エンゲージメントが低い企業にはどのような特徴があるのでしょうか。
エンゲージメントが低いと、仕事に対するモチベーションが低下し、離職率の増加につながってしまいます。しかし、エンゲージメントを向上させるための施策について悩む担当者が多いのも事実です。
この記事では、エンゲージメントが低い原因や改善によって得られる効果、向上させるための施策の取り組み方について解説します。
社員のモチベーションの低さに悩んでいる人は、ぜひこの記事を参考に、エンゲージメントを向上させる効果的な施策について考えてみてください。
エンゲージメントが低くなる4つの原因
以下の4つの原因によって、企業のエンゲージメントは低くなる傾向にあります。
エンゲージメントが低くなる原因を理解したうえで、効果的な施策を提案しましょう。
1.勤務時間に応じた賃金制度
勤務時間に応じて賃金が発生する仕組みを採用している企業の多くは、能力を十分に発揮する必要がないため、エンゲージメントが低下してしまいます。
そのような企業では、業務を効率良く早く終わらせたり、人より多くの仕事をしたりしても、給与が加算されることはありません。
結果として、決められた時間までゆっくりと仕事を進めようとする社員が増加してしまうのも事実です。また、より多くの仕事を効率良く終わらせるために、生産性を高めようという意識も失われてしまいます。
2.過剰な法令遵守
社員の意欲的な挑戦の妨げになる過剰な法令遵守は、成功体験が得られないため、エンゲージメントが上がりにくくなってしまいます。
社内外で発生するさまざまなトラブルに対して、予防のためのルールを追加することは、リスクマネジメントの効果的な手段のひとつです。
一方で、手続きやチェックが煩雑になるケースも多く、社員のチャレンジ精神が損なわれることも少なくありません。
たとえば、過去のインシデント対応により、複数のチェック項目やルールが追加されると従業員の裁量が少なくなり、やる気の低下につながります。
ルールを厳格化しすぎると社員のチャレンジ精神も損なわれるため、成功体験を得られない組織になってしまいます。
3.組織の複雑化
組織が複雑化することで、誰のために仕事をしているのかわからなくなり、エンゲージメントが低下してしまいます。
一般的に企業の規模が大きくなるにつれて、組織は複雑化し、業務も細分化される場合がほとんどです。企画や開発、広報など業務が細分化することによって、ほかの部署が取り組んでいる内容を把握しにくくなり、意思決定にも時間がかかる傾向にあります。
特に、スピード感が求められる業務では、社員が能力を発揮しにくくなってしまいます。上司や同僚とのコミュニケーションや部署間の調整にストレスを感じる人も少なくありません。
4.雇用制度
終身雇用制度や年功序列制度の企業では、自分の立場の維持を優先してしまうため、仕事に対するモチベーションを保てません。モチベーションが維持できないと、顧客にとって最適な提案ができず、業績や信用の低下につながってしまう場合がほとんどです。
たとえば、顧客から要望があっても、自分の立場を脅かすような提案はしないといったことが発生してしまいます。
また、仕事に対する専門性やプロ意識よりも、与えられた役割に対応力が求められることから、エンゲージメントも低下しやすい傾向にあります。一方で、自分の役割が明確になっている環境であれば、仕事に対するプロ意識が高まりエンゲージも向上しやすくなります。
低いエンゲージメントを向上させるための取り組み4ステップ
エンゲージメントを向上させるには、以下の4ステップの取り組みが重要です。
エンゲージメント向上のための施策を考える際は、定義づけをしっかりしましょう。
エンゲージメントの向上について詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
1.エンゲージメントの定義づけをする
エンゲージメントが高い状態とは、社員がどのような状態であるのかを明確にします。エンゲージメントの定義が曖昧だと、施策の効果測定が正しくできないため、以下のように具体的な指標を定めましょう。
- 自社で働くことを知人に勧めたいと感じる
- 与えられた目標を達成したいと感じる
- 仕事に必要なスキルを自ら伸ばしたいと感じる
定義づけをする際は、できる限り具体的にイメージするのが重要です。
2.課題を明確にする
自社の現状を見直し、課題や問題点を洗い出したうえで、理想とする状態とのギャップを把握します。
課題や問題点を洗い出す際には、エンゲージメントの数値化が欠かせません。
社員のエンゲージメントの測定結果を数値化するには、エンゲージメントサーベイの活用がおすすめです。
エンゲージメントサーベイに加えて、アンケートやヒアリングを組み合わせることで、課題をより明確にできます。社員が企業にどの程度貢献したいかを調査して、施策を検討しましょう。ヒアリングを通して、現場の声を可視化するのも重要です。
エンゲージメントサーベイについて詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
3.エンゲージメント向上の施策提案・実行する
課題を解決し、エンゲージメントを向上させるための施策を提案し、実行します。
たとえば、コミュニケーションに課題を感じている場合は、株式会社リーディングマークが提供している「ミキワメ ウェルビーイングサーベイ」を使用すれば、適切なタイミングで1on1ミーティングを設定できます。
企業全体に新しい風土が定着するのには時間がかかるため、短期的な結果で判断せず、長期的に取り組んでいくのが重要です。そのため、施策を考える際は、継続的に挑戦できる内容を提案しましょう。
施策を実行したあと、どの程度の期間・どのような方法で効果検証するのかも事前に決めておきます。
4.効果検証・改善提案する
施策を決定した際に決めたタイミングで効果検証します。事前に決めた測定方法によって、エンゲージメントが向上しているか確認しましょう。
測定方法としては、以下のような例が挙げられます。
- 施策を実施する前にエンゲージメントを測定する
- 施策を実施してから1ヶ月後に施策前の数値と比較する
- 数値の向上が見入られなければ、再検証し、新たな施策を立てる
PDCAサイクルを回し、効果的にエンゲージメントの向上ができる施策を考えるのが重要です。
エンゲージメント低下を防ぐ3つの施策
エンゲージメントの低下を防ぐには、以下のような施策がおすすめです。
具体例を参考に、自社でも効果的な取り組みを検討しましょう。
1.定期的な1on1ミーティングの実施
社員のエンゲージメント向上には、定期的なコミュニケーションが不可欠です。月に1回の頻度で、上司と部下が1対1で行うフィードバックセッションを設定します。
フィードバックセッションでは、部下の業務の進捗やキャリア目標、課題などを自由に話しましょう。上司が一方的に話してしまうと逆効果になるため、聞き役に徹するのが重要です。
ギャラップ社の調査によると、定期的な1on1ミーティングを実施することで、社員のエンゲージメントは300%向上すると報告されています。
また、ハーバードビジネスレビューでも、同僚の約2倍の時間1on1ミーティングを実施すると、離職率が67%低下するとされています。
2.わかりやすいルールを設定する
やるべきことを明確にすることで、能力を発揮しやすくなるため、エンゲージメントの向上に効果的です。
たとえば、経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」を運営しているユーザベースでは、バリューやミッションなどを以下のように設定しています。
- 7つのルール
- 4つのやらないこと
- 31の約束
わかりやすい言葉で具体的に設定することで、社員が何をすべきで、何をやらなくても良いのかを判断しやすくしています。
3.目標を共有する
組織の高い目標を共有することで、モチベーションが上がり、エンゲージメントが向上します。
目標を共有する際には、OKR(Objectives and Key Results)と言われるマネジメント手法がおすすめです。
OKRでは、組織の目標と成果指標を設定し、チームや個人にも共有します。組織の目標が個人にもつながることで、個々の成果が全体の目標達成に直結するのがメリットです。組織として一貫した目標を設定できるため、同じ方向を向いて取り組みやすい施策と言えます。
たとえば、メルカリでは、グループ全体のOKRを4半期が始まる前に設定し、事業部や部署・チーム・個人に落とし込んでいきます。設定したOKRの進捗は毎週共有し、適切であるかも見直すのが特徴です。
メルカリの取り組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
エンゲージメントが低い会社はどうなる?4つの特徴
エンゲージメントが低い会社の特徴は以下のとおりです。
自社の現状に当てはまる特徴がないか見直しましょう。
エンゲージメントについて詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
1.社員のモチベーションが低くなる
社員が仕事に対してやりがいを感じられずに、無気力状態で仕事をしている企業は、エンゲージメントが低い傾向にあります。その結果、ネガティブな発言が増え、質の高い仕事をできなくなってしまう場合がほとんどです。
また、モチベーションの低い社員は、企業の目標や方向性を理解しようとしません。ほかの社員や職場環境に悪影響を及ぼす可能性もあるため、注意が必要です。周囲のモチベーションが下がり、意欲的に能力を発揮する人材が減少してしまいます。
モチベーションについて詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
2.コミュニケーションが足りなくなる
円滑にコミュニケーションが取れないと問題解決や不満の改善に時間がかかり、社員が働きにくさを感じ、エンゲージメントが下がってしまいます。
また、世間話のような仕事以外のコミュニケーションが取れないと、チームワークや一体感が得られないため、職場の雰囲気も悪くなってしまう場合がほとんどです。
株式会社リーディングマークが提供している『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』なら、社員一人ひとりの心理状態や性格を可視化してくれるだけでなく、AIがコミュニケーションの適切なタイミングやマネジメント方法を提案してくれます。
3.離職率が高くなる
エンゲージメントが低い企業は、以下のような特徴を持つため、離職率が高くなる傾向にあります。
- やりがいを感じられない
- 愛社精神がわかない
- 働き続けたいと思えるほどのものがない
労働人口は減少傾向にあるため、優秀な人材確保は欠かせないポイントです。エンゲージメントの低い企業は、人材が流出しやすいことから、存続も危ぶまれています。
4.人事評価を不公平に感じる可能性がある
エンゲージメントが低いと、企業に対する信頼性が下がるため、人事評価を不公平に感じやすくなります。社員が人事評価に不公平さを感じやすいポイントは以下のとおりです。
- 成果を出してもほかの社員と評価が変わらない
- 仕事の向き合い方を評価してくれない
- 実績や取り組みを正当に評価されない
人事評価の公平性を感じられないと、企業への貢献に意味を見出せなくなるため、社員が不満を感じやすくなってしまいます。
人事評価について詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
低いエンゲージメントを改善することで得られる5つの効果
エンゲージメントを改善することで、以下の5つの効果を得られます。
エンゲージメントの改善は簡単ではありませんが、向上させることでさまざまな効果を感じられます。
1.業績の向上
エンゲージメントが高い企業はモチベーションも高く、自発的に問題解決に取り組めるため、生産性が向上し、業績も上がる傾向にあります。
モチベーションエンジニアリング研究所が、慶應技術大学大学院経営管理研究科とビジネス・スクール岩本研究室と共同で研究した結果でも、エンゲージメントスコアが1上がると営業利益率が0.35%上昇し、労働生産性が0.035上昇すると明らかになりました。
ただし、エンゲージメントスコアを経営の指標として、継続的に取り組むのが重要です。
エンゲージメントについて詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
2.顧客満足度の向上
エンゲージメントが上がることで、社員のモチベーションも向上するため、顧客を第一に考えた質の良いサービスの提供が可能です。結果として、顧客が求めるクオリティの高い製品を提供できるため、満足度が向上します。
3.職場の雰囲気の改善
エンゲージメントの高い職場は、雰囲気が良くなる傾向にあります。また、主体的に仕事に取り組む人が増えるため、意見交換も活発になる場合がほとんどです。
意見交換が活発になれば、企業の目標達成のためにはどうすべきかと生産的な意見を交わせるようになります。建設的な意見を出し合えることから、優秀な人材ほど満足できる環境になる点がメリットです。
社員同士のコミュニケーションが活発化するため、お互いの仕事内容を把握しやすくなり、スムーズな連携が期待できます。
4.定着率の向上
エンゲージメントが向上することで離職率が下がり、定着率が向上します。優秀な人材が定着すれば、社内全体が活気あふれた雰囲気になるため、業績アップにもつながるでしょう。
厚生労働省によると働きがいを感じる職場ほど離職率が下がるという分析結果も出ています。
在籍している企業で働く価値を見出してもらうことが重要です。エンゲージメントの高い職場なら、企業への貢献の喜びを実感できます。
5.チームワークの強化
企業のビジョンや理念に共感している社員が多いと、エンゲージメントも向上します。
同じ目標を目指して業務に取り組めるため、社員同士の一体感も高まり、チームとして問題解決に取り組めるようになるのがメリットです。お互いを認め合えるようになれば、信頼性も向上します。
低いエンゲージメントを改善させた企業事例4選
エンゲージメントの改善に成功した以下の4つの企業事例を紹介します。
企業名 | 取り組み |
株式会社TBSアクト | 定期的な1on1の実施 |
株式会社千葉キャリ | 目標のすり合わせ |
株式会社LIXIL | エンゲージメントサーベイの実施 |
株式会社小松製作所 | ワークショップや研修の実施 |
他社の成功事例を参考に自社に合った取り組みを検討しましょう。
1.株式会社TBSアクト:定期的な1on1の実施
株式会社TBSアクトでは、定期的に1on1ミーティングを実施し、コミュニケーションの機会を増やしています。定期的な1on1ミーティングによって社員同士の相互理解が進むため、社内コミュニケーションが活性化するのもメリットです。
また、1on1で対応しきれない部分に関しては、エンゲージメントサーベイやアンケートを実施しています。やりがいや将来についても個別に相談できるため、希望するキャリアを歩みやすくなります。
2.株式会社千葉キャリ:目標のすり合わせ
株式会社千葉キャリでは、社員一人ひとりが目標を設定することで、チャレンジ精神を芽生えやすくしました。社員自ら目標を設定することで自主性が上がり、エンゲージメントの向上にもつながります。
また、定期的に1on1ミーティングを実施し、設定した目標の進捗確認や方向性のすり合わせなどをしているのも特徴です。目標を明確にすることによって、1on1ミーティングでビジネスをどのように展開していくかといった具体的な話ができるようになります。
3.株式会社LIXIL:エンゲージメントサーベイの実施
LIXILでは、エンドユーザーに満足してもらうようなサービスを提供するために、エンゲージメントの向上を目指しています。
今までも年1回、従業員満足度調査を実施していましたが、タイムリーな社員の現状の把握ができておらず、課題の仮説と実態にズレが生じいました。
月1回エンゲージメントサーベイを実施することで、社員の現状把握に努めています。
エンゲージメントサーベイによって、客観的な数値として社員の現状を明確にでき、ニーズに合った施策の提案が可能になりました。
現場でも気軽に施策をできるように環境を整えたことによって、貢献意欲が高まり、エンゲージメントスコアが10ポイント上昇しています。
4.株式会社小松製作所:ワークショップや研修の実施
小松製作所では、マネジメント層に向けて研修やワークショップを開催しています。革新的な思考や発想を生み出せるチーム作りには、上司の役割が重要です。
マネジメント層が部下に適切に気を配れるように、以下の5つの要素を定めています。
- 信頼:リスクを冒すようなチャレンジができる
- モチベーション:新しい挑戦や成長につながる仕事ができる
- 変化:変化に対応できる組織やチーム、人
- チームワーク:ストレスが少なく高め合えるようなチーム作り
- 権限委譲:仕事を任せられるようになる
マネジメントする際には、成長意欲の高い社員が学びやすい環境を整えることも欠かせません。
また、研修で学びながら実践を進めた結果、エンゲージメントスコアが33から70に上昇し、離職率は33%低下しました。
エンゲージメントについてのよくある質問
エンゲージメントについてのよくある以下の質問について解説します。
エンゲージメントに関する疑問を解消したうえで、自社にあった改善策を検討しましょう。
エンゲージメントサーベイは意味がないって本当?
エンゲージメントサーベイは実施する目的を明確にしていないと、十分な効果が得られません。また、改善策を立てるには数値の分析が必要なため、実施しただけでは意味がないとされています。
エンゲージメントサーベイに対する不信感を防ぐためにも、集計した結果を元に社員にフィードバックするのが重要です。
エンゲージメントサーベイは意味がないと言われる理由について詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
日本のエンゲージメントが低いのはなぜ?
日本は個人の強みを活かしにくい職場環境であるため、仕事にやりがいや幸せを感じにくい傾向があります。2022年のギャラップ社の調査によると、日本のエンゲージメントは5%で145カ国中最下位です。
一方で、アメリカのように個人の強みを活かせる環境の場合、高い成果を発揮しやすいためエンゲージメントが上がりやすくなります。
エンゲージメントを改善してより良い会社環境を整えましょう
エンゲージメントは、組織の複雑化や勤務時間に応じた賃金制度などによって低下する傾向です。
仕事に対するモチベーションの低い社員が増えたり、離職率が高くなったりしている企業はエンゲージメントも低くなっている可能性があるため、改善を試みる必要があります。
エンゲージメントを改善することで、業績の向上や定着率の改善が期待できます。また、施策を検討する際は、自社のエンゲージメント向上の定義づけを考えるのも重要です。
エンゲージメントの改善に取り組んでいる人は、ぜひこの記事を参考に、効果的な施策を提案して、より良い会社づくりをしていきましょう。
エンゲージメントを改善させた事例について詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
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