定期的に1on1を実施しているなかで、「何を話せばいいのかわからない」「毎回同じ話題になってしまう」と悩んでいませんか。
1on1は、部下との信頼関係を構築し、自発的な行動を促すための「対話の場」です。しかし、テーマ選びや質問の仕方を誤ると、評価や指導の時間になってしまったり、雑談だけで終わったりする可能性があります。
本記事では、1on1で話すべきテーマを「目的別」「レベル別(組織・個人・業務)」に整理し、具体的な質問例を交えて解説します。
- 1on1で話すテーマ(質問例)の一覧
- 新しい気づきを引き出すためのポイント【会話術】
- 雑談で終わらせないために!1on1で注意すべきこと
この記事を読むことで、部下との対話を深めるテーマが明確になり、組織の活性化や離職防止につながる「質の高い1on1」を実現できます。ぜひ最後までご覧ください。
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1on1で何を話す?目的ごとにテーマ・時間配分を考えよう

1on1で何を話すべきか悩んだときは、部下との対話を通じて「どのような状態を目指したいのか」を明確に決めてみましょう。
ここでは、以下の3つの目的を例に挙げて、具体的な流れやテーマを解説します。「どのようなテーマを話すべきか」「時間配分はどうすべきか」と悩んでいる方に向けて、すぐに実践できるポイントを紹介します。
※以下の表は右にスクロールできます
目的 | テーマ | ポイント |
---|---|---|
部下との信頼関係の構築 | ・最近の困りごとや悩み、不安 ・自分でできそうな工夫 ・支援してほしいこと | ・傾聴して感情を受け止めつつ、相づちで共感を示す ・必要に応じて深掘りの質問をする |
自発的な思考・行動の促進 | ・前回の1on1からの進捗状況 ・最近のハイライト(よかったこと、できたこと) ・最近のローライト(できなかったこと) | ・思考を深める質問を行う(オープンクエスチョン) ・部下の強みとなる思考や行動を称賛する ・不足している行動の改善方法を提案する |
社員の離職防止(エンゲージメント向上) | ・仕事の進捗確認 ・将来のありたい姿(キャリア) ・負担になっていること ・職場環境や制度で改善してほしいこと | ・仕事上の困りごとや悩み、不安などを中心に質問する ・会社として支援できることがないかを確認する |
参考:心理学と組織論からみた理想の1on1② 〜マネジメントの流れと1on1の力点の置き方〜|組織心理研究所
以下より、詳しく見ていきましょう。
また、1on1で「話すことがない」と感じる原因や対策については、別の記事でも詳しく解説しています。「沈黙が続いて気まずい雰囲気になる」と悩んでいる方は、本記事と合わせて確認してみてください。

目的1:部下との信頼関係の構築
まだ部下との信頼関係が構築できていない段階では、傾聴や共感を中心とした1on1を行い、安心して話せる環境をつくることが最優先です。
1on1を通じて「何かよくなりそうな期待感が持てた」と体験することで、部下は自分の考えや悩みを「また話してみたい」と感じるようになります。
具体的な流れや時間配分、話すテーマは以下のとおりです。
【1on1の流れ(30分の場合)】※以下の表は右にスクロールできます
流れ(時間) | 内容 | ポイント |
---|---|---|
チェックイン(5分) | ・目的や情報共有の範囲、時間の説明 ・雑談(趣味、家庭、最近のニュース など) | ・1on1の目的や意義を伝え、部下の理解を得る ・仕事と関係のない話題でリラックスした雰囲気をつくる |
ヒアリング(15分) | ・最近の困りごとや悩み、不安 ・理想の状態(あるべき姿) ・自分でできそうな工夫 ・支援してほしいこと | ・傾聴して感情を受け止めつつ、相づちで共感を示す ・必要に応じて深掘りの質問をする |
クロージング(10分) | ・ミーティングの振り返り ・解決方法の提案 ・ネクストアクションの検討 | ・事実は事実としてフィードバックする ・上司と部下双方の行動を検討し、すり合わせを行う |
上司と部下の信頼関係の構築が目的であるため、無理に解決を急ぐ必要はなく、まずは話を聞くだけでも十分な段階です。この1on1では、「一緒に考えよう」「いつでも相談に乗るよ」といった、組織としてサポートする姿勢を見せましょう。
目的2:自発的な思考・行動の促進
部下との信頼関係がある程度構築された段階では、部下自身が「何を感じているか」「どうありたいか」を言語化できるような対話が重要です。
たとえば、「この課題をどう解決できそう?」と問いかけることで、部下は自分なりの答えを考え始めます。上司がすぐに解決策を提示するのではなく、あえて考える時間を設けることで、自発的に行動しようとする意思が生まれます。
具体的な流れや時間配分、話すテーマは以下のとおりです。
【1on1の流れ(30分の場合)】※以下の表は右にスクロールできます
流れ(時間) | 内容 | ポイント |
---|---|---|
チェックイン(5分) | ・雑談(趣味、家庭、最近のニュース など) ・近況連絡(仕事の進み具合 など) | 雑談や近況報告を通じて、気軽に話せる雰囲気をつくる |
ヒアリング(15分) | ・前回の1on1からの進捗状況 ・最近のハイライト(よかったこと、できたこと) ・最近のローライト(できなかったこと) | ・思考を深める質問を行う(オープンクエスチョン) ・部下の強みとなる思考や行動を称賛する・不足している行動の改善方法を提案する |
クロージング(10分) | ・ミーティングの振り返り ・今後の目標や行動のすり合わせ | 次回に向けて「何を・いつまでに」行うのかを明確にする |
ネガティブな部分だけをフィードバックするのではなく、部下の行動によって成果が出ている点や、会社にプラスの影響を与えていることを指摘し称賛しましょう。
目的3:社員の離職防止(エンゲージメント向上)
1on1を通じて社員の離職防止を図りたい場合は、仕事上の悩みや不安に加えて、本人のコンディションの確認も行いましょう。たとえば、以下のような質問が挙げられます。
- 最近よく眠れていますか?
- 体調や気分に変化はありますか?
- 仕事とプライベートのバランスは取れていますか?
- 職場環境でストレスに感じることはありますか?
これらの質問を行うことで、部下の心身の状態や生活リズムを把握できます。あらかじめエンゲージメントサーベイなどを実施しておけば、心理状態のデータを確認しながら対話を進められます。
具体的な流れや時間配分、話すテーマは以下のとおりです。
【1on1の流れ(30分の場合)】※以下の表は右にスクロールできます
流れ(時間) | 内容 | ポイント |
---|---|---|
チェックイン(5分) | ・雑談(趣味、家庭、最近のニュース など) ・近況連絡(仕事の進み具合 など) ・気持ちやコンディションの確認 | ・雑談や近況報告を通じて、気軽に話せる雰囲気をつくる ・事前にサーベイなどで心理状態を把握する |
ヒアリング(15分) | ・仕事の進捗確認 ・将来のありたい姿(キャリア) ・負担になっていること ・職場環境や制度で改善してほしいこと | ・仕事上の困りごとや悩み、不安などを中心に質問する ・会社として支援できることがないかを確認する |
クロージング(10分) | ・ミーティングの振り返り ・今後の目標や行動のすり合わせ | ・「意見を聞けてよかった」と受け止める姿勢を見せる ・次回までにできそうなことを部下と一緒に考える |
また、部下との対話を通じて「会社に対する不満」を直接聞き、経営層や人事にフィードバックすることで、職場環境を改善するきっかけになります。
1on1で話すテーマ・ネタ一覧【組織レベル】

ここからは、1on1で話すべきテーマ(ネタ)を詳しく見ていきましょう。まずは「組織」に関するテーマを3つ紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
テーマ | 質問例 |
---|---|
経営理念・制度・カルチャー | ・会社の理念で、とくに共感している点はどこですか? ・組織文化で「いいな」と思う点や「もっとこうなったら」と思う点はありますか? |
職場の人間関係 | ・いまのチームの雰囲気について、どう感じていますか? ・最近、仕事で助けられたと感じた人はいますか? |
会社の方針・戦略 | ・会社の方針について、最近感じていることはありますか? ・会社の方針が日常の業務にどう影響していると感じますか? |
以下より、それぞれのテーマと質問例を詳しく解説します。
経営理念・制度・カルチャー
経営理念や制度、カルチャーに関するテーマでは、部下が会社の方向性に対して「どのように受け止めているか」を確認します。
たとえば、新しい評価制度を導入したときに、仕組みに対する理解度や評価基準への納得感を尋ねることで、制度が現場に浸透しているのかを把握できます。
具体的な質問例は、以下のとおりです。
【質問例】
- 会社の理念で、とくに共感している点はどこですか?
- 組織文化で「いいな」と思う点や「もっとこうなったら」と思う点はありますか?
- 社内の制度で、利用しやすいと感じる点はどこですか?
- 社内のルールや慣習で、普段の業務に合っていないと感じるものはありますか?
- 「この文化を大切にしたい」と思う瞬間はどんなときですか?
- 新入社員に会社の文化を説明するとしたら、どう表現しますか?
- 理念を浸透させるために、自分ができそうなことはありますか?
これらの質問を通じて、経営理念やカルチャーが「日常業務にどう関わっているか」を一緒に考えることで、部下の行動指針が明確になります。
職場の人間関係
職場の人間関係に関するテーマでは、チーム内のコミュニケーション状況や、他の部署との関係性を確認します。
対話を通じて、人間関係によるストレスの有無や、同僚との対立(意見の食い違い)などを把握することで、組織・チームとして「どう対処していくか」を伝えられます。
具体的な質問例は、以下のとおりです。
【質問例】
- いまのチームの雰囲気について、どう感じていますか?
- 最近、仕事で助けられたと感じた人はいますか?
- チーム内で相談しやすい人は誰ですか?
- もう少しコミュニケーションを取りたいと思う人はいますか?
- 私(上司)とのコミュニケーションで改善できそうなことはありますか?
- 職場で「こういう雰囲気だと働きやすい」と思うことは何ですか?
- チームの関係性を深めるために、自分ができそうなことは何ですか?
チーム内の小さな問題でも耳を傾け、部下と一緒に解決策を考えることで、1on1が「困ったときに相談できる場」として認識されるようになります。
会社の方針・戦略
会社の方針・戦略に関するテーマでは、会社が目指す方向性や組織のあり方について、部下の理解度を確認します。
日々の業務において、会社の方針を意識しながら働くのは難しい場合があります。そのため、1on1の場で改めて「自分の仕事は、どのような方針に基づいて行っているか」を一緒に考え、業務と会社の戦略を結びつけることが重要です。
具体的な質問例は、以下のとおりです。
【質問例】
- 会社の方針について、最近感じていることはありますか?
- 経営層の発信内容で、理解しにくかった内容や疑問に思った点はありますか?
- 会社の方針が日常の業務にどう影響していると感じますか?
- 今後の戦略のなかで、自分の役割はどう関わっていけそうですか?
- 会社の方針がチームに浸透していると感じる場面はありますか?
- 逆に、現場でギャップを感じていることは何ですか?
- 会社の方向性について、もっと知りたい情報はありますか?
こうした対話を繰り返すことで、部下は与えられたタスクをこなすだけでなく、組織の方向性を意識して自発的に行動できるようになります。
1on1で話すテーマ・ネタ一覧【個人レベル】

続いて、1on1で話すべき「個人」に関するテーマ(ネタ)を詳しく見ていきましょう。主に以下の3つのテーマが挙げられます。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
テーマ | 質問例 |
---|---|
パーソナリティ (性格・特性・価値観) | ・自分の性格や考え方で「これが自分らしいな」と思うことはありますか? ・最近「これは自分に合っているな」と感じた仕事はありましたか? |
ライフスタイル (心身の健康・家族・趣味) | ・休日はどんなふうに過ごしてリフレッシュしていますか? ・普段の生活で「大事にしている習慣」はありますか? |
将来のキャリア (ありたい姿) | ・将来的にどのような仕事や役割にチャレンジしてみたいと思っていますか? ・これまでの経験で「今後のキャリアに活かせそう」と思うことは何ですか? |
以下より、それぞれのテーマと質問例を詳しく解説します。
パーソナリティ(性格・特性・価値観)
パーソナリティに関するテーマでは、部下の性格や行動特性、価値観などを理解し、今後の関わり方を考える材料にします。
対話を通じて、部下の自己理解を深めるきっかけとなり、自分の能力を活かせている仕事や「自分らしさ(強み・弱み)」などを再確認できます。
具体的な質問例は、以下のとおりです。
【質問例】
- 自分の性格や考え方で「これが自分らしいな」と思うことはありますか?
- 最近「これは自分に合っているな」と感じた仕事はありましたか?
- 仕事で発揮できていると思う自分の強みは何ですか?
- 逆に「ここは課題だな」と感じる部分はどこですか?
- 大切にしている価値観や信念はどんなものですか?
- 仕事のなかで「もっと自分の強みを活かせる」と感じる場面はありますか?
- 自分の性格をひと言であらわすとしたら、どんな言葉がしっくりきますか?
部下と一緒に「自分らしく働くこと」を考えることで、強みを活かし成長するための具体的な行動が明確になります。
ライフスタイル(心身の健康・家族・趣味)
ライフスタイルに関するテーマでは、心身の健康状態や生活習慣などの質問を通じて、「仕事のパフォーマンスにどのような影響が出ているか」を確認します。
たとえば、十分な休息が取れているか、最近体調に変化がないかを確認することで、業務に支障が出るようなリスクを早めに察知できます。
具体的な質問例は、以下のとおりです。
【質問例】
- 休日はどんなふうに過ごしてリフレッシュしていますか?
- 最近ハマっていることや、楽しかったことはありますか?
- 普段の生活で「大事にしている習慣」はありますか?
- 最近の睡眠や体調のリズムはどうですか?
- 健康のために意識していることはありますか?
- 家庭やプライベートのことで、仕事に影響が出そうなことはありますか?
- 最近チャレンジしてみたいと思っていることは何ですか?
ライフスタイルに関するテーマは雑談に近いですが、上司と部下がお互いに「どういう人物なのか」を知る(相互理解)きっかけにもなります。
将来のキャリア(ありたい姿)
将来のキャリアに関するテーマでは、部下の長期的なキャリアビジョン(ありたい姿)を確認し、成長をサポートするときに活用します。
理想の働き方やポジション、スキルアップの方向性を聞き、上司と認識のすり合わせを行うことで、組織としての支援やキャリア開発の施策に反映できます。
具体的な質問例は、以下のとおりです。
【質問例】
- 将来的にどのような仕事や役割にチャレンジしてみたいと思っていますか?
- いまの仕事が、目指す姿にどのくらい近づけていると感じますか?
- これまでの経験で「今後のキャリアに活かせそう」と思うことは何ですか?
- 5年後や10年後に、どんな自分でいたいと思いますか?
- いまの職場で、もっと挑戦してみたい分野はありますか?
- 社内外を問わず「この人のようになりたい」と思うロールモデルはいますか?
- 自分のキャリアにおいて、不安に感じていることは何ですか?
- 将来に向けて、身につけておきたいスキルは何ですか?
部下の目指す姿と仕事内容にギャップがある場合は、スキル習得やプロジェクト参加の機会を見直し、少しずつ理想に近づけるようにサポートしましょう。
1on1で話すテーマ・ネタ一覧【業務レベル】

最後に、1on1で話すべき「業務」に関するテーマ(ネタ)を詳しく見ていきましょう。主に以下の3つのテーマが挙げられます。
業務効率化のアイデアや悩みの解消など、仕事のパフォーマンスに直結する話題であるため、部下の成果を高めたいときに取り上げると効果的です。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
テーマ | 質問例 |
---|---|
業務の進め方・仕組み・運用 | ・仕事の進め方で「もっとこうなればいいのに」と思う点はありますか? ・現在の業務フローで、とくに時間がかかっている作業はどこですか? |
仕事の悩み・不安・つまずき | ・最近の仕事で「気になっていること」や「つまずいていること」はありますか? ・仕事を進めやすくするために、サポートしてほしいことは何ですか? |
業務を通じての気づき・学び (振り返り) | ・最近の業務で「うまくいった」と感じたことは何ですか? ・その経験から、どんな学びや気づきがありましたか? |
以下より、それぞれのテーマと質問例を詳しく解説します。
業務の進め方・仕組み・運用
業務の進め方や仕組みに関するテーマでは、現場で使われている業務システムの使いやすさや、業務フローにおける課題を確認します。
たとえば、「システムが複雑すぎる」「無駄な工程が多く作業効率が悪い」といった問題を把握することで、生産性向上に向けた施策を検討できます。
具体的な質問例は、以下のとおりです。
【質問例】
- 仕事の進め方で「もっとこうなればいいのに」と思う点はありますか?
- 普段の業務で「ここはもっとシンプルにできる」と思う部分はありますか?
- 現在の業務フローで、とくに時間がかかっている作業はどこですか?
- 業務システムやツールの不便に感じている部分はありますか?
- いつも同じような問題やトラブルが発生することはありますか?
- 新しいやり方を試すとしたら、どの業務で効果がありそうですか?
- 自分の仕事をより効率的にするために、サポートしてほしいことはありますか?
このような質問を通じて課題を共有してもらうことで、業務効率化の優先順位を決めたり、現場のニーズに合った施策を検討したりできます。
仕事の悩み・不安・つまずき
仕事の悩みや不安に関するテーマでは、普段の会話では言いにくいこと(役割における責任の重さ、業務量の多さ など)を中心に質問します。
担当の仕事でつまずいていることを深掘りしたり、視点を変えて別のやり方を考えたりすることで、解決の糸口を見つけやすくなります。
具体的な質問例は、以下のとおりです。
【質問例】
- 最近の仕事で「気になっていること」や「つまずいていること」はありますか?
- 仕事を進めやすくするために、サポートしてほしいことは何ですか?
- いま取り組んでいる業務で、とくに難しいと感じている部分はどこですか?
- プレッシャーを感じている場面はありますか?
- 自分のスキルや知識で「ここが足りない」と不安になることはありますか?
- 仕事内容や業務量について、負担を感じることはありますか?
- 最近「ここでつまずいた」と感じた具体的なエピソードはありますか?
このような対話を定期的に行い、部下の不安や悩みを早めに解消することで、結果的にパフォーマンスやモチベーションの低下を防げます。
業務を通じての気づき・学び(振り返り)
気づき・学びに関するテーマでは、日々の業務や経験を通じて得られた「発見」や「成長の実感」を振り返ります。
自身の行動を振り返る機会を与え、「どのように成果につながったのか」を言語化することで、再現性のある思考や行動のパターンを明確にできます。
具体的な質問例は、以下のとおりです。
【質問例】
- 最近の業務で「うまくいった」と感じたことは何ですか?
- その経験から、どんな学びや気づきがありましたか?
- 最近の仕事で「自分の成長を感じた」と思う場面はありましたか?
- うまくいかなかった経験から、学べたことは何ですか?
- 私(上司)や同僚からのアドバイスで、印象に残っているものはありますか?
- 自分の強みを発揮できたと思う瞬間はどこですか?
- 振り返ってみて「次はこうしたい」と思うことは何ですか?
- 今回の経験を、別の仕事にどう活かせると思いますか?
このような質問を通じてフィードバックを行うことで、部下は「経験から学びを得る」ための習慣を身につけられます。
1on1で新しい気づきを引き出すポイント【質問・会話例】

1on1で新しい気づきを引き出すために、ただ部下の話を聞くだけでなく、質問の仕方を工夫する必要があります。以下の4つのポイントを押さえておきましょう。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
ポイント | 質問例 |
---|---|
状況に合わせて「深める・広げる」質問をする | その出来事で、とくに印象に残った点は何ですか? |
オープンクエスチョンで頭の中を整理させる | どんな場面でストレスを感じることが多いですか? |
核心を突く質問で内省を促す | 今回の経験から、自分にとって一番大きな学びは何でしたか? |
曖昧な情報を数値化する質問を行う | 理想の状態を100%とすると、現状はどのくらいだと感じますか? |
以下より、詳しく解説します。
また、1on1の進め方を網羅的にまとめた別の記事もご用意しています。部下の成長段階に応じた具体的な流れを解説していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

状況に合わせて「深める・広げる」質問をする
部下の発言をもとに、「深める質問」と「広げる質問」を使い分けることで、相手の考えを整理しつつ視野を広げるサポートができます。
深める質問は「なぜそう思ったのか」を探るもの、広げる質問は「他にどんな選択肢があるか」を考えさせるものです。
たとえば、部下が業務量の多さに悩んでいるケースでは、以下のような質問(会話)をしてみましょう。
【会話例】
部下:最近、業務が多くて処理しきれないときがあります。
上司:具体的に、どのタスクが負担になっていますか?(深める質問)
部下:週次レポートの作成と、クライアント対応の両立が大変です。
上司:他の業務にも影響は出ていますか? それとも、時期的に業務が集中しているときだけですか?(広げる質問)
部下:毎週のように影響が出ています。細かい作業の漏れも増えてきました。
上司:その業務にどのくらい時間をかけていますか?理想的には、どの程度で終わらせたいですか?(深める質問)
部下:レポートの作成に半日以上かかっています。1〜2時間で済ませたいです。
上司:そのギャップを埋めるために、ツールの改善や他の人に頼るなど、考えられる工夫はありますか?(広げる質問)
また、部下の発言内容が細かすぎたり、論点がズレていたりして本質が見えにくいときは、話をまとめる質問をしてみましょう。
部下が話し終えた段階で「つまりどういうことですか?」と問いかけることで、自分の発言を要約するきっかけとなり、散らばった情報や感情を整理できます。
オープンクエスチョンで頭の中を整理させる
部下の頭の中を整理させるために、上司はオープンクエスチョンを使って対話しましょう。
部下に自由な意見を述べてもらうよう、答える範囲に制約を設けない質問の仕方。逆に「はい」や「いいえ」で答えられるような質問の仕方を、クローズドクエスチョンと言う。
オープンクエスチョンを用いるときは、選択肢を広げすぎないように、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうやって)で答える範囲を限定しましょう。
たとえば、部下が先輩社員とのコミュニケーションにストレスを感じているケースでは、以下のような質問(会話)が効果的です。
【会話例】
部下:正直、先輩社員とのコミュニケーションにストレスを感じています。
上司:どんな場面でとくにストレスを感じることが多いですか?(具体的な状況を引き出す)
部下:依頼された仕事の進め方について、細かく指摘されるのがつらいです。
上司:指摘を受けたときに、どんな気持ちになりますか?(感情面を整理させる)
部下:自分の考えや工夫を否定されているように感じます。
上司:その状況を改善するために、どんなサポートがあると助かりそうですか?(具体的な要望を言語化させる)
部下:任せてもらえる範囲をはっきり伝えてもらえると、気持ちが楽になると思います。
上司:その気持ちを先輩社員にどう伝えればいいと思いますか?(具体的な行動を考えさせる)
このようにオープンクエスチョンを活用すると、部下は自分の気持ちや考えを整理しやすくなり、問題を客観的に捉えられるようになります。
核心を突く質問で内省を促す
オープンクエスチョンのなかでも、核心を突く質問で深い内省を促すことで、部下が普段意識していない感情や価値観に気づくきっかけになります。
たとえば、部下の発言に対し「そこから得られたものは何ですか?」と問いかければ、自分の学びや成長を言語化でき、状況を報告するだけの1on1にはなりません。
核心を突く質問は、部下にとって考える負担が大きいですが、その分得られる気づきも大きいです。
ただし、いきなり厳しい質問をすると相手が緊張してしまうため、まずは傾聴や共感の姿勢で話を聞き、安心して話せる雰囲気をつくりましょう。
以下に会話例を紹介していますので、参考にしてみてください。状況としては、「営業成績が伸びずに悩んでいる部下」に質問するケースです。
【会話例】
部下:最近、営業成績が思うように上がらず、自信をなくしています。
上司:成果が出ない原因は、どこにあると自分では考えていますか?(自己分析を促す)
部下:お客様への提案内容が、相手の期待に合っていない気がします。
上司:もし同じ状況の同僚にアドバイスするとしたら、何と言いますか?(客観的な視点を持たせる)
部下:「相手が本当に求めていることをもっと聞き出した方がいい」と伝えると思います。
上司:その言葉を自分に置き換えると、次の提案で具体的に何ができそうですか?(行動に落とし込む)
部下:質問の仕方を工夫して、相手の課題を深く聞き出してみたいです。
上司:今回の経験から学んだ一番大きなことは何ですか?(振り返りと内省を定着させる)
曖昧な情報を数値化する質問を行う
対話を通じて、部下の曖昧な思いや考えを数値化させることで、感覚的な悩みを客観的に整理し、改善の方向性を明確にできます。
たとえば、部下に「いまの状態を10段階であらわすとどのくらい?」と質問すれば、単純に「忙しい」「つらい」という感情を、具体的な数値で表現できます。
部下の状態を数値で捉えることで、上司は現状を客観的に把握でき、部下との認識のズレも防げるのです。
以下に会話例を紹介していますので、参考にしてみてください。状況としては、「業務が多くて疲弊している部下」に質問するケースです。
【会話例】
部下:最近、とても忙しくて余裕がありません。
上司:1週間のなかで、どのくらいの割合が「手一杯」だと感じますか? たとえば、0〜100%であらわすと?(忙しい感覚を数値化する)
部下:80%くらいは手一杯だと感じています。
上司:そのなかで、優先度が高い業務はどのくらいの割合を占めていますか?(業務内容を数値で分ける)
部下:半分くらいは重要だと思いますが、残りの半分は事務作業です。
上司:仮にいまの業務負担を10段階であらわすと、理想はどのくらいだと働きやすいですか?(理想を数値で表現させる)
部下:いまは「8〜9」くらいです。理想は「6」くらいにしたいです。
上司:「6」に近づけるために、どの業務を減らすか、どんなサポートが必要か、あなたの考えを教えてくれますか?(数値を基準として改善策を考える)
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部下の状態を数値や記録として可視化し、成長支援につなげられるよう設計されています。詳しい内容は以下の資料にまとめていますので、ぜひご覧ください。
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有意義な1on1にするために注意すべきこと

部下の成長を最大化させるためには、単に1on1の時間を設けるだけでは不十分です。以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
以下より、それぞれの注意点を詳しく解説します。
安心して話ができる雰囲気をつくる
1on1ミーティングを行うときは、部下が安心して話せるように、上司は話し方や聞く姿勢に対する配慮が必要です。
上司の態度や反応次第で、部下のモチベーションや話す内容が大きく変わります。
たとえば、腕を組んだり時間ばかりを気にしたりすると、部下は「早く切り上げたいのかな」と誤解してしまい、具体的な悩みや不安を聞き出せません。
逆に、声のトーンを明るく保ち、相づちやうなずきを交えて話を聞く(傾聴)ことで、部下は「共感してくれている」と感じやすくなります。
リラックスできる雰囲気をつくることで、部下は1on1を「安心して相談できる時間」と認識するようになり、対話の質も大きく向上します。
ありのままを受け止めて共感する
部下の回答に対しては、まず「それは大変だったね」といった言葉を添えて、相手の感情を受け止める姿勢を示しましょう。
すぐに解決策を提示したくなるかもしれませんが、1on1で最初に必要なのは「共感」です。共感を示すことで、部下は「理解してもらえた」と感じ、安心して自分のことを話せるようになります。
たとえば、部下が「業務が忙しくて余裕がありません」と話したときに、「みんな忙しいから」と返してしまうと、気持ちを軽視する上司だと思われてしまいます。
一方で、「いまの状況は相当大変だね。どの部分が一番負担になっていると感じる?」と共感を示しつつ質問すれば、部下が抱える本質的な悩みを引き出せるのです。
問題解決を急ぐよりも、まず「話を聞くこと(傾聴)」に専念し、相手の視点に立って一緒に解決策を考えることが大切です。
部下にも話すテーマを考えてもらう
1on1ミーティングでは、上司が考えたテーマばかりを設定するのではなく、部下にも「自分が話したいこと」を考えてもらいましょう。
上司の一方的な質問やアドバイスだけで進めてしまうと、部下は受け身になり「話を聞かされる場」だと感じてしまいます。
しかし、1on1のテーマを部下自身に決めてもらうことで、対話への主体性が高まり「本当に話したいこと」を話せるようになります。
上司は、事前に「今回話したいテーマを1つ考えてほしい」と依頼したり、テーマをまとめた一覧表を共有したりして、スムーズに話題を決められるようにサポートしましょう。
話すテーマに悩んだら1on1ツールの活用がおすすめ

参考:『ミキワメ マネジメント』の管理画面
1on1を計画するたびに「何を話そう」とテーマに迷ってしまう場合は、1on1専用のツールを活用してみましょう。
1on1ツールには、テーマ例や質問リストがあらかじめ用意されており、上司と部下の双方が事前に話したい内容を整理できます。
ツールの多くは、1on1の記録を自動的に保存する機能が搭載されているため、前回の会話内容を振り返りながら対話を進められます。
また、部下のコンディションを可視化(上図)することで、心身の健康をサポートするような対話も可能です。
1on1ツールの導入を検討している方は、以下の「おすすめツール18選」の記事をご覧ください。導入による効果やツールの選び方も解説しています。

1on1のテーマに関するよくある質問

1on1のテーマについて、2つの「よくある質問」に回答します。
以下より、詳しく解説します。
フリートーク(雑談)では何をテーマに話す?
1on1ミーティングで「安心して話せる雰囲気」をつくるためには、本題に入る前の雑談(アイスブレイク)が重要です。
雑談のテーマは、以下のように仕事や業務から少し離れた話題から選んでみましょう。
- 趣味や休日の過ごし方
- 最近読んだ本や観た映画の話
- 家族や子どもの成長に関する出来事
- 健康や運動習慣に関する話題
- 好きなアーティストや食べ物の話
- 最近のニュースの話題
- 天気・気候について
話しやすい雰囲気をつくるためには、上司自身も自分のエピソードを共有しながら、会話のキャッチボールを意識することが大切です。
話すテーマがないけど、1on1をする意味はある?
とくに話すテーマがない場合でも、1on1を行う価値は十分にあります。
定期的に対話をする場を設けることで、部下に対して「あなたのことを考えている」というメッセージを伝えられます。
また、テーマを決めずに始めても、ちょっとした雑談や近況報告から自然に会話が広がるケースも少なくありません。
「最近どう?」
「今週の仕事で気になることはある?」
「ちょっとした業務効率化のアイデアはある?」
このようなシンプルな質問だけでも、部下の考えや状況を知るきっかけになります。
重要なのは「テーマがあるかどうか」ではなく、「部下と定期的に向き合う時間」を定着させることです。その積み重ねが、部下の成長へとつながります。
以下の記事では、1on1が無駄と感じる理由と対策を詳しく解説しています。有意義な時間にする準備方法も紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

まとめ:1on1で話すテーマは、部下の目線に合わせて考えよう

1on1を有意義な時間にするためには、部下の目線に立ったテーマ設定が必要です。
上司の関心事だけを話題にしてしまうと、部下の悩みや不安を聞いたり、成長をサポートしたりするのが難しくなります。以下の9つのテーマを参考に、1on1を進めてみましょう。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
分類 | テーマ例 |
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組織に関するテーマ | ・経営理念・制度・カルチャー ・職場の人間関係 ・会社の方針・戦略 |
個人に関するテーマ | ・パーソナリティ(性格・特性・価値観) ・ライフスタイル(心身の健康・家族・趣味) ・将来のキャリア(ありたい姿) |
業務に関するテーマ | ・業務の進め方・仕組み・運用 ・仕事の悩み・不安・つまずき ・業務を通じての気づき・学び(振り返り) |
また、質問リストや1on1ツールを活用することで、毎回テーマ選びに悩むことなく、スムーズに対話を進められます。
部下の成長につながるマネジメントを実現するために、1on1を継続的に運用できる仕組みを整えていきましょう。