PEST分析という言葉をご存知でしょうか。
当記事ではPEST分析について言葉の意味から目的、具体的な方法をまとめました。
PEST分析とは?
PEST分析とは、マクロ環境(世の中の流れ)を
- 政治
- 経済
- 社会
- 技術
の観点から分析するフレームワークです。
フレームワークとは、ビジネスにおける問題とその解決策を考える際の骨組み・構造を意味します。
つまりPEST分析によって、外的な環境による変化を分析し、仮説を立てられ、脅威への適用や機会(チャンス)をものにする施策を打つことが可能です。
次は「PEST」がそれぞれ何を意味し、どういった事柄が該当するのか、具体的に説明していきましょう。
参考:pest分析とは-コトバンク、pest分析とは何?-weblio
P(Politics:政治的)
法改正や政権交代など、市場のルールそのものが変わる要因が該当します。
常に適応していくことが必要なので、動向をチェックしておき、自社の脅威や機会になり得るかどうかを意識しておきましょう。
具体例としては、
- 法律や法改正(規制、緩和)
- 税制や減税、増税
- 裁判制度や判例
- 公的支援制度(補助金・助成金)、特区制度
- 国際的な政治動向(条約、貿易・関税の問題)
などです。
E(Economy:経済的)
為替や物価、景気動向など、経済的な指標の変化が該当します。
短期的要素と長期的要素どちらもまとめて経済的要因になります。
具体例としては、
- 為替や株価、金利、原油価格
- 経済成長率
- 物価の変動(インフレーション・デフレーション)
- 雇用情勢、賃金動向
- 景気動向、消費動向
などです。
S(Society:社会的)
人口動態などの社会的要因のことです。
具体例としては、
- 人口動態や密度、構造、世帯構成
- 少子化や老齢人口
- 流行、文化、ライフスタイル
- 社会問題(事件・犯罪)
- 世論、風潮
- 教育や宗教
などです。
例えば国内の少子高齢化の場合、企業はそれをふまえた長期戦略を取ることが求められます。
T(Technology:技術的)
インフラやITの発達、イノベーションなど、技術革新による環境変化のことです。
特に昨今はITの発達が目覚ましく、次々と新しい技術が発表・普及します。
企業として、常に最新の技術を取り入れ、トレンドを押さえつつ、顧客の体験を最適化していくことが求められます。
具体例としては、
- ITインフラの整備
- 技術開発投資レベル
- ICTやIoT技術の活用
- ビッグデータやAI(人工知能)の活用
- イノベーション
- 新技術の普及、特許権の取得・消滅
などです。
PEST分析の歴史
PEST分析は、経営学者でマーケティングの第一人者である「フィリップ・コトラー」氏が提唱しました。
彼は著書の『コトラーの戦略的マーケティング』にて、
「調査をせずに参入を試みるのは、目が見えないのに市場に参入するようなもの」と、環境要因調査の重要性を説いています。
『コトラーの戦略的マーケティング』は20年前の書籍ですが、基本的な概念は今でもなお通用するものが多く、マーケティングを学ぶ際の基本と言われている書籍です。
参考:PEST分析とは何か?コトラー教授が考案、海外進出を行う際にも使えるフレームワーク
PEST分析の目的・効果
PEST分析の目的は、マクロ環境を分析して、実際のマーケティング戦略・施策を行なっていくことです。
外部環境にはマクロ・ミクロ環境の2種類があります。
ミクロ環境は自社でコントロールができるものであるのに対し、マクロ環境は自社ではどうすることもできない外的環境要因です。
上記のマクロ要因、すなわちPESTを理解し、適切な対応をすることで外的環境の変化に適応することができます。
なおPEST分析は、情報を集め分析するだけのものではありません。
具体的な施策を実行し、設定したゴールにたどり着くことが最終的な目的です。
PEST分析の具体的な流れ
PEST分析の具体的な流れについて解説していきます。
PEST分析は5つのステップに分けて、1つずつ進めていくと効率的です。
目的とゴールを明確にする
目的が曖昧では正確な分析ができませんし、ゴール設定が曖昧では満足するアウトプットが出ません。売上向上、労働環境の整理など、目的を絞ることで、収集する情報も絞れ、より効率的なPEST分析が可能です。
事象をPESTに振り分ける
事象・環境要因をPESTに分類します。
ニュースや新聞、Webメディア、講演会など関連のある情報に絞ってください。
分類に迷う情報もあるかもしれませんが、
あくまで施策構築に必要な情報の整理ですので、ざっくりとした洗い出しで問題ありません。
振り分けた事象を「事実」か「解釈」なのか判断する
客観的事実か主観的な解釈かで対応が異なるため、振り分けた事象を判断します。
主観的な解釈は、適切な施策や結果につながりにくく、PSET分析の要因としてふさわしくありません。一方、共通認識を持てる客観的な事実は、適切な対策が可能です。
事実なのか、解釈なのかを明確に切り分けることがPEST分析のポイントといえるでしょう。
事実を機会と脅威に分類する
環境的要因は企業にとって機会にも脅威にもなり得ます。
事実のみを抽出し、機会(チャンス)と脅威に分類しましょう。
企業のマーケティング戦略は、「機会につなげる」か「脅威を避ける」の2択しかありません。PESTに分類した要因がどちらになるか検討が必要なのです。
もちろん、この2つは表裏一体で、入れ替わる可能性も忘れてはいけません。
短期的・長期的かどうかを判断する
各要因の変化は短期的なのか、長期的なのかをしっかり押さえておきましょう。
目線を揃えることで生産的な議論が可能になります。
PEST分析のポイント
PEST分析をする上でのポイントは下記です。
仮設思考・中長期的視点をもつ
中長期的(3~5年後)世の中のマクロトレンドついて仮説を立てることがポイントです。
確実な将来予測は難しいですが、3~5年後の世の中に対し、現在取り組むべき戦略を構築しましょう。仮説をシミュレーションすることで、業界に及ぼす影響、環境変化を考えられるのです。
事象を推移で観察する
PEST分析では、事象や要因を単一の点と認識してはいけません。
推移で判断しましょう。
例えば低生産性で市場規模が小さい発展途上国は、長期的には市場の成長が見込めます。この場合市場への参入が機会(チャンス)になり得ます。
単一の情報のみ収集するのではなく、より視野を広げて推移で判断をしてください。
事実と解釈の見極めを徹底する
事実と解釈の見極めを徹底しましょう。
事実を抽出することがPEST分析のポイントです。
主観的解釈を環境要因に含めると、誤った判断をしかねません。
なるべく複数人で行う
複数人で話し合うことで、限りなく主観を排除できます。
洗い出し・分類のステップ以降の、
- 機会と脅威の振り分け
- 短期・長期の振り分け
- マーケティング戦略を立てる
といった段階も複数人で行うべきでしょう。
事実をベースに具体的かつ明確な戦略を立てて、機会をものにしつつ、脅威を回避するようにしてください。
脅威を機会に転換できるか考える
一見、脅威に見える事柄も対応次第では機会なります。
例えば、コロナ禍による通勤規制という脅威は、テレワーク導入による生産性向上の機会獲得にもつながります。脅威を回避しつつ機会に転換できないか考えましょう。
一方で、逆(機会が脅威になる)も然りです。
表裏一体であることが多いので、事実を洞察し、どちらなのか検討しましょう。
PEST分析の事例
PEST分析の事例を紹介します。
成功例:Google・Apple・Facebook・Amazon
インターネットやスマートフォン、SNSといった大きなマクロ環境のトレンドに乗ることができた
- Apple
- Amazon
などの企業は大成功しました。
マクロ環境要因を適切に分析して、戦略を実行したことが成功の要因でしょう。
失敗例:デジタルカメラ業界
スマートフォンの普及によって、デジタルカメラの業界はトレンドに乗ることができず、縮小しました。
これはスマートフォンという技術的な環境要因の分析が甘く、戦略を適切に立てられなかったことが原因といえます。
PEST分析以外の便利なフレームワーク
PEST分析以外で便利なフレームワークをご紹介します。
3C分析
顧客や市場(Consumer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの観点から経営環境について分析する方法です。
PEST分析はマクロの環境分析手法ですが、3C分析はミクロの環境分析手法です。
5フォース分析
自社をとりまく環境を5つの分類に整理する手法です。それぞれが自社のビジネスにどれほど脅威になるか、そして対抗するために、自社の資源配分をどう効果的に行うかを検討する材料にします。
分類項目は下記です。
- 競争業者
- 新規参入業者
- 代替品
- 売り手
- 買い手
SWOT分析
強み、弱み、機会、脅威の4視点から、自社現状を分析する手法です。PEST分析や3C分析、5フォース分析は主に外部の競争環境を分析します。対してSWOT分析では、自社がコントロールできない外部環境のなかにある機会を見つけたり、脅威に立ち向かうために自社の強み・弱みをどう活用するかを検討できます。
まとめ
PEST分析とは、
- 政治
- 経済
- 社会
- 技術
といった外的環境要因を分析して、戦略を立てるマーケティングの手法です。
PEST分析を用いることで、外的環境要因の変化に柔軟に対応できるようになります。
企業の生産性を高めるためにも、積極的にPEST分析を取り入れていきましょう。
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