「絶対評価」は人事評価の際に用いる手法の一つです。あらかじめ決められた目標やノルマの達成度合いによって従業員を評価します。絶対評価を導入する企業は増えていますが、自社にマッチするかどうか不安に思うこともあるでしょう。
そこで本記事では、絶対評価のメリット・デメリットについて解説します。従来の日本企業で導入されてきた「相対評価」についてもご紹介しますので、どちらの方法が合っているのか検討してください。
絶対評価とは?
「絶対評価」とは、人事評価をする際に用いられる手法です。決められた目標やノルマに対する達成度合いによって、従業員を評価します。
組織やグループ内において能力や成績を比較するのではなく、対象者一人ひとりが出した結果に対して評価が下される点が絶対評価の特徴です。
たとえば、営業ノルマに対する達成率100%以上に最高評価を与える企業があった場合、達成率100%を超えていれば、すべての従業員が最高評価を得られます。
成果を重視したい企業は、絶対評価による人事評価を重視する傾向があります。しかし一方で、「相対評価」によって従業員を査定する企業も少なくありません。
絶対評価と相対評価の違い
相対評価とは、組織内の他者と比較したうえで優劣を下す判断方法のことです。各ランクの評価が得られる人数があらかじめ決められており、成績上位者から順に高いランクの評価が与えられます。
たとえば、Aランクに5名、Bランクに10名、Cランクに30名の人数が設定されていた場合、成績上位の5名まではAランクの評価がもらえるというわけです。
そのため、ほかの従業員の成績によっては、評価が高くなることもあれば低くなることもあります。絶対評価との違いは、自分がよい成績を残したからといって、いつも高い評価が得られるとは限らない点です。
絶対評価のメリット
目標やノルマの達成が評価される絶対評価には、主に5つのメリットがあります。
- 評価基準が明確
- 評価される側の理解を得やすい
- 成績が評価に反映されやすい
- 課題を可視化できる
- モチベーションの維持やアップにつながる
それぞれ詳しく解説します。
評価基準が明確
絶対評価は、あらかじめ決められた組織や個人の目標・ノルマの達成度合いによって判断されるため、評価基準が明確です。評価者との関係性や意向が加味されにくく、客観的な評価が下されます。
従業員が正当な評価を得やすいことは、絶対評価を導入する企業が増えている理由の一つです。
評価される側の理解を得やすい
評価基準が明確なことから、出された評価結果に対して従業員の納得を得やすくなります。
他者の能力や成績と比較される評価基準の場合、努力して好成績を残したとしても、ほかの人の成績が上回っていれば高い評価は得られません。また、比較による判断の場合、評価者の意見が加味されたり、不透明な部分があったりと、評価される側の成績以外の要素も含まれる可能性があります。
絶対評価はあらかじめ決められた目標やノルマを達成できているかが判断基準のため、シンプルで透明度が高い点がメリットです。
成績が評価に反映されやすい
あらかじめ決められた目標やノルマに対する達成度合いで評価されるため、成績が直接反映されやすくなります。絶対評価であれば、結果を出すための個人の成長や努力も含めた評価が可能です。
課題を可視化できる
評価の基準がはっきりしているため、高い評価が得られなかった場合の課題も可視化できます。課題が可視化されると、上司から部下へ適切なアドバイスができるでしょう。その結果、従業員は不足していた点を容易に理解でき、次に向けた対策がしやすくなります。
モチベーションの維持やアップにつながる
目標やノルマが達成できれば、ほかの従業員と分け隔てなく評価されるため、モチベーションが向上しやすくなります。
基準を満たせず最高評価が得られなかった場合でも、課題が明確になっているため、よりよい評価を目指すモチベーションの維持が可能です。
絶対評価のデメリット
絶対評価は結果を出せば評価される反面、以下のようなデメリットもあります。
- 評価の基準設定が難しい
- プロセスが評価されにくい
- 数値化できない基準では評価しづらい
それぞれ詳しく解説します。
評価の基準設定が難しい
絶対評価は、あらかじめ決めておく目標やノルマの基準設定が難しいです。あまりにも高い数値を基準にすると誰も達成できないおそれがあり、簡単すぎる基準も意味がありません。適切な基準を設定するには、従業員一人ひとりの過去のデータを分析する必要も出てきます。
プロセスが評価されにくい
基準となる目標やノルマを達成できれば評価される一方、達成できなかった原因や努力してきたプロセスはほとんど評価されません。
たとえば、消費税の増税により購買意欲が低下するなどの外的要因により目標が達成できなかったとしても、理由は関係なく目標に届かなかった事実のみが重視されます。成果主義に傾きすぎると、従業員のモチベーションが低下するリスクも高まるため注意が必要です。
数値化できない基準では評価しづらい
売上や契約件数など、目に見えて数値化できる目標やノルマを基準に掲げた場合は、絶対評価の制度がマッチします。しかし、勤務態度や協調性・お客様の満足度など、数値として定めづらい基準を掲げている場合は適正な評価を下せないでしょう。
また、数値化できない基準では、評価者の意向に左右された結果になる可能性があります。適正な評価を受けていないと感じた従業員は不満を抱え、仕事のモチベーション低下につながってしまいます。
相対評価のメリット
一方で、組織内の他者と比較したうえで優劣を下す相対評価には、以下のメリットがあります。
- 評価を下しやすい
- 組織内の競争が活発になる
絶対評価との違いを確認していきましょう。
評価を下しやすい
対象となる従業員の成績を比較してランク分けしていく作業のため、評価者が判断を下しやすいです。絶対評価のように組織や個人における明確な目標やノルマも設ける必要がなく、導入の際に手間がかからない点もメリットといえるでしょう。
組織内の競争が活発になる
相対評価は部署などのメンバー内で順位づけされる評価方法のため、成績上位を目指す従業員同士の競争が活発になり、切磋琢磨できる環境が生まれます。成績が昇給や昇進の判断基準になることが多いため、おのずと努力をするようになり、組織全体の活性化や従業員のモチベーション維持にも役立ちます。
相対評価のデメリット
企業が人事評価から絶対評価へと切り替える理由にもなっている、相対評価のデメリットは以下の通りです。
- 正しい評価が下せない
- モチベーションの低下につながる
- 従業員が競争ばかりを意識してしまう
それぞれ詳しく解説します。
正しい評価が下せない
順位づけをするため評価しやすい反面、従業員のスキルや能力に対して正しい評価が下せないデメリットがあります。
たとえば、ある部署で高い評価を得ていた従業員が別の部署へ異動になった際、周りの人よりも成績や能力が劣ることから、以前まではAランクであったのにBランクに落ちてしまうケースが見られます。
従業員同士を比較して順位づけする相対評価は、たとえ実力があったとしても、周囲により優秀な人がいれば成績上位者にはなれない評価基準です。
また、同じような成績や能力をもっている従業員がいる場合には、どちらかを下の順位にしなければなりません。そこに評価者の私情が入り込むと、従業員は正しい評価を受けられなくなるリスクもあります。
モチベーションの低下につながる
相対評価は、組織内の競争が活発になることから、モチベーション向上に最適と考えられていますが、逆効果となるおそれもあります。
好成績であっても、周囲の成績も同様に上がっていれば、高い評価を得られません。また、相対的な評価で順位が決まってしまうため、個人の努力や成長が評価に反映されづらい点も、従業員のモチベーションが低下する理由です。
絶対評価であれば、目標やノルマに対する従業員それぞれの成績が評価に反映されるため、順位が納得できないといったトラブルを避けられます。
従業員が競争ばかりを意識してしまう
相対評価では部署やグループなどに所属する従業員との比較によって評価が決まるため、競争が活発になるメリットがある反面、意識しすぎてデメリットになるおそれもあります。
よい成績を残したい気持ちが強くなると、部署やグループよりも自分のことを優先し、周囲の人に有益な情報やアイディアを共有しなくなるなど、ほかの従業員の足を引っ張る人も出てきてしまいます。
最適な人事評価制度を構築するには?
絶対評価と相対評価それぞれに、メリット・デメリットが存在します。人事評価の際にどちらを優先すべきかは、企業の目指す方向性によって決めることが大切です。
場合によっては、両方の制度を用いて評価することや、そもそもランクをつける評価自体をなくすことも必要でしょう。
最適な人事評価制度を構築するには、以下のポイントを確認してください。
- 従業員が納得できる評価方法を採用する
- どちらの制度も取り入れる
- ノーレイティングを取り入れる
従業員が納得できる評価方法を採用する
どちらの評価方法を導入するにしても、従業員が納得し、モチベーションを高められる人事評価でなければ意味がありません。
年功序列から成果主義へと移行する際に絶対評価を導入する企業も増えていますが、経済や取引先の状況など、外的な要因に左右される可能性もあります。
従業員全員が納得する評価方法は存在しないからこそ、絶対評価を採用するにしても部署で一律の目標やノルマを課すのではなく、一人ひとりに合った基準を設定し、納得したうえで活動してもらうことが重要です。
どちらの制度も取り入れる
最適な人事評価制度の構築に悩んでいる場合、絶対評価と相対評価の両方を取り入れた評価を検討すべきでしょう。
たとえば、目標やノルマに対して絶対評価を用いれば、個々の努力を最大限汲み取った評価が可能です。役職や給与を決める際には、相対評価を用いて判断すれば、従業員のランク分けが容易に行えるでしょう。
また、営業職のようにノルマがはっきりと示せる職種には絶対評価がマッチしやすく、ノルマが数値化しづらい受付業務や総務などの職種に対しては相対評価での判断が向いています。従業員の納得を得るには、それぞれの職種によって評価基準を変えることも必要です。
ノーレイティングを取り入れる
「ノーレイティング」とは、絶対評価や相対評価のようにレンディング(ランクづけ)しない人事評価のことで、マイクロソフトやP&G・アクセンチュアなどのグローバル企業が導入していることから注目を集めています。
絶対評価や相対評価の際に行っていたランクでの評価を廃止する代わりに、上司と部下の対話が重視され、目標も設定される点が特徴です。上司が部下に対し、月に数回のフィードバックを行い、その都度評価を伝えることから、モチベーションを高く維持したまま活動できます。
また、リアルタイムでのフィードバックや評価を上司から聞けるため、従業員が納得しながら仕事を進められる点がメリットです。
従業員をランクに分けて評価することに疑問を感じる企業は、ノーレイティングの導入も検討するとよいでしょう。
まとめ
人事評価の際に用いられる絶対評価は、あらかじめ決められた目標やノルマの達成度合いによって評価が決まる方法です。
他の従業員と比較して順位を決める相対評価よりも基準が明確なため、理解を得やすい点がメリットといえます。しかし、結果が重要でプロセスは評価に反映されない点や、目標を数値化できる職種以外に用いることが困難な点はデメリットです。企業によっては向かない方法であることも理解すべきです。
企業の方向性に合っていることや、従業員の納得が得られるかを考慮して、絶対評価を導入しましょう。
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