- 従業員エンゲージメントを構成する3つの要素
- 従業員エンゲージメント向上によるメリット
- 従業員エンゲージメントを高める方法【企業事例あり】
強い組織をつくるには従業員エンゲージメントの向上が欠かせませんが、具体的にどのような要素を高めるべきか理解していない方もいるのではないでしょうか。
従業員エンゲージメントは、以下の3つの要素で構成されており、向上施策に反映するには調査にもとづく分析・検討が必要です。
- 企業理念の理解度
- 企業目標・ビジョンの共感度
- 積極的な行動意欲
本記事では、従業員エンゲージメントの構成要素や注目される背景、企業の取り組み事例を詳しく解説します。
具体的な測定方法やツールも紹介していますので、魅力ある組織づくりの第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。
従業員エンゲージメントとは?
従業員エンゲージメントとは、従業員が組織の目標やミッションに対して理解・共感し、自発的に貢献しようとする意欲や姿勢を示す概念です。
そもそもエンゲージメント(engagement)には、日本語で「約束・契約」の意味があり、ビジネスにおいては、組織と従業員との関係性をあらわす指標として用いられます。
単に満足度やモチベーションの高さを示すだけでなく、組織の考えに共感し「愛着」や「愛社精神」を持っているかをあらわす指標とも言えます。
従業員エンゲージメントの概念をより詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせて確認してみてください。エンゲージメントを高める方法や事例も解説しています。
従業員エンゲージメントの3つの構成要素
従業員エンゲージメントは、以下の3つの要素で構成されています。
要素 | 概要 | 施策例 |
理解度 | 企業理念や組織のビジョンに対する理解の深さ | ・経営陣と従業員が対話するタウンホールミーティングの実施 ・目標達成度を管理するOKRの導入 |
共感度 | 組織の価値観や考え方に対する共感の度合い | ・従業員同士で学び合うワークショップの開催 ・上司と部下による1on1ミーティングの実施 |
行動意欲 | 目標達成や問題解決に向けて、行動する意欲や主体性 | ・能力やスキルを磨く社内研修の実施 ・目標達成度や業績と連動した報酬制度の導入 |
企業理念やビジョンへの理解・共感によって行動意欲が高まるため、一つの要素を重視した取り組みではなく、3要素が相互に関連するような工夫が必要です。
以下より、各要素を一つずつ解説します。
1:理解度
「理解度」は、企業理念や組織の目標・ビジョンに対して、従業員が正しく理解しているかを示す要素です。
組織に対する深い理解を得られていれば、従業員は自身がやるべき仕事・役割を認識している状態であるため、納得感を持ちながら仕事に取り組みます。
一方で理解度が不十分だと、自身の業務とチームの目標との関連性を見いだせず、仕事に対する活力・熱意・主体性が失われてしまいます。
理解度を高めるには、以下のような取り組みが効果的です。
施策例 | 内容 |
タウンホールミーティングの実施 | 経営陣と従業員が直接対話する集会・ミーティング。会社の現状や方向性をオープンな場で伝え、従業員への浸透を図る。 |
OKR(Objectives and Key Results)の導入 | 目標管理をするためのフレームワークの一つ。達成目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)を設定し、目標に対する意識づけを図る。 |
組織目標に対する理解を促し、その先にある「共感」を得られることで、積極的な行動による高いパフォーマンスを発揮できます。
2:共感度
「共感度」は、組織の価値観や考え方に対して、どの程度の共感を得られているかを示す要素です。
共感度の高い従業員は、組織の目標・ビジョンを自分事として捉え、目標達成に向けて主体的に行動するため、組織との強い一体感を形成します。
一方で、従業員同士のコミュニケーションが不足していたり、仕事の成果が適切に評価されなかったりすると、組織に対する不信感から共感も得られにくいです。
共感度を高める方法として、以下のような取り組みがあります。
- 従業員がお互いの価値観を学び合うワークショップの開催
- 上司と部下が対話する1on1ミーティングの実施
共感度の高い従業員が多くなるほど、組織全体の結束力も強化され、生産性の高い組織になります。
3:行動意欲
「行動意欲」は、組織に対する理解と共感を経て、従業員が目標達成に向けて「どのくらい意欲的に行動するか」を示す要素です。
行動意欲が高ければ、目標達成に必要な能力・スキルを積極的に身につけ、創意工夫をしながら効率的かつ意欲的な働きをみせます。
ただし、理解や共感を得られていたとしても、働きにくい環境や評価制度の不備によって、実際の行動に移せない可能性があります。
従業員の行動意欲を高めるために、以下のような取り組みでサポートを行いましょう。
- 業務に直結する能力・スキルを磨く社内研修の実施
- 目標の達成度・業績と連動した報酬制度の導入
また、従業員が「自分の努力を認められている」と感じられるように、公平かつ透明性のある評価制度の整備も必要です。
従業員エンゲージメントと似た用語の違い
従業員エンゲージメントは、組織に対する貢献意欲や愛着を指しますが、同じような意味を持つ用語として以下の3つが挙げられます。
各用語の意味や調査目的、関連性を理解したうえで、それぞれの要素を高める方法を検討しましょう。
従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの違い
従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントは似た概念ですが、以下のように対象や調査目的が異なります。
従業員エンゲージメント | ワークエンゲージメント | |
定義 | 組織目標に共感し、自発的に貢献しようとする意欲 | 仕事への活力・熱意があり、没頭して取り組んでいる状態 |
対象 | 組織と従業員との関係性 | 仕事に対する従業員の感情・姿勢 |
調査目的 | ・組織全体の生産性向上 ・離職率の改善 | ・従業員のストレス軽減 ・バーンアウト(燃え尽き)の防止 |
従業員エンゲージメントには、仕事や人間関係などワークエンゲージメントの要素も一部含まれているため、両者は広義の意味のエンゲージメントとして用いられます。
以下の記事では、従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの違いをより詳しく解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
従業員エンゲージメントと従業員満足度の違い
従業員エンゲージメントと従業員満足度は、組織づくりの要素として関連性はありますが、以下のように定義や目的に違いがあります。
従業員エンゲージメント | 従業員満足度 | |
定義 | 組織目標に共感し、自発的に貢献しようとする意欲 | 仕事内容や職場に対して、どの程度満足しているかを示した指標 |
対象 | 組織と従業員との関係性 | 組織に対する従業員の考え・感情 |
調査目的 | ・組織全体の生産性向上 ・離職率の改善 | ・職場環境の改善 ・給与や福利厚生などの制度見直し |
従業員満足度は、職場環境の快適さを示す指標であり、満足している状態が必ずしも意欲的な行動に結びつくとは限りません。
一方、従業員エンゲージメントは行動意欲につながる理解度や共感度を示す指標であるため、組織の目標達成に結びつきやすい要素と言えます。
以下の記事では、従業員満足度と従業員エンゲージメントの違いについて、比較表を用いて詳しく解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。
従業員エンゲージメントとモチベーションの違い
従業員エンゲージメントとモチベーションは、両者とも従業員の内面的な感情(意欲)を示す要素ですが、対象や持続性に違いがあります。
従業員エンゲージメント | モチベーション | |
定義 | 組織目標に共感し、自発的に貢献しようとする意欲 | 行動を起こすための動機づけ |
対象 | 組織と従業員との関係性 | 従業員個人の内面的な感情 |
持続性 | 長期的に保たれる | 短期的で状況によって変化する |
従業員エンゲージメントは、組織・従業員間の関係性を示しますが、モチベーションは個人の感情そのものであり、組織とのつながりに関する要素ではありません。
以下の記事では、エンゲージメントとモチベーションの違いを詳しく解説しています。それぞれの要素を高める方法も紹介していますので、実践的なアプローチを確認したい方はぜひ参考にしてみてください。
従業員エンゲージメントが注目される背景
従業員エンゲージメントが注目されている背景として、以下の3点が挙げられます。
長期的かつ持続的な成長を遂げる手段として、企業は「働きがいのある組織づくり」を重視する傾向が強まっています。
人的資本経営の重要性が高まったため
人材を資本として捉える人的資本経営は、中長期的な企業価値の向上につながる経営手法であり、競争優位性を保つうえでも重要な考え方です。
2022年に策定された「人的資本可視化指針」では、経営者・投資家・従業員間の相互理解を深めるために、以下の要素に沿った情報開示を推奨しています。
- 動的な人的ポートフォリオ
- 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
- リスキル・学び直し(デジタル、創造性など)
- 従業員エンゲージメント
- 時間や場所にとらわれない働き方
指針策定により、従業員の能力を最大限に引き出せる環境が、企業価値の向上に直結するという認識が広がり、従業員エンゲージメントの重要性もより高まっています。
参考:「人的資本可視化指針」(案)に対するパブリックコメントの結果の公示及び同指針の策定について|内閣官房
ウェルビーイングを軸にした施策を行うため
ストレス社会の現代においては、従業員の心身の健康状態を保ち、幸福な状態(ウェルビーイング)を目指す取り組みが注目されています。
ウェルビーイングとは?
身体的・精神的・社会的(経済面や家族関係など)に満たされ、幸福で良好な状態をあらわす概念。
ウェルビーイングを軸とした施策は、現場の声を反映した「従業員視点」での取り組みを行うことから、組織に対する貢献意欲や愛着も高まるのです。
厚生労働省の報告書によると、ウェルビーイングへの取り組みによって生産性が向上し、さらなるウェルビーイングの実現につながると示されています。
また、同報告書で推奨している主な取り組みとして、以下が挙げられています。
- 長時間労働の抑制
- 同一労働同一賃金の実現
- 希望・特性に応じた雇用
- キャリア形成の環境整備
従業員の心身の健康を支える取り組みによって、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高めつつ、持続可能な経営の実現につながります。
以下の記事では、ウェルビーイングの考えを経営に取り入れた「ウェルビーイング経営」について解説しています。具体的な取り組みや効果を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
働き方の多様化に対応するため
ワークライフバランスの浸透によって働く人の考え方も変化し、企業としては従業員が自由に働き方を選択できるように、労働環境や制度を整える必要があります。
東京都の調査によると、2023年10月時点でテレワークを導入している企業は、全体で60.1%、300人以上の企業においては80.5%となっています。
2022年の同時期と比べると減少傾向ではありますが、通勤時間や移動時間を削減できるメリットもあるため、多くの企業が導入・運用している現状です。
従業員のライフスタイルに合わせて、柔軟に働ける環境を整備できれば「働きやすさ・働きがい」の創出につながり、エンゲージメントも向上します。
また、組織内の創造性や革新性を高めるために、性別・年齢・国籍を問わず、多様なバックグラウンドを持つ従業員の活躍できる環境を整えることも重要です。
従業員エンゲージメントを高める重要な要素とは?
従業員エンゲージメント向上につながる環境を整えるには、以下の2点が重要な要素です。
満足度の高い職場環境をつくるだけでなく、組織に対する理解・共感を得て、従業員が自分の仕事に意義を見いだせるかが、強い組織を構築するうえで重要な要素です。
経営陣の積極的な行動と強い想い
従業員エンゲージメントを高めるためには、経営者自らが従業員と積極的に対話し、組織としての考え方や方向性を伝え続ける必要があります。
また、経営者は伝える役割を担うだけでなく、組織目標の達成に向けた積極的な行動を示さなければ、従業員からの理解や共感を得られません。
組織運営を行う人事部としては、経営陣と従業員の接点を増やすために、以下のような取り組みを検討してみましょう。
- 経営陣とフランクに会話できるランチ会
- 社内SNSや社内報での情報発信
- 現場業務を経営陣が体験する研修プログラム
経営陣は、組織の目標達成に向けて「みなさんの力と情熱が必要」と協働の姿勢を示すことで、従業員からの理解・共感を得られます。
働きがいのある組織づくり
働きがいのある組織・職場は、仕事に対するモチベーションを保ちつつ、組織の目標達成に貢献しようとする意欲を引き出します。
キャリアアップの機会が少なかったり、評価基準が曖昧だったりすると、従業員は自分の仕事に意義を見いだせず、エンゲージメントの向上にもつながりません。
組織としては、以下のような「個人の成長」と「会社の成長」が結びつくような組織づくりが求められます。
- 他部署での経験を積ませるジョブローテーション制度の導入
- 新たな能力・スキルを身につけるリスキリング(学び直し)の支援
組織づくりの基本原則や進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。組織の拡大に合わせてすべき取り組みも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
従業員エンゲージメントを高める3つのメリット
従業員エンゲージメントを高めるメリットとして、以下の3点が挙げられます。
組織と従業員との結びつきを強くすることで、目標達成に向けて全従業員が同じ方向性を持ち、チーム一丸となって取り組む「強い組織」が生み出されるのです。
以下の記事では、エンゲージメントを高めるメリットと向上施策について解説しています。企業事例を交えて紹介していますので、自社の施策と照らし合わせながら確認してみてください。
離職率の低下
従業員の「組織に対する愛着」と「仕事へのやりがい」を見いだせれば、職場環境や人間関係などの不満も少なくなり、離職の意思そのものが生まれません。
アメリカのギャラップ社の調査では、エンゲージメントの数値「上位25%」と「下位25%」の組織を比較し、離職率の違いについて分析しています。
離職率別のグループで結果をみると、以下のように「上位25%の組織」は離職率が約20〜50%低いことがわかりました。
グループ | 上位25%の組織の離職率 ※下位25%の組織との比較 |
離職率の高い組織(41%以上) | 21%低い |
離職率の低い組織(40%以下) | 51%低い |
参考:Gallup 2024 Q12 Meta-Analysis|Gallup, Inc.
離職率の低下によって、組織の中核となる優秀な人材が定着し、組織力の強化にもつながります。
以下の記事では、離職防止の方法や具体例について詳しく解説しています。従業員エンゲージメントを向上させ強い組織をつくるために、本記事と合わせて確認してみてください。
労働生産性と業績の向上
従業員エンゲージメントの向上によって、仕事に対して意欲的な姿勢で取り組むようになり、効率よく高い成果を出し続けます。
戦略を模索する積極的な姿勢が組織全体に浸透すれば、労働生産性の向上とともに、業績へのプラスの影響にもつながるのです。
経済産業省の研究報告によると、少子高齢化における人材戦略として、従業員の自発的貢献意欲(エンゲージメント)の向上を優先課題に挙げています。
従業員エンゲージメントと業績(営業利益率・労働生産性)には、相関関係が確認されていることから、国も「人材の価値を引き出す施策」を重要視しているのです。
参考:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会|経済産業省
以下の記事では、経営での失敗を経て「生産性重視」の組織をつくった秘訣について、経営トップによる対談を紹介しています。生産性を高める具体的な取り組みを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
従業員のモチベーション向上
エンゲージメントが向上すれば、従業員は「自身の役割」と「組織の目標」を結びつけながら業務を進めるため、高いモチベーションを維持している状態とも言えます。
働き方改革に関する資料によると、エンゲージメントに影響する要因として「ポジティブな心理状態(モチベーションなど)」を含む、以下の3点が挙げられています。
要因 | 具体例 |
仕事の資源 | ・適切な業務量や裁量権 ・職場内のコミュニケーション |
個人の資源 | ・自身の成長やキャリアへの意識 ・目標達成への意欲(モチベーション) |
仕事の要求度 | ・仕事のプレッシャー ・役割の重さ |
モチベーションが高まれば組織への貢献意欲も高まり、さらにモチベーションが向上するといった、両者にはお互いに影響し合う相関関係があります。
以下の記事では、従業員のモチベーションの高め方について詳しく解説しています。離職率低下につながる方法も紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。
従業員エンゲージメントを高めるプロセス
従業員エンゲージメントを高めるには、以下の3ステップで計画的かつ段階的に進める必要があります。
上記のプロセスに沿って従業員エンゲージメントを継続的に高め、生産性や業績の向上を目指しましょう。
1:現状把握・目標設定
まずは自社の現状・傾向を把握するため、エンゲージメントサーベイ(調査)を用いて、以下のような点を評価・分析しましょう。
- 自分の仕事に情熱を持って取り組んでいるか
- 組織の目標を理解し、個人の目標と結びつけているか
- 職場環境や人間関係に対する不満はないか
調査結果をもとにエンゲージメントを数値化し、スコアが低い領域の特定と、なぜ低い状態なのかを明確にします。
課題を洗い出したあとは、以下の「SMARTの法則」などの手法を用いて、具体的かつ測定可能な目標設定を行いましょう。
Specific (具体性) | 成果物や達成したいことを具体的な数値で示す |
Measurable (計測可能) | 目標を数値化して達成度を測定する |
Achievable (実現可能) | リソースや時間の制約内で達成可能な目標にする |
Relevant (関連性) | 組織・個人の目標との関連性を持たせる |
Time-bound (期限付き) | 目標の達成期限を設ける |
2:施策の検討・実施
具体的な目標が定まったら、エンゲージメントサーベイの結果をもとに現場のニーズに合った施策を検討しましょう。
たとえば、エンゲージメントが低下している原因として、人事評価やフィードバックに対する不満がある場合、以下のような施策が考えられます。
- 年功序列から成果主義の評価制度に移行する
- 定期的な1on1ミーティングで成長を後押しする
- 同僚や後輩が評価する多面評価(360度評価)を導入する
働きやすい環境を整えるためには、働き方を自由に選択できる制度や、気軽にメッセージができるコミュニケーションツールの導入など、多角的なアプローチが必要です。
また、施策を行うときは、経営陣による積極的な関与と明確な指示によって、従業員エンゲージメントの向上にもつながりやすくなります。
3:従業員エンゲージメントの測定・評価
施策の効果を測定・評価するために、再びエンゲージメントサーベイや従業員との面談を実施しましょう。
エンゲージメントサーベイの場合は、施策に対する意見や満足度を確認したうえで、エンゲージメントに関わる要素(活力・行動意欲など)に変化がないかを測定します。
調査結果を分析・評価するときは、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 部署・役職・年齢などの属性ごとに分析する
- どの領域で改善が必要かを判断する
- 離職率や労働生産性などの指標と関連づけて分析する
また、施策の効果やエンゲージメントサーベイの結果は、必ず全社員に共有し、次のアクションを起こすための意識づけが必要です。
従業員エンゲージメントの向上施策【企業事例あり】
従業員エンゲージメントの向上施策について、3つの方法と企業事例を紹介します。
施策 | 事例 |
社内のコミュニケーションを活性化させる | 実名制のサーベイでエンゲージメント低下の要因を特定 |
ワークライフバランスの充実を図る | 時間外労働の削減、休暇取得の促進 |
成果・能力に応じた人事評価を行う | 実力のある人が登用される実力主義の等級制度 |
事例を通して「離職率や生産性にどのような影響があるのか」を把握し、自社の状況に合わせた施策を検討してみてください。
社内のコミュニケーションを活性化させる
透明性のある情報共有やオープンな対話の促進により、社内のコミュニケーションが活性化され、組織と従業員とのつながりが強化されます。
たとえば、SlackやChatworkなどのコミュニケーションツールを活用すれば、遠隔地で働いている従業員とも円滑に情報共有できるため、業務進捗の確認も容易です。
従業員との対話を重視したい場合は、上司・部下による1on1ミーティングの実施や、他部署の人と会話できる休憩スペースの設置などの施策があります。
従業員との対話を重視している株式会社ペンシルでは、エンゲージメントの低い社員が実名でわかるサーベイを活用し、以下のように運用しています。
- 月1回サーベイを配信
- 回答を促すリマインド・声かけを実施
- スコアの変化や個別コメントの有無を確認
スコアが大きく変動している従業員に対しては、上司との1on1で心当たりを聞き、検討を重ねたうえで改善に向けたネクストアクションを決めています。
サーベイの活用により「いま困っている人が、どのようなことで困っているのか」が明確になり、従業員の離職防止にもつながっています。
以下の記事では、社外コミュニケーションを活性化させるアイデアを多数紹介しています。企業が実践している施策も解説していますので、自社に合った取り組みを見つけてみてください。
ワークライフバランスの充実を図る
仕事と生活の調和(ワークライフバランス)が実現すれば、従業員の身体的・精神的な健康が保たれ、エンゲージメントの向上にもつながります。
企業としては、個々の状況に応じた働き方を選択できるように、休暇の取得促進やフレックスタイム制度の導入といった取り組みが必要です。
また、育児や介護などの家庭環境を踏まえて、適切な業務配分・調整を行い、従業員の心理的負担の軽減にも努めなければなりません。
ワークライフバランスに取り組んでいる株式会社フォーラス&カンパニーでは、時間内で内容の濃い仕事をするため、時間外労働の削減と休暇取得の促進を行っています。
公私ともに充実した人生を歩んでもらおうと、家族との時間を大切にしながらも、自己研鑽の時間と向き合える環境づくりを進めています。
また、若手社員の離職増加に伴って、サーベイによる離職防止にも取り組みました。
社員の心理状態を可視化することで、離職可能性のある社員への打ち手が明確になり、手遅れになる前にケアやサポートができています。
【参考】
成果・能力に応じた人事評価を行う
従業員エンゲージメントを高めるためには、公平・公正かつ透明性のある人事評価が不可欠です。
能力・成果にもとづく明確な評価基準を定め、目標達成までのプロセスや努力を含めて評価することで、従業員からも納得を得られる評価制度をつくれます。
ミキワメサービスを提供している株式会社リーディングマークでは、組織のミッションとして6つの行動指針を掲げ、従業員の自己実現を進めています。
- 全部自分ごと
- 理想から逆算
- 爆速でトライ
- 期待を超える
- みんなで勝つ
- 正しさへのこだわり
全従業員が「事業家」となることを目指し、年齢に関係なく実力のある人が登用されるように、実力主義の等級制度を設けています。
人事評価の評価基準について知りたい人事担当者の方は、以下の記事を確認してみてください。具体的な評価方法や流れも詳しく解説しています。
従業員エンゲージメントを測定する方法・ツール
従業員エンゲージメントを測定するには、主に以下の3つの方法(ツール)があります。
エンゲージメントを数値化した場合は、サーベイやストレスチェックを活用し、現場の声を対面で聞きたい場合は1on1ミーティングを行いましょう。
エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイは、従業員の「仕事に対する活力」や「会社への愛着」などを測定し、エンゲージメントスコアとして可視化するツールです。
定期的なサーベイの配信によって、エンゲージメントスコアの変化を把握したり、部署・チームごとの傾向を分析したりできます。
エンゲージメントサーベイには、実施頻度や質問数が異なる2つのサーベイがあるため、目的に応じた使い分けが必要です。
※以下の表は右にスクロールできます
種類 | 頻度 | 質問数 | 使用例 |
センサスサーベイ | 年1〜2回など | 約50〜100問 | 社内制度や職場環境に対する従業員満足度を調査する |
パルスサーベイ | 月1回、週1回など | 約5〜15問 | 心理状態の変化をタイムリーに察知し、適切なケア・サポートをする |
ただ単にエンゲージメントの状況を把握するだけでなく、課題解決に向けた従業員へのアドバイスや、働きやすさを追求した組織づくりにつなげる必要があります。
エンゲージメントサーベイの導入を検討している人事担当者の方は、以下の記事を参考にしてみてください。心の健康状態を可視化できるツールや、行動・アクションのアドバイスが提供されるツールを徹底比較しています。
ストレスチェック
ストレスチェックは、従業員の心理的負担やストレス状況を測定し、職場環境の改善に役立てるための取り組みです。
労働安全衛生法により、従業員50人以上の事業所はストレスチェックが義務化されていますが、全事業所への義務づけを行う方向で検討が進められています。
参考:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省
従業員のストレス要因を抽出することで、心理的負担を軽減させる施策を検討・実施できるため、エンゲージメント向上につながる「快適な職場環境」への改善ができます。
また、高ストレス者を含むメンタルヘルス不調者の特定が可能で、休職・離職の未然防止にも効果的です。
以下の記事ではストレスチェックサービスを徹底比較しています。本記事と合わせてご覧になってみてください。
1on1ミーティング
上司(人事)と部下による1on1ミーティングは、組織や仕事に対する考えを聞き、具体的なアドバイスを提供する大切な機会です。
ただ単に業務進捗を確認するだけでなく、組織の一員としてのあり方や、キャリアの方向性について話し合うことで、定性的なエンゲージメントの度合いを確認できます。
従業員の状況に合わせて適切なタイミングで1on1をできれば、離職を引き起こす要因の特定・対策が可能です。
実際に、若手社員の離職対策をしている企業の36.8%は、定期的な1on1ミーティングを実施していることが、株式会社リーディングマークの調査でわかりました。
従業員の声を直接聞き、個別のフィードバックやキャリア支援を行うことで、よりエンゲージメントを高められる施策を検討できます。
1on1を導入する際には、効果的に運用するためのツール選びも重要なポイントです。以下の記事で1on1の各サービスを比較してみてください。
従業員エンゲージメントが高い企業の特徴とは?
従業員エンゲージメントが高い企業の特徴は、経営陣の積極的な行動・声かけによってコミュニケーションが活発で、意思疎通がスムーズにできている点です。
経営者から現場で働く人まで情報共有が行われ、従業員の意見やフィードバックを取り入れながら組織運営をしています。
具体的には、定期的にタウンホールミーティングを開催し、経営陣自らがビジョンや戦略を共有するとともに、従業員からの質問にもオープンに答えるといった取り組みです。
また、評価制度やキャリア支援などの組織体制も整っているため、スキルアップや自己成長を実感しながら仕事ができる環境と言えます。
従業員エンゲージメントの高い企業が実践している取り組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。施策検討時の参考にしてみてください。
従業員エンゲージメントの要素を理解し、魅力のある組織づくりを
従業員エンゲージメントは、理解度・共感度・行動意欲の3要素で構成されており、それぞれの要素を高め合うことでエンゲージメントも向上します。
組織づくりを進めるうえでは、経営方針による施策だけでなく、現場で働く従業員の声を取り入れた「働きやすさ・働きがい」を追究した取り組みが必要です。
まずは、エンゲージメントサーベイや1on1を通して組織の状態を把握し、浮き彫りとなった課題を解決していきましょう。
従業員のメンタル状態の定期的な可視化・個々の性格に合わせたアドバイス提供を通じ、離職・休職を防ぐパルスサーベイ。30日間無料トライアルの詳細は下記から。