良好な関係性を築けていたはずの部下から、突然退職の相談を受けて驚いた経験はありませんか。
定期的に1on1を実施していても、部下の本音を引き出せていない場合、退職の兆候に気付かないまま会社を辞めてしまうことも少なくありません。
質の高い1on1を実現するためには、目的や意義を明確にしたうえで、部下の思考を深めるような対話(進め方)が求められます。
本記事では、1on1が退職防止にどのような効果をもたらすのかを、調査データや事例を交えながら解説します。
- 1on1が必要とされる本当の理由
- 退職を防ぐ効果あり!効果的な進め方【5ステップ】
- 退職の意思を伝えられたときの対応方法
この記事を読むことで、部下の本音を引き出す1on1の進め方や、退職の兆候(行動・態度)を察知できる方法がわかります。ぜひ最後までご覧ください。
1on1には退職を防ぐ効果がある?現状と課題

1on1ミーティングは、上司と部下が定期的に対話する機会として、多くの企業で導入が進んでいます。目的は企業ごとに異なり、以下のように幅広い場面で活用されています。
- 部下の成長支援
- 上司と部下の信頼関係の構築
- 社内のコミュニケーション活性化
- 社員の離職防止
対話を通じて、普段のコミュニケーションではわかりにくい悩みや不安を聞き取ることで、結果的に退職の防止にもつながります。
1on1を離職防止策としてどのように活用しているのか、現状と課題を整理してみましょう。
(現状)7割の企業が離職対策として定期的な1on1を実施
株式会社リーディングマークの調査において、大企業の人事担当者303人に対し「若手社員の離職対策をしているか」と質問したところ、7割が「対策をしている」と回答しました。
さらに「具体的にどのような対策をしているか」の問いに対して、以下のような回答が得られています。
- 定期的な1on1面談の実施(76.9%)
- メンター制度の導入(57.5%)
- フィードバックを重視した評価制度の導入(52.8%)
この調査結果から、多くの企業が1on1を「離職防止の中心施策」に位置づけていることがわかります。メンター制度や評価制度の導入も有効な取り組みですが、日々の悩みや不安に気付くという点では、1on1が適した施策と言えます。
一方、上司との関わり方やマネジメントを理由に退職を考える社員がいるのも事実です。
1on1と退職意向に関する調査において、社会人1〜3年目の社員に「上司からのマネジメントに違和感を感じたことはあるか」と質問したところ、53.2%が「ある」と回答しました。
半数以上が違和感を覚えていることから、上司の関わり方(マネジメント)によっては、退職を検討するきっかけになってしまう可能性も捨てきれません。
参考:「1on1と退職意向」に関する調査|一般社団法人予防カウンセリング協会
このように、企業は1on1を重視している一方で、上司側のスキル不足や対応力の差によって、効果が十分に発揮されていない点がうかがえます。
(課題)5割以上の企業が退職の兆候を把握できていない
多くの企業で離職防止に取り組んでいるものの、「社員が突然会社を退職してしまう」といったケースも少なくありません。
同調査(株式会社リーディングマーク)において、「若手社員が離職を検討している兆候を把握できているか」と質問したところ、以下のような結果となりました。
- かなりできている:5.3%
- ややできている:33.0%
- あまりできていない:46.2%
- 全くできていない:6.6%
- わからない/答えられない:8.9%
半数以上の企業で退職を検討しているかどうか把握できておらず、実際には「退職の意思を伝えられて初めて気付く」というケースが多いことがわかります。
この背景には、部下の小さな変化を察知する仕組みが整っていないことや、他の業務を優先するあまり1on1の時間を十分に確保できていないことが考えられます。
社員の退職を防ぐためには、定期的な対話を通じて部下と向き合い、何でも相談し合えるような関係性を築くことが重要です。
1on1が必要とされる3つの理由

1on1が必要とされる主な理由として、以下の3点が挙げられます。
部下と良好な関係性を築くことだけが目的ではなく、離職防止や人材育成にも欠かせない取り組みです。以下より詳しく見ていきましょう。
退職を検討している兆候に気付くため(態度・行動の変化)
1on1が必要とされる理由のひとつは、対話を通じて部下の態度や行動の変化に気付き、「退職を検討しているかどうか」を把握するためです。
普段のコミュニケーションでは気付きにくい小さな変化でも、落ち着いた場で対話すると見えてくることがあります。
たとえば、以前は積極的に意見を述べていた社員が、急に発言を控えるようになったケースです。日常的な会話だけだと、「今日は調子が悪いのかな」と見過ごしてしまいがちです。
しかし、1on1を通して詳しい話を聞くことで、部下から「自分の判断に自信がない」「ミスをしてから周囲の視線が気になる」といった本音が出やすくなります。
普段は見逃しやすい小さな情報でも、1on1では深く掘り下げられるため、退職につながるリスクを察知して適切な対応につなげられます。
仕事への熱意を高めるため(エンゲージメントの向上)
仕事への熱意を高めるには、部下が「自分は会社に欠かせない存在」と実感できる環境づくりが必要です。
その軸となる取り組みが1on1ミーティングです。上司との対話によって「自分の意見や努力が認められている」と感じられるほど、部下は仕事への向き合い方が前向きになります。
実際に株式会社Kakedasの調査においても、定期的な1on1の満足度が高い人ほど、仕事への熱意も高い傾向にあることがわかりました。
定期的な1on1に「非常に満足」と回答した人に対して、現在の仕事への熱意について質問したところ、以下のような結果となりました。
- 仕事に対して非常に熱意がある:67.5%
- 仕事に対してある程度は熱意がある:75.4%
対話を通じて「頑張りを認められている」「困ったら相談できる」と感じてもらうことで、部下は主体的に仕事ができるようになります。
エンゲージメント(熱意・活力)の高い社員は離職率も低いことが、厚生労働省の調査でも明らかになっています。社員の離職を防ぐためにも、継続的な1on1は効果的な施策と言えるでしょう。
対話を通じて次の行動を明確にするため(成長支援)
上司との対話を通じて、「次に何をすれば成長につながるのか」を部下に理解してもらうことも、1on1が必要とされる理由のひとつです。
多忙になると目の前の仕事に追われ、「どのようなキャリアを目指すべきか」を考える時間が確保できなくなってしまいます。
そこで定期的に1on1を行い、上司と一緒にキャリアの方向性を整理することで、次のステップが明確になるのです。
対話によって「次にとるべき行動」が明確になると、部下は迷いなく業務に取り組めるようになり、成果も安定しやすくなります。
一方で、部下が漠然と「成長したい」と思っていても、具体的に何をすべきか見えていない場合があります。
1on1においては、上司が思考を促す質問を投げかけ、部下自身が方向性を言語化できるようサポートすることが重要です。
以下の記事では、マネジメント理論に基づく「理想的な1on1の流れ」を、臨床心理士が詳しく解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。
1on1自体が退職の原因になる?よくある失敗例

1on1は本来、部下との信頼関係をつくる重要な取り組みですが、配慮を欠いた進め方をしてしまうと逆効果になる場合があります。主な失敗例は以下のとおりです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
なお、部下が「1on1は意味がない」と感じる理由と対策については、以下の記事で解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。
上司が一方的に話し、部下の話を聞かない
よくある失敗例として、上司が業務の指示や自分の意見を一方的に話し、部下の状況を理解しようとしないケースが挙げられます。
1on1の目的は、部下の悩みや不安を聞き、「次にとるべき行動」を一緒に考えることです。しかし、上司が一方的に話し続けるような1on1だと、部下は悩みを抱えていてもなかなか言い出せません。
その結果、部下は上司に相談する意欲を失い、人間関係の悪化やモチベーションの低下につながります。最終的には、退職を検討するきっかけにもなりかねません。
1on1を有意義な時間にするためには、上司が「話すこと」よりも「聞くこと」を意識し、部下の言葉を遮らず耳を傾ける姿勢が求められます。
以下の記事では、部下が1on1を苦痛に感じる「上司のNG行動」を詳しく解説しています。具体的な対策についても、「準備・実践・フォロー」の段階ごとに紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
話すテーマがなく雑談だけで終わってしまう
1on1でよく起きる失敗のひとつに、話す内容を決めないまま始めてしまい、気付けば雑談だけで終わってしまうケースがあります。
本題へスムーズに入るために雑談(アイスブレイク)は必要ですが、それだけで対話が終わると、部下は「結局何のための時間なのか」と疑問を感じてしまいます。
こうした状況は、本当に悩んでいることを聞く機会を失い、退職の兆候を見逃してしまう原因にもなりかねません。とくに若手社員は自分から悩みを言い出しにくいため、状況を把握するための対話が不可欠です。
1on1を行うときは、上司が話題を決めるのではなく、部下に話したいテーマを考えてもらうことが重要です。
「前回決めた行動の振り返り」や「課題の確認」など、あらかじめテーマ例を共有しておくと、雑談から本題への流れがスムーズになります。
いつも話す内容が同じ(形式的)
よくある失敗例として、1on1が形式的になってしまい、毎回同じ内容のやり取りで終わってしまうケースが挙げられます。
たとえば、いつも「最近どう?」などの抽象的な質問だけだと、部下は思考を深められず新しい気付きを得られません。
また、部下の抱える負担やストレスを見過ごしてしまう原因にもなり、退職の兆候を察知できない可能性があります。
部下の本音を引き出すためには、1on1のテーマを毎回変えて、対話の幅を広げることが大切です。
前回話した内容を振り返り、「どのような進捗があったのか」「どこに困りごとがあるのか」を確認することで、自然と深掘りした対話が可能になります。
以下の記事では、部下に「1on1をやめてほしい」と言われる原因と対策について、具体例を交えながら詳しく解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。
1on1の優先順位が低く、計画的に実施できていない
業務が忙しいことを理由に1on1を後回しにされ、計画的に実施できなくなるケースも、よくある失敗例の一つです。
予定していた時間をキャンセルしたり、何度も先延ばしにしたりすると、部下は「自分のことを軽視している」と感じてしまいます。
その結果、悩みや不安を相談する機会が減り、上司との人間関係の悪化にもつながりかねません。
また、1on1が不定期になると、部下の小さな変化も見逃しやすくなります。本来であれば早めに気付けた業務負担やストレスを把握できず、退職の意思を告げられて初めて気付く場合もあります。
この状況を防ぐには、まず1on1を固定の取り組みとして計画し、変更が必要な場合でも必ず代替日をすぐに提示することが重要です。「1on1を必ず実施する」という姿勢が部下に安心感を与え、相談しやすい関係づくりにつながります。
1on1で社員の退職を防ぐ!効果的な進め方

1on1を通じて社員の退職を防ぐためには、思いつきで話を進めるのではなく、全体的な流れを意識することが大切です。具体的な進め方を5つのステップに分けて解説します。
| 手順 | ポイント | |
|---|---|---|
| 1 | 準備 | 目的やテーマを部下と共有する |
| 2 | 雑談 | 仕事以外の話題で部下の緊張を和らげる |
| 3 | 振り返り | 前回決めた行動の進捗を確認する |
| 4 | 対話 | 部下の思考を深める質問をする(傾聴・共感) |
| 5 | 行動の決定 | 実行可能な行動を部下と一緒に考える |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
なお、1on1の進め方については、以下の記事でも詳しく解説しています。信頼関係の構築や成長支援など、目的別に適切な進め方を紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
1.準備【目的やテーマを部下と共有する】
効果的な1on1を実現するためには、目的やテーマを部下と共有するなど、事前の準備が必要です。その場の思いつきで話を進めたり唐突に質問したりすると、部下は身構えてしまい、自分の気持ちや本音を話せません。
あらかじめ目的やテーマを共有することで、部下は自分の状況を整理してから1on1に臨み、スムーズに対話を進められます。
テーマを共有するときは、部下が事前に考えやすいように、話したい方向性をシンプルに示しましょう。たとえば、次のようなテーマが挙げられます。
| テーマの例 | 目的 |
|---|---|
| 最近の業務の振り返り | うまくいった点や課題を共有する |
| 困っていること・悩んでいること | 現在の業務負担やストレスを把握する |
| キャリアや今後の希望 | キャリアの方向性を理解したうえで、具体的な支援につなげる |
| 前回決めた行動の振り返り | 行動を通して得たことや、気持ちの変化を確認する |
「何を話せばいいかわからない」と悩んでいる管理職や人事担当者の方は、1on1のテーマを網羅的に解説した以下の記事をご覧ください。目的別のテーマや会話例も紹介しています。
2.雑談【仕事以外の話題で部下の緊張を和らげる】
本題に入る前に数分の雑談(アイスブレイク)を取り入れることで、部下の緊張を和らげ、話しやすい雰囲気をつくれます。軽い雑談は、部下に「安心して話せる時間だ」と感じてもらうための重要なステップです。
雑談といっても、特別な話題を準備する必要はありません。以下のような答えやすい質問をしてみるとよいでしょう。
- 最近の休日はどのように過ごしましたか?
- いまハマっていることはありますか?
- 最近気になるニュースや話題はありますか?
- 仕事以外で困っていることはないですか?
こうした日常的な話題は部下に安心感を与え、自然な対話の流れを生み出します。また、部下の表情や声のトーンなど、ちょっとした変化にも気付きやすくなります。
ただし、雑談ばかりが続くと本題に入れず、1on1の目的が果たせません。雑談はあくまで「対話の入口」として位置づけ、短い時間で切り上げるのがポイントです。
「1on1で沈黙が続いてしまう」「話すことがない」と悩んでいる方は、以下の記事を合わせてご覧ください。上司側・部下側それぞれの対策を詳しく解説しています。
3.振り返り【前回決めた行動の進捗を確認する】
雑談で話しやすい雰囲気をつくったら、本題に入る前に「前回決めた行動」の進捗を確認しましょう。振り返りでは、部下がどの程度行動できたのか、どのような成果や課題があったのかを丁寧に聞き取ります。
たとえば、「仕事の優先順位を見直す」という行動を決めた場合は、以下のような点を確認してみましょう。
- 実際にどのように優先順位を整理したのか
- 取り組んでみて、うまくいった点や改善できた点はどこか
- 逆に、難しかった場面やつまずいた理由は何だったのか
- 優先順位の見直しによって、業務の進め方に変化があったのか
これらを丁寧に確認することで、部下の行動の質や思考の変化が見えてきます。フィードバックするときは、「ここはよくできているね」「この場面では別の方法も試せそうだね」といった具体的なアドバイスをしましょう。
前回の1on1を振り返りながら話を進めるには、対話内容を記録できるツールが有効です。
株式会社リーディングマークが提供する『ミキワメ マネジメント』には、対話を自動で文字起こしする機能や、具体的な行動を自動生成するAIが搭載されています。1on1ツールを検討している人事担当者の方は、ぜひミキワメをご活用ください。
4.対話【部下の思考を深める質問をする(傾聴・共感)】
前回の振り返りが終わったら、部下の思考を深めるための対話(本題)を行いましょう。
テーマに沿って上司が質問を投げかけ、部下の考え・気持ちを引き出して状況を整理しながら、部下自身の気付きを促します。
対話を深めるポイントは、部下の言葉を遮らず、まずは受け止める姿勢を示すことです。以下のような問いかけをしてみましょう。
- そのとき、どのような気持ちになりましたか?
- なぜそう感じたと思いますか?
- どの場面で一番悩みを感じましたか?
- もし理想の状態があるとしたら、どのような姿が思い浮かびますか?
- いまの状況をよりよくするために、次は何ができそうですか?
対話で大切なのは、すぐに結論や解決策を提示せず、傾聴と共感の姿勢で部下の話を聞くことです。部下が自分の言葉で状況を整理し、「次に何をすべきか」を自ら見つけられるようサポートすることが重要です。
5.行動の決定【実行可能な行動を部下と一緒に考える】
対話を通じて部下の状況や気付きを整理できたら、最後に「次にどのような行動を起こすか」を一緒に考えて決定します。
このステップで重要なのは、上司が一方的に行動を指示するのではなく、部下自身が納得して取り組める「実行可能な行動」に落とし込むことです。
目標が高すぎると、部下は達成できないまま挫折する可能性があるため、まずは無理なく取り組める「小さな行動」から始めてみましょう。
また、行動を決めるときには「どの部分が難しそう?」「どのようなサポートがあれば進めやすい?」といった質問を投げかけ、部下の不安を確認することも重要です。
最後に「次はこの日に進捗を確認しましょう」と伝え、今回決めた行動を振り返るタイミングを明確に共有しておきましょう。
1on1で退職の意思を告げられたらどうする?上司がとるべき対応

1on1で部下から退職の意思を伝えられた場合は、以下のような対応をとりましょう。
突然の報告に戸惑うかもしれません。まずは落ち着いて状況を受け止めることが重要です。以下よりそれぞれ詳しく見ていきましょう。
冷静になって部下の話を聞く
退職の意思を告げられたときは、まず冷静になって話を聞くことが大切です。突然の報告に対して感情的に対応してしまうと、部下は「話すべきではなかった」と感じてしまう可能性があります。
たとえば、上司が一方的に「辞めてもらっては困る」と伝えると、部下は自分の気持ちを否定されたように感じ、それ以上話すことを避けるかもしれません。
退職の意思を伝えるまでには、部下の中で多くの葛藤や迷いがあったはずです。その気持ちに寄り添いながら、まずは「話してくれてありがとう」といった言葉を伝え、安心して話せる雰囲気をつくりましょう。
以下の記事では、部下の性格タイプに合わせたコミュニケーション術を解説しています。準備編・実践編に分けて紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
退職理由を丁寧にヒアリングする(改善の余地を検討)
退職の意思を聞いたあとは、「なぜ会社を辞めようと思ったのか」を丁寧にヒアリングすることが重要です。具体的な退職理由を把握することで、組織として改善できる点がないかを検討できます。
たとえば、部下から「忙しすぎるから辞めたい」という発言があった場合、業務量の偏りや周囲のサポート不足が要因になっているかもしれません。さらに深掘りすれば、以下のような改善点が見えてきます。
- 負荷が集中していないかを確認し、業務分担の見直しや増員を検討する
- 相談できる人が周囲にいない場合は、組織としてのフォロー体制を強化する
- 手戻りや不要な作業が多いなど、生産性を下げているプロセスを発見する
このように退職理由を丁寧に聞くことで、本人の悩みだけでなく組織の課題が浮き彫りになる場合もあります。
ヒアリングをするときは、部下が話しやすいように「どういう状態であれば続けられそう?」といった質問で、改善する姿勢を見せることが重要です。
無理に引き止めようとせず、退職の意思を尊重する
部下が退職の意思を示したときは、無理に引き止めようとするのは避けましょう。強引な説得は部下の負担を増やし、かえって関係を悪化させる可能性があるため、部下の意思を尊重する姿勢が求められます。
たとえば、「辞めたら困る」「このタイミングで辞められると迷惑だ」といった強い言葉を発してしまうと、部下は責められているように感じてしまいます。
強引な引き止め方は、部下の決断を否定する形になるため、会社に対する印象を悪化させる要因にもなりかねません。
まずは、「話してくれてありがとう」「気持ちは理解した」といった受け止める姿勢を示すことが重要です。もし改善の余地があって、部下自身も迷っているようであれば、一緒に働き続けられる選択肢を検討しましょう。
1on1で社員の退職を防いだ事例3選

実際に、1on1を通して離職防止に成功した事例として、3社の取り組みを紹介します。
| 施策 | 効果 | 会社名(業種) |
|---|---|---|
| 性格を踏まえた対話で「次にとるべき行動」が明確に | 組織の状態をひと目で把握し、適切なタイミングで1on1ができるようになった | 株式会社リアルソフト(IT・通信) |
| 心理状態を可視化するサーベイで、社員へのケアが可能に | 組織のフォロー体制が強化され、会社を休む人が「1日3〜4人」から「月に1〜2人」まで減少した | 未知株式会社(広告・メディア) |
| 調査結果に基づいた対話で、社員の不満・悩みを解消 | 性格データに基づいたサーベイによって、個人への打ち手が明確になった | 株式会社ペンシル(情報通信) |
これらの事例に共通している点は、1on1の質を高めるための仕組み(ツール)を導入し、社員の状態を正確に把握できるようになったことです。
以下より、それぞれの取り組みを詳しく見ていきましょう。
株式会社リーディングマークでは、部下のパフォーマンス最大化に向けて、効果的なマネジメントを実現する『ミキワメ マネジメント』を提供しています。
1on1のテーマ設定や対話の自動記録、AIによるアドバイスなど、豊富な機能が搭載されています。詳細は以下の資料にまとめていますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
性格を踏まえた対話で「次にとるべき行動」が明確に|株式会社リアルソフト
企業向け業務システムの開発を行う株式会社リアルソフトでは、会社の拡大に伴って、徐々に社員一人ひとりとコミュニケーションをとるのが難しくなっていました。
若手社員が多いこともあり、ストレスを抱えたときに「どう乗り越えたらいいのか」「どう人を頼ったらいいのか」という術を知らず、体調を崩してしまうケースもありました。
そこで同社は、心理状態を可視化するサーベイを月に1回行い、結果に基づいて人事によるフォローや、職場での1on1を実施しています。
自己理解促進を目的としたワークショップを通じて、調査結果の活用方法が明確になったことで、1on1で「次にとるべき行動」を対話できるようになりました。
また、サーベイとストレスチェックを同じシステムで利用できるため、回答する社員と運用する人事の負担も軽減されています。
事例:企業拡大に伴ってのコミュニケーション課題をミキワメで解決|株式会社リアルソフト
心理状態を可視化するサーベイで、社員へのケアが可能に|未知株式会社
コーポレートコーディネート事業を展開する未知株式会社では、社員のエンゲージメント低下によって離職率が高くなり、組織として危機的な状態に陥っていました。
組織状態を正確に把握できていなかったため、個人に対して「どうアプローチすればいいのか」がわからないことが原因でした。
そこで同社では、組織・個人の状態を可視化し、個別の離職防止策を打てる『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』を導入しています。
具体的な活用方法としては、スコアの変化に応じて「ケア対象」になった社員を把握し、上司との1on1を計画しました。
上司だけで解決が難しい場合は、人事との1on1を計画したり、社員同士でサポートし合ったりするなど、組織として離職防止に取り組めるようになりました。
以前は、会社を休む人が「1日3〜4人」いましたが、サーベイの結果を活用した1on1を実施したことで、「月に1〜2人」まで減少しています。
事例:サーベイの結果から改善アクションを実施し、エンゲージメントが劇的に改善|未知株式会社
調査結果に基づいた対話で、社員の不満・悩みを解消|株式会社ペンシル
デジタル戦略コンサルティング事業を展開する株式会社ペンシルでは、チーム(組織)の状態は把握していたものの、個人の状態まで可視化できていない状況でした。
そのため、状態が悪化したときに「どういったアプローチをすればいいのか」「効果的な打ち手は何か」を考えるのが困難でした。
そこで同社では、心理状態を可視化するサーベイを導入し、社員が困っていることや、1on1で話すべき内容を確認しています。
前回の調査結果に比べて急激なスコアの変化がないかを確認し、大きく変化している社員に関しては、マネージャーとの1on1で心当たりを聞いています。
個人の性格データに基づいた質問が配信されるため、以前利用していたサーベイに比べ、個人への打ち手が明確になりました。
事例:組織と個人の心の健康状態を見える化し、エンゲージメントのさらなる向上へ|株式会社ペンシル
1on1に関するよくある質問

1on1に関するよくある質問について、以下の2点に回答します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
退職の兆候を察知する方法はある?
退職の兆候を察知するには、定期的にコミュニケーションをとり、小さな変化に気付くことが重要です。
「会社を辞めたい」という意思は突然固まるものではなく、何らかの不満やストレスが少しずつ積み重なった結果として現れます。
普段から部下の変化に目を向けておくことで、早い段階で1on1につなげられます。具体的には、以下のような変化が退職を考えているサインと言えるでしょう。
- 職場での発言が減る
- 以前より遅刻・早退・休暇が増える
- 成果・業績の波が大きくなる
- 仕事への意欲が低下している
これらの変化は、一時的な疲労であることも考えられるため、1on1で丁寧に話を聞く必要があります。小さな違和感を把握し、早めに対話の場をつくることで、退職を防げる可能性が高まります。
1on1で退職の意思を伝えるにはどうしたらいい?(部下側)
1on1で退職の意思を伝えるときは、話したいテーマとして「今後の働き方について相談したい」と事前に伝えておきましょう。
唐突に「辞めます」と伝えてしまうと、上司が驚いて冷静に対応できない可能性があります。そのため、あらかじめ考えを整理し、以下の流れを意識して退職の意思を伝えてみましょう。
- 退職を決めた背景・理由を簡潔に伝える
- 会社や上司への感謝の言葉を添える
- 今後の引き継ぎについての意向を伝える
また、退職理由を深掘りされたくない場合は、無理に詳細を説明する必要はありません。「個人的な理由のため、深くはお話しできませんが」と前置きすることで、角を立てずに伝えられます。
以下の記事では、1on1で部下が準備すべきことや、心構えについて詳しく解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。
部下が主役の1on1で退職につながる要因を把握しよう

部下の悩みやストレスに早く気付くためには、定期的な1on1の実施が効果的です。仕事への意欲低下といった心理状態の変化は、日頃の業務の中では気付きにくいものです。
退職につながる兆候を見逃さないためにも、1on1で落ち着いて話す時間をつくり、部下が抱えている負担や不安を丁寧に聞き取りましょう。
>>「退職を防ぐ効果的な1on1の進め方」を確認する
部下が「ここなら安心して相談できる」と思える環境をつくり、小さな変化を見逃さないことが離職防止の第一歩です。
株式会社リーディングマークでは、効率的かつ効果的な1on1を実現する『ミキワメ マネジメント』を提供しています。
テーマ設定や対話の自動記録など、豊富な機能が搭載されています。詳細は以下の資料にまとめていますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
ミキワメ マネジメントは、社員の性格・心身状態・目標進捗を踏まえて最適なマネジメントを提供する1on1ツールです。詳細は下記から。






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