- 中途採用における「優秀すぎる人材」の特徴と失敗例
- 優秀すぎる人材を採用するときの注意点と対策方法
- 中途採用で優秀な人材を見極める方法
中途採用で即戦力となる人材の獲得に取り組んでいるなか、優秀すぎる人材を迎えることに対して、期待と同時に不安も感じていませんか?
あまりにも優秀な人材は、前職とのやり方の違いで摩擦が生じたり、職場に馴染みすぎて本来の力が発揮されなかったりと、悪影響を及ぼすケースも少なくありません。
こうした失敗を避け、優秀な人材を最大限に活用するためには、慎重に見極められる採用プロセスの構築と入社後のフォローアップが必要です。
本記事では、優秀すぎる人材を採用するときに起こりうる失敗例と、そのリスクを抑えるための具体的な対策について解説します。
中途採用の質を高め、最適な人材活用を実現するために、ぜひ最後までご覧ください。
「優秀すぎる人材」の特徴と中途採用したときの失敗例3選
中途採用における「優秀すぎる人材」の特徴と、採用後に考えられる失敗例を3点紹介します。
優秀すぎる人材の特徴 | 失敗例 |
豊富な経験と専門知識を持ち、業界での実績が突出している | 前職のやり方との違いで摩擦が生じやすい |
変化への柔軟性があり、どのような環境にも順応する | 職場に馴染みすぎて新しい力が発揮されない |
自分の判断や方法に確固たる信念を持っている | 他の従業員が自信を失う可能性がある |
優秀すぎる人材は、企業が求めるスキルや経験を超えるような実績を持ち、即戦力として期待される存在です。
しかし、その優秀さが逆に職場での摩擦やトラブルを引き起こす原因となることも少なくありません。
前職のやり方との違いで摩擦が生じやすい
優秀すぎる人材は、前職での成功体験や確立された方法論に強い自信を持っている場合があり、新しい職場においても自らのやり方を貫こうとする傾向があります。
その結果「前の会社ではもっと効率のいいやり方をしていた」と、業務プロセスやチーム連携に不満を感じて、反発や摩擦が生じやすくなるのです。
たとえば、前職の厳格なプロセスや報告体系が定着している場合、新しい職場でも同様のアプローチが必要だと発言したり行動したりします。
柔軟なやり方を重視する企業では、厳格なアプローチがかえって業務効率を下げることになるため、中途採用者とチームメンバーが反発し合う事態になってしまいます。
過去の経験が妨げになる可能性を考慮し、入社後の導入研修を通して、自社の働き方や業務プロセスを丁寧に伝えていくことが重要です。
中途採用で起こりうるミスマッチには、ほかにもさまざまな要因があります。
採用のミスマッチを防ぐための詳細は、『自社で活躍できる人材の見極め方:採用のミスマッチをゼロにする(無料)』の資料で詳しく解説しています。
以下の記事と併せて、ぜひ参考にしてみてください。
職場に馴染みすぎて新しい力が発揮されない
中途採用者に対して、前職での経験・スキルが活かされることを期待しますが、高い適応力によって組織文化や業務スタイルに馴染みすぎるケースも少なくありません。
そのため、職場に馴染みすぎてしまうと、期待していた革新性や創造性が発揮されない可能性があり、結果的に会社を変革する推進力も損なわれます。
たとえば、中途採用者が新しい職場で同僚との関係構築を優先し、仕事のやり方に従うことに集中した場合、持ち前のリーダーシップが表に出ないことも考えられます。
職場に早い段階で馴染み、従業員同士のコミュニケーションが活発になるのも重要ですが、優秀な人材が本来持っている新しい視点や提案を引き出すことも必要なのです。
他の従業員が自信を失う可能性がある
優秀すぎる人材を採用すると、他の従業員がプレッシャーを感じ、自信を失う可能性がある点にも注意しなければなりません。
突出したスキルや知識を持ち、短期間で目覚ましい成果をあげた場合、他の従業員は「自分の努力に意味があるのか」「この人には到底敵わない」と感じてしまいます。
たとえば、長年勤めている従業員が、ある専門分野で一目置かれていたところに、より高いスキルを持つ中途採用者が加わってリーダー的存在になったとします。
その結果、既存の従業員が積極的な意見を出さなくなり、プロジェクトへの参加意欲や仕事に対するモチベーションの低下につながってしまうのです。
中途採用者と既存従業員とのコミュニケーションを促進させ、お互いのスキルを補完し合う環境をつくる必要があります。
「優秀すぎる人材」を中途採用したときの対策方法
優秀すぎる人材を中途採用したときは、以下のような対策を打つことで、入社後のトラブルを防げます。
中途採用者の経験を尊重しつつ自社でのやり方を丁寧に伝えて、本人のやりがいを持続させるような取り組みが、長期的な定着にもつながります。
求める人物像を明確にして採用基準を定める
優秀すぎる人材の能力を活かすためには、企業が求める人物像を明確にし、経験やスキルだけではなく、組織文化に合うかどうかを見極める採用基準が必要です。
たとえば、専門性の高いエンジニアを採用する場合、プログラミングスキルの高さに加えて、他部門と協働した経験やコミュニケーション能力も評価基準に含めましょう。
能力だけに固執しない採用基準を設けることで、入社後に他のメンバーと円滑にコミュニケーションを取って、協力しながら働けるかどうかを見極められます。
航空運送事業を行うANAグループでは、 人材の多様性を深めるために中途採用を実施し、以下の応募コースから選択する採用方法を導入しています。
- プロフェッショナルコース(専門性を活かせる部門に初期配属)
- ポテンシャルコース(空港オペレーション部門に初期配属)
お客様視点や社会への責任など、5項目からなる行動指針「ANA’s Way」をもとに採用基準を設けて、「指針の理解・体現性・専門性を重視した採用」を行っています。
【参考】
採用基準を設定する方法を知りたい人事担当者の方は、以下の記事を参考にしてみてください。採用基準を明確化するメリットや、具体的な基準の決め方を解説しています。
面接の質を高めて候補者の理解を深める
中途採用の面接では、通常のスキルチェックだけではなく、候補者の価値観や行動特性を見極めるための質問を取り入れ、より深く候補者を理解することが重要です。
面接の質を高めるには、事前の適性検査結果をもとに、問題解決能力やストレス耐性、性格傾向から「面接で深掘りする質問」を考えておく必要があります。
候補者の理解を深めることで、自社の文化やチームに馴染む人材かどうかを判断でき、採用後のミスマッチ防止につながるのです。
また、面接官の視点を統一することで、さらに効果的な面接が可能となります。詳しくは、『面接官の目線を統一する方法とは?(無料)』で具体的な方法をご覧ください。
産業プラントの研究などを行う東洋エンジニアリング株式会社では、新規事業を進める人材確保のため、キャリア採用を積極的に行っています。
キャリア採用では、性格特性にフォーカスした適性検査を活用し、一次面接において履歴書・職務経歴書・適性検査結果の3点セットを面接官に共有しています。
候補者の性格特性が「仕事に合うか合わないか」という視点で面接ができるようになり、採用選考中における途中離脱者がゼロになりました。
報酬制度を整備してモチベーションの維持を図る
優秀すぎる人材は、高い成果を出すことが期待される反面、その実力に見合った報酬や人事評価がなければ不満を抱く可能性があります。
そのため、基本給だけではなく、業績に応じたインセンティブや保有資格による手当などの成果給を充実させることで、高いモチベーションを維持できます。
大手電気機器メーカーの株式会社日立製作所では、専門性のある技術者やマネージャークラスの採用を行うため、報酬制度など社内体制も強化しました。
マネジメント層に対しては職務等級制度の「グレード制」を導入し、役割やポジションごとにグレードを決定したうえで、それに応じた報酬水準を設けています。
報酬水準を明確化することで透明性や納得性を高め、外国籍の人材を含めた経験者採用の拡大につなげています。
モチベーションを高める方法は以下の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。すぐに実践できる取り組みや事例も紹介しています。
中途採用における優秀な人材とは?
ここまで「優秀すぎる人材」の特徴や対応方法を解説しましたが、そもそも優秀な人材とはどのような能力やスキルを持っているのでしょうか。
中途採用における優秀な人材の特徴について、3点紹介します。
それぞれの特徴を理解し、より戦略的な採用方針を検討していきましょう。
経験や知識を活かし、工夫して業務を行う
優秀な人材は、自身の豊富な経験や実績をもとに、業務プロセスの改善や効率化につながる新しい視点・アイデアを生み出してくれます。
たとえば、製造業において製造コスト削減や生産性向上を目指している場合、以下のような生産ラインでのボトルネックや改善策を提案してくれるのです。
- 機械・設備の処理能力不足により、入れ替えや増設を検討する
- 供給量を予測して生産ラインの稼働率を調整する
厚生労働省の調査によると、企業が転職者を採用した理由として「経験を活かし即戦力になるから」と、62.3%の企業(※)が回答しています。
(※)職種が専門的・技術的な仕事の企業
中途採用する企業としても、前職の経験をもとに「新しい技術や知見を取り入れて組織改革を推進したい」というニーズが、この調査からも伺えます。
ただし、面接時に職種適性の評価が不十分である場合、短期離職のリスクが高まります。
実際、経営者や人事部長の約4割が、面接時における適性評価の不足が短期離職の一因であると回答しています。調査結果は以下のお役立ち資料でもご確認いただけるため、ご覧になってみてください。
職場への適応力があり、新しい環境でも馴染みやすい
中途採用における優秀な人材とは、柔軟な思考とコミュニケーション能力を持ち、新しい環境でもすぐに馴染むことができる人材です。
新しい環境への適応力があれば、チームの一員としての調和を保ちながらも、自身の知識やスキルを発揮しようと行動し、リーダー的な存在として組織に貢献します。
厚生労働省の調査においても、29.5%の企業(※)が「職場への適応力があるから」という理由で、転職者を採用していることがわかりました。
(※)職種がサービス業の企業
参考:令和2年転職者実態調査の概況|厚生労働省
中途採用する企業からは、いち早く職場に馴染み「自社の働き方で能力を最大限に発揮してもらいたい」という期待が感じられます。
明確なキャリアプランを持ち、成長意欲が高い
優秀な人材は、自らの目標を達成するために必要なスキルや知識を学び、仕事のなかで積極的に実践していく姿勢を持っています。
「この能力をどのように活かして仕事に取り組むべきか」を常に考え、組織の目標と照らし合わせながら行動するため、自己成長やキャリアアップへの意欲も高い傾向です。
厚生労働省の調査によると、転職者の採用理由として、52.7%の企業(※)が「専門知識・能力があるから」と回答しており、入社後のさらなる成長への期待も伺えます。
(※)職種が専門的・技術的な仕事の企業
参考:令和2年転職者実態調査の概況|厚生労働省
中途採用者のキャリアを理解したうえで、定期的に相談する機会を設けたり、専門的な教育・研修を実施したりと、適切なサポートを提供する必要があります。
中途採用で優秀な人材を見極めるポイント
中途採用で優秀な人材を見極めるために、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。
優秀な人材が見極められれば、社風や価値観が合わないなどのミスマッチを防ぎつつ、組織の成長を支える強力なチームを築けます。
豊富な実績や経験があるか
優秀な人材を見極めるときは、募集する職種や仕事内容に対して、豊富な経験・実績があるかを確認することで、自社での活躍可能性を判断できます。
具体例として、以下のような実績を確認しましょう。
- 新規事業の立ち上げ
- 組織再編や業務プロセスの改革
- プロジェクトリーダーとしての経験
- 海外市場でのビジネス経験
前職で実績をあげた過程において「どのような役割で組織に貢献したのか」を確認し、自社でも成果を出し続けられるかの見極めが重要です。
候補者の能力やスキルを評価するときは、適性検査を活用して数値化することで、候補者同士の比較がしやすくなります。
より詳しい適性検査の活用方法は、『人事のための適性検査活用資料(無料)』の資料で確認できます。人材評価の効率化にお役立てください。
自分の価値観を持ち、誠実な性格であるか
採用時に「自分の価値観をしっかり持っているか」「誠実な性格であるか」を見極めることで、中途採用者は入社後にチーム内での信頼関係を築きやすくなります。
物事の優先順位や意思決定など、自分の行動指針となる価値観を持っていれば、一貫した行動によって周囲からの信頼が高まるためです。
具体的には、以下のような点を確認して判断しましょう。
- 過去の経験を通じてどのような考えを持ち行動してきたか
- 難しい状況に直面したとき、どのような対応をしたか
- 候補者のキャリアプランと自社のビジョンがマッチしているか
書類審査・適性検査・面接など、複数の選考方法を組み合わせれば、候補者の価値観や考え方をより深く理解しつつ、採用の精度も高められます。
中途採用の適性検査について詳しく知りたい人事担当者の方は、以下の記事を参考にしてみてください。適性検査の目的や、自社に合った検査の選び方を解説しています。
高いコミュニケーション能力を持っているか
中途採用者が職場内で孤立しないために、新しい職場において「他の従業員とコミュニケーションを取り、円滑に業務遂行できるか」も重要な見極めのポイントです。
採用時の面接では、言語・非言語コミュニケーションの両方のスキルを評価しましょう。
種類 | 意味 | 確認のポイント |
言語コミュニケーション | 言葉によって伝え合うコミュニケーション | 言葉の正確さ、わかりやすさ、親しみやすさなど |
非言語的コミュニケーション | 表情や声のトーンなど、言葉以外のコミュニケーション | 感情による表情の変化、会話で声のトーン・相づちなど |
また、コミュニケーション能力は「他者の意見を聞き入れ、建設的な対話ができるか」も、良好な人間関係を築くうえでは重要な要素です。
入社後のキャリアプランを描いているか
中途採用時は、入社後に実現したいキャリアを確認し「本人の成長と、企業の発展を結びつけられるか」を見極めることが重要です。
候補者が自身のプランを描けていれば、自己成長の方向性が明確となり、業務や教育・研修を通じて、キャリア形成をサポートできるかの判断ができます。
そのためには、具体的なキャリアプランや人事制度を採用ページなどに掲載し、候補者に対して明確に伝えておかなければなりません。
候補者も自身のキャリアがイメージできれば、入社前に「この会社は自分に合っていない」と判断できるため、候補者と企業の双方にとってミスマッチ防止につながります。
中途採用に関するよくある質問
中途採用に関する「よくある質問」は以下の2点です。
以下より、それぞれの質問に回答していきます。
期待以上の人材が来たときに注意することは?
期待以上の人材が入社することは、企業にとって大きなチャンスですが、以下のような注意点もあります。
- 優秀だからと過度に期待して放置しない
- 会社が期待していること、求めている目標は明確に伝える
- 能力や成果だけでなく、人間性も評価する
- 重要な役割を与えるときは慎重に判断する
中途採用においては、これまでの経験や実績を重視する傾向がありますが、前職でのやり方に固執してしまい、チームの和を乱す可能性も考えられます。
そのため、社内研修やオリエンテーションを通して、自社のルールや業務の進め方を伝え、遵守させることが重要です。
以下の記事では、期待以上の人材が来たときの「注意点」と「対処方法」について詳しく解説しています。本記事と合わせて参考にしてみてください。
扱いづらい中途社員にならないための対策とは?
扱いづらい中途社員は、自分を過大評価したり、前職のやり方を曲げなかったりする可能性があるため、以下のような対策が必要です。
- 経営方針やビジョンを共有し、社風に適応するか判断する
- 定期的に上司との面談を設けて、問題や不安を解決する
- 業務の流れや決まりなど、自社での仕事のやり方を教える
たとえ能力やスキルが高い人材を採用したとしても、入社後に性格の良し悪しが判明する場合もあります。
候補者の性格や仕事への適性を見極めるためには、面接や適性検査などの選考方法を組み合わせて、多角的に人物評価することが重要です。
以下の記事では、中途採用が期待外れとなる原因と対策を詳しく解説しています。企業が実践している取り組みを紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
中途採用での「優秀すぎる人材」は、見極めと活用の検討が必要
中途採用での優秀すぎる人材は、企業の成長にとって大きな貢献をしてくれる存在ですが、それと同時に注意すべき点があるのも事実です。
具体的な対策方法について、もう一度確認しておきましょう。
中途採用は、自社に新たな風を取り入れるための重要な採用活動であり、成長意欲の高い優秀な人材を見極める必要があります。
まずは自社の採用プロセスを見直したうえで、候補者の性格傾向や適性を可視化する「適性検査」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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