営業組織において最も重要なミッションは売上の増加であり、そのための組織力強化は多くの企業にとっての課題です。
本記事では「強い営業組織」の特徴と実現を阻害する要因、強い営業組織づくりに欠かせない改革アプローチを解説し、あわせて中小企業の成功事例についても紹介します。

「強い営業組織」の特徴とあるべき姿とは?
売上を立てられる「強い営業組織」の特徴として、以下の7つが挙げられます。
顧客に提供する価値が明確である | 顧客の課題解決に直結する価値を具体的に提示し、競合との差別化ポイントを明確に伝えられる |
顧客の声を営業活動の改善に活かしている | 顧客の声を積極的に収集・分析し、製品やサービス、営業プロセスの改善に活かしている |
適切なKPIが設定されている | 行動と成果を結びつけるKPIが設定され、チーム全体で共有・可視化されている |
目標を共有している | 組織のビジョンと目標が明確に伝えられ、個人の目標設定に組織目標が反映されている |
優秀なリーダーがチームをけん引している | 優秀な営業マネージャーがチームを牽引し、効果的なコミュニケーションを促進している |
ナレッジを共有する仕組みが構築されている | 優秀な営業担当者のアクションや行動パターンを共有する仕組みが構築されており、組織全体のパフォーマンス向上につながっている |
営業人材育成のメソッドが確立している | 継続的なトレーニングと教育が行われ、個々の営業担当者のスキルアップを促進する仕組みが確立している |
売上を立てるためには、個々の営業担当者の能力を最大限に引き出しつつ、チームとしての相乗効果を生み出せる「強度のある組織」であることが重要です。
営業組織の強化を阻害する6つの課題
もし、現状の営業組織が強い営業組織とはいえない場合、何らかの要因がチームとしてのパフォーマンスの最大化を妨げている可能性があります。
営業において利益が思うように上がらない場合、以下の課題がないかを考えてみると打開策につながるかもしれません。
経営層と現場のギャップ | 戦略を策定する経営層と実行する現場との間にギャップが生じ、組織の目標や方向性が現場に正しく理解されない |
営業活動の属人化 | 特定の営業担当者に頼りきりでノウハウや顧客情報を共有していない結果、その担当者が退職した際に顧客対応の質や売り上げが大きく下がる |
人材育成の不足 | 体系的な指導体制がないため営業スキルの個人差が拡大し、組織全体のパフォーマンス低下につながっている |
モチベーション管理 | 高すぎる・低すぎる目標設定や、成果に対する待遇への反映の少なさにより営業メンバーのモチベーションが低下する |
顧客情報の管理・活用不足 | 顧客情報の共有システムがなく、顧客対応の一貫性やビジネスチャンスの喪失、顧客満足度の低下が起こっている |
適材適所の難しさ | 個々の営業担当者のスキルや適性の把握ができておらず、配置のミスマッチにより売り上げにつながりにくい |
エース社員への負担集中 | 一部の優秀な営業担当者への過度な期待や依存により、燃え尽きによるるパフォーマンス低下、ストレスや過剰労働による休職・離職が起こり、組織全体の成長までつながらない |
営業組織の強化に向けた改革に必要な5つのステップ
営業組織の強化に向けた改革は、以下の流れで進めましょう。
- 現状分析と目標設定を行う
- 人材配置をし評価制度を最適化する
- 営業プロセスを標準化しナレッジ共有システムを構築する
- データに基づく意思決定を導入する
- 継続的な人材育成を行う
それぞれのステップで行うべきことを解説します。
1. 現状分析と目標設定を行う
強い営業組織を構築するうえで欠かせないのが、現状分析と目標の設定です。
現状を分析するためには、以下の方法が考えられます。
- 現場の営業メンバーへのヒアリングやアンケートでの課題や弱点(例:営業スキルの個人差や情報共有の不足)の洗い出し
- KPI分析(例:売上目標、商談成約率、顧客訪問回数)による目標達成を阻害している要因の特定
- NPS(満足度を10段階で評価してもらう手法)などの指標を活用した顧客の声の数値化
現状と理想の差が明らかになったら、SMARTの法則(具体的・測定可能・割り当て可能・現実的・期限が明確)に基づいた目標を設定し、進捗を定期的に確認する機会を設けましょう。
2. 人材配置をし評価制度を最適化する
目標設定後は、不適切な人材配置や評価制度への不満により、営業効率やメンバーのモチベーションが低下していないかを確認します。
最初に、組織の目標と現在の人員配置のギャップを特定し、必要なスキルや人材の過不足を明らかにしましょう。そのうえで、各メンバーのスキルや適性を面談やスキルマトリックスで可視化し、強みを活かせる体制を構築することが大切です。人員の不足を埋められない場合は、営業プロセスの効率化が必要となります。
次に、SFA(営業支援)ツールを用いた実績の可視化によるフィードバックや内発的動機付けを促す自己決定型目標の設定、業績評価報酬の設定などにより、メンバーのモチベーションを向上させる仕組みを構築しましょう。
3. 営業プロセスを標準化しナレッジ共有システムを構築する
明確な目標設定と人員配置を行い、適切な評価制度を整えたら、次はチームとしての営業効率を最大化する営業プロセスの標準化とナレッジ共有システムの構築に移ります。
優秀なエース営業社員の具体的なノウハウを組織全体で共有すれば、営業力の底上げにつながるでしょう。また、一貫して安定したレベルを維持できる、再現性のある顧客対応が可能となれば属人化を防げます。
具体的な方法としては、顧客情報を一元管理し、営業担当者間での情報共有を促進するCRMツールの導入や社内Wikiの構築、社内の成功事例や効果的な営業手法を共有する会の開催などが有効です。
4. データに基づく意思決定を導入する
営業組織全体を強化するには、優れた営業担当者や経営者の感覚的な判断に任せるのではなく、分析したデータを意思決定に活かす「データドリブン営業」への転換も必要です。
具体的には、以下のような方法が挙げられます。
- BIツールの導入による営業データのダッシュボード化
- AIを活用した需要予測モデル構築による顧客・商談の優先順位付け
- A/Bテストの実施による効果的な営業アプローチの検証
データドリブン営業への転換が営業活動を可視化・効率化し、属人的な営業からの脱却と継続的な成長につながります。
5.継続的な人材育成を行う
組織体制や営業プロセスを整えて基盤が完成したら、改善の成果を持続させるため人材育成の仕組みづくりが必要です。
具体的には、ロールプレイングなどを用いた営業研修の定期的な実施や、初期の離脱を防ぐためのメンター制度の導入、経営側とビジョンを共有し意識改革を行うための機会創出といった方法が考えられます。
しかし、負担ばかりが増えると、人材育成を実施する側・行われる側双方のモチベーションやパフォーマンスの低下につながってしまいます。不要な報告書類や手続きの削減、支援ツールの導入など、環境整備による効率化も同時に行う必要があるでしょう。
中小企業における営業組織改革の成功事例
ここでは、実際に中小企業が営業組織改革を行い、成果を出した事例を見ていきましょう。
事例1:提案力を高める営業体制への転換
課題 | 経営者の強力な営業力で業績は好調であったものの、外部要因による受注減少傾向と経営者の営業力に依存した従業員のモチベーションの低さ、定着率の悪さが懸念事項であった |
主な改革ステップ | 1. 営業面での現状把握と反省、目標設定 2. 営業担当者に必要な資質の洗い出し 3. 結果指標(売上)ではなく、先行指標を管理できる営業プロセスの構築と見直し 4. メンバーによる営業目標の設定と経営陣の目標のすり合わせ 5. 新規顧客開拓マニュアルへの落とし込み 6. ロールプレイングの実施とマニュアル、営業ツールの整備 7. 予実管理の導入によるPDCAの徹底 8. 営業評価制度の構築 |
結果 | ワンマン体制からの脱却に成功し、従業員の力を活かした営業組織体制に転換できた |
この事例では、経営者1人の営業力に依存していた状態からマニュアルや指標の活用により社員一人ひとりを活かす体制に変革できています。また、経営戦略の共有により現場のモチベーションも向上しチームとしての体制も整い、適切な評価制度により従業員満足度も高まった結果として離職率も低下しました。
事例2:利益重視の営業管理体制の構築
課題 | 流通構造の変化により提案営業による新規開拓が重要課題となり、営業管理を含めた営業力強化の支援が必要であったが、情報や社内ノウハウが活用できる体制になっていなかった |
主な改革ステップ | 1. 現状把握と課題抽出 2. 重要顧客・標的顧客の見極め・ニーズ分析 3. 営業活動の情報の共有による顧客対応の迅速化 4. 営業活動プロセスの再設計と営業KPIの設定 5. 営業活動に対するフィードバックと粗利管理による商品構成・取引先の見直し 6. 提案用ツールの利用による営業業務効率化 |
結果 | 営業管理体制の整備とツールの活用による業務効率化により余力時間ができたことにより、新規訪問活動が増えた結果として新規顧客獲得につながった |
この事例では、営業体制の整備による新規顧客獲得と在庫管理の整備による時間・在庫のロス減少で利益の出やすい低コスト経営体質の基盤ができ、新事業の展開にもつながりました。
事例3:個別目標の設定による営業管理体制の改善
課題 | ・ノルマ管理型・場当たり的な営業手法のため、営業データやプロセスを管理できない ・賃金・評価制度が整備されておらず、従業員のモチベーション低下を招いていた |
主な改革ステップ | 1. 適正な人事評価・賃金制度の整備 2. 営業面の現状把握と課題の洗い出し 3. 顧客分析による重要顧客の特定と全体のKPI、個別営業目標の設定 4. 商談プロセス管理票の導入による活動報告の仕組み作り 5. データ分析と実績評価による進捗管理 |
結果 | 営業プロセス管理への転換で従業員の意識・行動に改革を促し、業績が向上した |
この事例では、ノルマ管理型の営業から営業プロセスマネジメントへの転換により、チームが一体となった営業活動が可能となりました。また、人事評価制度の策定により、従業員の定着率・売上高ともに上昇しています。
営業組織の崩壊を防ぐためのエース社員に対するマネジメントの重要性
「強い営業組織」として理想なのは、エース社員のノウハウやパフォーマンスをほかのメンバーに波及させる適切なシステムの構築により、チーム全体の営業力が高い水準にあげられている状態です。理想の状態をつくるためには、チームの要となるエース社員の役割が重要となります。
しかし、企業はエース社員に対して適切な対応を行わないと、強い営業組織をつくるまでの過程で燃え尽きてしまったり、パフォーマンスが低下したりして、最悪の場合は離職に至るリスクがあります。
エース社員の負担を軽減するためには、ほかの社員のスキルアップ支援や、チーム全体でのナレッジ共有の促進などを行う必要があるでしょう。
そこで有効なのが、個人の成果が正当に還元される評価システムに加え、エース社員の状態を定期的に可視化し、適切なサポートを行えるサーベイなどの導入です。
「ミキワメウェルビーイングサーベイ」で全体と個々の状態を可視化し強い営業組織へ
強い営業組織をつくるには、チーム全体の営業力の底上げと並行して、エース社員の適切なマネジメントとケアを行い、休職・離職による営業組織全体の弱体化を防ぐ必要があります。
「ミキワメウェルビーイングサーベイ」は、月1回3分の高精度なサーベイで、エース社員をはじめとするチーム個人だけではなく、チーム全体の状況まで把握できるツールです。「現場の営業社員の理解」「適切な人材配置」「エース社員のケア」など、営業組織における課題の解決に役立ちます。
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