「従業員のモチベーションが低く、職場の雰囲気がよくない」
「チームの連携がとれず、業績も伸び悩んでいる」
もしこのような状況に心当たりがある場合、職場(組織)が崩壊する前触れかもしれません。
職場崩壊は突然起こるものではなく、小さなトラブルや問題が積み重なり、徐々に職場環境が悪化していきます。最終的には、倒産・廃業といった深刻な事態につながるケースも少なくありません。
本記事では、以下の内容をわかりやすく解説します。
- 職場崩壊に至るプロセスと「7つの前兆」
- 職場崩壊が起こりやすい企業の特徴・共通点
- 職場崩壊を防ぐために有効な施策
この記事を読み終えることで、自社の組織状態を冷静に把握し「見逃してはいけないサイン」を的確に察知できるようになります。ぜひ最後までご覧ください。

職場崩壊(組織崩壊)とは?
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職場崩壊(組織崩壊)とは、社内のコミュニケーションや意思疎通が行われず、指揮命令系統の乱れによって「組織として正常に機能しなくなる状態」を指します。
単なる人間関係のトラブルや業績不振ではなく、組織の健全な運営を行うための「心臓部分」が停止するような深刻な事態です。主な原因として、以下が挙げられます。
- 従業員間のコミュニケーション不足
- 組織のビジョンや方向性が不明確
- 時代の変化に対応できない組織文化
- 不公平な人事評価・処遇
- 過重労働やワークライフバランスの崩れ
表面的には小さな不満やトラブルにみえても、これらを放置すると組織全体のパフォーマンスが低下し、従業員のモチベーションも下がってしまいます。
次第に離職・転職する社員が増える可能性もあるため、会社としては、職場崩壊の前兆を見逃さず、早期に対策を講じる必要があります。
職場崩壊の末路【倒産・廃業の恐れ】
職場崩壊が進行すると、従業員の離職・転職の増加によって人手不足が深刻化し、顧客に提供する製品・サービスの質も低下します。
次第に会社としての信頼を失い、業績が悪化することで経営が難しくなり、最悪の場合は倒産・廃業につながってしまうのです。
帝国データバンクの調査によると、従業員の退職が直接・間接的な原因となった「従業員退職型」の倒産件数は、2024年に87件と過去最多を更新しました。
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出典:「従業員退職型」の倒産動向(2024年)|株式会社 帝国データバンク
人手不足が深刻化する背景には、十分な賃上げが行われていないことや、会社が待遇改善に消極的であることが挙げられます。
職場崩壊の末路として、事業の継続が困難になるという現実がある以上、経営・人事の立場から早期の危機管理と構造的な見直しが求められます。
職場崩壊(組織崩壊)のプロセス4段階
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職場崩壊は突発的に起こるものではなく、段階的に進行するのが特徴です。具体的には、以下のようなステップで進行します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
ステップ | 概要 | |
---|---|---|
1 | 初期 | 情報共有の遅れによる軽微なミスなど、日常業務における小さな問題やトラブルが発生する |
2 | 中期 | 従業員のモチベーション低下によって、仕事の質やスピードが落ちていき、組織全体の生産性にも悪影響を及ぼす |
3 | 後期 | 従業員の離職によって人手不足が加速し、顧客対応の品質低下や納期遅延など、業績悪化につながる問題が発生する |
4 | 末期 | 連鎖的な離職によって職場内が混乱し、組織として機能しなくなる(倒産・廃業につながる恐れ) |
以下より、職場崩壊が「どのように進行していくのか」を4つのステップに分けて解説します。
1.初期(小さな問題・トラブルの発生)
職場崩壊に至る初期段階では、業務の進め方に対する認識のズレや、情報共有の遅れによる軽微なミスなど、日常業務において小さな問題・トラブルが発生します。たとえば、以下のような事例です。
- 業務の引き継ぎが十分に行われず、担当者不在のときに支障が出る
- 会議や打ち合わせでの発言が減り、表面的なやり取りだけになる
- 情報の共有不足により、納期遅延や重複作業が目立つようになる
これらの事例は、日常的な「よくある職場の問題」として見過ごされがちですが、明確なルールもなく管理不足が続いてしまうと、問題が深刻化する可能性があります。
初期段階で小さな異変を見逃さず、組織として課題解決に取り組むことが、職場崩壊を食い止める第一歩です。
2.中期(モチベーション・生産性の低下)
職場崩壊の中期に入ると、従業員のモチベーションが低下し、次第に業務への主体性や責任感も薄れていきます。その結果、仕事の質やスピードが落ち、個人のパフォーマンスだけでなく、組織全体の生産性にも悪影響が出ます。
主な原因は、初期段階に発生した問題・トラブルが適切に対応されず放置された結果、職場全体に不信感や閉塞感が広がっていることです。
また、職場内の協力体制が崩れ、情報共有が行われていない可能性もあります。
会社としては、管理職による現場のマネジメントを強化し、従業員のやる気を引き出すとともに、職場の信頼関係の再構築を図る必要があります。
3.後期(人材流出・業績悪化)
職場崩壊の後期になると、初期・中期の段階で蓄積されてきた問題が表面化し、職場環境が一向に改善されないことへの不満や不信感が一層強くなります。
問題提起や改善を望む声が放置されると、次第に「この会社には期待できない」という感情が生まれ、結果として離職・転職の行動へとつながってしまうのです。
とくに、職場のエースとして活躍する優秀な人材は、危機意識が強いため、よりよい環境を求めて行動を起こし始めます。
人手不足が加速すると、顧客対応の品質低下や納期遅延といった問題が発生し、最終的には、企業価値の低下に伴って業績が悪化するケースも少なくありません。
この時点で有効な打ち手は限られますが、まずは組織課題の抽出・分析を行うとともに、早急な人材確保と人員見直しを実施する必要があります。
4.末期(離職の連鎖・職場崩壊)
職場崩壊の末期になると、優秀な人材が会社を辞めるのをきっかけに、他の従業員も「この会社に将来性はない」と感じ、転職を真剣に検討し始めます。
エース社員の離職によって、残された従業員の負担が一気に増加し、心身の疲労や士気の低下を招く可能性があります。その結果、さらに離職者が増える「離職の連鎖」といった悪循環に陥ってしまうのです。
このような状態では、職場の雰囲気や内部の混乱が社外にも伝わっているため、新しい人材を募集したとしても「働きたい」と申し出る人は多くありません。
職場崩壊が深刻化すると、倒産・廃業につながる恐れもあることから、抜本的な組織改革を行うために、M&Aなどの合併も視野に入れた対応が必要です。
以下の記事では、自社で活躍するエース社員の離職が、職場崩壊(組織崩壊)に「どのように影響するのか」を詳しく解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。

職場崩壊(組織崩壊)が発生する7つの前兆
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職場崩壊が起きる前兆として、以下の7点が挙げられます。
日常的に起きる出来事として捉えるのではなく、職場崩壊の前触れとして早めに対処することが、人材流出や業績悪化を防ぐポイントです。
以下より詳しく解説します。
従業員同士のコミュニケーションが減る
職場崩壊の初期段階で顕著なのが、従業員同士の日常的な会話や雑談、情報共有などのコミュニケーションが減ることです。たとえば、以下のような状況が挙げられます。
- 互いに声を掛け合う姿がみられなくなり、オフィス内に静寂が広がる
- 他部署との連携が必要な場面でも、最低限のやり取りのみになる
- 会議や打ち合わせでの発言が少なくなり、議論が一方通行になる
- 業務上の情報が共有されず、その人しかわからない状態(属人的)になる
こうした職場内の問題が表面化しないまま放置されると、会社としても現場の実情を把握できず、適切な改善策を講じるタイミングを逃してしまいます。
問題が放置され職場環境が改善されない場合、従業員同士の信頼関係も徐々に希薄になり、最終的には組織として機能しなくなる恐れがあります。
仕事へのモチベーションが低下する
職場崩壊の中期においては、従業員のモチベーションが低下することで、業務品質の低下やミスの増加など、仕事のパフォーマンス・成果にも影響が出始めます。モチベーション低下により、従業員の行動には以下のような変化がみられます。
- 納期が近づいても「明日でいいか」と先延ばしにする行動が増える
- 指示されたことだけを淡々とこなし、自分から提案や工夫をしなくなる
- 誰かが困っていても「自分の仕事ではない」と無関心になる
- 小さなミスをしても「仕方ない」で済ませ、改善の姿勢をみせなくなる
モチベーションが下がる原因は、人事評価の公平性が保たれていないことや、上司・同僚との人間関係が悪いことなど、複数の問題が影響しています。
この状態を放置すると、優秀な人材ほど「頑張っても無駄」「ここで働く意味がない」と感じるようになり、離職・転職を考え始めてしまいます。会社としては、職場の問題をいち早く把握し、職場環境の改善に取り組まなければなりません。
以下の記事では、優秀な人材(エース社員)の「やる気を上げる方法」について詳しく解説しています。企業の取り組み事例も紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

休職・離職する従業員が増える
職場崩壊の中期から後期にさしかかる段階で、精神的・身体的ストレスによって会社を休む人や、よりよい環境を求めて転職する人が増えてきます。
とくに、同じ時期(同じ職場)で複数の従業員が休職・離職するような場合は、以下のような組織的な問題が潜んでいる可能性があります。
- 人手不足による業務過多・長時間労働の常態化
- 意見を言いにくい・相談しにくい組織風土
- 問題が発生しても改善されない体制・仕組み
会社を辞める人が増えると、残された従業員の業務負担が増加し、さらに離職が進むといった悪循環に陥ってしまいます。
株式会社リーディングマークの調査によると、経営者や役員など300人に「短期離職による影響」を尋ねたところ、多くの企業で組織運営に支障が出たとの回答がありました。
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さらに、短期離職者が今後増えた場合、82.3%(※)は「会社経営に与える影響は大きい」と感じていることもわかりました。
(※)「非常にそう感じる(33.3%)」「ややそう感じる(49.0%)」の合計
会社としては、経営基盤の強化を図るためにも、現場で起きている問題を放置せず、常に働きやすい環境を追求する姿勢が求められます。
以下の資料では、定着率の改善に向けた具体策をわかりやすくまとめています。「採用・組織分析・アプローチ」の各フェーズにおける対策を紹介していますので、ダウンロード(無料)してぜひご活用ください。
管理職がチームを統率できない
職場崩壊の中期に入ると、チームの信頼関係が徐々に崩れていき、管理職(マネージャー)が指示・指導をしても、うまく統率できない状態になります。その背景として、以下が挙げられます。
- 評価への不満から「頑張っても意味がない」と諦めの感情を抱いている
- 改善の要望を聞いてもらえない経験から、上司に対する期待や信頼を失っている
このような状況に陥るのは、管理職のマネジメント不足だけが原因ではありません。上層部からの要求と現場の不満との間で板挟みになり、管理職自身が心理的な負担を抱えていることも要因の一つです。
たとえば、経営層からは「成果を出してほしい」とプレッシャーがかかる一方で、現場からは「フォローが足りない」と不満が出るといった事例です。
管理職は、経営層と現場の期待に挟まれながら対応に追われるなかで疲弊し、意思決定が遅れたり、現場への対応が後手に回ったりするようになります。
職場内で対立が発生する
従業員同士のコミュニケーションが減ると、職場内で「誰がどの仕事をしているか」が共有されなくなり、小さなミスや認識のズレが生じます。
その結果、意見の食い違いや責任を押し付け合いが原因となり、職場内で対立が発生してしまうのです。たとえば、以下のような状況が想定されます。
- 業務進捗や役割分担が共有されておらず、作業が重複してしまう
- 業務引き継ぎが不十分で、トラブル発生時の責任の所在が曖昧になる
- 顧客からの要望が一部の人にしか伝わっておらず、対応が後手に回る
このように、人間関係の希薄化による影響は、単なるコミュニケーション不足に留まらず、組織全体の結束力やパフォーマンスを著しく低下させる要因にもなります。
顧客からのクレームが増える
職場崩壊の後期に入ると、経営状態に不安を抱いた優秀な人材が離職することによって、残された従業員の業務負担が増え、職場内に混乱が生じます。
混乱状態が続きサービスの品質が低下すると、顧客の初期対応が遅れたり、誠実なフォローができなくなったりと、クレーム発生の原因になりかねません。
また、クレームの増加に伴って、顧客対応を行う従業員のストレスも蓄積していき、さらなる離職を引き起こす可能性があります。
休職・離職者の増加が職場崩壊につながってしまう恐れもあるため、社内制度の見直しや職場環境の改善など、抜本的な組織改革を行う必要があります。
ハラスメントが多発する
職場崩壊が起きる前兆として、立場・権限を利用した不適切な発言や行動(ハラスメント)が多くみられるようになります。
【具体例】
- 立場の強い管理職やベテラン社員による威圧的な指示
- 人格を否定するような言葉・行動
- 高い成果を求める過度なプレッシャー
ハラスメントが起きる原因の一つは、人間関係の悪化によって「意見を言いにくい」「相談できない」といった雰囲気が職場に広がり、不適切な言動が見過ごされやすくなることです。
被害者が声を上げにくい環境では、問題が長期化する可能性もあるため、早期に職場の状況を確認し、組織として適切な対応(相談窓口の設置 など)をとる必要があります。
職場崩壊(組織崩壊)が起きやすい企業の特徴とは?
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職場崩壊が起きやすい企業には、以下のような共通した特徴があります。
これらの要因が積み重なることで、従業員の連鎖的な離職とともに組織としての機能も失われ、最終的には職場崩壊を招く恐れがあります。
以下より詳しく解説します。
従業員エンゲージメント(貢献意欲)が低い
エンゲージメントが低い従業員は、自分の仕事が「会社や社会にどう貢献しているのか」を理解できておらず、仕事に対するやりがいを感じていません。
そのような状態の従業員が増えると、組織としての一体感や推進力が失われ、生産性の低下や人材流出を引き起こす恐れがあります。
株式会社リンクアンドモチベーションの調査(下図)によると、エンゲージメントスコアが高い企業ほど退職率が低い傾向にあり、逆にスコアが低い企業では退職率が高くなることがわかりました。
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出典:「エンゲージメントと退職率の関係」に関する研究結果|株式会社リンクアンドモチベーション
従業員エンゲージメントを高めるには、企業理念や経営方針を現場に正しく伝え、一人ひとりの「目指す姿」の実現に向けたサポートを行う必要があります。
以下の記事では、エンゲージメントの重要性と高める方法を詳しく解説しています。エンゲージメントと業績の関係についても触れていますので、本記事と合わせて確認してみてください。

人手不足でワークライフバランスがとれない
人手不足が深刻な企業では、残業や休日出勤の常態化によってワークライフバランスがとれず、従業員の疲労やストレスも蓄積しやすい傾向があります。
その結果、心身の不調やモチベーションの低下につながり、仕事のパフォーマンスが落ちるだけでなく、休職や離職といった事態にもつながりかねません。
休職・離職者が増加し続けると、組織の人員体制がさらに不安定となり、最終的には組織としての機能を維持できなくなります。
厚生労働省の資料によると、ワークライフバランス実現に向けた取り組みによって、働きやすさを向上させるだけでなく、離職率も低下させる可能性を示しています。実際に、離職率の低下がみられた主な取り組みは、以下のとおりです。
- 残業を減らす工夫や、有給休暇を取得するための考え方を学ぶ研修
- 休暇や急な早退が発生しても、他の人がフォローできるよう人員数を配置
- 経営トップによる経営戦略の呼びかけ(会社の方向性や目指す姿 など)
- 休暇・急な早退を申請しやすい職場の雰囲気づくり
裏を返せば、こうした取り組みを実施していない企業では、離職率が下がらず、慢性的な人手不足や士気の低下が続いていると推測できます。
人事評価の基準が決められていない
評価基準が決められていない企業では、努力や成果に対して正当に評価されているのかがわからず、従業員は不満や不信感を抱きやすくなります。
その結果「評価されないなら頑張る必要はない」と考えるようになることで、仕事へのモチベーションが低下し、離職・転職のリスクも高まってしまうのです。
たとえば、上司の主観だけで評価が行われ、部下が「どれだけ成果を出しても正しく評価されない」と感じた場合、仕事に向き合う姿勢が消極的になっていきます。
とくに若手社員は、将来のキャリアビジョンを描けなくなることで、より成長できる環境を求めて転職を考えるケースも少なくありません。
評価基準が曖昧なままでは、不公平な評価によって職場内で対立が起こる可能性もあるため、一人ひとりが成長実感と納得感を得られるような評価制度が求められます。
以下の記事では、従業員が人事評価に納得しない理由と改善方法について解説しています。評価制度の見直しを検討している方は、本記事と合わせて確認してみてください。

職場の人間関係が悪い
職場の人間関係が悪化すると、周囲の人と連携して仕事を進めようとする意欲も低下し、最終的には、以下のようなプロセスで職場崩壊を招く恐れがあります。
- 情報共有が不十分になり、小さなミスやトラブルが増える
- 業務の属人化が進み、チーム全体の生産性が低下する
- 相談・報告の頻度が減り、職場の問題が放置される
- 孤立する従業員が増え、心理的な負担が増加する
- 休職や離職・転職をする従業員が増える
- 組織として機能しなくなる(職場崩壊)
エン・ジャパンの調査によると、退職経験がある人に「会社に伝えた退職理由」と「本当の退職理由」を質問したところ、どちらとも「人間関係の悪さ」が上位となりました。
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出典:「本当の退職理由」調査(2024)|エン・ジャパン株式会社
退職時には「別の職種にチャレンジ」「家庭の事情」と本音を隠して伝えていることから、自分の意見を言いにくい組織風土になっている状況が伺えます。
会社としては、定期的な1on1ミーティングを設け、日頃から「意見や悩みをなんでも聞く」といった姿勢を示す必要があります。
職場崩壊(組織崩壊)を防ぐための5つの方法
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職場崩壊を防ぐためには、その前兆となる職場の問題を把握し、早期に対策を打つ必要があります。有効な取り組みとして、以下が挙げられます。
また、若手社員を対象とした調査によると、離職理由として「ワークライフバランスのとり過ぎによるキャリア成長への不安」といった、予想外の意見も多く寄せられました。
企業としては、現場の声に寄り添った多角的な取り組みを行うことで、従業員の離職を防ぎ、ひいては職場崩壊の防止につながります。
以下の記事では、株式会社リーディングマークが実施した調査「大企業が実践する若手の離職対策」の詳細を解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。

サーベイで現場の不満・悩みを調査する
職場崩壊を未然に防ぐには、まず現場の不満や悩みを調査・分析するサーベイを活用し、「組織状態の見える化」を行う必要があります。
従業員のエンゲージメント(会社への貢献意欲)やモチベーションをアンケート形式で測定する調査。測定対象や内容、頻度に応じたサーベイがある。
参考:サーベイの意味とは?10種類の解説と導入メリット・注意点を徹底調査!
サーベイは、表面化しにくい職場の問題やストレス要因を調査し、現場の実態を「エンゲージメントスコア」として可視化します。
調査結果をもとに社内で共有・議論することで、職場の状況に即した施策を打ち出せるだけでなく、「現場の声を反映してくれた」といった信頼にもつながるのです。
実際にサーベイを活用している未知株式会社では、組織・個人の状態を可視化したことで、ケア対象者へのアプローチが可能となり、離職を未然に防いでいます。
具体的なアプローチは、ケア対象者の上司に対して「少し悩んでいるかもしれないから面談してほしい」と働きかけ、1on1ミーティングの機会を設けました。
問題解決が難しいときは、人事部が直接1on1ミーティングを組んで声かけを行うことで、手遅れになる前段階で対策が打てるようになりました。
従業員へのサポート強化によって、仕事を休む人が1日3〜4人いるような状態から「月に1〜2人程度」にまで減少しています。
事例:サーベイの結果から改善アクションを実施し、エンゲージメントが劇的に改善|未知株式会社
以下の記事では、離職防止のアイデア・施策例を原因別に詳しく解説していますので、自社に合った取り組みの検討にお役立てください。

働きやすい職場環境に改善する
職場の課題を洗い出し、働きやすい職場環境に改善することで従業員の業務負担が軽減され、仕事のパフォーマンス向上にもつながります。
近年は、多様な働き方や健康経営(健康管理を経営的な視点で実践すること)が注目されており、以下のような柔軟な勤務形態や休暇制度の導入が求められています。
- フレックスタイム制度の導入
- テレワーク(在宅勤務)の選択肢拡大
- 時短勤務・週休3日制の導入
- 時間単位での有給休暇取得
- 産休・育休後のスムーズな職場復帰支援
- メンタルヘルス休暇やリフレッシュ休暇の整備
労働環境や人間関係、待遇などに対する課題を把握するには、サーベイの活用が有効です。
インターネット広告代理業を行うウェブソア株式会社では、月1回のサーベイで従業員の状態を定点観測し、組織課題の洗い出しを行っています。
調査結果から「事業の方向性に対する共感が弱い」ことがわかったため、全体会議の場で経営方針・ミッションについて話す機会を設けました。
定量的な数値をもとに「改善の必要性」をフィードバックできるようになったことで、組織改善の方向性について「社長・役員・事業部長の目線合わせ」がしやすくなりました。
事例:社員一人ひとりが理想的な状態で働ける会社であり続けるためのサーベイ導入|ウェブソア株式会社
働きやすい職場環境に改善するには、組織構造や組織文化の構築が必要です。以下の記事では、組織づくりの基本原則や具体的な手順を解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

社内のコミュニケーションを活性化させる
社内のコミュニケーションを活性化させることで、職場の雰囲気が明るくなり、従業員同士の情報共有や声かけも活発になります。
「発言しやすい・相談しやすい」環境を構築できれば、小さな問題や違和感の段階で対処でき、職場崩壊につながるようなトラブル発生を未然に防げます。コミュニケーション活性化につながる施策例は、以下のとおりです。
- チーム単位でのランチ会や交流イベント
- 上司との定期的な1on1ミーティング
- 従業員同士で称賛する組織文化の構築
社内コミュニケーションの活性化に取り組むディップ株式会社では、従業員の家族を対象としたファミリーイベント「dip ファミリーデー」を開催しました。
日頃から従業員を支えている家族・友人への感謝を伝えるとともに、職場理解を深め、家庭でのサポート体制を強固にすることを目的に実施しています。また、子どものキャリア教育の場として、以下のようなプログラムを盛り込みました。
- 1日社員証と名刺の配布
- オフィスや社長室の見学
- 仕事取材スタンプラリー
コミュニケーション活性化を含む、働きやすさ向上と健康への取り組みが認められ、経済産業省の「健康経営優良法人2025(ホワイト500)」にも選ばれています。
以下の記事では、社内コミュニケーション活性化のアイデアを多数紹介しています。事例にもとづく成功のポイントを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

明確な評価基準を設ける
従業員の離職を食い止め、職場崩壊を防ぐためには、公平公正かつ納得感を与える評価基準を設ける必要があります。
人事評価の基準・プロセスが定まっていない場合、従業員は「なぜ自分の努力が評価されないのか」といった疑問を生じさせ、職場内の対立や離職の原因にもなります。
評価基準を決めるときは、以下のように納得感を高める工夫が重要です。
- 業務ごとの成果目標を設定
- 行動評価と業績評価を分けて明示
- 評価基準を事前に全従業員へ共有
- 評価者を対象とした研修の実施
- フィードバック面談で評価理由を説明
厚生労働省の「職業能力評価基準」を活用した企業では、若手・中堅社員の育成を強化するため、役職登用の基準を設けています。経営職・管理職・指導職などの役職に応じて、以下の行動評価基準チェックシートを活用し評価を行いました。

評価の「甘い上司」と「辛い上司」の差が出た場合でも、評価調整会議のなかで「なぜそのような評価になったのか」を議論し、評価のブレの解消にも取り組んでいます。
以下の記事では、人事評価の基準の決め方や、評価の流れについて詳しく解説しています。適性検査を活用したマネジメント方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

管理職向けのマネジメント研修を実施する
組織の健全な運営を行うためには、経営陣を含めた管理職のマネジメントが必要です。
職場崩壊の兆候がみられる場合、適切なマネジメントが組織の再生につながるため、管理職向けの研修や教育を通して、マネジメントスキルの向上が求められます。研修におけるプログラムの例は、以下のとおりです。
- 管理職の仕事と求められる役割
- マネジメントの役割・活動
- 業務におけるマネジメント(目標管理・組織運営 など)
- 部下の指導・育成方法
- 職場における問題解決のステップ
実際に製造業のある企業では、管理職を対象に外部のマネジメント研修を受講してもらい、業務マネジメントの方法や考え方の理解促進を図っています。
個人の働きを組織の目標達成につなげるために、一人ひとりが重点課題を持って仕事に取り組むよう指導・助言を行いました。
管理職のマネジメントにより、「ひとりで頑張る」から「チームで頑張る」への動機づけに変革し、業務負担の軽減や働きやすさの向上につながっています。
職場崩壊(組織崩壊)の危機を乗り越えた企業事例
の危機を乗り越えた企業事例-1024x683.jpg)
職場崩壊の危機を乗り越え、業績回復に成功した企業の事例を紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
概要 | 取り組み |
---|---|
社風に合った人材だけを採用し、3年間で組織状態をV字回復 | ・困難な状況でも社員を解雇せず「HRマーケットをつくっていこう」と社員に呼びかけた ・スキルや経歴に関係なく、性格や考え方が自社に合う人だけを採用した |
経験豊富な社員の技術を継承し、売上高・営業利益が増加 | ・部長クラスに裁量を持たせ、経営やマネジメントを任せるようにした ・工場長クラスの経験がある社員を講師として、技術を伝える教育を行った |
これらの事例を通して実践的な解決策を学び、職場崩壊を未然に防ぐヒントをみつけてみましょう。
社風に合った人材だけを採用し、3年間で組織状態をV字回復
HRプラットフォーム『ミキワメ』を提供する株式会社リーディングマークは、2008年に創業したものの事業がうまくいかない時代もあり、12年間業績も低迷していました。
2020年にはコロナの影響もあり、就活生と企業をマッチングする「オフライン就活イベント」ができず、売上の7割が無くなるなど、倒産寸前の状況でした。
しかし、困難な状況でも社員を一人も解雇せず、給料も変えることもなく「HRマーケットをつくっていこう」と呼びかけたことで、社員同士の団結力が高まったのです。
その後、組織の立て直しに取り組み始め、とくに効果があったアクションの一つが「社風に合う人材だけを採用する」ことでした。「スキルは二の次」「経歴は華々しくなくてもいい」の考えのもと、性格や考え方が自社に合う人だけを採用しています。
現在では、元バンドマンや元声優、元コックなど、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が活躍する組織になりました。
職場崩壊の危機が去り業績も回復したことで、2021年のエンゲージメントスコアは偏差値67となり、全国TOP2%に入るくらいの高水準を実現しました。
同社の取り組みを詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。職場崩壊の危機に直面したときの経験談も紹介しています。
経験豊富な社員の技術を継承し、売上高・営業利益が増加
電気機械器具などの製造を行う企業では、社長のトップダウンにより経営危機を乗り切りましたが、大口顧客向けの製造が激減したことで、再び経営危機に直面しました。
社員の士気が下がったため意識調査を実施したところ、社長の経営手法に対する不満と、品質を管理する部署の人材不足が浮き彫りになりました。
まずは社長のワンマン経営から脱却すべく、部長クラスに裁量を持たせ、経営・マネジメントを任せるように組織体制の改革に取り組んでいます。
人材不足の課題に対しては、工場長クラスの経験がある社員を講師とした教育を行い、意識改革とプロセス改善の学習を通して、品質管理を担当する人材の育成につなげました。
これらの取り組みにより、職場崩壊の危機を乗り越えたことで、売上高・営業利益ともに増加し、新分野の部品加工でも急成長を遂げています。
まとめ:組織の隠れた課題を把握し、職場崩壊を未然に防ごう

職場崩壊(組織崩壊)は、倒産・廃業の恐れもある深刻な状態ですが、その兆候を早期に把握し対策を講じることで、未然に防ぐことが可能です。
初期段階における職場の小さな問題・トラブルを放置すると、モチベーション低下や人材流出へとつながり、最終的には離職の連鎖や業績悪化を招きます。
職場崩壊を防ぐためには、根本的な原因を特定し、環境面や制度面などの多角的な取り組みを検討する必要があります。
>>「職場崩壊(組織崩壊)を防ぐための5つの方法」を確認する
経営者や人事担当者の方は、従業員が安心して働ける職場づくりで「組織の活力」を取り戻すとともに、会社の持続的な成長へとつなげていきましょう。

従業員のメンタル状態の定期的な可視化・個々の性格に合わせたアドバイス提供を通じ、離職・休職を防ぐエンゲージメントサーベイ。無料トライアルの詳細は下記から。