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離職防止の研修を成功させるコツとは?具体的な研修内容を階層別に紹介

離職防止研修の実施は離職率を下げ、優秀な人材を確保するために重要な施策です。研修を行うときは、各階層の悩みやニーズを把握し、課題解決に適した内容設定をすることが重要です。

この記事では、離職防止研修の目的やメリット、階層ごとの具体的な研修内容について解説します。

離職防止研修とは?

離職防止研修とは、離職率を下げるために行う研修の総称です。

狭義では若年層の離職を防ぐために行う管理職向けのリテンションマネジメント研修を指す場合もありますが、広義には離職防止を目的とした研修すべてを指します。

たとえば、新入社員を対象に、同期同士で意見を交換するディスカッション研修も、離職防止研修の一つといえるでしょう。

ディスカッション研修は、新入社員の主体性や思考力を育成するのに役立つほか、同期同士の交流を深め、企業への愛着が生まれることから離職防止にもつながります。

離職防止研修を行う目的

離職防止研修を行う目的は、社員の離職防止による優秀な人材の定着です。

近年では、入社後3年以内に離職する「早期離職者」が増えていることから、離職防止研修の重要性が増しています。

離職者が増加する背景には、終身雇用制の崩壊やリモートワーク、フリーランスといった働き方の多様化があります。

離職者を減らし、企業の生産性向上と持続的発展を達成するためには、離職防止研修を積極的に行い、業務遂行のモチベーションと組織への一体感を育成する必要があるのです。

離職防止研修を行うメリット

離職防止研修を行う具体的なメリットとしては、以下の3点が挙げられます。

  • 採用や教育にかかるコストを削減できる
  • 従業員のエンゲージメント向上につながる
  • 採用活動が有利になる

それぞれについて解説します。

採用や教育にかかるコストを削減できる

従業員を1人採用するには90万〜95万円のコストがかかるといわれています。

加えて、新入社員研修やOJTといった育成にかかる費用や人的コストも必要です。

従業員が離職すると、採用から離職までにかけてきたすべてのコストが無駄になってしまいます。

さらに、別の従業員の配置転換や教育を行わなければならず、現場に大きな負担がかかるおそれもあります。場合によっては負担に耐え切れず、別の従業員まで離職してしまう「負の連鎖」が生じかねません。

離職防止研修を実施すれば、採用や教育にかかるコストの削減につながるほか、従業員の手間や精神的負担を軽減できます。

従業員のエンゲージメント向上につながる

離職防止研修を行うことで、従業員の企業へのエンゲージメント(愛着)を高められます。

従業員が会社に求めているものは給与だけではありません。業務を通じて自分の力を発揮でき、成長を続けられる「自己実現の場」であることを期待しているのです。

研修という成長の機会を提供する会社に対して、従業員はエンゲージメントを抱くため、その結果、離職率の低下や生産性向上につながります。

採用活動で有利になる

離職防止研修を行い、離職率が下がると採用活動で有利になります。

求職者にとって、離職率は企業を評価する重要な基準です。離職率の低い企業は労働環境が良いと評価され、応募者が増える可能性があるでしょう。

離職防止研修を成功させるためのポイント

離職防止研修は漫然と行うだけでは効果は出ません。研修の目的やターゲットを明確にして、企業の持つ課題や社員のニーズを把握することで、成果の高い離職防止研修を実現できます。

とくに重視すべきポイントは以下の4つです。

  • 目標設定を明確にする
  • 階層別に開催する
  • 非金銭的報酬を意識する
  • 社員一人ひとりの個性を把握する

それぞれ解説します。

目標設定を明確にする

離職防止研修の内容を設定するときは、離職の理由を把握し、明確な目標を立てましょう。なぜなら、離職理由によってアプローチ方法が変わってくるためです。

たとえば、離職理由が「コミュニケーション上の悩み」である場合は、コーチング研修やディスカッション研修を行いコミュニケーションを強化します。

一方、離職理由が「成長の場がないから」である場合は、従業員の能力を引き出すスキルアップ研修が有効です。

このように、離職理由によって行うべき研修の内容は変わります。これまでの従業員の離職理由を分析したり、従業員への聞き取り調査を行ったりして、離職防止に向けて企業が取り組むべき課題を明らかにしましょう。

階層別に開催する

従業員が抱く悩みや課題は階層ごとに異なります。そのため、離職防止研修は新入社員向け・中堅社員向け・管理職向けというように、階層別に実施することが重要です。

たとえば、新入社員は理想と現実のギャップから生じるリアリティショックに悩むケースが多く見られます。一方、中堅層は仕事に慣れたからこそのマンネリ化に悩む人が多いでしょう。

それぞれの階層のニーズに合った研修を実施することで、離職防止研修の効果を高められます。

また、研修は単一の階層だけではなく、複数の階層に対して並行して行いましょう

「新入社員の離職率が高いから新人研修に力を入れる」という考えは誤りです。中堅層や管理職の意識を変えなくては、早期離職は改善できません。

離職理由に「コミュニケーション不足」が挙げられる場合、新入社員に対しては報連相の重要性や方法を学ぶコミュニケーション研修を行います。

それと並行して、管理職に対しては部下の主体性を引き出すためのコーチングスキル研修を行うことで、上司と部下のコミュニケーション上の断絶を防止し、離職率低下につなげられるでしょう。

非金銭的報酬を意識する

優秀な人材を確保するためには「非金銭的報酬」を提供することが重要です。非金銭的報酬とは「帰属意識」「人間関係」「承認欲求」といった、仕事で得られる喜びや満足感を指します。

研修内容を設定するときには、企業理念を伝えることで愛着をもたせる、意見交換を通じて人間関係の構築を目指すというように、非金銭的報酬を意識することも忘れてはなりません。

社員一人ひとりの個性を把握する

離職防止研修は階層別に行うのが効率的ですが「新入社員はこの研修、管理職はこちらの研修」と画一的に決めることは望ましくありません。

従業員はそれぞれ個性をもった人間であり、適性や価値観、キャリアプランは一人ひとり異なります。

とくに、価値観の多様化が見られる現在では、各々の個性を把握し、能力やモチベーションを最大限に引き出せるような研修を提供する必要があります。

それぞれの個性を把握すれば、モデル社員の特性や企業に足りない人物像も見えてきます。

従業員を十把一絡げにするのではなく、一人ひとりの人格を尊重し、把握することを忘れないようにしましょう。

【階層別】離職防止研修の留意点と具体的内容

離職防止研修の具体的な内容を新入社員・中堅社員・管理職の三階層に分けて紹介します。

階層ごとの悩みや解決法も併せて解説しますので、参考にしてください。

新入社員

新入社員を対象とした離職防止研修のキーワードは「リアリティショックの解消」と「一体感の確立」です。

リアリティショックとは、入社後に感じる理想と現実の剥離に対するギャップを指します。

とくに、社会人経験のない新卒社員はリアリティショックを感じやすく、ギャップを受け入れられずに退職してしまう場合があります。

また、同期同士の仲間意識を育て、コミュニケーションを活発に行うことで、孤立化による離職を防止できます。

新入社員向けの具体的な離職防止研修は以下のとおりです。

新入社員研修

リアリティショックを解消するためには、業務内容や企業風土にいち早くマッチさせることが重要です。新入社員研修の時間は丁寧にとり、新しい環境になじめるようにしましょう。

ディスカッション研修

新入社員同士で一つのテーマについて話し合うディスカッション研修の実施も離職防止に有効です。

ディスカッション研修では、意見交換を通じてメンバーの思考や性格、経験を把握できます。また、課題解決に向けて協力し合うことで、一体感を構築できます。

自分の意見をわかりやすく伝えるための論理的思考や表現力が鍛えられる点も、ディスカッション研修の大きなメリットです。

フォローアップ研修

新入社員に対する研修は、入社半年後を目安に再度行うと効果的です。

入社から半年が経つと、多くの企業では現場での業務が始まっています。業務上の悩みやライフスタイルの変化、人間関係のストレスから、新たなリアリティショックを感じるシーンも多くなります。

フォローアップ研修を行い、入社後からの振り返りや新たな目標設定を行うことで、従業員のモチベーションアップにつながり、早期離職を防止できるでしょう。

中堅社員

入社後数年が経ち、中堅社員になると、リアリティショックは少なくなります。一方で「マンネリ化して自身の成長が感じられない」という悩みが生まれやすくなります。

その結果、環境の変化やキャリアアップを目指して離職してしまう中堅社員も少なくありません。

中堅社員の離職を防止するためには、自社で働くことで自身がどのように成長してきたか、今度どのように成長するかというキャリアプランを可視化させなくてはなりません。

日常の業務に追われがちな中堅社員だからこそ、業務から離れ、自身を改めて振り返る機会を提供する、すなわち研修を行うことが重要です。

中堅社員向けの研修を以下に紹介します。

キャリアデザイン研修

キャリアデザインデザイン研修の目的は、従業員に自身のキャリアを振り返り、理想の将来像や目標を明確にしたうえで、実現のための計画や行動指針を設計してもらうことです。

将来のビジョンを自分自身で描く過程を通じて、主体性やモチベーションを獲得し、仕事への意欲を回復させることができます。

スキルアップ研修

マンネリ化による仕事への意欲低下や伸び悩みを解消するためには、スキルアップ研修が有効です。

スキルアップ研修では、コミュニケーション能力やリーダーシップ、業務スキルなど、基本的なスキルの底上げを行います。

中堅社員を対象としたスキルアップ研修は、当人の業務能力やモチベーションの向上だけではなく、若手社員への教育・フォローの質が上がることから、早期離職率低下にもつながります。

管理職

管理職になると、現場仕事から離れて部下をマネジメントする機会が増えます。業務内容が大きく変わることへの戸惑いや、部下とのコミュニケーションに対する悩みも増えるでしょう。

コーチングスキルを向上させる研修を行い、指導力を育成することで離職防止が期待できます。

また、経営陣と接する機会が増えるため、会社の経営方針や長期計画に対する疑念が生じる管理職層もいます。

経営マネジメントスキル研修を行い、企業の将来ビジョンを共有すると、企業との一体感を抱いてもらえるでしょう。

管理職層向けの研修を以下に紹介します。

コーチングスキル研修

コーチングとは、部下やチームの潜在能力を引き出し、成長を促進させるコミュニケーションです。

コーチングスキル研修は、部下とコミュニケーションを取り、部下が主体的に目標達成や課題解決に取り組めるようサポートするスキルを育成することを目的としています。

研修により部下とのコミュニケーションが円滑になれば、管理職層だけではなく、部下となる新入社員や中堅層の離職防止につながるうえ、生産性の向上も期待できます。

経営マネジメント研修

経営マネジメント研修は、経営者マインドを育成するための研修です。管理職になると、これまでの「指示される側」から「指示する側」に変わります。

経営者の視点からチームを牽引し、会社の成長に貢献するためには、戦略を立てるマネジメント能力や責任感への意識を持つことが重要です。

経営マネジメント研修では、経営学やケーススタディから管理職の責任と役割について学び、企業理念やビジョンに沿った戦略を構築するスキルを育成します。

経営者としての立場から企業に関わることでモチベーションやエンゲージメントを向上させ、離職率を下げる効果が期待できます。

離職防止研修の形式と費用

離職防止研修を実施場所で大別すると、以下の3種類に分けられます。

  • 社内研修
  • 社外研修
  • e-ラーニング研修

それぞれの特徴と予算の目安について解説します。

社内研修

社内研修とは、社内の研修室や会議室などを利用して行う研修です。社内人材が講師や指導者となるパターンと、外部講師を招いて研修を行うパターンがあります。

社内人材が講師となるパターンでは、講師に支払う報酬がかからない、開催時期を自由に設定できる、企業風土に合った研修をしやすいというメリットがあります。

一方、講師や運営担当者の負担が大きくなる点や、リソースが少ない場合はマンネリ化しやすい点がデメリットです。

外部講師に依頼するメリットとしては、バリエーションに富んだ専門性の高い研修ができる点が挙げられます。

しかし、企業理解や認識のすり合わせを怠ると、企業方針に合わない研修内容となるおそれがあるため注意が必要です。

外部講師を依頼した場合にかかる費用は、半日で6万〜15万円、全日(6時間前後)で15万〜30万円程度が相場です。

社外研修

社外研修とは、外部の研修施設や会場で行われる研修を指します。社内に研修スペースや講師となる人的リソースがなくても研修を行える点がメリットです。

とくに中堅〜管理職にとっては、日常の業務を離れてリフレッシュし、集中して研修に取り組める貴重な機会となります。

社外研修は自社で研修場所を借りて講師を招待するパターンと、外部の公開座学研修に参加するパターンがあります。

自社主体で行う場合は会場費、設備費、講師報酬が必要です。規模によって費用相場は異なり、10〜20名程度の小規模な研修で1日22万〜50万円程度、100名以上の大規模な研修では32万〜65万円程度と考えておきましょう。

公開座学研修の相場は1日1人当たり1万8,000〜3万円程度です。

e-ラーニング研修

e-ラーニング研修とは、パソコンやスマートフォンを使ってWeb上で学習やテストを行う研修です。

インターネット環境さえあれば時間や場所を問わず受講できるため、リモートワークの多い企業に向いています。

e-ラーニング研修を導入するときは、ツールや機材といった初期費用がかかりますが、一度導入すれば自由度の高い研修を行える点が大きなメリットです。

初期費用20万〜40万円、月額費用3万〜7万円程度が相場です。

離職防止の研修を成功させるためには目的の明確化が重要

離職防止研修の目的や重要性、具体的な内容について解説しました。優秀な人材の確保が困難となっている現代において、離職防止研修の実施は企業の生産性向上と持続的発展のために欠かせない施策です。

離職防止研修の効果を高めるには、階層別の目的やニーズを明らかにし、それらに合った研修を行わなくてはなりません。

また、同じ階層の従業員でもキャリアプランや特性は異なるため、一人ひとりの個性を把握することも重要です。

ミキワメウェルビーイングサーベイでは、従業員一人ひとりの会社への愛着度や心身の状態を数値化できます。

パフォーマンスの下がっている社員に対するケアについてのアドバイスも受けられるため、離職防止研修を行ううえでのヒントをつかめるでしょう。興味をもった方は、ぜひ下記からお気軽にお問い合わせください。

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