昨今、少子高齢化のニュースや働き手不足の問題などを耳にする機会が増えています。
その際「生産年齢人口」という言葉を聞いたことはないでしょうか。
生産年齢人口という言葉の意味はなんとなくわかるものの、具体的に何かと聞かれたら答えに困る方も少なくありません。
そこで当記事では、生産年齢人口について、言葉の意味から現状についてわかりやすく解説していきます。
生産年齢人口とは?
まずは生産年齢人口の意味について解説していきます。
生産年齢人口の言葉の意味
生産年齢人口とは、生産活動に従事しうる年齢の人口を意味します。
一般的には、先進国であれば15歳〜64歳、開発途上国では15歳〜59歳とすることが多いようです。
日本は先進国であるため、15歳〜64歳が生産年齢人口に該当します。
労働力人口とは
生産年齢人口と似た「労働力人口」という言葉があります。
労働力人口とは、労働の意思と労働可能な能力を持った15歳以上の人口のことです。
生産年齢人口との違いは、非労働力人口を含めるかどうかです。
非労働力人口とは、労働できるのに労働意志がない人、または病気などが原因で労働できない人の総和を指します。
生産年齢人口の場合は非労働力人口を含めますが、労働力人口では、非労働力人口を除いた人口となっています。
労働力人口を計算するには、次の2通りの方法が存在します。
就業者+完全失業者
生産年齢人口-非労働力人口
就業者とは
就業者は、従業者・休業者の合計です。
業務に現在あたっている(=従業者)人数と、調査時には労働をしていないが、給与などを受け取っている(=休業者)人数の総人口を、就業者と定義しています。
完全失業者とは
一方、完全失業者の定義は、総務省統計局によると次の3つの条件に当てはまる人を指します。
就業者ではない
仕事があればすぐに就職できる
調査時に就職活動など労働の準備をしていた
非労働力人口とは
非労働力人口とは、学生であったり専業主婦であったり労働可能ではあるが、労働の意思がない人、または、病気や高齢化が原因で労働ができない人を指すものです。
非労働力人口の内訳としては、
就職希望者:仕事を探している人
就業内定者:企業への内定が決まっている人
就業非希望者:専業主婦のように、そもそも就業を希望していない人
の3種類が存在します。
日本の現状・生産年齢人口の減少
日本の現状を語るうえで欠かせない指標として挙げられる生産年齢人口ですが、生産年齢人口からどのようなことが読み取れるのでしょうか。
下図は、総務省の作成した生産年齢人口のグラフです。
引用元:総務省
グラフを見ると、1995年以降に生産年齢人口はピークを迎え、減少し続けていることがわかります。
加えて、日本の総人口も2005年以降、減り続けているという事態です。
2020年の国勢調査では、70年ぶりに生産年齢人口が50%台まで落ち込んだことが話題に上がりました。
高齢化・少子化の影響で、日本の生産年齢人口(15~64歳)が全人口に占める割合が70年ぶりに50%台に落ち込んだ。
引用元:Yahoo!ニュース
総務省は30日、ここ5年間の人口変化の推移を示す「2020年国勢調査」の確定値を発表した。同調査の結果によると、経済活動の中核である生産年齢人口は7508万7865人で、5年前と比べて226万6232人減少した。
2000年には68.2%だった日本の生産年齢人口の割合は、2010年には63.8%に小幅減少し、2015年の60.8%から昨年には59.5%へと下がった。日本経済新聞は1日「総人口に占める割合も59.5%と1950年以来70年ぶりに6割の大台を割り込んだ」とし、「生産年齢人口の減少は日本経済の足かせとなる」と報じた。
生産年齢人口の減少から読み取れるように、私たち日本人は慢性的な少子高齢化社会を迎え、経済活動に必要な労働力をどのように確保していくかが喫緊の課題となっています。
参考:総務省|平成29年版 情報通信白書|期待される労働市場の底上げ
世界の生産年齢人口との比較
次に、世界の生産年齢人口と日本の現状を見比べていきましょう。
下記表は各国の生産年齢人口をまとめたものです(単位は(万人)です)。
1980年 | 2000年 | 2010年 | 2015年 | 2020年 | 2030年 | 2050年 | |
日本 | 7,953 | 8,701 | 8,246 | 7,806 | 7,482 | 7,004 | 5,366 |
アメリカ | 15,093 | 18,583 | 20,646 | 21,221 | 21,514 | 21,767 | 23,176 |
中国 | 59,395 | 88,273 | 100,287 | 102,157 | 101,213 | 98,650 | 83,838 |
韓国 | 2,359 | 3,421 | 3,627 | 3,728 | 3,674 | 3,314 | 2,437 |
上記データを見てみると、日本の生産年齢人口の減少は、各国に比べて深刻といえます。
ただし、中国・韓国の場合は、2050年に生産年齢人口が減少傾向になると予測されています。このことから、生産年齢人口の減少は日本だけの問題ではないことが理解できるでしょう。
一方、アメリカは生産年齢人口が増加し続けています。
日本をはじめとした諸外国は、アメリカを参考に生産年齢人口を増加させる手立てを考える必要があるといえるでしょう。
生産年齢人口が減少した理由
生産年齢人口が減少した原因・理由を考察していきましょう。
結論から申し上げると、少子高齢化が生産年齢人口の減少の直接的な原因です。
では、少子高齢化の原因とは何でしょうか。
考えられる原因としては、
女性の社会進出の活性化
国からの出産・育児サポートが不十分
結婚世帯数が減少している
収入が不安定な人が増加している
などが挙げられます。
特に非正規雇用など、安定した収入を得られない人口の増加に伴い、結婚・出産・育児への不安を抱える人が増えてきています。
社会保障制度の充実が課題となりますが、人口減少によって給付と負担のバランスが崩れる可能性が高いため、問題はより根深くなっていくことでしょう。
生産年齢人口の減少が引き起こす社会問題
生産年齢人口の減少が進むと、どういった問題が起こりうるのでしょうか。
主な問題としては、下記の5点が挙げられます。
- 経済成長の鈍化
- 社会保障制度の維持が困難
- 地方の人口減少・過疎化
- 理想的な子どもの数を維持できない
- 財政の持続可能性の低下
それぞれ詳しくみていきましょう。
経済成長の鈍化
まず、生産年齢人口の減少によって、経済成長の鈍化が懸念されます。
生産年齢人口が減少することは、すなわち働き手の減少を意味します。
特に、中小企業は新入社員の獲得が困難になるだけでなく、社内の高齢化も進むため、場合によっては働き手がおらず倒産する企業も出てくるでしょう。
多くの企業が倒産、あるいは業績低下していけば、日本の経済成長は鈍化・停滞していきます。
現在、日本は世界有数の先進国ですが、このまま生産年齢人口が減少していけば、国際競争力を失ってしまうかもしれません。
社会保障の維持が困難
さらに、社会保障の維持が困難になるという問題も挙げられます。
生産年齢人口が減少すれば、国に納められる税金は減少します。
しかし、同時に少子高齢化が進んでいるため、全体にかかる給付額は大きくなっていくでしょう。
その結果、若者に多大な負担がかかる世の中になっていくことが想定されます。
このまま少子高齢化が進めば、給付と負担のバランスが崩壊し、社会保障制度自体を維持できなくなる可能性もあるでしょう。
地方の人口減少・過疎化
地方の人口減少・過疎化も重大な問題です。
若者は東京をはじめとした都市部での職を求める傾向にあるため、生産年齢人口減少の影響は、都市部より地方のほうが深刻になっていくでしょう。
地方の過疎化や高齢化が進むと、伝統文化や地方産業の衰退につながっていきます。
教育・医療・介護のサービスが低下していく可能性もあるため、そうなるとますます地方の経済活動が停滞していくことになるでしょう。
理想的な子どもの数を維持できない
内閣府の実施した子どもの数についての調査(1977年)によると、理想的な子どもの数は2.61人でしたが、現存する子どもの数は1.85人でした。
国民の理想とする子どもの数が実際の数を下回る現状から、多くの世帯では子どもを作りたくても作れない状況に立たされていることがわかります。
子どもを作れない原因はさまざまですが、一つには生産年齢人口の減少が関係しています。
生産年齢人口の減少が経済活動の停滞を引き起こし、それが労働者の給与や生活に影響を与えています。
生計を立てるだけで精一杯な状況では、子どもを作ろうとは考えられず、欲しくても断念してしまう家庭が出てきてしまうのです。
参考:(3)人口急減・超高齢化の問題点|選択する未来 – 内閣府
財政の持続可能性の低下
また、少子高齢化・生産年齢人口の低下によって、財政の持続可能性が低下することも大きな問題です。
生産年齢人口が低下すれば税金を納める人数も減ってしまうため、税収も低下します。
それにもかかわらず、高齢化によって、給付するべき金額は肥大化してく一方です。財政収支のバランスが崩れ、財政崩壊を招くリスクすらあるでしょう。
このように、財政面でも生産年齢人口の低下を抑制することが重要な課題となっているのです。
生産年齢人口の減少に対する対策・対応
生産年齢人口の減少に対する対策・対応はどういったものがあるのでしょうか。
下記対応が必要とされています。
- 少子高齢化の改善
- 人材(働き手)の育成
- 女性の雇用推進
1つずつ説明していきましょう。
少子高齢化の改善
まずは少子高齢化の改善が必須です。
内閣府は、次の2点を「新しい少子高齢化対策案」と定めています。
子育て支援
働き方改革
具体的には、子育て支援では出産費用の負担軽減や、待機児童問題の改善、奨学金制度の充実などが挙げられ、働き方改革では若者の就労支援や長時間労働の是正などが挙げられます。
出産・育児を行いやすい環境を整えるとともに、労働しやすい環境を整えることが、少子高齢化の対策になります。
また、少子高齢化問題の解決には国のサポートが大前提ですが、国民の意識改革も同時に必要です。
たとえば、職場での産休・育休をとりやすい雰囲気作りが一例として挙げられます。
国民一人ひとりが少子高齢化に対する意識を持つことが、今後求められています。
参考:新しい少子化対策について(案): 子ども・子育て本部 – 内閣府
人材の育成
生産年齢人口が減少しているため、人材は貴重です。
少ない人材で生産性を維持するためには、一人ひとりの能力を底上げすることが課題となっていくでしょう。
能力の底上げには、教育に力を入れていく必要があります。
初等教育、中等教育の段階から子どもたちの能力を育てるように、教育制度の大幅な改革が求められるでしょう。
女性の雇用推進
また、労働人口が減っている以上、女性の雇用推進をより活性化していく試みも求められるでしょう。
ただし、女性の雇用数をただ増やすだけでは、雇用推進は頭打ちになります。
同時並行で産休や育休を取れる環境を整えることが、本当の意味で女性の社会進出を促進することになります。
女性へのサポート環境を今以上に整えることが、最終的に生産年齢人口減少の抑止に繋がることでしょう。
まとめ:生産年齢人口は減少する一方なので対策が必要
生産年齢人口とは、生産活動に従事しうる年齢の人口を意味します。
現在、日本では生産年齢人口、総人口が共に減少しているのが実状です。
少子高齢化も進んでおり、生産年齢人口の減少は深刻な問題となっています。
本記事で紹介した、生産年齢人口の減少に対する対策は下記の3点です。
- 少子高齢化の改善
- 人材(働き手)の育成
- 女性の雇用推進
国と国民の協力なくして、生産年齢人口の減少に伴う負の影響は避けられません。
現状を正しく理解したうえで、自分にできることは何なのかを考えながら過ごしてみましょう。
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