講演レポート

「急成長ベンチャーに聞く、採用力の秘訣」ご講演者:株式会社マネーフォワード/石原 千亜希氏、株式会社ウィルゲート/吉岡 諒氏【みんなのHR博覧会 byミキワメ】

本レポートは、2022年7月26日に開催された、「みんなのHR博覧会 byミキワメ」の基調講演の文字起こしです。各テーマに沿って、「はたらく」を「よく」するを徹底的に語り尽くしていただきました。

ウィルゲート吉岡さん自己紹介

吉岡:皆さんこんにちは、ウィルゲート共同創業者の吉岡です。今から「急成長ベンチャーに聞く、採用力の秘訣」というテーマのセッションをお届けします。

簡単に私の自己紹介をします。今日はファシリテーター兼参加者ということで、ファシリテーションしながら私もお話に参加していきます。

吉岡:ウィルゲートは、私が19歳の大学2年生の時に立ち上げた、今17期目の会社です。社員180名でコンテンツマーケティング事業M&A事業をしている会社です。私はCOOなんですけれども、去年の4月から中途採用を担当しています。この一年間採用担当として色々苦しんだ部分もありますので、参加者に近しい目線で根掘り葉掘り質問していけたらと思っています。

マネーフォワード石原さん自己紹介

吉岡マネーフォワードPeople Forward本部・本部長の石原さんです。マネーフォワードさんは2012年設立なので、ちょうど10年というところですね。グループ全体で1,600名ほどいらっしゃいます。ウィルゲートでは、グループ会社のスマートキャンプさんの「ボクシル」などで、激しくリード獲得いただいてお世話になっています。

石原さんは公認会計士でもいらっしゃるということで、キャリアも含めて自己紹介をよろしくお願いします。

石原:はい、ご紹介ありがとうございます。マネーフォワードの石原と申します。私はマネーフォワードに2016 年に入り、今だいたい6年くらい在籍しています。私が入った頃は200人くらいだったので、そこから今1,600人とかなりの高成長を続けている形です。

もともと経営企画で IPOの準備をしたり、IPO後は IRの責任者などをやってきました。一部上場のあとは人事に主務を変えまして、今は本部長をやらせていただいています。本日はよろしくお願いします。

マネーフォワードの採用体制について

吉岡:よろしくお願いします。それでは早速、採用力の秘訣を根掘り葉掘り聞いていきたいと思います。よろしければ最初に石原さん、年間どれくらい採用されているのか、また、母集団形成の採用チャネルについて簡単にお話しいただけますか?

石原:マネーフォワードは毎年先行投資をしている会社ではあるのですが、その中でも特に今年の上期は人材に投資した時期だったと思います。上期だけで400人が純増する形になったので、単純計算で1か月に50人以上がコンスタントに入ってきた状況です。景気問題もあるので、これがずっと続くわけではないですが、上期はすごく積極的に採用しました。

弊社はありがたいことに知名度が高いことから、シンプルに応募数も多い状況です。とはいえ、採用人数も多いですので、社員一人ひとりが積極的に発信することでより多くの方に会社を知ってもらい、興味を持ってもらうように心がけています。人事だけではなく各部門のメンバーが、「この部署はこういう良いところがあって」といったように、自分たちの言葉で伝えていきます。人事が言わなくてもやってくれる会社の雰囲気なのは、マネーフォワードらしい部分かと思っています。

採用チャネルで申し上げますと、エージェントやスカウト経由で採用している部分ももちろんありますが、「GOEN制度」と呼んでいるリファラル採用にもかなり力を入れています。GOENカードという紙のカードがあり、縁結びのような絵が書いてあるんですけれど、それを紹介したい人に渡してもらっています。こういった、社員側の紹介ハードルを下げたり、候補者側がエントリーしやすい仕組みづくりや発信を心がけています。

また、文化として根付くように、毎月の朝会等で人事だけでなく経営陣からも「GOENお願いします」と定期的に発信しています。

採用で注力している点、実施してよかった点

吉岡:ウィルゲートの場合ですと、兼任者もいる状況ですが採用人事で1.5人ぐらい、月の採用人数が4人前後みたいな形でやっています。

ウィルゲートだとエージェントか50%ぐらいで、ダイレクトリクルーティングが3割。あとはリファラルが2割みたいな状況です。採用の母集団形成の中で、エージェントさんとの付き合い方で大切にしているポイントや、GOEN制度のようにリファラルで取り組んでいることなど、採用周りで特に「これは注力している」「やってよかったな」と思うポイントをお話しいただけますか?

石原:そうですね、リファラルについては先ほど話したとおりです。エージェントさん向けでいうと、やはり採用人数もポジションも多いので、資料配布や説明会等を実施しています。

吉岡:グループ一括採用になっているんですか?

石原:いえ、そういうわけでもないです。マネーフォワード単体の中でもBtoB向けのポジションもあれば、C向けのポジションもあります。その中で、一番売り上げを占めているのが、「マネーフォワード クラウド」というSaaSのバックオフィス向けのサービスです。これには会計ソフトもあればHR系のサービスもあったりと、サービスラインナップがどんどん増えている状況ですので、B向けの採用人数は特に多いです。

もともと会計事務所へのサービス展開が強い会社でしたが、そこから中堅企業向けにも展開しはじめて、部署も複雑になりつつあります。複数の部署でフィールドセールスを募集中、といったこともあるので、エージェントの皆さんに現状をわかりやすくご理解いただけるような情報共有を心がけています。

吉岡:エージェントは結構バラけているのか、それとも2割8割の法則みたいな形で、一部のエージェントさんに偏っていますか?

石原:現状は、割と幅広くお付き合いさせていただいています。

吉岡:ありがとうございます。非常に参考になります。

次の質問へ移ります。

内定承諾率を高めるコツ

吉岡:やはり、素敵な人材は取り合いになりますよね。ウィルゲートだとまだまだ知名度がないので、内定承諾率が6割ぐらいです。なんとか7割〜8割に高めていきたいのですが、たとえばお手紙を書くとか、会食で熱烈にオファーするとか色々な手段があると思います。

大切にされていることや、やってみたら効果があったことはありますか? 

石原:そうですね、会食等も場合によってはありますが、採用のプロセスの中で特に気をつけているのが、圧迫みたいな雰囲気を出したり、一方的に相手を見極めるような面接にしないことです。これは徹底しています。

採用する・されるという力関係ではなく、対等な立場でリスペクトを持って、お互いに一緒に働くのがベストなのかを確認する場にしています。

「面接受けられてどんな印象ですか?」と候補者に聞くと、「マネーフォワードは発信が多いのでイメージ通りではあるんですが、やっぱりみんないい人ですね」と言っていただけることが多いんです。

それがマネーフォワードの魅力のひとつですし、そこがちゃんと採用プロセスで伝わるとクロージングにも効いてくると思っています。一つひとつそうした意識付けみたいなところは、カジュアル面談の時も意識していますし、面接官にも人事から適宜フィードバックをするようにしています。

最近マネーフォワードに応募いただいた方で、とある部署の応募では残念ながらご縁がなかったけれど、採用を受けるプロセスでマネーフォワードのファンになり、どうしてもマネーフォワードで働きたい、ということで全く別のポジションでエントリーいただき、採用に至ったケースがありました。

ほかにも、応募をいただいたもののタッチの差で先に内定が出て、そのポジションがクローズしてしまったケースがあったのですが、次に同じポジションが空いた瞬間にまた応募頂いて、入社に至ったケースもありました。

吉岡:なるほど。たしかにマネーフォワードさんぐらい募集ポジションがあれば、1つのポジションが駄目でも、別のポジションで大丈夫なケースもありそうですね。

石原:そうですね。ですので、できるだけ一次面接で「このポジションにフィットしないからNG」みたいな感じにはしないようにしています。幅広く、他の部署でも検討できないか?と考えています。

内定承諾率を高めるテクニック例

吉岡:ありがとうございます。私もちょっと自社のことを話しつつ、このパートをもっと深堀りしていきたいと思います。ウィルゲートでやってよかった点としては、最初に内定を出した会社に行きやすい説があるので、どうやったら先に内定を出せるか考えていきました。

ビズリーチさんとGreenをよく使っているのですが、昔は3日に1回、1週間に1回ログインする感じでした。そこを毎日リストアップすることをルールにしてみたら、その日初めて登録した人に対して、割と最初のタイミングでスカウトが送れることに気づきました。

あとは日程調整を送るとき。今までは候補日を人事が出してやっていたのですが、最近では日程調整ツールを使っています。空き時間が全部出るので、候補者の人も早めに調整できるんですよね。

素敵な人が現れた場合は、もうその場で日程調整します。午前中面接したら午後に二次面接入れよう、みたいな形で。いかに先に最終面接まで進めて、先に内定を出すか。そこが内定承諾率に影響すると考えてアプローチしました。

最初に聞くと、「4〜5社ぐらい受けようと思っています」といった状況なんですが、弊社が圧倒的に早く進めて最初に内定を出すと、「ウィルゲートの条件や社風は魅力的だし、他社はまだ面接に受かるかもわからないから」と他社と比較する前にご入社を決めていただけるケースもありました。

ちょっとテクニカルな部分で、「この策をやったら効果が出た」といったものがあればお聞かせください。

石原:そうですね、やはり面接プロセスをどれだけ短縮できるかは重要視しています。場合によっては面接中に次の選考の日程調整をすることもあります。

一次面接に応募いただいてから最終までの期間、どれくらい日数がかかっているかをトラッキングしています。どれくらいかかったのか、どれくらい短縮できたのかを分析します。

「ここはさすがに長いぞ」みたいな点は深掘りしたりと。そういうことをちょうど始めた感じです。まだまだこれからではあるのですが、応募数が多いがゆえに、工夫し甲斐がある部分かと思います。

吉岡:皆さん、成長ベンチャーがこれほどスピードを意識してやっていることを知り、焦りを感じた人もいるのではないでしょうか。

カルチャーマッチ・スキルマッチのポイント

吉岡:次の質問へと移ります。素敵な人は素敵だとわかるんですけれど、カルチャーマッチするかどうかが問題ですよね。スキルも面接だけでは把握しきれないところがあります。

カルチャーマッチやスキルマッチしているかどうかを判断するうえで、実施している取り組みはありますか?

石原:マネーフォワードはすごくカルチャーマッチを大事にする会社なので、選考中に関連する記事等を案内しています。ほとんどの方が事前に弊社のことを調べて面接に来てくださるのですが、中にはあまり会社について興味がない方もいらっしゃいます。会社に対する興味よりポジションやスペシフィックな業務に対する興味を持たれているのか、より広く会社に興味を持っていただいているのか、といった点は注目しています。

会社自体が成長しているので「これがやりたい」がピンポイントすぎると、いずれ個人のWillと環境がマッチしなくなってしまうかもしれません。ですので、会社自体を好きになってくれているかどうかは、注意して見ているんです。

カルチャーフィットしない例としては、マネーフォワードのスピード感にフィットしなかった、というケースもあります。マネーフォワード自体がスタートアップからメガベンチャーに成長しているので、今はスタートアップで働きたいという方以外にも、様々なバックグラウンドの方に応募いただいています。

社員数も増えて、プライム上場もしているので、ある程度落ち着いている、整っている会社だと思って応募いただく方も多いのですが、実際はかなりの速度で伸びていますので、スピード感も引き続き早いですし、整っていないことも多いです。ですので、同じスピード感でカオスを楽しめそうか、という観点は重要視しています。

カルチャーフィットするかどうかは、たとえばこういう質問で確認してみてくださいね、とリクルーターから事業部に展開することもあります。

吉岡:多数ある部門で採用をやっているので、クオリティを高めるための仕組みや、カルチャーマッチの見極めやスピードの見極めにおいて、どのように型を作っているんですか?多くのベンチャーでは、人事の達人が属人的にそこを担保しているイメージがあるんですけど(笑)。

石原:私が入社する前から、マネーフォワードは配属先となる事業部がドライブしていく意識がすごく強い会社でした。採用は人事だけでなく皆で取り組むものというのが、共通認識としてあります。

ただ、面接官としての経験が浅い方等もいるので、リクルーターが定期的にミーティングして、壁打ちをしたりすることもあります。

オンボーディングの取り組みについて

吉岡:あっという間に最後のコーナーにきました。

採用は採用して終わりではなく、入社して活躍するまで、というのは共通認識のことだと思います。オンボーディング策において、どのような取り組みをしているのか教えてください。

石原:弊社は「Onn(オン)」というオンボーディングのツールを、もともと一部の部署でやっていたのを今では全社導入しています。新規の入所者がいる部署のバディや上長がそこにアサインされて、入社前から「来週から楽しみにしています!」等コミュニケーションをとることが可能です。

入社後数か月はウィークリーでコンディションチェックします。アンケート機能があるので「こういうところがちょっとつまづいてる」といった点がチェック可能です。もちろん、アンケートだけでなく、上長との1on1の中でも躓いているところがないかヒアリングはしますが、Onnのアンケートは、1on1にあえて持っていくほどでもない、というものも拾えるのがよいですね。

また、入社後の一週間くらいの間は、各種の研修を組んでいます。PCのセットアップや規定の理解だけでなく、マネーフォワードのカルチャーを理解するセッション等も設けていて、このオンボーディングの期間で実際にマネーフォワードらしさを体験してもらうように設計しています。

最後に

吉岡:ありがとうございます。お時間があっという間で、母集団形成からどう口説くか、見極めるか、オンボーディングするかを45分という非常に短い中ではありますが、本当に氷山の一角を垣間見た気がします。私自身、非常に勉強になりました。

最後に締めとして、いちオーディエンスとしての感想を述べていきます。やはりすごいベンチャー企業ほど採用に対して本気度があり、各プロセスのちょっとした点でこんなに差があるんだな、と思いました。

最近思うのが、空前絶後のDX 時代みたいな形で、IT領域の採用競争が激化しているなという点です。

そのうえで、いいベンチャーの人ほど、今日のように採用に全力投球されている。ですので、スーパーベンチャーではない、ウィルゲートも含めた普通のベンチャーこそ、熱意だけはスーパーベンチャーに負けちゃ駄目だな、と強く感じました。

是非これを見た人は、今日から採用に燃えていただいて、社長や人事に「マネーフォワードがこんなことをしているらしいですよ」と帯を締め直して採用に向き合ってもらえたらと思います。本日は皆さんありがとうございました。

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