インターネットの普及による顧客の購買行動の変化と、SaaSやサブスクリプションモデルの台頭を背景に、デジタル時代の顧客ニーズに応える新たな営業手法「The Model(ザ・モデル)」が注目を集めています。
本記事では、The Modelの概要からメリット・デメリット、導入の流れ、注意点まで包括的に解説します。
The Modelとは?と従来の営業モデルとの違い
The Model(ザ・モデル)とは、従来1人の営業が担当していた営業プロセスを以下の4つの段階に分割し、各段階の目標数値をKPIとして設定・可視化する営業モデルです。
- マーケティング
- インサイドセールス
- フィールドセールス
- カスタマーサクセス
以下の表は、The Modelと従来の営業モデルの特徴を比較したものです。
特徴 | 従来モデル | The Model |
---|---|---|
営業プロセス | 1人の営業担当者がすべての購買プロセスを担当する | 4つの部門に分かれた分業制により各担当が効率性・専門性を高める |
情報の可視化 | 途中経過の数値化が不十分で、改善点が曖昧 | KPI管理により各プロセスの情報を可視化・最適化 |
部門間連携 | 営業方法が属人的で、連携不足が生じやすい | 目標値や顧客情報をシームレスに共有・連携する |
カスタマーサクセス | 「購入」がゴールになりがち | 契約後のサポートを通じて顧客の成功と継続利用を促進 |
設計の視点 | 営業担当者の視点が中心 | 顧客の購買プロセスに合わせて設計 |
インターネットの普及により顧客の購買行動は大きく変化し、サービスの特徴や利点を一方的に説明する従来の営業手法の効果は薄れています。同時にSaaSやサブスクリプションモデルの台頭により「一度販売したら終わり」ではなく、顧客との長期的な関係構築が重要となってきました。
The Modelでは、各担当が特定の役割に集中することでリソースの最適化と効果的なアプローチが可能です。現代の購買プロセスに適した顧客体験の向上と、営業効率の最適化につながる営業モデルといえるでしょう。
The Model導入のメリット
「購買行動に合わせた営業プロセスの分業制」を特徴としたThe Modelの導入には、成約率の向上をはじめとする以下5つのメリットがあります。
メリット | 内容 |
---|---|
成約率の向上 | 各部門が担当の業務に特化しスキルと知識が深まる結果、成約率の向上につながる |
顧客満足度の向上 | 専門のカスタマーサクセス担当による契約後の顧客サポートの充実により顧客満足度が向上し、継続的な利用や追加購入につながりやすくなる |
リソースの最適化による効率化 | 各部門の役割が明確になることでリソースの適切な配分と営業担当者の負担軽減が可能となり、全体的な営業効率と業務効率が向上する |
効果的な改善 | 各部門でのKPIに基づく業務プロセスの数値化・可視化により、客観的な問題点の特定と効果的な改善が可能となる |
営業力の維持 | ・分業制により営業プロセスが標準化されることで業務の属人化を防止し、組織全体での知識やスキルの共有が可能となる ・人材の入れ替わりがあっても、組織全体の営業力を維持しやすい |
The Model導入のデメリット
The Modelの導入には多くのメリットがある一方で、組織の分断や情報共有の課題など、いくつかの潜在的な問題点も存在します。
デメリット | 内容 |
---|---|
部門間の連携不足のリスク | 業務の細分化により各部門が自部門の業務に集中する結果、部門間のコミュニケーションや情報共有が不足し、顧客対応の一貫性が失われるおそれがある |
部分最適化のリスク | 各部門が自部門のKPI達成に注力するあまり、組織全体の目標を見失う可能性がある |
組織構造の変更の必要性 | 営業プロセスを4つの専門部門に分割する過程で起こる、組織の再編や連携方法の変更に対して従業員が抵抗を持つ可能性がある |
The Model導入の流れ5つのステップと注意点
The Modelを効果的に導入するためには、段階的なアプローチが必要です。具体的には次の流れで導入を進めましょう。
- 顧客ステージの設計
- 移行判定基準の設定
- 全体目標とKPIの設定
- 組織構造の再編と役割の明確化
- 運用とPDCAサイクルの確立
各段階で注意すべきポイントを紹介します。
1.顧客ステージの設計
The Modelの導入は、顧客の購買プロセスに沿って、複数のステージを定義することから始めます。まずは認知拡大から契約に至るまでの流れを定義し、各段階に適したコミュニケーションチャネルと施策を選定しましょう。
例として、以下の6つのステージとコミュニケーションチャネル、施策が考えられます。
ステージ | コミュニケーションチャネルと施策例 |
---|---|
1.認知拡大 | ・業界トレンドに関する記事をブログで定期配信 ・業界インフルエンサーとの対談動画をSNSで公開 ・新製品発表会のプレスリリースを配信 |
2.リード獲得 | ・ホワイトペーパーダウンロード時のフォーム入力でメールアドレス取得 ・展示会ブースでのQRコード名刺交換 ・ウェビナー参加登録フォームの設置 |
3.リード育成 | ・製品の使用事例を紹介するウェビナーの配信 ・ニュースレターで業界別の課題解決ガイドのPDFを提供 |
4.有望リード | ・オンラインでの1対1製品デモセッションの実施 ・対面ミーティングでの類似業種での導入事例レポートの提供 |
5.商談~契約 | ・対面ミーティング顧客の具体的な課題に基づくソリューション提案 ・製品導入後のサポート体制の詳細説明 ・契約条件のカスタマイズと最終調整 |
6.契約後 | 顧客専用サポートポータルへのアクセス権提供 |
顧客ステージの設計において注意したい点は「実際の顧客行動を正確に反映したステージ設計となっているか」です。
Webサイト上での行動分析や成約顧客へのアンケートを通じて詳細な購買プロセスを把握し、カスタマージャーニーマップを作成することで、効果的なステージ設計が可能となります。
2.移行判定基準の設定
ステージ設計のあとに必要なのが「どの段階で次のフェーズと見なすか」という移行判定基準の設定です。以下の基準例を参考に自社の商品やサービス、顧客の特性に合わせて適切な判定基準を設定しましょう。
- 認知拡大:メールマガジンの開封、ウェビナーへの参加申し込み
- リード獲得:製品詳細ページの閲覧
- リード育成:問い合わせフォームへのアクセス
- 有望リード:商談のアポイント獲得
- 商談~契約:契約締結
- 契約後:購入完了後カスタマーポータルにアクセス
移行判定基準の設計において、効果的なアプローチを行うために注意したい点は、顧客の実際の購買意欲と一致した「適切な判定基準を設定できているか」です。
この問題に対しては、各ステージで主要な行動指標を設定したのち、実際の商談状況と比較して一致率が低い場合に定期的に指標や重み付けを見直すなどの対策が考えられます。
3.全体目標とKPIの設定
The Modelの効果的な運用には、全体目標の設定と各部門のKPI(重要業績評価指標)の明確化が不可欠です。
まずは、全体目標(例:年間売上高前年比10%増)を設定し、それを達成するために各部門のKPIを以下のように設定します。
- マーケティング:リード獲得数月間50件
- インサイドセールス:アポイント数月間15件
- フィールドセールス:受注率25%
- カスタマーサクセス:顧客継続率90%
これらのKPIについて週次で進捗を確認し、月次で達成状況を評価します。
注意したい点が、各部署が目標達成のみに注力し、全体の目標を見失う「部分最適化」です。部分最適化への対策としては「定期的な部門間ミーティングによる情報共有」や「各部門の取り組みと数値の連携による全体の売上(LTV)向上の可視化」が挙げられます。
4.組織構造の再編と役割の明確化
The Modelのスムーズな運用のためには、組織構造の再編と各部門の役割の明確化が欠かせません。
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4部門を設置し、それぞれ具体的な業務範囲を以下のように決定します。
- マーケティング:見込み客の発掘とリード獲得
- インサイドセールス:リードの育成と商談アポイントの獲得
- フィールドセールス:対面での提案と成約
- カスタマーサクセス:契約後のサポート
次に、全体の売上目標と各部門のKPIに基づいて人員や配置、予算など必要なリソースを分配します。
しかし、今まで1人が行っていた営業プロセスを複数部門に分割・再編するため、部門間の情報断絶が起こる可能性も考えられるでしょう。
そこで、定期的な部門間ミーティングを設定し情報共有を徹底することで、各部門が連携して顧客に一貫したアプローチを行えるようになり、The Modelの効果を最大限に引き出せます。
5.運用とPDCAサイクルの確立
The Modelの体制でスムーズに運用するためには、KPIの達成状況や移行判定基準を適切に管理する体制づくりが必要です。各部門と役割が明確になったら、以下のようなデータ化と共有を支援するツールを導入・活用するとよいでしょう。
- CRMシステムで顧客情報を一元管理
- マーケティングオートメーションツールでリード獲得・育成を自動化
- 営業支援ツール(SFA)で営業活動を可視化
- データ分析ツールで各部門のKPI達成度を分析
The Model運用後は、週次・月次にKPIや全体目標に対する評価とプロセスの改善を行い、PDCAサイクルにより営業効果の向上を目指します。
ただし注意点として、PDCAサイクルを長期的に運用するなかで形式的な実施に陥り、本来の目的である改善につながらない形骸化のリスクがあります。
形骸化を防ぐためには具体的な数値目標を設定し、高速でサイクルを回すことが重要です。これにより、常に最新のデータに基づいた意思決定と改善が可能となり、The Modelの効果を最大化できます。
The Model式の運用における課題と解決方法
The Modelは営業プロセスの効率化・効果向上が期待できる一方で、前述のとおり自部門のKPI達成に注力し、全体目標を見失う「部分最適」に陥りやすい課題があります。
The Modelの大きな運用課題である「部分最適」を解決するためには、定期的に組織全体・部署ごと・各個人という各粒度での状況を正確に把握し、早期に問題を発見・改善する必要性があります。
各粒度での定期的な状況把握の手段として有効なのがサーベイです。サーベイを活用することで部分最適化の兆候を早期発見できれば、迅速な改善につながるでしょう。
たとえば「ミキワメウェルビーイングサーベイ」では、月1回のサーベイ実施により、組織全体・部署・個人レベルでの状況を可視化することが可能です。組織全体の目標達成に向けて各部門が協調して取り組む体制を構築でき、The Modelの課題解決に役立ちます。
「ミキワメウェルビーイングサーベイ」でThe Modelの課題を解消し効果を最大化しよう
The Modelは現代の購買行動に合った営業モデルですが、部分最適に陥りやすい点が大きな課題です。
「ミキワメウェルビーイングサーベイ」の導入により、組織全体・部署ごと・各個人という各粒度での状況把握が可能となるため、部分最適のリスクが軽減し、The Modelの効果を最大化できます。
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