こんにちは。株式会社リーディングマーク「臨床心理士・公認心理師」の佐藤真美華です。今回はパルスサーベイの重要性について、特に従業員側のメリットに焦点を当てて解説いたします。
パルスサーベイとは、会社が従業員の満足度やコンディションを把握するために実施する調査のひとつです。
月に1回など、比較的短期間で定期的に調査を実施することで、従業員の状態をいち早くキャッチし、改善に向けた打ち手を早期に打つことができます。
2021年の株式会社HRビジョンの調査によると、従業員エンゲージメントや従業員満足度の調査を目的として、約2割の企業がパルスサーベイを導入しています。
また、今後導入予定であると回答した企業は17%を占めており、近年人的資本経営への注目が高まっていることも踏まえると、今後このようなサーベイを導入する企業はますます増えていくと考えられます。
一方で、パルスサーベイを導入しても従業員側はメリットを感じられず、回答への負担感があるという声も多く聞かれます。
パルスサーベイのメリットは会社・組織側にのみ存在するのでしょうか。さっそく従業員側から見たパルスサーベイの重要性について解説いきます。

パルスサーベイの重要性
パルスサーベイの導入目的は先述のとおりですが、実施することによる組織のメリットと従業員のメリットをそれぞれ整理してみましょう。
組織のメリット
- 現在の従業員の満足度や状態の把握が可能
- 上記を踏まえ、早期の課題解決を行うことでエンゲージメントの維持・向上が可能
組織のメリットは主に上記であり、パルスサーベイにより、従業員の状態や変化を把握することで、適切なフォローを行うことができます。
そして早い段階で適切なフォローを行うことが、人材の流出を防いだり、生産性を高めたりすることにもつながります。
たとえば、これまで順調に仕事に取り組んでいた従業員のパフォーマンスが急に落ちたという場合に、サーベイの結果がどのような要因が関わっていそうか考えるヒントになります。
考えられる要因を念頭にその従業員と話し、必要なサポートを行うことで、コンディションの悪化を防ぎ、ひいては離職の防止やエンゲージメントの向上、生産性の向上にもつながっていくでしょう。
ここからは具体的な導入事例を2つご紹介します。
株式会社笑美面の導入事例
株式会社笑美面では、社内の労働環境改善や離職防止を目的に実名式のパルスサーベイを導入しています。
そしてサーベイの結果をもとに、フォローすべき社員ひとりひとりに対面やweb面談、電話などでフォローを行うようにしました。
効果的なフォロー体制の構築と、丁寧なコミュニケーションの結果、導入前に比べて離職が3/5になりました。
グローバルソリューションサービス株式会社の導入事例
同様に、グローバルソリューションサービス株式会社では、離職防止を目的に実名式のパルスサーベイを導入しました。
そして、サーベイ結果と打ち手のアドバイスを踏まえ、フォローが必要な社員に面談を実施するように改善しています。
サーベイの結果をとっかかりに話をすることで、社員から率直な気持ちや意見を聞くことができるようになるとともに、離職率の改善にもつながりました。
また、社員の意見を制度や環境改善につなげています。
従業員のメリット
- 従業員自身の振り返りの機会になり、自己分析が可能
- 自身の状態を上司や組織に伝える機会として活用可能
パルスサーベイに回答することによる従業員のメリットは、主に上記が挙げられます。
これらを行うことで、抱えている業務について整理や相談をしたり、ストレスに気づいて早めに対処したりすることなどにもつながります。
ここで、定期的に回答し、結果を自身で確認することに本当に意味があるのだろうかと、疑問に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実はこの振り返りには大きな意味があります。
心理学では、このように自身の状態に意識を向けることは、セルフモニタリングと呼ばれており、セルフケアにとって重要であるとされています。
次のセクションでは、このセルフモニタリングについて詳しくご説明します。
セルフモニタリングとは?
心理学におけるセルフモニタリングとは、自分で自分の心身の状態を観察することを指します。
一見簡単なことのように感じられるかもしれませんが、忙しい毎日を過ごす中で、自身の日々の変化に気付くことは、実は結構難しいことです。
業務が立てこみ、知らず知らずのうちに疲れが溜まって風邪を引いてしまった、といった経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
セルフモニタリングの役割
先述したとおり、セルフモニタリングは、ストレスの原因や心の状態に意識を向けることであり、セルフケアをするにあたって重要であるとされています。(*1)
ストレスに上手く対処するには、まず自分がどのような状態にあるのかを正しく把握しなければなりません。
セルフモニタリングでは、自身がどのような状況において、どのような状態・気持ちになったのかを具体的・継続的に記録していきます。
その上で、それぞれの状況に応じて、どのような対処をすることで自身の状態がどう変化したのかを振り返ることで、ストレスへの対処方法を身に着けることができるようになります。
たとえば仕事でストレスを感じやすい状況や業務を明確にし、これまでにうまく対処できた方法を整理することで、予め対策を立てておくことが可能です。
つまり、自身の心身の状態に対する気づきが得られることで、ストレスへの対処の取っ掛かりになるため(*2)、セルフモニタリングはセルフケアのファーストステップといえます。
具体的な方法
具体的なセルフモニタリングの方法として、以下の2つを簡単にご紹介します。
活動記録表 | 1日の行動とその気分を時間帯ごとに記録し、日常の行動パターンや気分の変化を可視化する方法 |
コラム法 | 具体的な出来事を振り返り、その時の考えや感情について整理する方法 |
活動記録表
活動記録表では、起床してから就寝するまでの1日の行動とそれぞれの行動時の気分を記録します。
これにより日常の行動パターンや気分の変化を可視化し、どういう時に調子を崩しやすいか、どういう場面で負担を感じやすいかなど、ストレスの原因となりやすいパターンを把握することができるようになります。
※以下の画像はクリックで拡大可能です

<出典:認知行動療法マップ>
コラム法
コラム法では、より具体的な出来事に対して考えたことや気持ちについて可視化し、整理します。
整理する項目数によっていくつか種類がありますが、今回は以下の3つの点について振り返る方法をご説明します。
- 出来事や状況
- その時の感情とその強さ(0~100)
- その時浮かんだ考え
たとえば、「上司から重要なプレゼンを任された」という状況の場合は次のように整理することができます。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
出来事・状況 | 感情 | 考え |
---|---|---|
上司から重要なプレゼンを任された | 不安(80)、緊張(90) | 自分にできるだろうか、失敗して評価が下がるかもしれない |
このように振り返ることで、自身の体験を客観視し、気づきを得ることができます。
パルスサーベイを活用したセルフモニタリング
上記で挙げた方法は、忙しい日々の中で、自身で継続して行っていくことが難しく感じられる場合があるかと思います。
そこで、所属組織が導入しているパルスサーベイを活用することで、定期的なセルフモニタリングが可能になります。
定期的に配信されるサーベイに毎回回答し、結果を確認することで、自身の直近の状態を振り返ることができます。
自分では気づいていなかった意外な変化が表れることもあるでしょう。
基本的に回答のタイミングと従業員自身が行うことは毎回決まっているため、前回からの比較がしやすくなっています。
また、自分で自律的に継続するよりも負担感が少なく、比較的継続しやすい方法といえます。
パルスサーベイにより自身の心身の変化を客観的に把握することで、「どう対処していくか」「周囲からどのようなサポートを得るか」など、対処方法を検討することも可能になります。
ご活用の際は、以下のポイントを参考にしてみてください。
サーベイに回答後、自身の結果を確認する
結果と直近の出来事を照らし合わせ、どのような出来事が自身にどのような影響を及ぼしているか振り返ってみてください。
振り返りを行動につなげる
ポジティブな点は認めつつ、改善できそうな点は具体的な対策を考え、実行してみてください。次回以降のサーベイで、対策がうまくいっているかを振り返ってみましょう。
これまでの変化を確認し、パターンを見つける
サーベイ結果を長期的に見直し、どのような時期・タイミングにどのような状態になりやすいか、自身のパターンを把握してみてください。パターンを把握しておくことで、準備や対策がしやすくなるでしょう。
まとめ
今回は、パルスサーベイのメリットについて、従業員目線でご説明しました。
パルスサーベイに回答することで、定期的に自身の状態に意識を向けることができます。そして、自身の状態に意識を向けることは、セルフケアにとって必要不可欠なことです。
自身の状態や変化に気付き、ストレスに適切に対処していくことで、いきいきと働くことができます。
ぜひ、パルスサーベイをきっかけに日頃からご自身の状態に注意を向け、セルフケアに活かしていただければと思います。


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