育スキル・管理スキルを向上させる
上司が原因で離職につながる場合もあるため、部下と良好な関係を維持しながら育成するスキルを伸ばすことも大切です。
上司に向けて研修を実施し、部下がストレスを感じにくい言葉づかいや指導方法を教える機会をつくりましょう。
部下の価値観や特性にあわせた指導ができるようになれば、若手社員の不満を減らせるはずです。
コーチング研修やフィードバック研修などを受講してもらい、指導に必要なスキルを伸ばしましょう。自社で実施するのが難しい場合は、外部研修を受けるのも効果的な手段です。
ヤフー株式会社でも、一般管理職に向けて外部研修を実施しました。同社では上司と部下で1on1を実施しており、上司がよりよいコーチングができるよう、研修を導入します。
研修では上司が1on1で一方的な説教やただの雑談の場に終わらないよう、対話の技術を習得できるようなカリキュラムを外部講師に依頼しました。
結果、正しいコーチング技術を上司が身につけられ、部下からも「1on1がいい」と満足してもらえるようになりました。
従業員サーベイを実施する
従業員サーベイは、社員の満足度やエンゲージメント、ストレスなどを測定するための調査です。
実施することで社員の率直な意見やニーズを把握でき、問題点を具体的に把握できます。問題点を解決することで、社員の会社に対する不安を払拭でき、エンゲージメントの向上につながるでしょう。
実際に従業員サーベイを実施して、早期離職を未然に防止できている企業もあります。
従業員サーベイを実施した事例として、株式会社笑美面を紹介します。同社は、上場するにあたって離職率が高いという課題があったため、事業成長のリスクが審査に響かないよう対策が必要でした。
しかし、離職防止の対策に向けて原因の可視化や仕組み化ができず、どのように取り組めばよいかわからない状態でした。
そこで、解決策として調査に回答した社員の実名がわかる従業員サーベイツール「ミキワメ」を導入します。
ミキワメ導入後は社員にサーベイを受けてもらい、退職の兆候が出ているメンバーを判別しました。ケアが必要な社員がいたら、幹部全員でフォローを実施するようにします。
導入した結果、離職率が3/5となり、早期離職の防止につながりました。不満を溜めている人の率直な意見も聞き取れるようになり、すぐにフォローできる体制を構築できました。
AI搭載のツールで離職の可能性を予測する
AIによって社員のモチベーションやメンタルなどを計測できるツールがあります。
AI搭載のツールを使用することで、勤怠データや社内アンケートをもとにAIが計測し、膨大なデータから「どの人材が離職する可能性があるか」を判断できるでしょう。
ツールによっては、離職する可能性の高い人に向けた対応策も提案してくれる場合もあります。
従業員サーベイツールの『ミキワメ ウェルビーイング』にも、個人の性格や心理状態を分析し、適切なアドバイスをしてくれるAI機能が搭載されています。
効果的な仕事の依頼の仕方や、フィードバックの伝え方などを相談でき、社員一人ひとりに適したコミュニケーションを取りやすくなるでしょう。
AIを活用することで工数を最小限に抑えながら、離職防止に適切な対策を講じられます。
AIを人事業務に活用したい方は、ChatGPTもおすすめです。ChatGPTは対話式でAIが人間の質問に回答する生成AIツールで、文章の作成や画像生成などに活用できます。
人事部の業務においても幅広い範囲で利用でき、業務効率化を実現可能です。具体的な活用方法については、以下の資料で紹介しています。最新技術を活用して業務の自動化に取り組みたい方は、ぜひ資料をご覧ください。
早期離職を防止対策することが重要な理由
早期離職を防止対策することが重要な理由は、主に以下の4つです。
経営や周りの社員に及ぼす影響を把握できますので、ぜひチェックしてみてください。
採用コストを抑えるため
人材を1人採用し、一人前に育て上げるには、求人広告の出稿や採用担当者の人件費など、多くのコストが必要です。
厚生労働省の調査によると、正社員ひとりを採用するのにかかる平均費用は以下のようになることがわかっています。
民間職業紹介事業者(紹介会社):85.1万円インターネットの求人情報サイト:28.5万円スカウトサービス:91.4万円
以上の費用に加え、若手社員が会社に貢献できるようになるまでの教育コストも必要です。
しかし、早期に離職されてしまえば、採用や教育にかかった費用がすべてムダになってしまいます。
離職者が増えると、新たな人材を補充するために再び採用する必要があり、採用コストがさらにかかってしまいます。営業利益をひっ迫する原因にもなりかねないため、経営面からも早期離職を防止することが大切です。
人材不足を解消するため
若手社員の早期離職は、企業にとって深刻な人材不足をもたらすことがあります。
離職者が出た場合、早急に代替となる人材を確保する必要がありますが、簡単なことではありません。
離職者が増える状態が続けば、既存社員ひとりあたりの負担が大きくなりす。負担が増大するとモチベーションの低下し、既存社員までもが退職をしてしまうリスクがあります。
最悪の場合、人手不足が原因で倒産する可能性もあるでしょう。
帝国データバンクの調査によると、2023年度に人手不足が原因で倒産した企業は、過去最多の313件となりました。
既存社員への悪影響を防ぐためにも、若手社員が長く働ける企業づくりをしましょう。
企業のイメージ低下を防ぐため
早期離職率が高いとネガティブな印象がもたれやすく、悪いうわさがインターネット上で広まる可能性があります。
現在はSNSや口コミサイトなどがあり、企業の評判が簡単にわかる時代です。早期退職率の高い企業だと不特定多数の人に口コミを書かれてしまうと、多くの人が目にする可能性があります。
早期離職者が多いと、求職者がネガティブなイメージを持つようになり、志望度の低下につながりかねません。
実際に会社の風評を入社するかどうかの判断にしている人も一定数います。
株式会社エフェクチュアルの調査でも、就職転職で風評をリサーチしている人が48.5%おり、風評が入社の決め手になると回答した人が63.9%いることがわかりました。
求職者の企業イメージに大きく関わるため、早期離職への対策が必要です。
管理職候補を育成するため
若手社員の早期離職が多いと、将来管理職になる人材を育成できなくなる可能性があります。経営者や管理職候補となる優秀な人材を育てるには、幅広い経験を積んでスキルを身につけてもらう必要があります。
ALL DIFFERENT株式会社の調査では、管理職には以下のようなスキルが必要だと感じている人が多いことがわかりました。
- マネジメント
- IT・デジタルに関するリテラシー
- 言語化する力
- コーチング
- 共感力
- タイムマネジメント
- リーダーシップ
参考:【組織・チームのあり方を5,000人に調査】管理職の79.8%が、この10年間で管理職に求められることが変わったと回答
以上の能力を養成して管理職に昇進させるには、長期的な計画を立てて進める必要があります。
しかし管理職候補として採用した社員が早期に退職してしまうと、次世代リーダーの育成が止まってしまうでしょう。
リーダーとなり得る人材が育たなければ、将来的に後継者が見つからず経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
対策前に知っておきたい早期離職する原因7選
厚生労働省の調査によると、令和2年3月に卒業した人の3年以内の離職率は以下のようになっています。
最終学齢 | 3年以内の離職率(前年比) |
中学 | 52.9%(-4.9%) |
高校 | 37.0%(+1.1%) |
短大等 | 52.9%(+0.7%) |
大学 | 32.3%(+0.8%) |
参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します
以上のように高校・短大・大学で増加傾向にあります。
新入社員や中途社員が早期離職をする理由は、主に以下の7つです。
それぞれなぜ辞めるのかを紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
早期離職の理由は以下の記事でも詳しく紹介していますので、あわせてお読みください。
入社前と入社後で会社のイメージにギャップがあった
採用担当者が人材確保のために自社の魅力的な情報のみを伝えてしまい、入社したときにギャップを感じてしまうことが原因のひとつです。
とくに新入社員の場合、理想と現実のギャップを目の当たりにして「こんなはずではなかった」とショックを受けてしまうでしょう。
理想と現実のギャップにショックを受ける現象は「リアリティショック」と呼ばれ、早期離職の大きな原因とされています。
パーソルの調査によると、リアリティショックを受けたことのある人の割合は、76.6%いることがわかりました。なかでも、報酬ややりがい、働きやすさなどでギャップを感じたと3割以上の人が回答しました。
とくに3年以内に離職した人がリアリティショックを受けている傾向にあります。
中途社員も同様に入社前後でのギャップが理由で早期離職につながる場合もあるため、入社前にギャップを最小限に抑えることが求められます。
やりたい仕事でなかった
入社後の仕事内容が自分の想定していたものと異なっており、マッチしないと感じて辞める人も少なくありません。
エン・ジャパン株式会社の「退職のきっかけ」に関する調査によると、「やりたい仕事ではなかった」と回答した人が17%いました。回答した人の26%が25歳以下となっており、若い世代ほど仕事内容がきっかけで退職することがわかっています。
参考:8,600名に聞いた「退職のきっかけ」調査。転職理由は「給与」「やりがいのなさ」「企業の将来性」。―『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表―
自分の得意とする強みを活かせる業務や興味のある仕事に就けず、ほかの職種を求めて転職してしまうケースがあります。
ほかにも「地味な仕事ばかりで面白くない」「ノルマが厳しすぎる」など、仕事内容に対する不満も早期離職の原因です。
自身の能力と求められている能力のレベルがあっていないことも、モチベーションの低下につながり、転職のきっかけになります。
労働環境がよくなかった
「残業時間が多い」「有給休暇が取得できない」など、労働環境が理由で離職している人もいます。
厚生労働省の調査によると、離職の決め手となった理由として「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」と回答した人が9.1%おり、個人的な退職理由のなかでもっとも高いことがわかりました。
とくに最近ではワークライフバランスが重視される傾向にあるため、残業や休日出勤が多い職場では離職リスクが高くなっています。
株式会社SHIBUYA109エンタテイメントが24卒・25卒のキャリア観について調査したところ、「ワークライフバランスを大事にしたい」と回答した人が87.9%いました。
結婚や出産も意識してキャリアプランを立てている人もおり、労働環境が厳しいと離職されるおそれがあります。
キャリア形成の意識が変わった
企業に依存せず自らのキャリアを形成しようと考えている人がおり、キャリアアップのために転職している人も少なくありません。
株式会社ビズリーチの調査によると、70%以上の大学生が「企業に依存しないキャリア形成を意識している」と回答しました。新卒で入社する会社を選ぶとき、将来のキャリアのために転職することを視野に入れている人も55%いることがわかりました。
自分の価値観を理解してキャリアを決めたいと考えている人がいるため、企業の育成方針とキャリア観が見合わなければ早期離職につながります。
待遇に不満があった
給料の少なさから退職を考える社員も少なくありません。
厚生労働省の調査でも「給与等収入が少なかった」と回答している人が7.6%おり、個人的な退職理由のなかで3番目に高い結果となりました。
新卒社員の場合は、社会保険料の控除額にギャップを感じて、給料の少なさにショックを受けることもあるでしょう。2~3年目の社員の場合は、昇給額に不満を持つ可能性があります。
最近では年功序列や終身雇用が難しくなっている背景もあり、年齢に対して賃金が低いことに納得できない人もいます。
「先輩よりも多くの契約数を獲得できたのに、あまり評価されなかった」という事態になれば、企業に対し不満を持ち、転職を考えるようになるでしょう。
人間関係に不満があった
会社員は起きている時間の大半を職場の人と過ごすため、人間関係に問題があると転職したいと考えるようになります。
厚生労働省が退職理由を調査した結果によると、「職場の人間関係が好ましくなかった」と回答した人が8.3%いました。個人的な退職理由のなかで2番目に高い退職理由であることがわかります。
人間関係の不満の具体例として、パワハラやセクハラなどが挙げられるでしょう。上司とあわない場合もストレスの要因になり、離職につながります。
とくに人によって態度が変わったり、高圧的な態度を取ったりする上司の部下になった若手社員は、辞めたい気持ちが高まるでしょう。
会社に将来性がないと感じた
「いまの職場でのキャリアが見えない」「業績が低迷している」などと感じ、離職してしまう人も少なくありません。
売上や利益が不安定な企業だと今後倒産の危機があると感じるようになり、若いうちに転職を考える人もいます。
最近の若手社員は、学校で多様性を尊重する教育を受けていることもあり、価値観の多様性も企業の将来性につながると感じている人もいます。
株式会社RASHISAの調査によると、ダイバーシティ&インクルージョンに消極的な企業に対して、半数以上の人が「好感を持てない」または「働きたくない」と回答したことが明らかになりました。
参考:【2022年 Z世代のD&I意識調査】職場の選択において、D&Iに消極的な企業には50%がネガティブイメージを持つ結果に
ダイバーシティ&インクルージョンとは、人種や性別、価値観、性格などの多様性を認め合い、最大限に活かす考え方です。
現代では世界情勢や経済トレンドなどの変化が激しいため、新しい価値観を受け入れられない企業や最新の技術を取り入れない企業は、将来性がないと思われるかもしれません。
結果、より将来性のある企業に転職しようと考えるようになり、早期離職につながります。
早期離職する若手社員の特徴
早期離職する若手社員の特徴として、以下の4つが挙げられます。
以上のような傾向が見られたら、早急にフォローしましょう。それぞれ詳しく解説します。
新卒社員が辞める傾向や原因については、以下の記事でも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
愚痴や不満が多くなった
以前よりも愚痴や不満が増えた社員は早期離職するおそれがあります。
仕事や職場に慣れると愚痴を言うのは誰でもあり得ることですが、愚痴が多くなっているときは、「もう会社を辞めようとしていて、何を言っても問題ない」と考えているかもしれません。
社員が待遇や評価に対する不満を言い出すケースも退職のサインです。仕事を続けるなら上司との関係悪化をおそれ、表立って話す可能性が低いでしょう。
会社に対して不満を募らせた結果、見切りをつけて離職してしまいます。
受け身の姿勢で仕事をするようになった
これまで積極的に仕事に取り組んでいた社員の姿勢が受け身になっていると、辞める可能性があります。
「どうせ辞めるなら、がんばって仕事を覚えても意味がない」と感じている可能性があるためです。
また、会議での発言が減ったり、指示された業務のスピードや品質が落ちている場合も辞める原因になるでしょう。
責任感の強い社員が与えられた業務に対し、消極的な姿勢を見せた場合も辞める予兆があると判断できます。
業務内外でのコミュニケーションが減った
会社を辞めれば職場での人間関係を気にする必要がないため、周囲とのコミュニケーションが減る可能性があります。
親しくなると辞めにくくなったり、辞めようとすると周りの人に関心がなくなったりするためです。仕事中のコミュニケーションだけではなく、飲み会のような社内イベントへの参加が減る可能性があります。
遅刻や早退が増えた
現在の業務に対するモチベーションや、会社への貢献意欲が失われている場合、自然と行動に表れ、遅刻や早退が目立つようになります。
転職活動や準備などで時間のゆとりがなくなり、結果として遅刻や早退が増えてしまう可能性もあるでしょう。
有給休暇をいつもより消化している人も、転職活動をしている可能性があります。
一方で、正常な勤務が困難なほど体調や精神状態が悪化していることもあるため、休職を考えている可能性もあります。
遅刻や早退が多い場合は、一度本人と話し合う機会を設け、体調が優れない場合は産業医との面談を推奨しましょう。
まとめ:早期離職を防ぐには早めに対策しよう
早期離職の対策には、以下の11個の方法があります。
早期離職する社員が増えると、採用コストの増加や既存社員の負担増加、企業イメージのダウンにつながるため、早急に対策することをおすすめします。
自社で早期離職をしている社員の特徴を分析し、原因を特定して適切な対策を講じましょう。
早期離職を防ぐには、定期的に従業員サーベイをすると効果的です。サーベイの結果により、離職する可能性のある社員を見つけられ、事前に対策を講じられるでしょう。
『ミキワメウェルビーイングサーベイ』でも従業員サーベイを実施できます。実名制で社員一人ひとりの状態を確認でき、状態の悪い社員を見つけ次第すぐにフォローできるようになるので、離職防止につなげられるでしょう。
社員にあったマネジメントや、ケアの方法をAIで提示できる機能がある点も特徴です。適切なコミュニケーションを取りやすくなるため、エンゲージメントの向上に活用できます。
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