講演レポート

「最高のチームづくりはウェルビーイングから」ご講演者:株式会社YeeY/島田 由香氏【みんなのHR博覧会 byミキワメ】

本レポートは、2022年7月26日に開催された、「みんなのHR博覧会 byミキワメ」の基調講演の文字起こしです。各テーマに沿って、「はたらく」を「よく」するを徹底的に語り尽くしていただきました。

島田さん自己紹介

飯田:皆さんこんにちは。この時間は「最高のチーム作りはウェルビーイングから」というテーマで、YeeYの島田由香さんにお越しいただいています。

私は進行を務めますモデレーターの飯田です。島田さんよろしくお願いいたします。

島田:よろしくお願いします。

飯田:ちなみに島田さんは、今YeeYの共同創業者兼代表取締役として活躍されています。YeeYを創業されながらユニリーバ・ジャパンの取締役として、人事領域に深く携われてきたというご経歴です。本日はどうぞよろしくお願いします。 ちなみに島田さん、この背景の画像はどういうものなんですか?

島田:ありがとうございます。ちょっと私の近況が変わっているので、報告も含めてこの背景を簡単にご説明したいと思います。

あらためまして、皆様こんにちは。私からは皆さんのことが見えませんけれども、聞いていただいてとても嬉しいです。このYeeYという会社は、人々が「イエーイ!」となることしかやらない会社で、作って6年目になるんです。ユニリーバで人事総務の責任者をさせていただいている時からこの会社をスタートしています。

何の目的で作ったかというと、今日のテーマにも関わるのですが「日本全体のウェルビーイングを高めていく」ことをミッションにビジネスパートナーの矢澤祐史と2人で作った会社です。 実は6月の末にユニリーバを退職しました。本当に自分が命を使いたいもの、つまり「時間とエネルギーをこのことだけに使いたいんだ」というテーマが、4つすごく明確になりまして。その4つのことが現れている活動の1つが、この背景の梅の写真になります。

6月の1カ月間、和歌山県のみなべ町という世界農業遺産の町で、梅農家さんに入らせていただきました。人手不足という深刻な課題、後継者不足、これをワーケーションしながら盛り上げていく活動をやってきまして、その背景です。

飯田:そういうことなんですね。今は東京ですかね?

島田:これもまた色々ありまして、私は今なんと隠岐島におります(笑)。今、隔離中なんです。隠岐島のトレーラーハウスに10日間入って、外を羨ましく眺めながらも、大自然があるだけ本当にありがたくて。ウェルビーイング高くやっております。

飯田:ありがとうございます。島田さんの命を燃やす4つのミッションについては、このあと伺いたいと思っています。

ウェルビーイングとは?

飯田:本題のウェルビーイングに移っていきます。島田さんはYeeYを経営しながらユニリーバ・ジャパンの取締役を6月まで勤めていたということですが、私の理解だとウェルビーイングの重要性に相当早いタイミングから着目されていて、実践・発信してこられた印象を抱いています。

そもそもウェルビーイングという単語を聞いたことはあるけれども、どういう意味なのかちょっとわからない、という視聴者の方も多いように思います。私もぜひ勉強したいのですが、そもそもウェルビーイングはどういう意味合いの単語だと捉えていますか?

島田:ウェルビーイングというのは、英語でいうと「Well」と「Being」。そのまま読めば「いい状態」という意味です。自分が「いい調子」とか「いい感じ」というふうに思えているかどうか、これが私のウェルビーイングの定義です。 日本語の表記だと、ウェルビーイングとカタカナで書いたり、訳した場合は「幸せ」とか「継続的幸福」と呼ばれています。WHOの定義では、心身ともに健康で社会的にも良い状態と言われています。

難しく考える必要はない、というのが私がすごく伝えたいことのひとつです。英語がカタカナ表記になると、それだけでちょっと「えっ」と思われるかもしれませんが、今後もウェルビーイングという言葉でずっと浸透していくと思うので、定義はぜひ覚えていただきたいと思います。 いい調子、いい感じと自分が思えているかという非常に主観的なものがウェルビーイングだということを、先にお伝えしておきます。

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ウェルビーイングが会社に必要な理由とは?

飯田:おそらく日本中でウェルビーイングを広げていきたいという今の気持ちに繋がるまで、色々な経験をされたと思います。

ウェルビーイングがチームづくりや経営において大事だと最近よく言われていますが、そもそもウェルビーイングがチームづくりや会社経営において重要な理由というのはどういう部分にありますか?

島田:ちょっと皆さん「あれ?」と思われているかもしれません。私は今日、講演という形ではなく、飯田さんとやり取りしながら、皆さんからご質問を頂きながら対話形式でやっていきたい、とお伝えしました。その理由も実はウェルビーイングに関係しています。

私が色んなところで話す内容は、もう動画とかになっているので、ググって見てくれればいいと思うんです。やっぱりこのミキワメという場は、生のやり取りで時間を一緒に過ごしてくれた方が、終わった時に自らがウェルビーイングを広げていく人になっていただきたい。そういう想いから、このようにインタラクティブにやっているんです。

なぜウェルビーイングがチームづくりや組織づくりに欠かせないの?といったら、「当たり前じゃん!」というのが私の正直な一言です。たぶん皆さんも感覚的にわかっているはずなんです。「どんな調子ですか?」と聞いた時に、元気ですとかいい調子です、なかなかイケてますと答える人と、なんかちょっと頭がぼ〜っとしてるなとか、疲れが抜けない、咳が出る、鼻水が出るという方もいますよね。 体調が良くないと、いい仕事はできないですよね?まず身体が健康であるってことは、いい仕事をするとか成果を出すとか、あなたが持っている本来の強みや可能性や素敵なところを余すところなく発揮するのに、ものすごく重要です。

心の健康もそうですよね。気分が落ち込んでいたりだとか、どんなものを見たり聞いたりしても、良くも捉えられるし悪くも捉えられます。その時に、どちらかといえば良く捉えるタイプの人と一緒にいるのと、どちらかといったら悪く捉える人……それがダメというわけではなくて傾向としてね。一緒にいるのはどちらのほうが、より自分の調子がいいか、気分が明るくなるか、これも多分わかるっていると思うんですよね。 私達がいい調子とか良い状態であるというのは、生活していく上での大前提ですし、ひいては皆さんの能力、可能性、強みを使って仕事を最大化していくのに、ウェルビーイングが高い状態であるってことは欠かせないわけです。

経営者の立場から考えれば、100人、1,000人、5人、1万人さまざまなサイズがあります。そこにいる全員がいい状態だったらどうですか?と。この答えは言わなくてもわかるんじゃないかなと思います。ですので、このウェルビーイングというのは、本当に大前提なものだと考えています。

飯田:ありがとうございます。実は今タイムリーに視聴者の方からも、「ウェルビーイングが大事なのは当たり前、ということを経営陣の方に認識してもらうにはどうすればいいか?」というご質問を頂いてました。

まさにお話にあった部分がポイントだと思います。 ここ数年でウェルビーイングという概念の重要性が、世の中にも認識が広まりつつあるのではないかと思っています。一方で「プロフェッショナルであれば、限界まで働くことは大事だ」とか、あるいは自分にも厳しく部下にも厳しくというような形で当たってしまうとか。そういったようなことを通じて、部下の心の健康や身体の健康が阻害されている環境が、まだまだ世の中にあったりするのかな、と思っています。

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ウェルビーイングを理解できない人へのアプローチ方法は?

飯田:島田さんのこれまでのご経験を通じて、ウェルビーイングの重要性をなかなか理解できない方とお会いしたときに、工夫してコミュニケーションされた点はございますか?

島田:私は結構はっきり言うので、ストレートすぎたり、きつく聞こえたり、ハッと思わせたらごめんなさい。でも遠回しに言うよりいいと思うので、話しますね。

「ウェルビーイングの重要性がわからない人っているんですか?」という感じです。どの人も、それが自分のことに照らし合わせて感じることが、あ〜ってなるものなんです。なぜなら、人間にウェルビーイングというものは絶対に備わっているから。 さっきの話のように、健康であるということ。病気をしていない、頭が痛くない、咳も出てない熱も出てない、そういう普通のことです。

普通に健康である状態と、そうじゃない場合とどっちがいい仕事できますか?と。この問いだけかと。 「私の上司はわかってくれないんです」というのは、ごめんなさい、やっぱり言い訳に聞こえちゃうんですよ。あなた自身が本当にウェルビーイングを大事だと思って、自分が体現していたら、周囲もそうあります。だから是非とも生の声で伝えて、皆さんがウェルビーイングの源になってほしいと思うんです。上司の方に伝わらなくて「この人わかんないなあ」と思ったとしても、それはその人が悪いというよりも、その人がわかるような説明がないとか、まだその体験をしていないだけの話なので、それを伝えてあげる、諦めずに。それがウェルビーイングの大切さを知っている人の責務じゃないかなと思います。

本当に想いがいっぱいあるから色々話しちゃうんですけど、「この人にわかってもらえなくて、自分がウェルビーイングの高い状態になれないな」というチームの状況もあるかもしれないですよね。その時はやっぱり言ってほしいんです。これはウェルビーイングがいい状態ではないんだ、ということを。 言わない責任があると私は思うんですよ。言わないとわからないんで。やっぱりもっと表現したほうがいいです。おかしいと思うこと、違うんじゃないかということ。もちろん言い方は気をつけます。

でも、遠慮して言わないことがもたらす功罪は非常に大きいと思うので、「ウェルビーイングな状態なら、自分がもっとよりよくできるんだ」といったことを、どんどん広げていってもらえたら、今みたいなご質問は少し減るんじゃないかなと思っています。

飯田:たしかに、心も健康でありのままの自分でいられる感じの状態を作るためには、お互いが思ったことをしっかり言っていくことも重要な要素になってきますよね。

英語では積極的を「aggressive(アグレッシブ)」という単語で表現することもありますが、一方で「assertive(アサーティブ)」という言葉もあります。攻撃的に「こんな環境おかしいじゃないですか!」というよりは、相手の立場を配慮しながら「もっとこうするといいんじゃないですか?」ということを積極的に発信をする、いわゆるアサーティブに自身の考えを提案していく。そうした動きも日本中をウェルビーイングで満たしていくための第一歩になるかもしれないですね。

組織へウェルビーイングを浸透させてるために必要なこと

飯田:とはいえ、日々の業務やコミュニケーションの中で、個人やチームのウェルビーイングがうまくいかなくなる瞬間もあると思います。

島田さんがこれまでグローバル企業の取締役として取り組んだ経験、あるいは他社から見聞きした事例でも結構なんですけれども、組織の中でウェルビーイングを推進した方法とか、阻害要因を取り除くためにこういうことが大事だぞ、というような組織施策に繋がるようなエピソードがあればぜひ教えてください。

島田:これをやったからいいんです、というのは1つだけしかありません。それは何かというと、本気の人がウェルビーイングを自分で体現する、それだけなんです。 少なくとも私は本気です。昔も本気だし今も本気なので、まず自分のウェルビーイングが高くあることを考えて行動します。これが唯一やったらいいんじゃないかとお伝えできることです。

多くの人が、今日こうやって聞きに来てくださっている人も、たぶんいつもみんなのことを考えていて、チームメンバーのことや会社の社員のこと、家族のこととか。本当に優しくてケアリングな方が多いんじゃないかと思うんです。そういう人は、自分のことは置いといて、他の人のことやチームのことを考えてしまいがちですよね。

ことウェルビーイングに関しては、自分のウェルビーイングが低いのに周囲の人のウェルビーイングを高くすることはできません。だからまず自分に意識を向けてもらって、自分の調子がどれぐらいなのかを認識すること。このチェックを毎日してほしいんです。

その時にぜひとも紹介したい指標が、ポジティブ心理学の権威でもあるマーティン・セリグマン博士が作った「PERMA」というモデルです。ちょっと背景画像を変えますね、見えますかね?これはウェルビーイングを高める5つの要素という形で、セリグマン博士の20数年の研究からわかっている5つの切り口です。

Pが「Positive(ポジティブ)」な感情。

Eは「Engagement(エンゲージメント)」といって、主体的に何かに関わる・没頭・没入するものがあること。仕事じゃなくてもいいんですよ。なんでもいいから自分が夢中になれるものがある人のほうが、ウェルビーイングが高いことがわかっています。

真ん中のR は「Relationship(リレーションシップ)」関係性ですね。人間関係もいいに越したことはないですよね。

残りの2つ「Meaning(ミーニング)」というのが、意義や意味、自分がやっていることや関わっていることに意義や意味を感じていたり、自分の存在に意味を感じていること。パーパスと言われるものと、ほぼ同義だと思っていただいて大丈夫です。こういうものをしっかり感じられている人のほうが、ウェルビーイングが高い。
そして最後のAは「Accomplishment(アカンプリッシュメント)」、達成や熟練という意味があります。この5つの状態がある人のほうが、ウェルビーイングが高いことがわかっています。

まず本気のあなたが、これを体現することです。 自分のことをこの5つの切り口でチェックしながら、「ちょっと今日はPが低いな」とか。低くてもいいんです、否定をしない。「あ〜そうか、今日そうなんだな」と受け入れる。あるいは R「関係性」、たとえば今私は皆さんのことは見えませんけれども、すごく繋がりを感じます、ここの場所で。そうするとやっぱりすごく嬉しい気持ちになって、「私の話を聞いてくれる人がいるんだな」と感謝の気持ちが湧いてきます。

こういうふうになると、私のウェルビーイングが上がるわけですよね。まず自分のことからやる、そしてそれが自分で整えるようになったら、はじめて周囲の人にシェアしていく。「自分にとってポジティブな感情を感じる時は、こういう時なんだ」とシェアし合うとか。ユニリーバ・ジャパンのときの私は、こういうことをやってきました。

飯田:ありがとうございます。今ご紹介のあったマーティン・セリグマン先生のパーマモデルについて「どんなモデルですか?」とご質問も来ています。

「パーマモデル」と検索するとおそらく出てくるのと、オンライン書店とかで「マーティン・セリグマン」と検索していただければ、ポジティブ心理学に関する本が出てくると思います。

詳しくはそちらをご一読いただくと勉強になるかと思います。 ウェルビーイングを実現するためには、自分から。そして自分がウェルビーイングな状態かを知るためにセルフチェックする、という習慣は、シンプルですけどパワフルでわかりやすくていいですね。

島田:そうなんです。聞いてくださっている皆さん、ちょっと騙されたと思って、毎日ちょっとだけ意識を向けてみてください。いつも外に意識を向けているじゃないですか、上司のことを考えなきゃいけないとか。私たちの意識は向いたところにエネルギーを注いじゃうんですよね。

なので、外側に向いていると自分でエネルギーをどんどん外に放出しているのと一緒なんです。 時々でいいので、それをちょっと自分に向けてもらうと、エネルギーが自分に向きます。向けてみて「今日のPどうかな〜」とか「今日はAを感じたな」とか、自分のセルフチェックの時に、この5つの切り口で見ていくのを習慣にしてみるといいと思います。

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前向きな気持がウェルビーイングを高める

飯田:ありがとうございます。ちなみに視聴者の方のコメントを拝見すると、全国といいますか、「富山とか東南アジアから参加してます」といった書き込みもいただいています。

まさにウェルビーイングをきっかけに、リレーションシップの輪が広がっている状態ですね。 「島田さんめちゃくちゃポジティブですね」とか「素敵ですね」というコメントをいくつもいただいています。

社会人になった頃から、今みたいなマインドやメンタリティーを持っていたのか、あるいは今のような考えに至るまで、マインドの変遷とか苦労などあったのか、そのあたりはいかがですか?

島田:どうでしょうね。基本前向きだと思います。実はこの「前向き」というキーワードは、私が今一番大事にしているものの一つです。

最高のチームづくりはウェルビーイングからというタイトルを今回いただいていますが、チームを作ることの大変さを、本当に身をもって何十年と体験してきました。 自分が思っているようにメンバーは捉えてくれなかったり、言っていることと実際が違っていたりと。自分のやっていることが、ハッとあるとき崩れて、「もう立ち上がれないなぁ」なんて思うことも何度もありました。

私はすごく両親に感謝していまして、ある価値観を小さい時にもらったなと思うんです。それは何かというと、ちょっとお友達と喧嘩したり、ちょっといじめられたりして帰って来たりだとか、大事に作ってたものが途中で壊れてるとか、小さいながらに色々な嫌なことや困ったことってあるんです。大人になってからも一緒だと思いますが。 そんな時、必ず両親は私に「その悪いことは次のいいことのためにあるんだよね」という言葉がけをしてくれてたんですよ。

これが私の中に入っているので、前を向くわけですよね。「そうか、起こったのはまた次のいいことのためにあるんだ」という考え方をする癖をもらったんだと。 DNA検査をしたら、どうやら私はもともとネガティブなほうなんですよ(笑)。ですが、自分の時間や生活習慣で物の見方は変えていける、とリサーチでもわかっていますし、その典型なのかもしれません。

飯田:そういうことなんですね。自分がまずウェルビーイングになることが、周囲の方のウェルビーイングの実現の第一歩だっていうエピソードにも繋がってきますね。

ご両親のコミュニケーションから、島田さんご自身がウェルビーイングに。そして、島田さんのウェルビーイングな存在というのが、周囲の方のウェルビーイングにということで。 まさにウェルビーイングの輪が広がっていくビジョンが、今ちょっと見えたような気がします。

ユニリーバ・ジャパンを退職した理由

飯田:ちょっと質問を変えさせていただきます。ウェルビーイングの重要性にユニリーバ時代に気づき、ウェルビーイングなチームづくりにチャレンジしてきた一方、6月をもって退任し、YeeYでウェルビーイングを世の中に広げていく活動に専念しているのが今の状況だと思っています。

長らく活躍されたユニリーバを卒業した理由と、冒頭の4つの天命に向かって頑張っているんだ、というお話の「新しいチャレンジ」がどういうものなのか、個人的なエピソードを交えながら教えていただけますか?

島田:私にとってユニリーバという会社は、本当に大好きな会社です。今も変わらなくて、ユニリーバを私以上に好きな人はいないんじゃないか?というぐらい(笑)。

じゃあどうして退職したのかというと、1日24時間の中でどんなことに自分のエネルギーを使うか、何に自分自身を従事させるか、ということを選んでいくとしたら、「これだ!」というものだけに時間とエネルギーを使いたいという気持ちが、この1〜2年で増えてきました。 会社に勤めてたらそれができないんですか?と言われたら、けっしてそんなことはありません。ユニリーバでは、本当にありがたいことに好きにやらせてもらっていましたし、本当に認めてもらえていたので、素晴らしい会社だと思っています。

と同時に、やはり取締役であるとか人事部長であるとか、そうした組織の中の役割によってコミットの必要な時間があったり、あんまり好きじゃなくてもやれてしまう仕事をやることに、「ちょっと時間がもったいないな」「エネルギーがもったいないな」と思うようになってしまったんですね。ユニリーバがどうこうではなく、私の問題で。 本当に私がフォーカスしたい4つのことだけやりたい気持ちになったので、ちょっとわがままを伝えまして、退職という道を選びました。これが背景です。

飯田:ウェルビーイングであると周りの人もウェルビーイングになり、環境が変えられるという話もありましたが、時と場合によっては、自らがよりウェルビーイングな状態を作れる場所に移っていく、自分の人生に責任をもって主体的にウェルビーイングを向上させていく、といった考え方も大事なんですね。

島田さんの4つの使命

島田:まさにそうだと思います。ちらっと伝えた状態で、気になっているかもしれないのでちょっとだけ言うと、私にはやりたい4つのことがあります。

私は継続して日本の働き方を変えたいと思っています。働き方の自由度や柔軟性がもっと高まることで、ここにいる私たちが持っている強み、可能性、本来のエネルギーが、もっと本来送りたいと思っている人生へとコミットできるような、そんな世界が広がっていくと信じています。これは続けてやりたいんです。

2つ目が、真の人材育成に関わりたいと思っています。人間は一瞬で変われるので、何かのトレーニングを10回も20回も受けなきゃいけないとか、これをこなさないと次のステージに行けないとか、そういうものではないんです。その人が本気になって本当に必要な刺激が得られれば、その瞬間に人間は開花します。そういう機会を、もっと世の中に提供したいなと思っています。

3つ目が地域活性です。先の例でもありましたが、この日本という国がより良く、強くなっていくには、地域の活性が重要です。地域はものすごく可能性とパワーを秘めているので、地域の素敵な人達だとか、地域にあるすごい可能性のあるようなプロジェクトのネタだとか、こういったものをどんどん活性化していきたいと思っています。 最後がウェルビーイングです。全部に繋がるんですけれども、このウェルビーイングを一人ひとり高い状態にしていく。ひいてはそれが、日本全体のウェルビーイングの向上に繋がるので、ここに関わりたいんです。この4つが、私が自分の命を使おうと決めた内容になります。

飯田:ありがとうございます。この4つどれも素敵だなという点と、なにより話の際の言葉の力や表情から、本当に命を燃やしていきたい、前向きにチャレンジしていきたいという島田さんの気持ちが、視聴者の皆さんを含め伝わったんじゃないかと思います。非常に素敵な内容のお裾分けをありがとうございます。

YeeYでの活動内容

せっかくなので、YeeYという組織を設立して、これら4つの推進に向けてどういうことを実施していくのか教えていただけますか?

島田:全部がひとつひとつというより、すごく重なっているんです。先ほどの梅の件も、ワーケーションと梅収穫を一緒に合わせて世界農業遺産のことを知ってもらいながら、働き方も地域活性も一次産業の盛り上がりも広げていこう、とか。とにかく、いい意味での思いつきを形にしていくプロジェクトを、どんどんやっていくこと。それが私のメインの活動になってくると思います。

それと同時に、ウェルビーイングという言葉が、昨年の日本政府の出している成長戦略、骨太の方針なんて言われますけれども、ここにも記載されたことによって、日本全国の行政自治体を含め、ウェルビーイングという言葉に対して、いい意味で意識を向けていただいている状況になってます。 そのため、お問い合わせや説明がほしいという話もすごく増えています。良い機会だと思うので、今回少しお話しさせていただいた内容ですとか、「ウェルビーイングに向けてこんなことをしてみるといいですよ」ということを、どんどん提供していく。そのようなことが、メインの活動になっていくと思っています。

自分のこれまでの人事や組織関連の経験を含めて、少しアドバイスとかもしたり、会社や組織のリーダーの方のパーパスに共感できた場合には、一緒にサポートさせていただいたりとか。そういうことをやっていこうと思っています。

飯田:非常に素敵ですね。

心理的に落ち込んでしまったときの対処法は?

飯田:ご自身や周りの方が、ちょっと落ち込んでいる状態の人もいるかもしれません。自らと向き合っても、なかなか何をしたいか答えが出てこないとか。ポジティブな気持ちにと思っても、「そういう気持ちにはなれないです」といった状態の方もいると思います。

自身や周囲が心理的に落ちてしまったときに、どのようにウェルビーイング実現のための一歩を踏み出せばいいのでしょうか?

島田:いくつか大事だと思っていることを先に伝えると、まず「落ち込んでいいんですよ」ということ。落ち込んだり気分が暗くなったり前向きに考えられない時って人間なんでありますから。私もありますし、そういう時には「今日は暗い日なんだな」とか「今はちょっと物事を明るくは考えられないんだな、落ち込んでるな」というふうに、認識することです。 認識して許可することですね。なので、まずそれでいいんですよ、ということを伝えておこうと思います。

その時に、無理にポジティブになろうとか、前向きになろうとしなくて大丈夫です。ご自分がそれを体験されているなら、まず自分で認識して自分を許す。周囲がそういう状況になっているのを見た時には、「落ち込んでていいんだよ、人間だし」と受け入れることが大事です。

2つ目は、ポジティブだから良くて、ネガティブだからダメということはない、ということです。エネルギーの向きの違いなだけなので、エネルギーという点では両方とも必要ですし、感情といった点でも、ポジティブ感情・ネガティブ感情の両方が大切です。ポジティブ心理学でも深く伝えていることのひとつです。ネガティブ感情を持つのは駄目だとか、「こんなふうに考えてはいけない」となると自己否定と自己卑下をしてしまうことになるので、それをやめることです。 そうなった時、対処方法があるんです。これも別に無理にというよりは、知っておくと気が向いたときに試せる。解消や対処の参考になるので、ちょっとお話ししますね。 4つあります。

自分がネガティブな状態の時にやることの1つは、まず「泣く」ことです。ちょっと涙が出そうだとか、涙が出てきてしまう状態を、我慢する人は結構多いんですよ。泣きたい時には泣く。恥ずかしければ、一人になれるところで泣けばいいんです。出てくる感情や涙は止めずに泣いてください。水に流すという言葉があるように、自分の内側から出てくる水分は、癒しの効果があります。

2つ目は、「言う」です。つまり、信頼できる人に聞いてもらうことですね。今の胸の内にある思いや感情とかを、遠慮なく聞いてくれる人に言うこと。これでものすごく解消されます。

3つ目は、「書く」です。これはパソコンとかに書くのではなく、ペンとか鉛筆で裏紙にでも書く。ジャーナリングという言い方もします。内側にあるものを、思うままに書いていく。ものすごく浄化されますよ。

最後の1つが「動く」です。散歩やウォーキングが一番いいと言われていて、30分ぐらい動く。この4つが対処法だと今わかっているので、参考にしていただければと思います。

飯田:ありがとうございます。泣く・言う・書く・動くですね。ポジティブな気持ちじゃなくてもいい、ありのままの自分をまずは受け入れる、許してあげる、といったことが大事だという言葉を聞いて、視聴者の方も私自身もすごく救われた感じがしました。

今回、ウェルビーイングに興味・関心が強い方も多くご視聴いただいていると思います。9月に「ウェルビーイング・リーダーズサミット」と題しまして、丸2日間ウェルビーイングのことだけを、色々な方と一緒に考えていくイベントを主催します。 実は島田さんにもご登壇いただきます。また、ポジティブ心理学の大先生であるマーティン・セリグマン先生にもご講演いただく予定ですので、あわせてお楽しみいただければと思います。

早いもので、まもなくお時間となります。本日はYeeYの島田由香さんにお越しいただきまして、ウェルビーイングがなぜ大事なのかということ、組織や経営においてもそうですけれども、私たち一人ひとりの人生においてもウェルビーイングが大事なんだということを確認できたと思います。 本日は貴重なお話をいただきまして、島田さん本当にありがとうございました。

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