生産管理とは「品質・原価・納期の最適化を目的として、製造工程を管理する業務全般」を指します。
本記事では生産管理の意味や目的、業務内容を中心に解説します。効率的な生産管理を実現する生産管理システムも紹介しますので、課題解決等にご活用ください。
生産管理の意味とは?
生産管理は「品質・原価・納期の最適化を目的として製造工程を管理する業務全般」を意味します。
日本工業規格 JIS Z 8141の生産管理用語では、生産管理を以下のように定義しています。
生産管理
財・サービスの生産に関する管理活動。
備考1. 具体的には,所定の品質Q (quality) ・原価C (cost) ・数量及び納期D (delivery, due date) で生産するため,又はQ・C・Dに関する最適化を図るため,人,物,金,情報を駆使して,需要予測,生産計画,生産実施,生産統制を行う手続き及びその活動。
備考2. 狭義には,生産工程における生産統制を意味し,工程管理ともいう。
引用元:日本工業規格 JIS Z 8141(生産管理用語)
一般的に、モノづくりの現場や製造業では、製造・生産は以下の要素で構成されます。
- 需要の予測
- 製品の受注
- 生産計画の立案
- 原材料の調達
- 製品の製造
- 出荷および納品
そして、上記の製造・生産の計画的な実施を管理するのが生産管理です。
参考:ERP NAVI(by大塚商会)|生産管理とは? 製造業における目的や業務内容をわかりやすく解説
生産管理の目的とは?生産性と競争力の向上
生産管理の目的は2つあります。
- 品質・原価・納期の最適化
- 生産性や競争力の向上
それぞれ見ていきましょう。
目的1.QCDの最適化=QCDの維持・向上
Q:良い品質
C:低コスト
D:短納期
Q(良い品質の製品を)、C(低コストで)、D(できる限り短納期で)納品することを「QCDの最適化」と言います。
どれだけ良い品質の製品でもコストが高ければ自社に利益は生まれません。また、短納期だと顧客は喜びますが品質が悪ければ需要はなくなります。
QCDはトレードオフの関係にあるため、「QCDの最適化=バランスよく実現する、維持・向上」とも言えるのです。
目的2.生産性と競争力の向上
QCDを最適化すると、自社製品の生産性と競争力が向上します。
わかりやすい例として、QCDが最適化できていないケースを見ていきましょう。
Q:品質が悪い→顧客満足度が低下し、売上が減少する
C:コストをかける→利益が減少する
D:生産に要する時間が長い→顧客満足度と生産性が低下する
しかし、QCDを最適化したらどうなるでしょうか。顧客満足度が高ければリピーターが増え、製品の市場占有率が高まります。
また、利益が向上すれば新規事業投資や人員採用に充てられる資金が増えます。
したがって、QCDの最適化は生産性と競争力の向上につながるのです。
参考:『ぐるっと! 生産管理』|07 豊かな生活も生産管理のおかげ
生産管理の業務内容とは?
生産管理の業務内容は多岐にわたります。ここでは主要5業務を紹介していきます。
参考:朝日新聞社ツギノジダイ|生産管理とは?定義や目的、メリット、主要業務、課題を詳しく解説
1.生産計画
生産計画とは、需要や受注をもとに「どの製品を、いつまでに、いくつ製造するか」の計画立案をすることです。
製品の種類や数量、納期によって調達する原材料、投入する人員や設備も変わります。
2.購買管理
購買管理とは「製品の生産に必要な原材料を、いつまでにどれくらい調達するか」を管理することです。
日本工業規格 JIS Z 8141の生産管理用語では、購買管理を以下のように定義しています。
購買管理
生産活動に当たって,外部から適正な品質の資材を必要量だけ,必要な時期までに経済的に調達するための手段の体系。
備考 その機能として,内外製区分,購買計画,仕入先開拓と選定,取引契約,発注管理,価格管理,原価低減活動,納期管理,品質管理,検収支払管理,仕入先管理,リスク管理,購買業務規定の整備などが含まれる。
引用元:日本工業規格 JIS Z 8141(生産管理用語)
購買管理は以下の5原則に基づいて、購買・調達業務を適切に管理しています。
- 適正な取引先の選定
- 適正な品質の確保
- 適正な数量の決定と確保
- 適正な納期の決定と指示
- 適正な購入価格
参考:【解説】購買管理とは?購買管理を行う際に知っておくべきこと
3.工程管理
工程管理とは、製造作業の工程を、効率的な方法で計画・運営することです。
日本工業規格 JIS Z 8141の生産管理用語では、工程を以下のように定義しています。
工程,プロセス
入力を出力に変換する,相互に関連する経営資源及び活動のまとまり (JIS Z 9900)。
備考 経営資源には要員,財源,施設,設備,技法及び方法が含まれる。
つまり、工程管理には、生産プロセスの検討や工数計画の作成はもちろん、投入する経営資源(設備や労働力、原材料など)の計画立案、負荷調整、生産進捗の管理などが含まれます。
4.在庫管理
在庫管理とは「材料や製品などを、必要な時に、必要な顧客へ、必要な数量だけ供給できるよう適切に管理すること」です。
在庫が少なければ供給不足で販売機会が減りますし、在庫が多ければ売れ残りや廃棄リスクが高まります。適切な在庫管理には、リアルタイムの正確な情報把握と生産計画の遂行が必要なのです。
また、在庫管理の前準備となる5つのポイント(5S)も大切です。
- 整理
- 整頓
- 清掃
- 清潔
- 躾
上記5つを徹底すると、モノを探す手間や無駄な管理業務が減らせます。
5.原価管理
原価管理とは「製造に必要なコスト(原価)を評価・分析して、利益を改善すること」です。
製造には様々なコストがかかります。
固定費:生産量に関係なく発生する労務費、減価償却費、その他経費
変動費:生産量に比例する原材料、外注費など
これらを分類・評価して標準原価を設定し、実際原価と比較・分析することで、利益改善策の立案・実行につながります。
生産管理は「きつい」「難しい」?生産管理の課題とは?
世間的には、生産管理=きつい、難しいというイメージが強いです。
なぜなら、生産管理が以下のような課題を抱えているからです。
- 需要変動が激しいため、需要予測が困難である
- 生産管理の業務が各部署に分散され、一元化されていない
- リアルタイムで在庫管理できず、在庫過多や在庫不足が起こる
- 作業の標準化(平均化)ができず、業務を効率化できない
- 不良品や品質トラブルが起こる
課題を解決し、効果的な生産管理を実現するためには、各業務の担当者や部署の情報共有、密な連携が欠かせません。
参考:JOBNET(by ManpowerGroup)|生産管理の仕事とは?仕事内容から仕事の難しいポイントまで網羅的に解説!
生産管理を劇的に改善する生産管理システムとは?
生産管理の課題を解決する手段としては、生産管理システムの導入がとても有効です。
生産管理システムとは、「生産管理に関する工程の効率化と改善点把握のためのシステム」です。具体的な機能やメリットについて見ていきましょう。
生産管理システムの機能
生産管理システムに備わる機能はとても多く、以下のとおりです。
- 生産計画
- 販売管理
- 工程管理
- 購買管理
- 在庫管理
- 製造管理(製造現場管理)
- マスター管理
- 部品管理(BOM)
- 原価管理
- 出荷管理
- 配送管理
- 顧客管理
一つのシステムを導入するだけで、生産管理が効率的に行えます。さらに、管理上でトラブルや問題があれば、すぐに改善点を把握できます。
参考:『生産管理システム構築のすべて』
生産管理システムのメリット
生産管理システムの導入には、以下のメリットがあります。
生産現場 | 経営陣(会社全体) |
・製品の生産計画の立案、精度向上・製品の工程や進捗の管理・製品の工程や進捗の可視化・在庫過多や在庫不足の予防・原価管理の効率化・利益率の向上 | ・顧客満足度の向上・人件費や材料調達費などコスト削減・社員のモチベーション向上 |
上記のとおり生産管理に関する業務効率化が実現できます。そのため、生産現場の負担が減らせます。さらに、経営陣も生産現場の状況をすぐに把握でき、会社全体で顧客満足度の向上やコスト削減が見込めます。
つまり、生産管理システムは生産現場だけではなく経営陣にとってもメリットがあるシステムなのです。
参考:Aladdin Office|生産管理とは?導入のポイントや目的・業務内容
生産管理システムの種類
生産管理システムにはいくつかの種類があります。特徴をまとめますので、自社導入を検討中の方はぜひともご参考ください。なお、基本的に中小企業向けのサービスが多いです。
FutureStage
日立システムズが提供する生産管理システム「FutureStage」は1987年の販売から約30年以上、累計4,000システム以上の導入実績があります(2016年3月時点)。
シリーズは3種類あり、製造業向け、卸売業向け、小売業向けで用意されています。
SMART販売管理・生産管理システム
「SMART販売管理・生産管理システム」はスカイシステムが提供する生産管理システムです。「Web型」「多言語・多通貨」が特徴です。
特に多言語については、入出力、マルチ言語、マルチ通貨など、海外事業展開に向けた導入にも対応できます。
参考:株式会社スカイシステム|SMART販売管理・生産管理システム
Factory-ONE 電脳工場MF
「Factory-ONE 電脳工場MF」はエクスが提供する生産管理システムです。販売開始から約25年で導入1,500本の実績があります。
生産計画の立案、受注、出荷、手配計画、在庫管理などの生産管理や請求、売掛、入金、仕入、買掛、支払などの販売管理を標準装備しており、バージョンもMRP版や製番管理版、ハイブリッド版など多彩です。
Oracle NetSuite
日本オラクルが提供する生産管理システム「Oracle NetSuite」は、世界中で計27,000社以上の導入実績があります。グローバル視点で成長を目指す企業におすすめです。
財務や予算管理、サプライチェーンや人事管理、製品原価計算や受注処理など生産プロセスを細かく可視化でき、リアルタイムの情報を正確に把握できます。
EXPLANNER/J
日本電気(NEC)が提供する生産管理システム「EXPLANNER/J」。販売開始から40年以上の歴史があります。
「受注ごとに製品仕様が異なる」「納期短縮とコスト低減が必要」という特性を持つ、機械製造業向けの生産管理システムです。マルチ言語、マルチ通貨に対応しているため、国内・海外生産拠点への導入もスムーズです。
生産管理に向いている?
生産管理は、製造業を中心に求人募集がかけられています。
向いてる人の特徴として、
- ものづくりが好き
- 好奇心がある
- 新しいもの好き
- 積極的に新しい知識を身に着けようとする
- トラブルにも冷静に対応できる
- 社交性やコミュニケーション力がある
などが挙げられます。
また、資格を取得すると活躍できるフィールドが広がり、転職活動でも有利になります。
例えば、中央職業能力開発協会(JAVADA)が主催する試験では、「1級 生産管理」「2・3級 生産管理プランニング」「2・3級 生産管理オペレーション」「BASIC級 生産管理」などが用意されています。
作業管理や設備の基礎、工程管理や製品企画、原価管理など生産管理に関する基礎的な内容が幅広く学べます。
まとめ
生産管理は生産活動全体を統制・管理する必要があるため、業務内容が多岐にわたります。
生産活動全体を俯瞰的な視点で見て、計画遂行のために判断を下し、部署や組織における調整、原材料調達では価格交渉なども自ら行います。生産管理業務を実行することで自社の生産性や競争力が向上するなど大きなメリットがあります。
すべて自社内で完結することは難しいので、生産管理システムを導入するなど自社の状況に応じて柔軟な対応をおすすめします。
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