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復職とは?休職から復職までの流れや企業側の注意点を解説

復職とは、社員が仕事を離れたあとで復帰することです。とくに、心身の不調により休業した場合、健康に不安を抱えたままの復職となり、社員にとっても大きな負担となります。

健康経営の重要性が増している現在、企業は社員が安心して仕事に復帰し、業務に専念できるよう支援を行わなくてはなりません。

今回の記事では、復職支援の流れや企業側が注意すべき点を解説します。

復職とは

復職とは、社員が休業や休職、退職により一定期間職務を離れたあと、再び職場に復帰することやその制度を指します。社員が職務を離れる主な理由としては、以下が挙げられます。

  • 結婚
  • 育児休暇
  • 介護休暇
  • 怪我や病気
  • メンタルヘルス上の問題

とくに近年注意しなければならないのが「メンタルヘルス上の問題」です。

厚生労働省の発表によると、令和3年11月1日から令和4年10月31日までの期間で、メンタルヘルス不調により連続1か月以上の休業、もしくは退職した労働者がいた事業所の割合は13.3%です。

令和2年度では9.2%、令和3年度は10.1%という結果になっており、メンタルヘルスの問題で職場を離れる社員は年々増えていることがわかります。

メンタルヘルスに問題を抱えた社員に対し、適切なフォローをすることで円滑な復職につながり、人材確保と生産性の向上が期待できます。

社員の復職をサポートする「復職支援」は、もはや企業の義務といえるでしょう。

出典:令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況

出典:令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況

復職制度は企業の義務?

復職制度とは、退職や休職などにより長期間職場を離れていた社員が、再び職場に復帰するための制度です。

復職制度は労働基準法などの法令には策定されておらず、設ける義務はありません。個々の企業の判断によって、就業規則などに記載されるものです。

しかし、先述のとおり、メンタルヘルスの問題により休職・退職を選ぶ人が増えています。また、育児や介護など、やむをえない事情で職場を離れた社員が、復職を希望するケースもあるでしょう。

社員が復職を希望した際、明確な規定がないとトラブルに発展するおそれがあります。

義務ではないにせよ、トラブル防止のためには復職制度を策定しておいたほうがよいでしょう。

復職制度策定のメリット

復職制度策定には、以下のようなメリットがあります。

  • 職場の活力維持につながる
  • 採用コストが削減できる
  • 企業イメージが向上する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

職場の活力維持につながる

優秀な人材が復職することは、職場の活力維持につながります。ほかの社員にとっても、気心の知れた同僚が復帰し、一緒に働けるのは嬉しいものです。復職支援により業務にスムーズに復帰できれば、生産性の向上も期待できます。

また、育児や介護などで休職や離職をする可能性のある社員にとって、いずれ戻ってこられる場所があることは大きな安心をもたらすでしょう。

採用コストを削減できる

採用コストや手間を削減できる点も復職制度を策定するメリットです。

新規採用をする場合、求人募集を出して企業説明会や面接を行う必要があります。コストはもちろん、時間や手間もかかり、企業にとって大きな負担となるでしょう。

さらに、新規採用者が雇用後にミスマッチを感じて離職してしまい、採用にかけたコストが無駄になるケースもあります。

一方、復職は一度働いていた社員が戻ってくるため、新規採用よりもコストがかかりません。企業風土や業務内容を理解しているため、入社後のミスマッチも防げます。

ただし、健康面が回復していなかったり、育児と仕事の両立が困難であったりすると、再び休職や離職をしてしまう場合があります。

復職者に対して適切な支援を行うことで、コストを抑えた人材確保が可能です。

企業イメージが向上する

復職制度の策定により、企業イメージの向上を図れます。とくに近年では、ワークライフバランスを重要視する傾向があり、労働環境が良好な企業は好印象を持たれます。

復職制度が充実している企業は「社員を大切にする」と見なされることから、入社希望者が増え、優秀な人材確保につながるでしょう。

復職制度策定のデメリット

メリットの多い復職制度策定ですが、以下のようなデメリットもあります。

  • 安易に利用される恐れがある
  • 規則の見直しが必要

それぞれのデメリットについて詳しく解説します。

安易に利用されるおそれがある

復職制度策定は、休職や離職せざるをえない社員にとってのセーフティネットとなります。

しかしその半面、安易に利用されるおそれもあるため注意が必要です。

すぐに復職できるからといって、休職や離職を繰り返されると、復職支援のコスト増や、ほかの社員のモチベーションダウンを招きかねません。

復職制度を策定する際には、復職回数や勤続年数に制限を設けるなど、制度対象者の範囲を限定する対策を検討しましょう。

規則の見直しが必要

復職制度を導入する際は、対象者や労働条件の決定、就業規則の整備といったプロセスが必要です。

復職は社員にとって重大な問題であり、労使トラブルになるおそれがあります。法律の専門家に相談しながら策定する必要があるため、多くの費用がかかります。

また、復職制度について社員に周知し、理解を得るための時間的コストがかかる点もデメリットといえるでしょう。

休職から復職までの流れと注意点

休職から復職までの大まかな流れは次のとおりです。

  1. 休職前・休職中にケアをする
  2. 復職可否の判断をする
  3. 職場復帰支援プランを作成する
  4. 最終的な職場復帰の決定をする
  5. 職場復帰後はフォローアップを行う

休職中の適切なフォローがスムーズな復職につながります。休職しているからといって放置せず、定期的に社員と連絡を取り、精神的なケアや事務手続きを行いましょう。

ここからは社員が復職するまでの流れと企業としてすべきこと、注意点を解説します。

1. 休職前・休職中にケアをする

休職により仕事を離れる社員は、無事に復職できるのか不安を抱いています。まずは復職に関する規定について説明しましょう。

とくに以下の点は丁寧に説明し、書面にしておくと労使トラブルを防止できます。説明の根拠を明確にするためにも、休職や復職に関する規程を定めておくことが重要です。

  • 必要な事務手続きや職場復帰支援の手続き
  • 休職期間はいつまで取れるか
  • 休職が長引く場合は退職になる場合があること
  • 休職中の給与や賞与について
  • 復帰後のポストやキャリアについて

また、休職に入ったあとも、安否確認や事務手続きのために連絡する必要があります。連絡先を聞き、定期的にコミュニケーションを取りましょう。

ただし、社員によっては、会社からの頻繁な連絡をストレスに感じることもあります。連絡は必要最小限にとどめるのか、社内でのイベントや人事異動などの出来事をこまめに伝えるのか、社員の性格に応じてコミュニケーションの頻度や方法を考えることが重要です。

休職中のケアについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。

2. 復職可否の判断をする

傷病やメンタルヘルス上の問題で休職した場合は、復職の判断を慎重に行わなければなりません。早過ぎる復職は体調不良を招き、再度休職してしまう事態になりかねないためです。

社員本人、主治医、社内で連携を取り、適切なタイミングを計りましょう。復職可否の判断をする際の流れを4ステップで紹介します。

復職の意志を確認する

まずは、社員本人に復職の意志があるかどうかを確認します。まだ体調が回復していないにもかかわらず、無理に復職しようとする社員もいるため、話をするなかで状態を見極めましょう。

また、あらかじめ定められた休職期間を過ぎても復職が難しい場合は、再度診断書を提出してもらう必要があります。診断書をもとに、産業保健スタッフを中心として延長の可否を決定してください。

主治医から診断書を出してもらう

復職の意志を確認できたら、主治医から診断書を出してもらいましょう。診断書には社員の健康状態や就業上必要な配慮といった情報が記載されているため、それをもとに復職が可能かどうかを判断します。

ただし、診断書のみでは復職の判断はできません。なぜなら、主治医による業務復帰の判断は、日常生活が問題なくできるかどうかの観点からなされている場合が多いためです。

主治医の診断書をうのみにするのではなく、現場で働けるレベルまで回復しているかどうかを精査する必要があります。

復職面談を行う

復職可能なレベルまで回復していると判断できたら、復職面談を行いましょう。復職面談では、休職者と人事労務担当者、産業医などが集まり、休職者から直接聞き取りをします。

復職面談で確認することは、大きく分けて「健康状態」と「復職後の制限事項・配慮事項」の2点です。

健康状態

休職者は復職に関して、細かい点まで具体的にイメージできていないことがあります。以下のように具体的な質問をして、復職が本当に可能かどうか、復職するにあたって配慮すべき事項はないかを洗い出します。

  • 時間どおりに出勤できるよう生活リズムを整えているか
  • 通勤は問題なくできるか(通勤ラッシュに耐えられるか、車の運転はできるかなど)
  • 集団のなかでコミュニケーションを取れるか
  • 通院や服薬の状況はどうか
  • フルタイムで働けるほど体調は安定しているか
復職後の制限事項・配慮事項

上記で聞き取った健康状態も参考にしながら、実際に業務を行うにあたり、配慮すべき点を確認します。

以下のような点について聞き取りを行い、スムーズに復帰できるよう対策を考えましょう。

  • 業務内容や業務量を調整すべきか
  • 短時間勤務やテレワークを検討すべきか
  • 通院や服薬に関して会社側で配慮すべきことはあるか
  • 職場の環境で配慮すべきことはあるか
  • コミュニケーション方法において配慮すべきことはあるか

復職可否の判断を行う

診断書や面談の内容をもとに、復職の可否を判断します。事業場内産業保健スタッフや管理監督者を交え、医学的見地と現場の意見双方を聞いたうえで判断することが重要です。

産業医がいない場合は、主治医や地域産業保健センター、労災病院の勤労者メンタルヘルスセンターなど、外部の専門家の意見を参考にしましょう。

3.職場復帰支援プランを作成する

職場復帰が可能であると判断した場合、職場復帰支援プランを作成します。厚生労働省のガイドラインにおいては、職場復帰支援プランに盛り込むべき項目を以下のように記載しています。

  • 職場復帰日
  • 管理監督者による就業上の配慮:業務サポートの内容や方法、業務内容や業務量の変更、段階的な就業上の配慮、治療上必要な配慮など
  • 人事労務管理上の対応:配置転換や異動の必要性、勤務制度変更の可否及び必要性
  • 産業医などによる医学的見地から見た意見:安全配慮義務に関する助言、職場復帰支援に関する意見
  • フォローアップ:管理監督者や産業保健スタッフなどによるフォローアップの方法、就業制限などの見直しを行うタイミング、全ての就業上の配慮や医学的観察が不要になる時期についての見通し
  • その他必要な項目:労働者が自ら責任を持って行うべき事項、試し出勤制度の利用、事業用外資源の利用

出典:厚生労働省 中央労働災害防止協会 改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

また、厚生労働省によるプラン作成例も参考にするとよいでしょう。

4.最終的な職場復帰の決定をする

上記のステップを踏まえて、事業者としての最終的な決定を行います。社員にとって重大な決定となるため、以下の点に注意して慎重に検討しましょう。

  • 健康状態の最終確認をする
  • 産業医がいる場合は、就業上の配慮について記載した「職場復帰に関する意見書」を作成する
  • 管理監督者や人事労務担当者の確認を経て最終的な決定を行う
  • 社員に対し、最終的な職場復帰の決定とあわせて、就業上の配慮の内容についても通知する
  • 復職後の職場の対応や就業上の配慮について、社員を通じて主治医に的確に伝わるようにする

5.職場復帰後はフォローアップを行う

社員が無事復帰を果たしたあとも、継続して復帰支援を行う必要があります。たとえ慎重に復職プランを作成しても、当初の計画どおりに進まないケースも多いためです。

予想よりも業務負担が大きいと、再度体調を崩してしまいかねません。また、復職した社員に配慮するあまり、周囲の社員に負担がかかってしまうこともあります。

復職後もこまめにフォローアップを行い、必要に応じて職場復帰支援プランを見直すことで、復帰した社員だけではなく、管理監督者や同僚の負担を減らし、モチベーションを維持できるでしょう。

復職時に起こりうるトラブル

復職時に適切な支援を行わないと、復職者の休職や離職を招いてしまうだけではなく、労使トラブルに発展する危険性もあります。

とくに起こりやすいトラブルは以下のとおりです。

  • 復職のタイミングが早過ぎて再び休職してしまう
  • 復職後のフォローが不十分で休職してしまう
  • 認識違いや情報漏洩による労使トラブル

それぞれ解説します。

復職のタイミングが早過ぎて再び休職してしまう

ケガや病気による休職の場合、体調が十分に回復していないまま復帰すると、症状が悪化して再び休職してしまう危険性があります。

日常生活には問題ないほど回復していても、業務ができるとは限らないため注意が必要です。

復職後のフォローが不十分で休職してしまう

復職後のフォローが不十分で再休職や離職につながることもあります。

例えば、以下のようなケースが挙げられます。

  • 体調が十分回復していないのに残業や休日出勤をさせたり、負担の大きい業務を担わせたりして、体調を崩してしまう
  • メンタルヘルス上の問題で休職した場合、周囲の理解を得られず、冷たい態度を取られてしまう
  • 上司との関係性に悩み休職したにもかかわらず、同じ上司の部署に配属し、人間関係の悩みが再発する

このようなトラブルを防ぐためには、休職や退職の要因を把握したうえで、個々の事情に合ったきめ細やかなフォローをする必要があります。

認識違いや情報漏えいによる労使トラブル

休職時や復職時に対応を誤ると、労使トラブルに発展する場合があります。とくに注意したいのが、退職を勧めて訴えられるケースです。

復職制度があるとはいえ、休職と復職を繰り返す社員や、復職のめどが立たない社員に対しては、退職勧奨をしなければならないことがあります。社員にとっては重大な問題となるため、休職前に退職の可能性があることを十分に説明しておかなければなりません。

説明が不十分であったり、社員が納得できていなかったりすると、対応が不当であるとして訴訟を起こされるリスクがあります。

また、復職した社員から、以下のような理由で訴えられる場合もあるため注意が必要です。

  • 復職後に業務や待遇が変わっていたことに納得できない
  • 社内で休職した理由が広まってしまい、個人情報漏えいで訴える

復職時のトラブルを防止するためには

休職、復職する社員は心身ともにナーバスな状態にあり、対応を誤るとさまざまなトラブルに発展するおそれがあります。

社員が安心して休職し、復職できるよう、企業として適切な対応を行わなければなりません。復職時のトラブル防止のためには、以下の3点に配慮しましょう。

  • 適切な情報提供を行う
  • 社員のプライバシーを守る
  • 社員に寄り添ったフォローを行う

それぞれ、とくに注意したいポイントとともに解説します。

適切な情報提供を行う

休職する社員は、心身の不調や経済的な悩みなど、さまざまな不安を抱えています。社員が安心して職場を離れられるよう、必要に応じて以下のような情報を提供し、適切なサポートを行いましょう。

  • 休職制度・復職制度の詳細な説明
  • 傷病手当金や育児休業給付金についての説明や手続きのサポート
  • 復職支援サービスの紹介
  • メンタルヘルスに関する悩みや不安などの相談先の紹介

社員のプライバシーを守る

企業として、社員の健康情報を取得することは安全配慮義務に相当し、プライバシーの侵害にはあたりません。とはいえ、健康情報は個人情報のなかでもとくにセンシティブなものであるため、周囲に漏れないよう慎重な取り扱いが必要です。

収集する情報は最小限にとどめ、あらかじめ本人の同意を得ておきましょう。また、収集した情報は一定のルールのもと、特定の部署で一元的に管理することで、情報漏えいのリスクを軽減できます。

社員に寄り添ったフォローを行う

復職支援は一定のルールに従って行うべきですが、それだけでは不十分です。復職する社員には一人ひとり個性があります。手厚いサポートが必要な社員もいれば、過干渉によりかえってストレスを抱えてしまう社員もいます。

社員の健康状態や性格、特性を把握し、社員一人ひとりに寄り添ったきめ細やかなフォローを行うことが重要です。

復職は社員にとって不安なもの。流れを知り企業として十分なフォローを

復職制度の重要性と、スムーズな復職のために企業としてすべきことを紹介しました。

復職する社員は、心身の不調を抱えている場合があります。「きちんと仕事ができるだろうか」「周りの人に迷惑をかけて申し訳ない」といった不安を感じていることも少なくありません。

そのため、企業としてのフォローを誤ると、再休職や労使トラブルに発展するおそれがあります。復職に不安がある社員の気持ちに寄り添い、体調やメンタル面に配慮した職場復帰プランを考えることが重要です。

細やかなフォローをするためには、休職前からサポートが必要な社員を把握し、社員の個性に合った方法を考えなくてはなりません。

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