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ワーキングプアとは?働く貧困層の現状や増加する理由、対策を解説

ワーキングプアとは、フルタイムで働いていても収入が低く、生活を維持することが難しい貧困状態の労働者を指す言葉です。賃金の少ない若年層だけではなく、中高年や高学歴でもワーキングプアに陥る可能性があります。

本記事では、日本におけるワーキングプアの現状や、増加の理由を解説します。貧困状態に陥りやすい職種や、ワーキングプアを増やさないための対策についても紹介します。

ワーキングプアとは?

ワーキングプアとは、フルタイムで働いているにもかかわらず、貧困状態にある労働者を指します。「働く貧困層」とも呼ばれ、アメリカや日本など、資本主義の先進国で問題となっています。

貧困状態の労働者には、正社員のほか、アルバイト、フリーター、派遣社員、契約社員など、非正規雇用の労働者も含まれます。日本では、バブル経済崩壊後に非正規雇用の労働者が増加したことで、ワーキングプアの問題が顕在化したとされています。

参考:ワーキングプアとは – コトバンク

ワーキングプアの種類

ワーキングプアは、勤続年数が少なく賃金の低い若年層だけを指す言葉ではありません。ワーキングプアには、以下のような種類があります。

高学歴ワーキングプア
中高年ワーキングプア
官製ワーキングプア

それぞれの特徴を確認しておきましょう。

高学歴ワーキングプア

高学歴ワーキングプアとは、大学院で修士課程や博士課程を修了したにもかかわらず、学歴を生かした仕事や正規雇用の仕事に就けず、低賃金で暮らしている人をいいます。博士課程修了後に大学教員を目指し、任期付きで働く非常勤講師は、月収数万円あるいは無収入のことがほどんどです。

また、医師や弁護士などの国家資格を取得し開業したものの、仕事がなく貧しい暮らしをしている人も高学歴ワーキングプアに該当します。

参考:高学歴ワーキングプアとは – コトバンク

中高年ワーキングプア

中高年ワーキングプアとは、年収200万円未満の中高年層を指します。中高年ワーキングプアの多くは、正規雇用の仕事に就くことを希望しているものの、非正規雇用に甘んじている「不本意非正規雇用労働者」です。正規雇用への転換が進まない理由としては、若年層に比べて中高年層のスキルアップの機会が少ないことが挙げられます。

近年では、中高年層がワーキングプアの状態から脱却できず、高齢期を迎える可能性があることも問題視されています。

参考:中高年ワーキングプアの現状と課題 – 日本総研

官製ワーキングプア

ワーキングプアは公務員にも拡大しています。官製ワーキングプアとは、民間の非正規労働者と同様に、低賃金で不安定な働き方をしている自治体の非正規職員を指します。

官製ワーキングプアの問題点は、ワーキングプアの問題を解決すべき立場であるはずの自治体が、自らワーキングプアを生み出している点です。自治体の仕事を外部に委託するケースも増えていますが、自治体側の委託費削減によって労働環境が悪化しています。

参考:「役所がワーキングプアを生んでいる」地方公務員5人に1人が非正規に – Yahoo!ニュース

日本のワーキングプアの現状

日本のワーキングプアの現状についても確認しておきましょう。

2020年に総務省統計局が実施した労働力調査によると、ワーキングプアの基準である年収200万円以下の雇用者は、正規雇用・非正規雇用を合わせて1,800万人でした。役員を除く雇用者は5,620万人のため、統計上では約32%がワーキングプアに該当します。

また正規雇用労働者のうち、年収が200万円以下の雇用者は男性が110万人(4.8%)、女性は185万人(16%)、非正規雇用の場合は、男性が367万人(56.8%)、女性は1,138万人(81.5%)でした。扶養内で働く主婦層も統計に含まれていますが、男女共に非正規雇用労働者は年収200万円を下回る割合が高いことがわかります。

参考:労働力調査(詳細集計) 2020年(令和2年)平均結果 – 総務省統計局

ワーキングプアが増加する理由

ワーキングプアが増加する理由は、以下の通りです。

人件費などのコスト削減
正社員採用の抑制
賃金水準の低下
働き方の変化

それぞれ確認していきましょう。

人件費などのコスト削減

ワーキングプアが増加する理由のひとつとして、企業による人件費などのコスト削減が挙げられます。

激しい価格競争を強いられる企業では、安価な労働力を確保するために、外国人労働者を低賃金で雇用する場合があります。その結果、日本人もパートやアルバイト、派遣社員、契約社員といった賃金の安い非正規雇用で採用されるようになり、ワーキングプアの増加につながります。

正社員採用の抑制

また、こうした正社員採用の抑制により、長期的なキャリア形成ができないこともワーキングプアを生み出す理由のひとつです。

非正規雇用の労働者は、正規雇用の労働者と比べて求められるスキルが低く、またスキルアップの機会も少ないことから、長期間勤務していてもキャリア形成ができません。さらに、正社員としての職務経験がなければ採用されるチャンスも少なくなり、年齢を重ねても賃金が上がらないという悪循環に陥ります。

賃金水準の低下

賃金水準の低下は、ワーキングプアの増加に直結しています。

日本では、バブル崩壊後の不景気によって企業の業績が悪化し、従業員の賃金が大幅に引き下げられました。景気が回復してからも、非正規雇用労働者の増加、少子高齢化、規制緩和の遅れなどの要因で、賃金が上がらない状態が長らく続いています。

働き方の変化

働き方の変化によって、ワーキングプアが生まれることもあります。

かつては新卒で入社した企業に定年まで勤めることが一般的でしたが、終身雇用の崩壊により、正社員として勤務したくない人があえて非正規雇用を選択するなど、労働者の価値観が変化しました。その結果、自らの意思でワーキングプアに該当するような低収入の働き方を選択する人も見受けられます。

ワーキングプアの問題点

ワーキングプアには、低収入以外にもさまざまな問題があります。

フルタイムで働いても満足な収入を得られないことから、副業をする人も増えていますが、働きすぎによりメンタルヘルスに不調をきたしたり、過労死に至るケースがあります。

また、金融機関で借金をしている場合は、返済できなくなると精神的に追い込まれ、自ら命を絶ってしまう恐れもあります。

さらに、安定した収入が得られず結婚できない人も増えており、国の少子化に拍車がかかる点も問題となっています。

ワーキングプアに陥りやすい職種

一概にはいえないものの、非正規雇用の割合が高い職種や、平均年収が低い職種はワーキングプアに陥りやすいとされています。いくつか具体例を紹介します。

販売従事者

スーパーやアパレルなどの販売職は、パートやアルバイト、派遣などの非正規雇用が多い職種です。正社員登用制度が設けられている場合もありますが、最初の数か月は時給制のアルバイトからスタートすることも少なくありません。

事務従事者

データ入力や書類作成などの事務従事者も、非正規雇用の派遣社員や契約社員が多く、賃金も高くありません。専門的な知識を必要としない単純作業の場合は、年収も上がりづらくなります。

保育従事者

非正規雇用の保育士も、ワーキングプアに陥りやすいとされています。年収200万円以下で公立保育園に雇われているケースも存在し、官製ワーキングプアの代表的な職種のひとつです。

福祉従事者

障がい者施設や高齢者施設、病院などで介護を行う福祉従事者は、正社員でも年収が低い場合が多く、非正規雇用となるとさらに少ない賃金で労働を強いられます。

ワーキングプア対策

このように社会問題となっているワーキングプアですが、問題解決のためには政府や企業の支援が欠かせません。ここでは、ワーキングプアの対策について紹介します。

経済的な援助の拡充

ワーキングプアを減らすためには、経済的な援助が不可欠です。

長時間労働をしているにもかかわらず、貧困状態に陥ってしまうのは正常ではありません。労働者が健康的な生活を営むことができるよう、都道府県ごとに定められている最低賃金を見直す必要があります。

また、生活困窮者の最後のセーフティネットとして生活保護がありますが、財政難のため支給が抑制されているのが現状です。生活保護制度を十分に機能させることも、ワーキングプアを増やさないための対策として非常に重要です。

無期雇用の拡大

ワーキングプアに陥りやすい有期雇用ではなく、無期雇用を拡大することも有効です。

労働契約法の改正により、同一企業での有期労働契約が5年を超えて更新された場合は、期間の定めがない無期労働契約に転換できるようになりました。これにより、アルバイトや契約社員などの非正規労働者も、自ら申請すれば無期労働契約へ転換することが可能となりました。

出典:無期転換ルールハンドブック – 厚生労働省

この制度を活用し、無期労働契約へ転換することで「雇い止め」の心配がなくなり、安心して長く働けます。また今後のキャリアを考え、将来設計が立てやすくなるというメリットもあります。

就労支援の強化

失業者の就職支援や、非正規労働者の転職支援を行うことも、ワーキングプアの解消に有効です。

公共職業案内所(ハローワーク)や、若年層を対象としたヤングハローワークでは、就職先の情報提供のほか、書類作成や面接指導などを行っていますが、こうした就労支援によって正規雇用労働者が増加すれば、ワーキングプアを減らすことができます。

また、就労支援の一環として職業訓練を拡充することで、非正規雇用労働者が仕事に役立つ知識やスキルを身につけ、安定収入を得られる仕事に就きやすくなります。

ベーシックインカムの導入

ベーシックインカムとは、政府が国民に対して最低限の生活に必要なお金を無条件で支給する制度です。生活保護と同様に、貧困状態を解消するためのセーフティーネットとしての役割が期待されています。

しかし、ベーシックインカムを導入することで、労働意欲の低下を引き起こすといった懸念もあります。

介護や子育て支援

介護や子育てを支援することも、ワーキングプアの抑制につながります。

介護や子育てによって労働時間が確保できないと、最低限の生活費を稼ぐことができない可能性があります。特にひとり親世帯の場合、子どもを預ける場所が見つからなければ、就労の意思があっても働く時間や場所が限られてしまいます。そのため、介護施設や保育園の拡充は、ワーキングプアの解消に不可欠です。

まとめ

ワーキングプアとは、フルタイムで働いているにもかかわらず、貧困状態にある労働者を指します。収入が少なくなることを承知の上で、あえて自由度の高い働き方を選択する人も増えていますが、人件費などのコスト削減、正社員採用の抑制、賃金水準の低下といった要因により、フルタイムで働いても満足な収入が得られない人がほとんどです。こうしたワーキングプアの問題を解決するためには、政府や企業が現状を把握し、対策を講じることが大切です。




参考:R2無期転換リーフ鹿児島
参考:ワーキングプアとは?原因と対策10選 – 社会人の教科書
参考:ワーキングプアとは?定義・原因・問題点について | ソーシャルグッドCatalyst
参考:日本人の給料がほとんど上がらない5つの要因 | 国内経済 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

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