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ピグマリオン効果とは?マネジメントや部下の教育に効果的

ピグマリオン効果とは「心から期待をかけると、相手がその期待に応えてくれる心理効果」を意味します。

心理学の実験から生まれた用語で「教師が生徒に期待をかけると、生徒の成績が伸びる」などがその一例です。

そこで本記事では、ピグマリオン効果とは何か、ビジネスへの活用方法を中心に説明していきます。

ピグマリオン効果とは|意味や証明実験を解説

意味や由来となった心理学の実験について見ていきましょう。

ピグマリオン効果の意味とは?

ピグマリオン効果とは、「心から期待をかけると、相手がその期待に応えてくれる」心理効果です。

仕事や勉強、スポーツなど、周りの支えのおかげでいつも以上の結果が出せた経験はあるでしょう。「誰かに期待されている」という実感は、モチベーションや行動、そして結果に好影響を及ぼします。

このような心理効果を、教育心理学の世界ではピグマリオン効果と呼びます。

参考:ピグマリオン効果とは-コトバンク

ピグマリオン効果を証明した実験

ピグマリオン効果は、アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールが行った2つの実験から生まれました。

まず、1963年の「ネズミを使った迷路実験」1です。

【詳細】

  1. 学生達を2グループに分ける
  2. グループAには「優れた学習成績を示す血統のネズミ」、グループBには「これは訓練がなされていないのろまなネズミ」と説明したネズミを渡す

【実験の結果】
グループAはネズミを丁寧に扱い、グループBはネズミをぞんざいに扱いました。
ローゼンタールはこの結果から、ネズミへの期待値の違いが扱い方にも反映されたと結論付けました。
そして、彼はこの実験をヒントに、1968年に「小学校で知能テストの実験」2を行います。

【実験の詳細】

  1. 小学校の生徒たちに知能テストを受けさせる
  2. 後日、担任の教師に「伸びしろがある」特定の生徒の名前を伝える(選択基準はランダムで、実際に伸びしろがあるかは不明)
  3. 8ヶ月後、生徒たちに同じ知能テストを受けさせる

【実験の結果】
「伸びしろがある」とされた生徒は、テストの点数が上がり、学習意欲や自主性も向上しました。これは担任教師が「伸びしろがある」と期待をかけたことで、実際に生徒の成長が促されたと仮説立てられます。

またこれにより、ピグマリオン効果は、テストなどの数値的部分だけでなく、学習意欲や自主性などの内面的部分の成長を促す可能性もあることがわかりました。

実験者が”優れた学習成績を示す血統のネズミだ”と告げられた場合には,ネズミの取り扱いがていねいになり,(その結果)ネズミの学習成績も良くなるという実験者効果を見出した。

教師の期待効果に関する研究

ピグマリオン効果の最初の研究は,心理学の実験者を対象としたものであり,ローゼンタールらは,同様の結果は,動物を使った研究でも見られた。ネズミの学習実験においてヒントを得て,小学校の児童・生徒への実験では,教師が期待をかけた個々の生徒とそうでない個々の生徒では成績の伸びに明らかな違いが見られた。

ピグマリオン効果は本当なのか?

ピグマリオンの由来とは?

名称は「伝説上のキプロス王が、自身で彫った女性像に恋をしたところ、女神アフロディテによって像に生命が与えられた」というギリシャ神話に由来3します。

「思い込めば多少無理であっても実現する」というニュアンスも含むと考えられますが、ピグマリオン効果は「心から期待すれば、いつか相手はその期待に応えてくれる」という意味で名付けられました。

ピグマリオンとは伝説上のキプロス王で,象牙で女性の像を彫ってこれに恋をし,結婚したいと願ったところ,女神アフロディテ(ヴィーナス)がその彫像に生命を与えたということになっている。

教師の期待効果に関する研究

ピグマリオン効果はビジネスシーンでも大活躍!大切な5つのポイントとは

教育の場面で実証されたピグマリオン効果ですが、ビジネスシーンでも大変有効です。

5つのポイントを見ていきましょう。

ポイント1.期待を言葉で伝える

  • 「誠実な対応が良いと評判だから、周りの社員にも見習ってもらわないとね」
  • 「いつも真面目に取り組んでいるね、これなら新人が来ても安心して任せられるよ」

このように具体的な言葉にして相手に伝えることが大切です。部下や後輩は「期待されている」「応援されている」と実感できるからです。

ポイント2.褒める

部下や後輩も人間なので、褒められることでモチベーションが上がります

もちろんミスはしっかりと注意しましょう。アメとムチを使い分けるのがポイントです。

ポイント3.過剰な期待をかけない

過剰な期待はやめましょう。これらに注意して期待をかけることが大切です。あくまで、相手の成長を願うからこその期待なので、プレッシャーにならない程度の期待をかけましょう。遠くから見守るくらいがちょうど良いです。

ポイント4.達成できる課題に挑ませる

適度な難易度の達成できる課題を与えましょう。能力値を超えた課題は逆効果です。小さな課題をいくつもクリアすることで「自分はできるんだ」という自信につながり、成果を生み出す原動力となります。

ポイント5.待遇に反映させる

きちんと成果が評価され、待遇に反映されれば、部下は期待されていることを実感します。より高いモチベーションで働き、生産性の向上にもつながるでしょう。

ピグマリオン効果の実例を紹介!マネジメントや新人教育でも効果的

ピグマリオン効果の実例を見ていきましょう。

部下をマネジメントする

組織のリーダーや管理職は、部下に対して期待していることを伝えましょう。

  • 「今回のミスは仕方ない、次に活かせると期待している」
  • 「スキルアップしているので、さらに成長できるぞ」

上記のような声かけをこまめに行うことで、部下はモチベーションが上がります。

すると、「上司とのコミュニケーションを積極的に取る」「スキルアップのために自己啓発に取り組む」など心がけ、結果として成績や能力が上がるのです。

新人を教育する

新人のOJTや研修でも、期待を伝えましょう。

  • 「ミスは誰でもするから安心していいよ」
  • 「大丈夫、君ならできるよ」

注意のみでなく、フィードバックによって、ミスを前向に捉えることができます。

「わからないことは確認しよう」「先輩をサポートしよう」と成長と共に仲間意識が芽生え、部署全体の一体感が高まるのです。

自分自身のモチベーションアップ

自分自身を成長させることにも活用できます。

  • ポジティブな言葉、達成したい目標を紙に書いて机に貼る
  • 小さな目標を達成して、自信をつける

これらを繰り返すと、自身のポテンシャルに期待でき、ピグマリオン効果が作用するのです。

ピグマリオン効果との違いは?ゴーレム効果・ハロー効果・ホーソン効果

よく似た心理効果に、ゴーレム効果、ハロー効果、ホーソン効果があります。

これらの違いを正しく理解していきましょう。

ゴーレム効果

ゴーレム効果とは「相手に期待しないでいると、現実にその通りになっていく」という心理効果4です。

ゴーレム効果はピグマリオン効果と真逆で、相手に期待していなかったり、悪い印象を持っていると、それが態度や表情に出て実際に悪化する効果です。

ビジネスでは、批判や注意を受け続けることで、「自分は期待されていない」と感じ、パフォーマンスやモチベーションが低下してしまう恐れがあります。

その他にも、

  • 「部下はミスばかりだ」と考えていると、実際にミスが改善されない
  • 後輩の話をまともに聞かないでいると、報告、連絡、相談、確認が減りミスにつながる
  • やる気のない指導をしていると、部下がやる気をなくしていく

などがあります。

相手への過度な期待はプレッシャーとなりますが、全く期待しないことは良い結果を生みません。育成や指導の場面では心掛けましょう。

ハロー効果

ハロー効果とは「ある人物を評価するとき、ある特徴に引きずられて評価が過大もしくは過小にゆがめられてしまう」心理効果です。

ピグマリオン効果が「相手への期待が成果につながる」のに対し、ハロー効果は「相手の一部の特徴が(自身が相手に対して抱く)全体の評価を過大(過小)にゆがめる」という違いがあります。

ハロー効果はプラスにもマイナスにも働きます。ビジネスでよくあるケースは以下のとおりです。

【ポジティブハロー効果】

  • 一流大学を卒業している、だから仕事もできるだろう
  • 難関国家資格を取得している、だから頭もいいだろう

【ネガティブハロー効果】

  • 服装に清潔感がないから、性格もだらしないだろう
  • 言葉遣いがよくないから、仕事も不真面目にやるだろう

例えば「Aさんは営業成績が優秀」という点を重視し高評価をつけると、「実は関連部署からの評判がよくない」という一面を見逃し、正しい評価ができません。

このように一つの側面で即座に良し悪しを判断してしまうと、大切な面を見逃してしまうのがハロー効果です。

ホーソン効果

ホーソン効果は「注目・関心してくれている相手の期待に応えたいという心理が良い結果を生みだす5ことを意味します。簡単に言い換えれば、誰かに注目されるとパフォーマンスが上がる心理です。

ピグマリオン効果と似ていますが、ピグマリオン効果が「相手へ期待すると相手が良い成果を出す」のに対し、ホーソン効果は「自分が期待されて自分が良い成果を出す」という点が異なります。

ホーソン効果の例として東京ディズニーリゾート6の働き方があげられます。

  • キャスト同士で報奨し合うスピリット・オブ・東京ディズニーリゾートの活動
  • ハイパフォーマーが評価されるファイブスタープログラムの導入

これらの制度は「社員同士で評価し合う」「部下が上司を評価する」という、誰かに注目されている・評価されている風土を醸成し、キャスト同士や上司との関係性の向上に役立ちます。

働きぶりを注目されていると作業員のパフォーマンスが上昇する現象。

ホーソン効果 ~ 注目されると人は頑張る

スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート…キャスト同士が素晴らしい行動をたたえ合い、メッセージを交換する活動。多くのメッセージをもらったキャストの中からスピリット・アワード受賞者が選ばれ、スピリット・アワードピンが授与されます。

ファイブスタープログラム…素晴らしいパフォーマンスを発揮したキャストには、「ファイブスターカード」が手渡され、オリジナル記念品がもらえます。

東京ディズニーリゾート

ピグマリオン効果の注意点、過剰な期待は禁物!

ピグマリオン効果には注意点もあります。使い方を誤ると効果が出ないので気をつけましょう。

1.過剰な期待をかけない

過剰な期待は、支配欲や批判欲が強くなる傾向があります。精神的な余裕を持ち、相手の行動を見守る程度にしましょう。

2.相手の実態や願いとかけはなれない

相手の本音や気持ちを見落とし、自分の願いを押し付けてしまうことがあります。相手の成長を願うという本質は大切にしましょう。

3.甘やかしすぎない

「期待している」「君なら大丈夫」という言葉は「今のままでも十分だ」という印象を持たれることもあります。こちら側の期待が、相手の自己成長につながらない場合は注意しましょう。

4.口出ししすぎない

過保護に細かく指示を出すと、「期待しているのは嘘なんだ」と裏目に出てしまいます。裁量権を与え、自分で考え判断できる環境を作ってあげましょう。

子どもの作業に対する口出しが極端に多くなっていた。とくに指示や命令、要求などの発言がその大半を占めていた。(中略)一歩間違えれば、それは子どもの実態や願いとかけはなれて、親や教師自身の欲求を代理的に満たすための道具にもなり得るのである。

教師の期待は子どもを伸ばすか

まとめ

ピグマリオン効果について詳しく見てきました。相手の過剰な期待をかけないよう注意しつつ、個人の性格やタイプを見極めて取り扱うことが大切です。心理学のテクニックをマネジメントに取り入れることで、個人のモチベーションアップ、組織のチームビルディングにも十分な効果を発揮するでしょう。正しい期待で、人材育成に活用してください。

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