人事異動の内示は、企業活動において重要な節目となる瞬間です。社員のキャリアやモチベーションに大きな影響を与えるだけではなく、組織全体のパフォーマンスや風土にも深く関わってきます。
そこで本記事では、人事異動の内示の意義やプロセス、社員やマネジメントに求められる対応について詳しく解説します。人事異動の内示を効果的に活用し、組織の成長と社員の満足度を高めるためのポイントを探っていきましょう。
内示とは?
「内示」とは、人事異動に関する情報を事前に伝達することを指します。社内への正式発表前に、異動対象者と関係者に通知されるものであり、会社から正式に周知されるまでは内示の内容を他者に漏らしてはいけません。
一方で「辞令」とは、会社が従業員に対して、人事異動・昇格などの人事に関する決定事項を通知するものです。内示はまだ変更の可能性がある段階ですが、辞令は正式な決定であり、基本的に覆りません。
内示が人事異動の準備や打診として使われるのに対し、辞令は決定事項を正式に通知するためのものです。従業員は、辞令を正当な理由なしに拒否することはできませんが、内示については拒否できる場合もあります。
そして「発令」は、内示や辞令のような特定の内容を指すのではなく、辞令や指示を出す行為そのものです。「辞令を発令する」という表現で使われます。辞令を出す際には「発令日」を記載し、いつ出された命令であるかを明確にします。
人事異動の内示の種類
人事異動に際しては、さまざまなシーンで内示が行われます。内示の種類ごとに、内容を詳しく見ていきましょう。
異動と役割変更
人事異動の内示は、現在の部署から別の部署への配属が決まった際に使用されます。これは最も一般的な人事内示の例です。また、部署は変わらずに役割が変更される場合にも内示が行われることがあります。
転勤の通知
転勤は居住地の変更を伴うケースが多く、より多くの準備期間が必要となります。ほかの人事内示よりも早い時期に行われることが一般的です。また、転勤が必要な場合、生活に大きな影響が及ぶことから、転勤の内示は本人の意向を確認する側面も持っています。
昇進と昇格
昇進は、組織内での役職が上がることを指します。一方、昇格は、職務遂行能力などに基づいて設定された社内の階級や等級が上がることです。どちらの場合も、内示が行われることがあります。
その他の内示
上記以外に人事内示が行われる例として、出向が挙げられます。出向には、会社に籍を置きながら関連会社などで働く「在籍出向」と、籍を移籍して別の会社で働く「移籍出向」があります。通常、どちらの場合も、正式な発表前に内示が行われます。
人事異動で適切な内示の時期はいつ?
人事異動で適切な内示の時期は以下のとおりです。
転居を伴う人事異動の適切な内示時期
- 単身の場合:転勤の1か月前までに内示するのが望ましい。
- 家族を伴う場合:3か月〜6か月前に内示することが一般的。
- 海外に異動の場合:3か月以上前を目安に内示することが推奨される。
転居先の選定や引っ越しの準備など、必要な手続きのための十分な時間を確保することが重要です。
転居を伴わない人事異動の適切な内示時期
一般的には、異動の1週間〜1か月前が適切です。新しい職務内容の理解や現在の職務の引継ぎを行うために、時間的な余裕を持たせる必要があります。また、従業員が心理的に準備を整えて異動に臨めるよう配慮することも重要です。
人事異動の内示が出たら行うべきこと
異動の内示があった場合、異動者は業務の引継ぎを円滑に進めるための準備を始める必要があります。一方、会社側も事務手続きなどを迅速に行い、異動をスムーズにサポートしなければなりません。
異動の内示後に、従業員と総務担当者がそれぞれ行うべき具体的な対応を解説します。
従業員
従業員が内示後に実施すべきことは以下のとおりです。
業務整理
異動後、後任者が業務をスムーズに引継げるよう、自身が担当する業務を整理し、引継ぎ資料を作成します。引継ぎ資料には、業務の内容や進行状況、組織の全体目標などを詳細に記載します。また、取引先への対応方法や自身が考案した業務改善策なども加えるとよいでしょう。
後任者への引継ぎは、異動が部署内で周知されたあとに実施します。業務を共に進めながらの引継ぎが理想ですが、それが難しい場合でも、引継ぎ資料を文書やデータとして保存しておくことが重要です。
挨拶回り
異動の告知が許可されたら、取引先や顧客に電話で報告しましょう。後日、直接訪問して挨拶をすることで、信頼関係を築けます。後任者が同席すれば、相手にも安心感を与えられるでしょう。
都合や遠方で直接訪問が難しい場合は、メールや電話で個別に挨拶を行います。また、異動先でも適切に挨拶を行うことが重要です。
個人の整理
異動の直前までに、使用していたデスクやロッカーなどの整理と清掃を行いましょう。後任者が使いやすいように書類やファイルを整理し、業務の引継ぎを円滑にします。
必要に応じて、デスクを拭いたり、整頓したりして清潔に保つことも大切です。これにより、後任者も快適に業務へ取り組めます。
最終日の挨拶
最終出勤日には、部署の上司や同僚にお礼の挨拶を行います。個別に挨拶する場合や、全体の集まりでスピーチをする場合など、形式はさまざまですが、これまでの支援に感謝の意を表し、新たな職場での抱負を伝えましょう。
総務担当者
総務担当者が内示を行ったあとに実施すべきことは以下のとおりです。
異動者の心理的なサポート
人事異動では、新たな人間関係や未知の業務に対するストレスが生じやすくなります。とくに、転勤に伴う引越しでは、手続きや新しい環境への適応に不安を感じることがあります。
従業員の声に常に耳を傾け、問題が生じた場合には積極的に対応して解決策を共に考えることが重要です。異動後も適切なフォローアップを行い、従業員が安心して新しい状況に適応できるようサポートしましょう。
事務手続き
職場内での異動ではとくに法的な手続きは必要ありませんが、転勤による住所変更が伴う場合は多岐にわたる手続きが必要です。
たとえば、社会保険の資格の変更手続きや雇用保険の「転勤届」の提出などが法的に義務付けられています。異動を円滑な実施するには、状況に応じて必要な手続きを適切に行うことが不可欠です。
名刺の手配
異動後の挨拶回りで使用する名刺の準備は、異動が内示されたら速やかに行う必要があります。急な異動であっても名刺の手配が追いつくよう、効率的に進めましょう。
名刺のテンプレートを使用して自作する方法もありますが、手間を省きたい場合はインターネットを利用した名刺の注文が便利です。必要な情報を入力することで、高品質な名刺を迅速に作成できます。
備品の準備
異動者が業務を円滑に開始できるよう、必要な備品を用意します。文房具などのオフィス用品はもちろん、社内での利用を見越してメールアカウントの作成やネットワークへのアクセス権の設定なども準備しておきましょう。
人事異動を成功させるための内示の重要ポイント
さまざまな形式の人事異動を円滑に進めるために、内示の段階から注視すべきポイントを紹介します。
手続きを統一する
内示は機密性の高い行為であり、それを遵守するのは企業の責任です。内示に関する情報が秘密であることは理解していても、適切な手続きが不透明だと管理が難しくなります。
そのため、内示の手順を会社の規則として確立することが重要です。具体的には、以下の項目をルール化することが推奨されます。
- 異動が決定したあとの情報共有のタイミング
- 人事担当者の処理手順
- 内示対象者への連絡タイミング
- 内示の期限と情報の秘匿期間
- 内示から正式な発令までの流れ
人事担当者は、決定された人事異動に関する情報を整理し、必要な通知を行うためのフローを設定しましょう。
ルールを設ける
内示の手順だけではなく、守るべきルールも明確にしておくことが重要です。たとえば、以下のようなルールを明文化して社内で共有します。
- 内示の定義と目的
- 内示の例示
- 内示の対象者
- 内示を受けた人の義務と責任
- 口外禁止の規定
- 内示や人事関連情報に関する相談先
とくに、誰が内示を受けるべきかをルールに基づいて判断できるようにすることで、情報の漏洩や不必要な情報共有を防止できます。
守るべきルールを明確化して人事異動を成功させよう!
人事異動の内示は、組織のなかでの役職や責任の変更を伴う重要な出来事です。従業員にとっては新たなチャレンジや成長の機会となる一方で、組織の方向性や戦略にも大きく影響を与える可能性があります。そのため、守るべきルールを明確化したうえで、慎重に実施しなければいけません。
そして、人事異動を成功させるには、異動先の求める人材像を把握する必要があります。
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