日常生活や仕事の中で、矛盾する感情が湧き出ることがあります。この矛盾によって生じる不快感を「認知的不協和」と呼びます。
本記事では、この認知的不協和について、概要や具体例、仕事での活かし方など詳細を解説していきます。
認知的不協和とは
認知的不協和は矛盾した感情による不快感がある状態のことで、L.フェスティンガーによって提唱されました。
たとえば、「暴飲暴食は体に良くない」という感情と「私は暴飲暴食をしている」というネガティブな感情は、互いに矛盾しているため、心理的に不快感が生じてきます。「本当に暴飲暴食して良いのだろうか」など、不安感を強く抱いていきます。
一般的に、人間は認知的不協和状態を不快に感じ、不一致を低減するために行動を変えます。上記例では「暴飲暴食をしていても、健康な人はいる」と自分に言い聞かせることや、「暴飲暴食をやめる」といった行動です。
認知的不協和の解消パターン
認知的不協和の解消パターンは、下記の2つのパターンに大別されます。
- 古い感情を否定して、新しい感情を肯定する(酸っぱい葡萄)
- 新しい感情を否定して、古い感情を肯定する(甘いレモン)
古い感情を否定して、新しい感情を肯定する
イソップ風寓話を用いて「酸っぱい葡萄」と呼ばれます。
木の高い所にある葡萄を取ろうと奮闘する狐が、最終的に諦めて、「どうせあの葡萄はすっぱくてまずいのさ!」と負け惜しみを言います。悔しさを紛らわすための感情否定です。
たとえば、「タバコは健康に悪い」という人が、他人から頻繁にタバコに誘われるようになり、「付き合いだからしょうがない」と考えて吸うようになりました。
これは「タバコは健康に悪い」という古い感情が否定されて、「付き合いだからしょうがない」という新しい感情が肯定されたことになります。
新しい感情を否定して、古い感情を肯定する
すっぱい葡萄と反対の例に「甘いレモン」があります。
これは「レモンしか手に入らない。このレモンは甘いと思い込む」つまり自分を納得させてそれで我慢するということです。
たばこの例だと、繰り返しタバコに誘われても、「タバコは健康に悪いから、絶対に吸わない」という意思が勝るケースもあります。
これは古い感情が肯定されて、新しい感情が否定されているのです。
両パターンともに、感情が矛盾し互いに衝突している状態です。論理的な思考ではなく、心が本能的に作用していると考えてください。
仕事における認知的不協和の具体例
認知的不協和は、仕事においても生じます。例えば下記です。
- 仕事内容に対する疑問
- 部下の出世に対する感情
- 条件の悪い企業に継続して勤める
仕事内容に対する疑問
やりたい仕事ために希望の会社へ就職できたとします。しかし実際は、それ以外の「やらなければならない業務」もあるでしょう。「自分がやりたいのはこれじゃない」と思うことも多いです。この認知的不協和が生じて、入社してからすぐに退職してしまう新卒社員も近年増えています。
部下の出世に対する感情
自分よりも年下の部下の出世に対しての認知的不協和です。
部下が出世し、自分よりも地位が高くなると、「年齢は関係ない」「きっと、たまたま上司の目に入っただけだ」等、自分自身の立ち位置を肯定しつつも、複雑な感情が芽生えます。これも認知的不協和の代表例です。
条件の悪い企業に継続して勤める
いわゆるブラック企業では「安い賃金で長時間労働する」が常態化していますが、これを紛らわせるために「やりがい」「社会貢献」といった言葉を社員に言い聞かせているケースが多いです。
社員は「大変だけど社会に貢献できる、やりがいのある仕事だ」と、ブラック企業で働くことを肯定してしまいます。
認知的不協和の活用方法
認知的不協和を仕事に活用する具体例をご紹介します。
- 相反する意味の言葉を使って、キャッチコピーを作る
- 顧客へのアフターフォローを細かく行う
- 顧客に小さな頼み事をして、承諾してもらう
- 曖昧さ耐性を培う
相反する意味の言葉を使って、キャッチコピーを作る
「この言葉は矛盾しているけれど、何か意味があるのだろうか」と、キャッチコピーに対する興味を惹くことができます。
記憶に残りやすいキャッチコピーは、この矛盾表現を上手く取り入れているものが多いです。
たとえば、「友人は少ない方がいい」「成功に長期目標は必要ない」等が挙げられます。
顧客へのアフターフォローを細かく行う
商品を購入した顧客には、「本当に購入して良かったのだろうか」という不安を抱える人も少なくありません。
アフターフォローを行うことで、顧客が「購入は正しい選択だった」と思いやすくなります。古い感情が肯定される状態です。
顧客に小さな頼み事をして、承諾してもらう
顧客に対して小さな頼み事をして、それを承諾してもらうことで、相手に認知的不協和を生じさせやすいです。
たとえば、営業先の相手に「スマホの充電器を貸して欲しい」とお願いしたとしましょう。相手は、営業を警戒しながらも充電器を貸してくれました。
すると、相手の心理状態として「親切にした相手だから、相手との仲は良好だ」という認知的不協和が生じます。「警戒相手」という古い感情が否定されて、「親切をした相手」という新しい感情が強まるため、営業交渉がうまく進みやすいです。
曖昧さ耐性を培う
酸っぱい葡萄の法則により、ポジティブな諦め方が可能になり、精神的な健康を維持できます。例えば仕事で思い通りの結果が出なくても、目標未達の要因を明確にし、失敗をポジティブに捉えて前に進むことが肝要です。
このように、受け入れがたい感情から自身を守り、自分を納得させることにも、認知的不協和は活用できるのです。
認知的不協和を活用して、仕事の成果を高めよう
認知的不協和は、矛盾した感情による不快感がある状態のことです。無意識に作用するので、上手く活用することで仕事の成果を高められます。
ただし、人によって強弱は異なるので、相手の反応を見ながらの活用が肝要です。
本記事で解説した内容を参考にして、認知的不協和を仕事・日常生活で使ってみて下さい。
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