従業員のウェルビーイングを実現させる施策が重要視されているなかで、どのような指標(基準)を目安にすればいいのか悩んでいる人事担当者の方もいるでしょう。
ウェルビーイング指標には、心理学の理論にもとづくPERMAモデルや、ギャラップ社が提唱しているものなど、さまざまな指標があります。
組織に関わるすべての人が、健康かつ幸福な状態になるためには、指標をもとに組織の現状把握と改善に努めなければなりません。
そこで本記事では、ウェルビーイングの測定に役立つ4つの指標と、従業員の心身状態を把握する具体的な測定方法を解説します。
日本企業の実施状況や取り組み内容も紹介していますので、ウェルビーイングへの理解を深めて自社でも取り組んでいきましょう。
ウェルビーイング指標とは?
ウェルビーイング指標とは、健康・幸福な状態「ウェルビーイング」を数値であらわすための目安となる基準のことです。
国や機関によってウェルビーイングの概念はさまざまですが、厚生労働省では以下のように定義しています。
「ウェル・ビーイング」とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念(以下省略)
引用:雇用政策研究会報告書(P1)|厚生労働省
企業は組織全体のパフォーマンス向上を目指し、ウェルビーイングに関する施策を重視しており、その施策検討に欠かせないのが目安となる指標なのです。
ウェルビーイングについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。ウェルビーイングに取り組んでいる企業事例も解説しています。
ウェルビーイングの測定に活用する4つの指標
ウェルビーイングの測定に活用する指標はさまざまですが、とくに有用な4つの指標をご紹介します。
指標 | 要素 | 考え方の 対象 |
---|---|---|
PERMAモデル | ・Positive Emotion(ポジティブ感情) ・Engagement(没頭・エンゲージメント) ・Relationship(人との関係性) ・Meaning(生きる意味) ・Accomplishment(達成感) | 個人 |
ギャラップ社の指標 | ・Career Well-Being(キャリア ウェルビーイング) ・Social Well-Being(ソーシャル ウェルビーイング) ・Financial Well-Being(フィナンシャル ウェルビーイング) ・Physical Well-Being(フィジカル ウェルビーイング) ・Community Well-Being(コミュニティ ウェルビーイング) | 個人 |
世界幸福度ランキング | ・国民1人あたりのGDP ・社会的支援 ・健康寿命 ・人生選択の自由度 ・気前のよさ ・寛容さ ・汚職・腐敗のない政治 | 国 |
より良い暮らし指標 | ・住宅 ・所得 ・雇用 ・社会的つながり など11要素 | 国 |
上記のなかでも「PERMAモデル」は、企業における「従業員のウェルビーイングな働き方」につながる考え方として、よく用いられている指標です。
PERMAモデルは次の章で紹介していますが、臨床心理士による詳しい解説を先に確認してみたい方は、こちらからチェックしてみてください。
指標1:「PERMAモデル」のウェルビーイング5つの要素
「PERMAモデル」は、ポジティブ心理学者のマーティン・セリグマン教授によって提唱されたウェルビーイングの指標です。
この指標は「PERMA(パーマ)の法則」の理論を用いており、ウェルビーイングを5つの構成要素でモデル化しています。
要素 | ビジネスにおける解釈 |
---|---|
Positive Emotion (ポジティブ感情) | ・仕事が楽しい ・褒められて嬉しい ・仕事をして気持ちがいい |
Engagement (没頭・エンゲージメント) | ・仕事に夢中になる ・仕事へのやる気が出て、意欲的に取り組める |
Relationship (人との関係性) | ・チームで助け合って働ける ・メンバーの役に立てる ・人の相談に乗れる |
Meaning (生きる意味) | ・仕事にやりがいがある ・自分の存在価値を感じられる |
Accomplishment (達成感) | ・個人の目標を達成できる ・諦めずに最後まで取り組める |
上記の各要素を満たすことで、従業員は組織や仕事に対して前向きな感情を持ち、ウェルビーイングの実現に一歩近づきます。
ウェルビーイング推進のメリットや、取り組む前に知っておくべき点については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ウェルビーイングの測定方法はさまざまな角度で研究がなされています。2022年に発表された研究では、PERMAモデルに4つの要素を追加する「PERMA + 4」が提案されています。
このモデルでは、PERMAに加えて「ポジティブなマインドセット」「経済的安定」「身体の健康」「職場環境」の4つが重要とされています。
私の開発したミキワメウェルビーイングサーベイでは、これらPERMA+4の要素を短期スパンでの測定に沿う形で見える化できるように設計しました。
仕事満足度などの具体的な指標は「原因指標(影響指標)」とし、エンゲージメント等の成果に関わる指標は「結果指標(成果指標)」として、ミキワメオリジナルのウェルビーイング測定モデルを考案しています。
具体的には、仕事内容(やりがい、意義、フィット感)や人間関係(心理的安全性、支援や指導)が高まると、仕事への活力(ワーク・エンゲイジメント)や会社への愛着(従業員エンゲージメント・組織コミットメント)も連動して高まりやすいことや、業務の負担感が高まると心身の健康状態が低下しやすいという測定モデルを導出しています。
これを活用することで、社内のコミュニケーションを活性化し、調子がよくない社員に手遅れになる前に気づき、寄り添いながら持続的なウェルビーイングやパフォーマンスの向上を支援できるようになっています。
ウェルビーイングを測定する場合は、その背景となる理論モデルや、測定方法の信頼性・妥当性など、開発背景がどうなっているのか、学術的に信頼できる精度が担保されているのかを、必ず確認するようにしましょう。
Positive Emotion(ポジティブ感情)
PERMAモデルの「P」の要素は、Positive Emotion(ポジティブ感情)です。
ポジティブ感情とは「喜びがある」「歓喜する」「快適である」を意味する要素のことで、ビジネスにおいては以下のように解釈できます。
- 仕事が楽しい
- 褒められて嬉しい
- 仕事をして気持ちがいい
企業の取り組み例としては、明るく開放的なオフィス環境の整備や、従業員がリフレッシュできる時間の確保などが挙げられます。
Engagement(没頭・エンゲージメント)
PERMAモデルの「E」の要素は、Engagement(エンゲージメント)です。
エンゲージメントは「没頭する」「夢中になる」「積極的に取り組む」を意味する要素で、ビジネスにおいては以下のように解釈して用いられます。
- 仕事に夢中になる
- 仕事へのやる気が出て、意欲的に取り組める
企業においては、従業員の能力に合わせた業務配分や、目標に対する定期的なフィードバックが、エンゲージメントを満たす施策と言えます。
エンゲージメントについて詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。言葉の定義やエンゲージメントを向上させる方法も解説しています。
Relationship(人との関係性)
PERMAモデルの「R」の要素は、Relationship(人との関係性)です。
人との関係性は「人を助ける」「人を援助する」「人から援助される」をあらわす要素で、ビジネスにおいては以下のような解釈ができます。
- チームで助け合って働ける
- メンバーの役に立てる
- 人の相談に乗れる
企業の取り組み例としては、社内向けコミュニケーションツールの導入や、経験豊富な社員によるオンボーディング支援などが挙げられます。
Meaning(生きる意味)
PERMAモデルの「M」の要素は、Meaning(生きる意味)です。
生きる意味には「人生に意義がある」「何か大きなものと関わる」といった要素があり、ビジネスにおいては以下のように解釈して用いられます。
- 仕事にやりがいがある
- 自分の存在価値を感じられる
企業において、組織のビジョンを従業員に伝えて、自分の役割を認識させることが、存在価値を高められる施策と言えます。
Accomplishment(達成感)
PERMAモデルの「A」の要素は、Accomplishment(達成感)です。
達成感は「達成する」「勝利する」「名声を求める」をあらわす要素で、ビジネスにおいては以下のような解釈ができます。
- 個人の目標を達成できる
- 最後まで諦めずに取り組める
企業の取り組みの例としては、成果を称える表彰制度の導入や、キャリアアップを支援する研修の実施などが挙げられます。
指標2:ギャラップ社によるウェルビーイング5つの要素
アメリカの調査会社であるギャラップ社は、世界各国を対象とした「グローバル調査」を実施しています。
その調査のなかで、ウェルビーイングに関することも調べており、以下の5つを構成要素として定義しています。
要素 | ビジネスにおける解釈 |
---|---|
Career Well-Being (キャリア ウェルビーイング) | 仕事に対して情熱を持って取り組んでいる |
Social Well-Being (ソーシャル ウェルビーイング) | 従業員同士の双方が、強い信頼感を持ってつながっているか |
Financial Well-Being (フィナンシャル ウェルビーイング) | 従業員が経済的に安定しているか |
Physical Well-Being (フィジカル ウェルビーイング) | 心身ともにいきいきしている状態か |
Community Well-Being (コミュニティ ウェルビーイング) | 所属チームに貢献して、幸福感を得られているか |
参考:The Five Essential Elements of Well-Being|Gallup, Inc.
ギャラップ社の調査は、日本における従業員エンゲージメントの状況把握にも活用されており、信頼性のある指標です。
従業員エンゲージメントについては、以下の記事を参考にしてみてください。
それでは、以下より指標を構成する各要素について解説していきます。
Career Well-Being(キャリア ウェルビーイング)
キャリア ウェルビーイングは「自分の時間をどのように過ごしているか」や「単純に毎日活動するのが好きか」など、経歴や経験をあらわす要素です。
ビジネスにおいては、以下のように解釈できます。
- 仕事に対して情熱を持って取り組んでいる
- 自分の時間(仕事・趣味・勉強など)を楽しんでいる
企業の取り組み例としては、フレキシブルな労働時間やリモートワークの導入といった、ワークライフバランスへの支援策が挙げられます。
Social Well-Being(ソーシャル ウェルビーイング)
ソーシャル ウェルビーイングは「人生における人間関係のつながりが強いか」や「お互いに尊重し合う関係性か」など、人とのつながりをあらわす要素です。
ビジネスにおいては、以下のように解釈して用いられます。
- 従業員同士の双方が、強い信頼感を持ってつながっているか
- チーム内で協力し合える良好な人間関係か
企業が行う施策例としては、個人の能力を活かすチームビルディングの実施や、メンバー同士の親睦を深める社内イベントの開催などが挙げられます。
Financial Well-Being(フィナンシャル ウェルビーイング)
フィナンシャル ウェルビーイングは「経済状況が良好か」や「将来の生活に向けて資産管理できているか」など、経済面をあらわす要素です。
ビジネスにおいては、以下のように解釈できます。
- 従業員が経済的に安定しているか
- 会社からの報酬や給与に満足しているか
- 従業員は自分の資産を適切に管理できているか
企業においては、給与水準の見直しや福利厚生制度の整備など、経済面の不安を軽減させるような施策が有効です。
Physical Well-Being(フィジカル ウェルビーイング)
フィジカル ウェルビーイングは「健康状態が良好であるか」や「日常生活を送る十分なエネルギーがあるか」など、生活・健康面をあらわす要素です。
ビジネスにおいては、以下のように解釈して用いられます。
- 心身ともにいきいきしている状態か
- 仕事をするための十分なエネルギー(活力)があるか
企業の取り組み例としては、心理面をサポートする体制の構築や、健康への意識を促すアプリの導入などが挙げられます。
Community Well-Being(コミュニティ ウェルビーイング)
コミュニティ ウェルビーイングは「住んでいる地域に関わりがあるか」や「地域の活動を行っているか」など、地域とのつながりをあらわす要素です。
ビジネスにおいては、以下のような解釈ができます。
- 所属チームに貢献して、幸福感を得られているか
- チーム内での活躍が認められ、嬉しさを感じているか
企業の取り組み例としては、地域社会とつながるボランティア活動や、従業員同士で成果を認めて報酬を送り合うピアボーナス制度などが挙げられます。
指標3:「世界幸福度ランキング」(国際連合)における6要素
世界幸福度ランキングは、国際連合が発表している「World Happiness Report」をもとに、各国のスコアを算出してランキング付けしたものです。
このランキングは、ギャラップ社が示す評価を軸にして、以下の6つの要素からウェルビーイングを数値化しています。
要素 | 内容 | |
---|---|---|
国民1人あたりのGDP | 各国の経済的な豊かさや国民の富裕度 | |
社会的支援 | 困ったときに助けてくれる家族や、親しい友人とのつながり | |
健康寿命 | 健康的に日常生活を制限なく過ごせる期間 | |
人生選択の自由度 | 人生の選択に対する自由度 | |
気前のよさ・寛容さ | 社会や他者に対する人々の寛大さ・理解度 | |
汚職・腐敗のない政治 | 地位を利用した不正行為(汚職)の有無 |
参考:World Happiness Report 2024
以下より、世界幸福度ランキングの各要素を解説していきます。
国民1人あたりのGDP
国民1人当たりのGDP(国内総生産)から、各国の経済的な豊かさや、国民の富裕度を計測しています。
GDP(国内総生産)とは?
国で生産される「財・サービス」を通じて、一定期間内に生み出された付加価値を合計したもの。
GDPが高い国は景気がよく、その国で暮らす人の生活水準も高い傾向ですが、GDPの数値だけで「幸福かどうか」は評価できません。
社会的支援
社会的支援とは「困ったときに助けてくれる家族や親しい友人がいるか」といった、社会とのつながりを示す要素のことです。
困難な状況に陥ったときでも頼れる人からの支援によって、生活するうえでの危機回避やストレス軽減につながります。
企業に置き換えると、従業員同士がコミュニケーションをとって信頼関係を築き、不測の事態が起きてもサポートし合える関係性だと言えます。
健康寿命
健康寿命とは、各国で暮らす人々が、健康的に日常生活を制限なく過ごせる期間を示したものです。
健康寿命が長ければ、生活の質を落とすことなく、長期間健康を維持できる可能性が高くなります。
内閣府の調査によると、日本における健康寿命は年々伸びている状況が続いており、日本独自の生活習慣や健康を意識づける施策が好影響を与えていると考えられます。
人生選択の自由度
人生選択の自由度は、自分の人生における選択に対して、自由に決められているかどうかを示す要素です。
「自由」の例
- 思想・信教の自由
- 学問の自由
- 表現の自由
- 職業選択の自由
- 居住の自由
上記の「自由」については、国際連合の基本事項を定めた「国連憲章」にも記されており、ウェルビーイング指標にも関わりがあります。
参考:市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約) |日本弁護士連合会
気前のよさ・寛容さ
「気前のよさ」や「寛容さ」とは、社会や他者に対する人々の寛大さ・理解度をあらわす要素です。
国際協力や災害救援などの慈善活動への寄付や、地域社会でのボランティア活動を通して、社会との関わり度合いを評価します。
企業においては、従業員同士が自由に意見交換し、どのような意見や価値観であっても受け入れ、尊重し合えるような環境だと言えます。
汚職・腐敗のない政治
政治全体や企業内において、地位を利用した不正行為(汚職)がないかも、ウェルビーイングに関わる要素です。
汚職が組織内にまん延している状態だと、政治的に腐敗が進んでいると認識され、社会における信頼性を損ないます。
そのため、法令を遵守することはもちろん、組織運営に関する情報を公開し、透明性を確保する取り組みがウェルビーイングにつながると考えられます。
指標4:「より良い暮らし指標」(OECD)における11要素
「より良い暮らし指標」とは、人々の生活の状況や豊かさを計測し、国民生活に関わる要素を数値化した指標のことです。
この指標は、国際機関である経済協力開発機構(OECD)から公表されているもので、以下の11分野の要素で構成されています。
要素 | 主な内容 |
---|---|
住宅 | ・一人あたりの部屋の数 ・住居費 |
所得 | ・家計の可処分所得 ・家計の金融資産 |
雇用 | ・就業率 ・平均年収 |
社会的つながり | 「困ったときに頼れる親戚・友人がいる」と回答した人の割合 |
教育 | ・高校修了者の割合 ・教育を受ける平均年数 |
環境 | ・大気汚染 ・水質 |
市民参画 | ・投票率 ・立法過程における協議プロセスの整備状況 |
健康 | ・平均寿命 ・「自分の健康状態がよい・大変よい」と回答した人の割合 |
主観的幸福 | 生活の満足度に対する自己評価 |
安全 | 「夜間にひとりで外を歩いても安全」と回答した人の割合(15歳以上) |
ワークライフバランス | ・長時間勤務者の割合(週50時間以上) ・余暇や個人的活動(睡眠・食事)にあてた時間 |
参考:OECD「より良い暮らし指標」クイックガイド|経済協力開発機構(OECD)
「より良い暮らし指標」は、内閣府の「満足度・生活の質に関する調査報告書 2023」でも活用されており、日本におけるウェルビーイングの基本となる考え方です。
日本におけるウェルビーイングの動向|内閣府の調査
日本のウェルビーイングに関する動向について、内閣府が毎年調査を行っている「満足度・生活の質に関する調査」をもとに解説します。
2023年に公表された調査報告書によると、仕事への感情や考えに関する質問に対して、5割程度の人が前向きな意識を持っていることがわかりました。
質問 | 「思う」の 回答割合 | 「まあ思う」の 回答割合 |
---|---|---|
やりがいを感じる | 13% | 46% |
誇りに思う | 13% | 45% |
喜びや楽しみを感じる | 9% | 39% |
仕事や働き方を多くの選択肢から選べる | 9% | 37% |
人々の生活をより良くすることにつながっていると思う | 13% | 48% |
※調査報告書(P38)のデータをもとに作成
企業はウェルビーイングを進めるにあたり、ライフスタイルに応じて従業員が柔軟に働ける環境づくりが求められています。
以下のグラフは、テレワークの可否が「満足度にどのような影響を与えているか」を集計したものです。
出典:満足度・生活の質に関する調査報告書2023(P42)|内閣府
テレワークが可能な環境は、いずれの満足度も高いことが確認でき「働き方の柔軟さ」が満足度に与える影響の大きさがわかります。
ウェルビーイングの実施状況|大企業では8割実施
大企業におけるウェルビーイングの実施状況は、約8割の企業が「実施中または実施に向けて準備中」だと、HR総研による調査でわかりました。
企業規模 (従業員数) | 「実施している」 の回答割合 | 「実施に向けて準備中・検討中」 の回答割合 |
---|---|---|
1001人以上 | 40% | 38% |
301〜1000人 | 17% | 33% |
300人以下 | 12% | 29% |
中堅企業や中小企業の実施状況は、大企業と比べると低いですが、準備中の企業が大企業と同等であることから、今後は実施企業が増えていくと推測できます。
また、ウェルビーイングへの取り組みを実施した企業では、以下のような効果が得られたこともわかりました。
得られた効果 | 企業の割合 |
---|---|
社員のエンゲージメントの向上 | 57% |
社員のモチベーションの向上 | 50% |
社内コミュニケーションの活性化 | 33% |
会社全体の生産性の向上 | 33% |
離職率の低下 | 11% |
「組織に対する感情」や「仕事への意欲」など、社員個人への効果を感じている企業が多い傾向です。
ウェルビーイングへの取り組みは、離職率の低下といった組織全体への効果も期待できますが、検討と実践を継続的に行っていくことが成功のカギと言えます。
※上記の表は「ウェルビーイングと健康経営」に関するアンケート(HR総研)のデータをもとに作成しています。
ウェルビーイングを推進する企業の取り組みとは?
ウェルビーイングを推進する企業の取り組みについて、具体例を3つご紹介します。
上記のような取り組みによって、従業員の幸福度を高めるだけではなく、生産性の向上といった組織全体への効果も期待できます。
ウェルビーイング経営の事例や取り組み方法については、以下の記事にまとめていますので、自社でも施策の検討をしたい方は確認してみてください。
ワークライフバランスを充実させる
ワークライフバランスの充実によって、従業員は仕事とプライベートが両立できるようになり、満足度や幸福度が増します。
企業が取り組んでいるワークライフバランスの具体例は、以下のとおりです。
取り組み例 | 期待される効果 |
---|---|
フレックスタイム勤務制度の導入 | ライフスタイルや家庭環境に応じた働き方ができ、充実した生活を送れる |
リモートワークの促進 | 会社への通勤時間を削減して、プライベートな時間に活用できる |
休暇制度の見直し | リフレッシュできる長期休暇の取得によって、ストレス解消につながる |
パナソニックの取り組みでは、個人のキャリア形成やワークライフバランスの実現に向けて、柔軟かつ自律的な働き方を従業員に提供しています。
副業と組み合わせた勤務や、遠隔地にある自宅でのフルリモート勤務など、従業員の状況に応じた労働環境を整えています。
参考:DEIと社員のウェルビーイング|パナソニック ホールディングス株式会社
心身の健康へのサポートやケアを行う
従業員が心身ともに健康な状態で生活を送れるように、そのサポートやケアを行う体制や環境づくりが大切です。
企業の取り組みの具体例として、以下のような施策が挙げられます。
取り組み例 | 期待される効果 |
---|---|
健康増進プログラムを提供 | 健康診断の結果をもとに、健康管理のアドバイスを提供し、健康へのリスクを早期発見できる |
休憩・運動スペースの設置 | 仕事の疲れを癒して、仕事へのモチベーションを高められる |
厚生労働省では「職場における心の健康づくり」の指針を定めており、人間関係や仕事のストレスを軽減させるメンタルヘルスケアも重要だとしています。
また、サーベイを活用して従業員へのケアに取り組んでいる事例もあり、グローバルソリューションサービス株式会社では、以下のような施策を実施中です。
- 調査結果から、ケアが必要な従業員を特定
- フィードバックを通して、従業員の「本音や意見」を収集
上記の取り組みによって、離職率が20%から13%にまで改善しており、サーベイの活用もウェルビーイング実現には有効な手段です。
1on1ミーティングなど対話の機会を設ける
上司と部下、メンバー間で対話する機会を設けることで、従業員の意見や悩みを聞くだけではなく、お互いの信頼関係の構築にもつながります。
その一つの取り組みとして、上司と部下が1対1で定期的に面談を行う「1on1ミーティング」が有効な手段です。
1on1ミーティングでは、単に業務の進捗状況を確認するだけではなく、将来のキャリアや心配ごとなどを聞く「対話」が大切です。
トヨタ自動車の品質管理部門では、部品ごとに複数のグループが存在するため、方向性の意思統一を図る目的で、週1回の1on1ミーティングを実施しています。
グループにおける課題や人材育成に関する議論を行っており、必要に応じてミーティングの頻度を増やすといった工夫もしています。
1on1ミーティングについて詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。ミーティングの進め方や注意点も解説しています。
従業員のウェルビーイングを測定する3つの方法
ここからは、従業員のウェルビーイングを測定する3つの方法を解説していきます。
エンゲージメントやモチベーションを測定できるサーベイや、幸福度診断に特化した測定ツールをピックアップしました。
測定ツール | 特徴 | 費用 |
---|---|---|
ミキワメ ウェルビーイングサーベイ | ケアが必要な従業員を可視化し、サポートを強化できる | 要問い合わせ |
PERMA-Profiler (日本語版) | PERMAモデルにもとづいた多面的な測定ができる | ・検査:無料 ・心理面接:1万円/回 |
幸福度診断 (Well-Being Circle) | 科学的かつ多面的に幸福度を見える化できる | ・個人での診断:無料 ・企業への導入:有料 |
ウェルビーイングを測定し「どのような改善につなげたいか」をよく検討し、自社に合った測定ツールを導入しましょう。
ミキワメ ウェルビーイングサーベイ|株式会社リーディングマーク
費用 | 要問い合わせ ※利用人数によって異なる |
実施頻度(時間) | ・性格検査:年に1回程度(10分/回) ・ウェルビーイング検査:月に1回程度(約2分/回) |
特徴 | ・従業員のウェルビーイング(幸福度)を数値化できる ・ケアが必要な従業員を可視化し、サポートを強化できる ・性格に応じたケアの実施で、休職や離職を防げる |
公式ホームページ | https://mikiwame.com/well-being.html |
提供会社 | 株式会社リーディングマーク |
『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』は、従業員のウェルビーイングの状態を可視化させ、ケアが必要な人の把握・サポートができるツールです。
同ツールでは、月1回・週1回といった高頻度で検査するパルスサーベイを採用しており、従業員の状態をタイムリーに把握できます。
また、従業員の性格を考慮した「改善の打ち手」が提供されるため、個々に最適なサポートが可能となり、ウェルビーイング向上にもつなげられます。
- 正確な情報を収集するため、サーベイの目的・実施方法を従業員に説明する
- フィードバックを通して、従業員と対話する時間を設ける
『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』の特徴や導入手順については、以下の記事で詳しく解説しています。導入を検討されている方は確認してみてください。
PERMA-Profiler|金沢工業大学心理科学研究所
費用 | ・検査:無料 ・心理面接:1万円/回 |
時間 | ・検査:約10分/回 ・心理面接:初回90分(継続面接は60分) |
特徴 | ・「PERMAモデル」にもとづいた多面的な測定ができる ・短時間の心理検査でウェルビーイングを把握できる |
公式ホームページ | https://kitap01.kanazawa-it.ac.jp/permaprofiler/public |
提供者 | 金沢工業大学心理科学研究所 |
『PERMA-Profiler』の日本語版は、金沢工業大学の心理科学研究所が、原版の開発者の助言を受けて開発したツールです。
前述した「PERMAモデル」をもとに開発されており、心理学の多面的な側面からウェルビーイングを測定できます。
心理検査は、23項目の設問に対して11個の選択肢から回答する方法で、約10分の短時間で検査が可能です。
- 心理検査の結果を鵜呑みせず、幸福に向かうためのヒントとして活用する
- さまざまな影響に関する解説を受けたい場合は、心理面接を受ける
幸福度診断(Well-Being Circle)|株式会社はぴテック
出典:幸福度診断 Well-Being Circle|株式会社はぴテック
費用 | ・個人での診断:無料 ・企業への導入:有料 ※要問い合わせ |
時間 | 約20分 |
特徴 | ・科学的かつ多面的に幸福度を見える化できる ・「幸福度向上ガイド」の活用で、より幸福度を高められる |
公式ホームページ | https://www.lp.well-being-circle.com/ |
提供者 | 株式会社はぴテック |
『幸福度診断(Well-Being Circle)』は、幸福度をあらわす34項目の要素が可視化できる測定ツールです。
同ツールは、幸福学の第一人者である慶應義塾大学の前野教授と、株式会社はぴテックが共同開発しており、信頼性のあるツールと言えます。
個人での診断は無料で利用でき、72問のアンケートへの回答からウェルビーイングの度合いを手軽に計測できます。
- 幸福度をより向上させるため「幸福度向上ガイド」を参考にする
- 診断結果をもとにアクションプランを立てる「幸せの振り返り機能」を活用する
ウェルビーイング指標をもとに従業員の心身状態を把握しよう
今回の記事では、ウェルビーイングの基準となる4つの指標や、企業が取り組むべき具体的な施策について解説しました。
ウェルビーイングに関する指標はさまざまで、個人を対象にしたものや、国・地域を対象にしたものもあります。
「PERMAモデル」と「ギャラップ社が提唱する指標」は、従業員に焦点をあてて幸福度を把握しやすく、企業もよく活用している指標です。
組織全体をウェルビーイングな状態に近づけるために、指標をもとにサーベイや診断ツールを活用して、組織の状態を継続的に測定していきましょう。
従業員のメンタル状態の定期的な可視化・個々の性格に合わせたアドバイス提供を通じ、離職・休職を防ぐパルスサーベイ。30日間無料トライアルの詳細は下記から。