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びっくり退職とは?優秀な中堅・若手社員が突然辞める理由と対応・予防策

びっくり退職は、社員が予告なしに退職を申し出ることを指す言葉です。優秀な若手や中堅社員がびっくり退職をすると、業務に混乱をきたしたり、組織全体の士気が低下したりするため、企業はびっくり退職が起こりにくい環境を整備する必要があります。

この記事では、びっくり退職の定義や原因、びっくり退職が起こる前兆、企業が取るべき具体的な対応策・予防策について解説します。

びっくり退職とは

びっくり退職とは、社員が予告なしに突然退職を申し出る現象を指します。通常の退職では、社員が辞める前に何らかの兆候や前触れがありますが、びっくり退職ではそれが全く見られない、もしくは些細である点が特徴です。

びっくり退職が企業にもたらす影響は深刻です。突然の人員不足によって業務が停滞するだけではなく、ほかの社員のモチベーションや企業イメージの低下にもつながりかねません。

企業はびっくり退職に関する理解を深め、適切な対策を講じる必要があります。

優秀な若手・中堅がびっくり退職するケースも

最近では、一見すると仕事に満足し、将来性のある人材だと思われていた若手・中堅社員が、突然辞意を表明するケースが増えています。

彼らはプロジェクトの中心的存在であることが多いため、突然の退職により現場や顧客対応に混乱を招くケースも少なくありません。

また、彼らの退職が職場内での連鎖的な不安を引き起こし、ほかの社員に離職意識が波及する可能性も考えられます。びっくり退職の放置は組織全体の士気の低下や成長の阻害要因となりうるため、企業側は注意が必要です。

社員が「びっくり退職」をする理由

社員が「びっくり退職」をする理由として、主に以下の5つが考えられます。

  • 職場の人間関係が悪化した
  • 評価や待遇へ不満がある
  • キャリアに行き詰まり感をおぼえた
  • 他社からヘッドハンティングを受けた

詳しく見ていきましょう。

職場の人間関係が悪化した

人間関係の悪化は社員に大きな心理的負担を与えるため、突然の退職という形で顕在化することがあります。

主な原因として、上司とのコミュニケーション不足やハラスメントの存在が挙げられます。たとえば、パワハラやセクハラといった深刻な問題が発生した場合、被害を受けた社員が即座に離職を決意する可能性が高まるでしょう。

同僚や部下との対立も、びっくり退職につながる要因です。チーム内で意見が対立したり、業務分担に不公平感が生じたりすると、職場環境が悪化し、心理的ストレスが増大します。

こうした問題はしばしば表面化しにくく、当事者が一人で抱え込んでしまうことも珍しくありません。

評価や待遇へ不満がある

「給与が低い」「昇進の機会が少ない」といった評価や待遇への不満も、びっくり退職を引き起こす要因です。

たとえば、年間の目標達成率が高くても給与に反映されず、昇進のチャンスが与えられない状況が続いたとします。その場合、社員のモチベーションは低下し、会社への貢献意欲も失われてしまうでしょう。

また、努力や成果が正当に評価されず、上司からのフィードバックも不十分な場合も注意が必要です。自分の能力や価値が認められていないと感じ、突然の転職を検討する社員が現れる可能性があります。

キャリアに行き詰まり感をおぼえた

優秀な中堅・若手社員がキャリアの壁を感じ、行き詰まりを理由に退職を決意することがあります。こうした社員は自身のキャリアアップを重要視しており、現状に満足できないと将来への不安を抱えやすいのが特徴です。

具体的には、以下のような状況が行き詰まり感を引き起こします。

  • キャリアパスが不透明
  • スキルアップの機会が不足している
  • 自身の市場価値に対する不安がある

これらの要因が重なると「このままでは成長できない」と感じ、キャリアの選択肢を広げるために退職を決断することがあります。

他社からヘッドハンティングを受けた

他企業から高待遇やキャリアアップの機会を提示されると、現職への不満が増幅し、急な退職を選ぶケースがあります。とくに、中堅社員や若手の有望株は、競合他社や成長企業にとって魅力的な人材です。

ヘッドハンティングを受けた社員は、提示された条件と現在の職場を比較せざるを得ません。たとえば、以下のような提案は転職の後押しとなる可能性があります。

  • 年収の大幅なアップ
  • 管理職への登用
  • 新規事業立ち上げへの参画

ヘッドハンティングの話を受けた社員は、現職の上司や人事部門に相談しづらい心理が働きます。「裏切り者」と思われたくない、あるいは内密に話を進めたいという理由から、誰にも相談せずに転職を決めてしまうケースも少なくありません。

びっくり退職の前に見られる主な兆候(サイン)

予兆なく退職を告げられることがびっくり退職ではあるものの、それはあくまで企業側の目線での話です。

多くの場合、企業側が気づかないところで社員は退職意思を示すサインを発しています。なかでもびっくり退職につながりやすい兆候として、以下の4点が挙げられます。

  • 職場でのコミュニケーション量が減る
  • 仕事へのモチベーションが低くなっている
  • 新しい業務や社内イベントに消極的な態度を見せる
  • 私用電話や離席が増える

それぞれ解説します。

職場でのコミュニケーション量が減る

普段から活発に意見を交わしていた社員が、突然口数を減らしたり、会議での発言が目立たなくなったりすることがあります。

こうした変化は、社員が職場や仕事への興味や意欲を失いつつあるサインです。たとえば、以前は積極的に参加していた雑談やランチの誘いを断る、業務上のやり取りが必要最低限にとどまる、といったケースが見られます。

コミュニケーション量の減少は、単なる一時的な気分の変化ではなく、より深刻な問題の兆候かもしれません。職場環境への不満、キャリアの行き詰まり感、または他社からのオファーの検討など、退職を考え始めているサインの可能性があります。

仕事へのモチベーションが低くなっている

びっくり退職のもっとも顕著な前兆は、社員の仕事に対するモチベーションの低下です。これまで意欲的に取り組んでいた業務に対し、消極的な姿勢を見せ始めるのが特徴です。

具体的には、以下のような行動が見られます。

  • 業務の質の低下:ミスの増加や納期遅れ、成果物の完成度の低下など
  • 会議での発言減少:意見や提案が減り、必要最低限の発言にとどまる
  • 残業や休日出勤の拒否:以前は自発的だった時間外労働の回避

このような変化は、社員が現在の仕事や職場に魅力を感じられなくなっていることを示唆しています。

新しい業務や社内イベントに消極的な態度を見せる

優秀な中堅・若手社員が突然退職を考え始めると、新しい業務や社内イベントへの姿勢に変化が現れることがあります。会社や職場に成長の機会や将来性を見いだせなくなっているサインといえます。

具体的な行動例は以下のとおりです。

  • 新規プロジェクトの提案に対して否定的な意見を述べる
  • 自発的に新しい業務に参加しようとしない
  • 社内イベントへの参加を渋ったり、欠席したりする

このような状況を放置すると、びっくり退職を引き起こすリスクが高まります。

私用電話や離席が増える

退職を考え始めた社員によく見られる顕著な兆候の一つが、私用電話や離席の増加です。こうした行動の変化は、転職活動が本格化している可能性を示す重要なサインとなります。

具体的には、以下のような行動が目立つようになります。

  • 頻繁に席を外す
  • 私用電話の回数が増える
  • 長時間の電話や離席が目立つ
  • 休憩時間外の離席が増える

これらの行動が増える背景には、転職活動に関連した事情があります。たとえば、転職エージェントや転職先企業からの連絡に対応するため、社員は通常の業務時間中に私的な連絡を取る必要が生じるのです。

もちろん、私用電話や離席の増加が必ずしも退職意思を示すわけではありません。しかし、こうした行動の変化はびっくり退職の予兆となり得るため、見逃さず適切に対応することが重要です。

びっくり退職が自社で発生した際の対応の流れ

突然の退職意思表明に直面した場合、企業側は冷静に対処し、段階的に対応を進める必要があります。

以下は、びっくり退職が発生した際に取るべき基本的な対応の流れです。

  1.  退職意思を確認しヒアリングを実施する
  2. 就業規則を確認し手続きを案内する
  3. 業務の引き継ぎ計画を策定する
  4. 社内外への連絡と調整を行う
  5.  退職手続きを実施する

それぞれ詳しく解説します。

1. 退職意思を確認しヒアリングを実施する

びっくり退職が発生した際、最初に行うべき対応は、社員の退職意思を正確に確認し、詳細なヒアリングを実施することです。

社員から退職の意思表示があった場合、感情的にならず、冷静で丁寧な対応を心がけましょう。以下の手順で進めると効果的です。

  1. 退職の意思を明確に確認する
  2. 退職理由について詳しく聞き取る
  3. 退職を決意するまでの経緯を把握する
  4. 現在の職場環境や業務内容に関する感想を尋ねる
  5. 将来のキャリアプランや展望について話を聞く

このプロセスを通じて、退職理由の本質が明らかになります。ときには、単純な誤解や小さな問題が原因であることも少なくありません。丁寧なヒアリングにより、退職を思いとどまらせられる可能性もあります。

2. 就業規則を確認し手続きを案内する

突然の退職申し出には冷静な対応が必要です。まずは就業規則を確認し、退職届の提出期限や最終出社日などの規定を把握しましょう。

そのうえで、退職希望者に「退職届の提出時期」「引き継ぎ期間」などを具体的に案内します。また、社会保険の手続きや有給休暇の清算などの事務手続きも漏れなく伝え、スムーズな退職プロセスを進めましょう。

3. 業務の引き継ぎ計画を策定する

業務の引き継ぎ計画の策定は、突然の退職による業務の空白を最小限に抑えるための重要なステップです。

引き継ぎ計画の主な流れは、以下の表をご確認ください。

No.引き継ぎですべきこと具体的な内容
1業務の洗い出しと整理退職者の担当業務をリストアップし、重要度や緊急度に応じて優先順位を設定する
2引き継ぎ先の決定後任者を選定し、業務を適切に割り当てる
3引き継ぎスケジュールの作成引き継ぎの開始日と完了日を含む具体的なスケジュールを作成し、関係者全員と共有する
4引き継ぎ資料の作成業務手順書やマニュアルを作成し、業務のポイントや注意事項を明記する
5引き継ぎの実施退職者と後任者が協力し、実務を通じて引き継ぎを行う
6フォローアップ引き継ぎ完了後も一定期間サポートを続け、業務の滞りを防ぐ

これらの対応を適切に実行することで、組織全体の業務継続性を確保し、突然の退職による影響を最小限に抑えられます。

4. 社内外への連絡と調整を行う

突然の退職が発生した場合、迅速で適切な社内外への連絡と調整が必要です。

まず、社内関係者への情報共有を最優先に行いましょう。退職者の業務に関わるチームメンバーや上司に、退職の事実や引き継ぎ計画を速やかに伝えることで、業務の混乱を防げます。

次に、社外関係者への連絡も欠かせません。とくに顧客や取引先に影響が出る場合は、早急に状況を説明する必要があります。

情報共有においては、一貫性を保つことが重要です。異なる部署や外部関係者に矛盾した情報を伝えると、さらなる混乱を招くおそれがあります。事前に連絡内容を整理して「誰が、何を、どのように伝えるか」を明確にしておくとよいでしょう。

5. 退職手続きを実施する

びっくり退職が発生した際には、退職手続きを適切に進めることが重要です。この段階では、退職者が円滑に退職できるよう配慮するとともに、会社の業務継続を確保することが求められます。

まず、退職届を受理したあと、就業規則にもとづいて退職日を確定します。通常は1か月前後の予告期間が設けられますが、引き継ぎ状況に応じて柔軟に対応しましょう。

次に、退職に伴う手続きを進めます。なかでも注意が必要な項目は以下のとおりです。

  • 社会保険や雇用保険の手続き
  • 退職金の計算と支払い
  • 最終給与の精算
  • 会社貸与物品の返却確認
  • 機密情報や個人情報の取り扱いに関する確認

とくに、機密情報の取り扱いについては慎重を期す必要があります。退職後の競業避止義務や守秘義務について明確に説明し、必要に応じて誓約書へのサインを求めましょう。

びっくり退職の予防策3選

突然の退職は、企業にとって業務の混乱やコスト増加を招く重大なリスクです。しかし、日頃から適切な施策を講じておくことで、退職の兆候を早期に察知し、社員の離職を未然に防げます。

びっくり退職の予防策としては、以下の3つが挙げられます。

  • 定期的な1on1ミーティングを実施する
  • 働きやすい環境を整備する
  • 従業員サーベイを実施する

詳しく見ていきましょう。

予防策1:定期的な1on1ミーティングを実施する

1on1ミーティングの機会を設けて上司と部下が直接対話を行うことは、従業員との信頼関係の強化につながります。

潜在的な問題を早期に発見・解決するための有力な手段となるため、組織の活性化や社員の成長を促すだけではなく、びっくり退職の予防に貢献するでしょう。

効果的に1on1ミーティングを行うためには、定期的な開催と事前準備が重要です。月に1回程度の頻度で30分から1時間程度の時間を確保し、あらかじめ議題を設定しておくことをおすすめします。

また、ミーティングの内容を記録し、フォローアップを行うことで、継続的な改善が可能です。

予防策2:働きやすい環境を整備する

従業員が快適に働ける環境を整えることで、モチベーションの向上と長期的な定着が期待できます。

具体的には、まずワークライフバランスの改善が挙げられます。残業時間の削減、有給休暇の取得促進、フレックスタイム制の導入などにより、仕事と私生活のバランスが取りやすくなるでしょう。

また、キャリア開発支援も重要です。研修プログラムの充実や社内公募制度の導入を通じて、従業員が成長できる機会を提供しましょう。これにより、自社内でのキャリアアップの可能性を示し、優秀な人材の流出を防ぐことが可能です。

予防策3:従業員サーベイを実施する

従業員サーベイは、びっくり退職を防ぐための有力な手段です。定期的なサーベイの実施により、社員の声を直接収集し、潜在的な問題を早期に把握できます。

「ミキワメ ウェルビーイングサーベイ」なら、社員の声をリアルタイムで把握し、早期に問題を発見することが可能です。ツールを活用することで、企業は従業員の満足度やストレスレベルを定期的に測定し、適切な対策を講じられます。

また、社員の性格や心理状態にもとづいた質問を設定でき、AIによる分析結果から適切なマネジメントやケア方法を提案します。これにより、社員一人ひとりに合ったサポートを行えるため、生産性の向上も期待できるでしょう。

社員一人ひとりの状態を定期的にチェックし、びっくり退職を防ごう

社員の状態を定期的にチェックし、びっくり退職を防ぐことは、組織の安定と成長に不可欠です。

定期的な1on1ミーティングを実施したり働きやすい環境を整備したりするほか、従業員サーベイの活用を通じて社員の声に耳を傾け、早期に問題を発見し解決する姿勢が求められます。

「ミキワメ ウェルビーイングサーベイ」は、従業員一人ひとりの会社への愛着度や心身の状態を数値化できます。ストレスを抱えている社員に対するケアについてのアドバイスも受けられるため、びっくり退職を防止するうえでのヒントをつかめるでしょう。

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